勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米国のEV(電気自動車)専門メーカーのテスラが、念願叶って100%出資で上海に新工場建設する。テスラといえば、CEOのイーロン・マスク氏が超有名人だ。歯に衣着せぬ発言で、誰とでも衝突する血の気の多い人物である。だが、着想力と実行力は群を抜いている。それだけ、自信がおありなのだろう。

     

    上海進出では、すでに準備が始まっている。

     

    『チャイナレコード』(8月7日付)は、「米テスラの上海EV新工場、3倍の給与で人材争奪」と題して、次のように伝えた。

     

    (1)「中国メディア『21世紀経済報道』(8月7日付)は、米電気自動車(EV)メーカーのテスラが、中国・上海に建設するEV工場について『「テスラはすでに3倍の給与を提示して人材争奪を始めている」と報じた。記事によると、テスラは5日、ウィーチャット(微信)上の公式アカウントで、EPCエンジニアリングディレクターや政府問題プロジェクトマネジャー、建設プロジェクトマネジャー、土木エンジニア、法務・経理・人事スタッフなどの募集を開始した』

     

    工場建設に伴うスタッフの募集が始まったという。テスラという企業イメージは極めて高いので、現地では簡単に募集できるだろう。

     

    (2)「消息筋は、『テスラは3倍の給与を提示し、(中国自動車最大手の)上海汽車集団からも多くの技術者が離れる』としている。テスラは、上海のEV新工場について『当局の認可が下り次第、着工する予定だ。2年ほどで生産が始まる見通しで、年産約50万台の生産能力に達するのはそれから23年先になる見込みだ』としている」

     

    テスラは、3倍の給与を提示しているという。7月の中国自動車販売は前年比4%の落ち込みで、基調的には下降局面に入っている。それだけに、多くの人材が厚遇も手伝い殺到するであろう。

     

    問題は、建設資金調達である。テスラは、米国での上場を止めて、非公開会社にする、というマスク氏の爆弾発言があったばかりである。これまで、赤字でも高い株価で資金を集めてきた。それが、非公開企業になると「高株価経営」が不可能になる。だが、「秘策」があるらしいとの報道が出てきた。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月9日付)は、「テスラ非公開化、その利点と代償」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「エバコアISIのアナリスト、ジョージ・ギャリエーズ氏は、テスラが戦略投資家を味方につけ、非公開化だけでなく、海外進出に必要な資金も確保すると予想する。そうなれば、テスラの事業スピードは速まり、従来メーカーはガソリン車からEVへの移行で変革を迫られるという」

     

    マスク氏は、戦略投資家を味方につけているのでないか、という憶測である。上海工場建設では初期投資にどの程度か。中国メディアは、早ければ2019年初めにも着工するとしている。巨大電池工場「ギガファクトリー」のほか、モーターなどの主要部品から車両の組み立てまでを担う拠点になるとみられる。となると、建設資金は相当の規模になるはず。テスラ100%出資であるから、中国が出資するはずはない。さて、注目の戦略投資家は誰か。ソフトバンクの孫氏ということはないのか。

     


     


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    米国企業の人材採用で、応募者のネットへ投稿履歴を調査する動きが広がっている。人種差別など問題発言がなかったかを調べるためだが、ソーシャル・メディアへの投稿が採用の「地雷」となる事態も起こっているという。

     

    日本でも新人材を求めてヘッドハンティングが活発である。「年収××××万円以上」という広告が目につく時代だ。ここで一つ落し穴が出てきたという。過去のツイッターなどに問題発言がなかったか。米国では事前チェックが始まったと伝えられている。いずれ、日本でもそういう時代が来るか。あるいは、すでにこっそり始まっているかも。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月12日付)は、人材採用に新リスク、過去のSNS投稿に『地雷』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「求人サイト、キャリアビルダーが採用責任者や人材幹部2300人を対象に実施した2017年の調査では、70%が応募者のソーシャル・メディアでの投稿履歴を調べたと回答した。これは前年比60%の大幅増だ。また差別的な発言を見つけ、採用を見送ったと回答も3分の1に上った。ただ、人材採用におけるソーシャル・メディア投稿履歴の調査プロセスは、依然として不透明だ。雇用法や人材の専門家によると、調査が不十分、または調査が行きすぎても、法的なリスクを伴い、会社の評判を落とすことになりかねない。企業の多くは、犯罪履歴の調査や薬物検査について明確な指針を持っているが、オンラインの投稿履歴について一貫した指針を持つ企業は少ないという」

     

