今年のスイスで開催されたダボス会議は、昨年と打って変わり悲観論が横行したという。3月2日が期限の米中貿易戦争。もう一つは、英国がEUを去る期限は3月29日である。この二つの難題が、解決できないままに終わると、世界は、「3月危機」に襲われかねない事態になる。ダボス会議参加者が、浮かぬ顔をしていたのはもっともである。
トランプ政権は3月2日を中国と新しい貿易協定を結ぶ期限として定めた。合意に至らなければ、2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に対する関税が現行の10%から25%に引き上げられる。英国は3月29日に、合意に至らなければ、基本的に「合意なし離脱」となる。英国は強制的にEUから脱退、自動的に関税が課され、既存の法的協定は失効、お役所仕事と規制がどっと増える。
ここでは、米中貿易戦争だけを取り上げる。
ロス米商務長官は、米国と中国は貿易戦争の終結を強く願っているが、結末がどうなるかは中国が経済改革を深化させ、市場を一段と開放するかどうかにかかっているとの認識を示した。ロス長官は1月30~31日にワシントンで開催される中国の劉鶴副首相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表との協議後に、両国の交渉担当者らが進展具合について声明を発表するとの見通しを明らかにした。
米中両国が声明を発表するとなれば、何らかの妥協が進む明るいニュースでなければ市場を落胆させる。そういうリスクを考えると、合意点だけは発表しておくのであろう。中国が米国からの輸入を増やすという、これまでの話の焼き直しである。この既知のニュースは、鮮度が落ちるので市場が評価するかどうかは不明だ。
そうなると、中国の構造改革が未解決で後送りにされる。これは、米国にとって最悪ケースである。構造改革は、習氏の覇権計画に絡んでくる。米国は、これが分っている以上、安易な妥協は不可能である。となると、世界経済への影響を最少にする解決方法を取らざるを得ないという予測が生まれる。抜本解決ではないが、さらなる悪化を防ぐという点では、休戦の継続か。
『フィナンシャル・タイムズ』(1月24日付)は、「ダボスで台頭する3月狂乱の恐怖」と題する記事を掲載した。
(1)「米国の政府閉鎖により、強権を振り回していたトランプ政権の代表団は予定していたダボス参加を取りやめた。ポンペオ米国務長官は代わりにビデオ中継で登場し、米中合意は可能として、楽観論を展開した。だが恒久的な米中関係の改善の前提として同氏が挙げた条件には、中国政府が『公正な貿易』だけでなく『自由で開かれた海』と『民主主義の原則』を受け入れることを含む。それが米中関係を落ち着かせるために必要なことだとすれば、相当に時間がかかる可能性がある」
米国は、中国に対して「公正な貿