    求人サイト、キャリアビルダーがアンケートした結果では、70%が応募者のソーシャル・メディアでの投稿履歴を調べたと回答した。人種差別的な発言が、関心事になっている。米国ならではの事態だ。ただ、日本でも海外に工場やオフィスを展開しているので、「米国の話」と聞き捨てにはできない。最近では、日本企業で韓国の若者が就職するケースも増えている。

     

    (2)「雇用専門の弁護士、ケート・ビショフ氏は、顧客企業に対し、採用決定に関与していない人材部スタッフにソーシャル・メディア投稿の調査を担当させるよう助言している。こうすれば、偏見につながりかねない情報に採用責任者が直接、触れるのを防ぐことができるためだ。不適切な発言を見つけた場合には、人材部社員が通常、応募者に説明を求める。ビショフ氏は『ソーシャル・メディア上での不適切発言を見落とすことで、問題になる事態をより懸念する』と指摘。過去の人種差別的な発言を無視して採用した人物が差別行為をした場合、州によっては、雇用主側が法的なリスクにさらされかねないと述べる」

     

    ツイッターは、本音で語る部分が多い。それだけに、その時は何でもなかったようなことが、後で問題になる。証拠が残る以上、やはり慎重に対応した方がいいかも。ツイッター投稿で折角の転職チャンスを潰すことはもったいない話だ。「それなら、お前は大丈夫か」と言われれば、もう転職という年齢を超えているから、ハイ、書かせ

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    中国経済は今、天王山である。7月31日に財政金融政策を打ち出したが、主体は流動性の供給という金融政策に置かれている。債券のデフォルトは、これまでにないハイペースで起こっており、流動性供給という「カンフル剤」を打たなければ、死屍累々と危機に直面する。中国経済最大の危機と言える。

     

    中国は、財政面で景気テコ入れといってもインフラ投資しかない。住宅投資は限界を超えた。家計債務が可処分所得を大きく上回っており、住宅ローンが個人消費を圧迫する状態になっている。こうなると、打てる手は流動性供給を増やしてデフォルトを防ぐしかない。金融システム崩壊を防ぐのが精一杯である。

     

    中国人民銀行は、7月下旬から流動性供給に全力を挙げていた。その頃の金融情勢は、次のようなものだった。

     

    『ロイター』(7月19日付)は、「中国人民銀が流動性増強、貿易戦争でさらなる金融緩和も」と題する記事を掲載した。

     

    経済の参謀本部に当る中国人民銀行は、負債圧縮目的で借り入れコストの増加を図ってきた。だが、その歪みが出始めたところへ米中貿易戦争が加わった結果、金融は一段とひっ迫化現象を見せていた。こういう緊迫感のある状況が記述されている。この状況を踏まえて7月31日の総合経済対策が発表された。

     

    (1)「中国人民銀行(中央銀行)が金融システムへの流動性供給を増やし、中小企業への信用供与を強化している。負債圧縮の取り組みによる借り入れコスト上昇で製造業生産や設備投資が鈍化し、元から景気の勢いが失われつつあったところに米国との貿易紛争が追い打ちを掛けたためだ。人民銀は今後も一段と金融緩和を進める見通しだ。事情に詳しい関係者が18日明らかにしたところによると、人民銀は市中銀行向けの流動性促進策を導入する方針。銀行に融資拡大を促し、地方政府傘下の資金調達会社である融資平台(LGFV)や企業などの発行する債券への投資を増やすのが狙い」

     

    人民銀はこの段階で、一段の金融緩和を行なう方針を固めていた。借り入れコストを引下げて設備投資のテコ入れを図る。また、債券市場の流通利回り引き下げを目指していることが窺える。債券デフォルトが多発しており、これを鎮めない限り不安心理の高まりを防げないからだ。当局は、企業に債券発行を促してきた手前、デフォルト多発化を防がねばならない義務感に迫られていた。

     

    中国には債券発行に不可欠な格付け企業が未発達という根本的な欠陥を抱えている。正しい格付けができないという、あってはならない能力不足を露呈しているのだ。GDP世界2位の国家ではあり得ない「珍事」が多発している。要するに、経済発展の基盤がないままに無軌道に発展した経済に過ぎない。こうなると、経済危機の深化は瞬く間に進むに違いない。

     

    『ブルームバーグ』(8月8日付)は、「中国金融市場の資金調達コスト、数年ぶり低さー人民銀は流動性支援」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「景気減速や貿易戦争絡みのリスクを踏まえ、中国人民銀行は流動性を支援している。上海銀行間取引金利(SHIBOR)翌日物は1.58%と、2015年8月以来の低水準を付けた。中小規模の銀行にとって命綱である譲渡性預金(CD)金利は過去最低水準にある。為替フォワードや銀行間の借り入れコスト、国債利回り、金利スワップも似た状況となっている」

     

    中国人民銀行は、必死の流動性供給をしている。これにより、銀行間取引金利は15年8月以来という3年ぶりの低水準に落ち着いた。ほぼ全ての金融指標は、中国金融市場の資金調達コストが目立って低くなっていることを示す結果になった。この慌てふためきぶりのなかに、中国経済の直面する現実がある。「世界覇権論」を唱える中国経済の強さは、どこを探しても見当たらないのだ。

     

    金融テコ入れは、カンフル剤に過ぎない。これで、中国経済が立ち直るわけでない。困難な呼吸状態が、少し改善するということだ。根本にある過剰債務状況の改善も、売上高が増えることでもない。単なる時間稼ぎである。延命だ。

     


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    8月12日は、日中国交40年の記念日だ。これを契機に、中国側に日中で「第5の文書交換」案が出ているという。その必要性はあるだろうか。

     

    復交当初の燃えるような「日中新時代」への期待は、もはや消えてしまった。度重なる中国の日本への「裏切り」は、中国の本質をさらけ出したからだ。日本を批判する暴言の数々。凄まじいものだった。あれを思い出しただけで、中国が胸襟を開いて話せる相手でないことを知った。住む世界が違うのだ。

     

    日本は今、中国からの訪日客で賑わっている。ありがたいことに、中国人観光客は、日本を絶賛してくれる。旅先国、歓待されている国、SNSで取り上げる旅行先国の3点で、日本は1位という。国民レベルでは、世界覇権論などという馬鹿げた話は出ないからスムースそのもの。戦前の日本が行なった侵略戦争にも素直に謝罪できる。だが、政治が絡むと思惑が先行する。中国は、日本を利用しようという立場が前面に出てくるからだ。

     

    中国外務省には現在、「日本課」が存在しない。この一事を以てしても対日外交は、「その他大勢」扱いになっている。日本課を廃止した理由は、中国にとって対米外交が最優先という戦略であった。米中二国が世界の重要なことを決める時代である。もはや、日本を大事にする必要はない。こういう思惑であったはずだ。

     

    それが、大きな転換点に立っている。米中は貿易戦争と言われるほど険悪だ。米国は、中国を「仮想敵」にして警戒を強めている。中国の対米投資を制限する。中国留学生のビザ発給を絞る。こいう状況へ追い込まれた中国は、一度捨てた「日本カード」を利用するメリットを感じ始めた。これが、「日中の第5の文書」案の動機であろう。

     

    これほど便宜的な中国と「日中の第5の文書」を交わす意義があるだろうか。

     

    『日本経済新聞』(8月12日付)は、「中国、第5の日中文書検討、新たな関係の針路に」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日中平和友好条約が8月12日、締結から40年を迎えた。これに合わせ中国の習近平(シー・ジンピン)指導部が、新たな日中関係を定める「第5の政治文書」について内部で検討を始めたことがわかった。日中関係を安定させ中国主導の国際秩序へ日本を引き込む狙いだが、賛否両論がある。当面は水面下で議論を重ねて日本側の出方を探る構えだ。複数の中国共産党関係者が明らかにした。日中両国は国交正常化を確認した日中共同声明、日中平和友好条約など4つの文書を交わしており、新文書が実現すれば5つ目となる。平和条約締結40年にあたる18年に検討を進め、条件が整えば19年の習氏の訪日時に合意する日程を想定する」

     

    中国はことあるごとに、過去の「4つの文書と4つの原則」を持出して、日本を諭すような上から目線の姿勢を見せる。そのたびに、不愉快千万な思いにさせられるのだ。この上、さらに「第5の文書」ができたらどうなるか。願い下げにしたい。文書などなくても、相手国を誹謗したりしなければ外交関係は上手く行くもの。文書を交わすと、それが日本外交を縛る危険性が高まるのだ

     

    (2)「関係者によると、党内の議論は今年6月ごろに始まった。習指導部は対米関係の緊張を受け、日本を含む周辺国との関係改善に乗り出している。新文書の検討も、この流れで決まったもようだ。推進派は中国が主導する経済圏構想『一帯一路』や習氏が掲げる外交思想『人類運命共同体』などの概念を新文書に書き込み、日中協力の新たな方向性を示すと主張。慎重派は12年以降に対立が激化した沖縄県尖閣諸島をめぐる問題の扱いが困難とし、無理に作成する必要は無いとの立場だ。関係者は「結論は出ておらず、最終的に見送る可能性もある」と語る」。

     

    「第5の文書」推進派は、随分と身勝手は要求を出している。すなわち、「一帯一路」と「人類運命共同体」を文書に入れる構想だ。日本がこれに同意することは、中国の世界戦略の一環として働くことを宣言するようなもの。日米外交が軋むことは明らかだ。日米は同盟国である。そこへひび割れをもたらすような「中国寄り構想」を受け入れるはずがない。だいたい、こういう厚かましい案を持出すこと自体、外交常識を欠いている。

     

    中国が日本へ接近している本音は、米中対立がもたらす「世界の孤児」を回避したいだけだ。日本を格下に見ているからこそ、「一帯一路」と「人類運命共同体」の文言を持出してくる。こういう傲慢な中国と文書など交わしたら、日本外交の自殺行為となろう。危険きわまりない。絶対にやってはいけない話だ。

     


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    韓国政治の左派は、条件を問わずに南北統一ができれば、それで良しとする単純な民族主義思考が強い。ただ、この考えは年配者に多く、20代や30代とは異なっている。

     

    南北は、同じ民族であるからそれが一緒になろうというのは、ごく自然の動きである。それ自体を批判するのはナンセンスである。だが、北は「金ファミリー」の支配する国家という現実認識を欠かせない。これを忘れて、「南北統一」という動きは危険である。

     

    文政権は、単純な民族主義思考である。自らの政治的な実績にしたいという思惑が先行している。この文政権の偽らざる本心は、最近の左派の発言に見られる。

     

    『朝鮮日報』(8月12日付け)は、「北朝鮮の核は民族の資産だという幻想」というコラムを掲載した。筆者は、同紙の池海範(チ・ヘボム)記者である。

     

    (1)「最近ある会合で左派陣営の出席者がこんな発言をした。『統一後を考えれば、北朝鮮の完全な非核化よりは、一部の核を残しておいた方がよいかもしれない。わが民族が大国の横暴をけん制する上で核を持った方がはるかに有利だ』『南の経済力と北の核が合わされば、この世に恐れるものはない。我々の世代で偉業を成し遂げよう』。南北が平和的に共存、協力する時代になれば、北朝鮮の核は南北共同、すなわち民族の資産になるという論理だ。ゆえに、北朝鮮の非核化にこだわり過ぎず、大きな枠組みで交流、協力を強化すべきだというものだ。彼の発言には出席者数人がうなずいた」

     

    左派の人たちは、「空想」に生きる集団である。現実認識が希薄でナイーブな集団とも言える。言葉を換えれば、一度教え込まれた認識から脱却できず、それに拘束されて生きている人々のように思えるのだ。変化する現実を見ようとしない。だから硬直的な政治になる。文政権の最低賃金政策を見ていて、「これが左派政治の本質か」と納得した。

     

    北の核への理解も韓国左派の弱点を露わにしている。北を理想化しているので、北の核も容認する姿勢だ。文政権の本音もそこにあるように思える。多少の核はあってもいい。南北融和が進めば、韓国に核を落とすことはない。この程度の認識であるとすれば、日本は深刻にならざるを得ない。

     

    (2)「『北朝鮮の核が民族の核』という論理をつくり上げて宣伝してきたのは平壌の政権だ。今年125日、北朝鮮の統一戦線部が発表した「内外の朝鮮民族全体への訴え」はこう主張する。『わが民族が握る核の宝剣は米国の核戦争挑発索道を制圧し、朝鮮民族全体の運命と千万年の未来を固く担保する。民族の核、正義の核の宝剣を北南関係の障害物として売り渡そうとするあらゆる詭弁や企てを断固粉砕しよう』。ここで言う『民族の核』『核の宝剣』とはすなわち、『南の経済力と北の核を合わせれば、世の中に恐れるものはない』という主張に等しい」

     

    前のパラグラフで、左派の人々の主張は、北の主張と同一であることが分る。北の主張は、「金ファミリー」を守る主張である。北の専制君主を守る主張に同意することは、韓国人として民主主議の否定につがっている。左派の人たちは、口を開けば「人権を守れ」「労働者を守れ」と言い続けている。この人たちが、国民や人権の全てと踏みにじる北の主張に同意する。なんとも不思議な光景である。

     

    韓国左派の主張は、現在の若者によって否定されている。賞味期限は長くない。若者は、金ファミリーの存在そのものを拒否する。彼らにとって、同世代の人間が国民を人間扱いしない政治に絶望している。左派の年配者よりもはるかに健全な思考と見える。


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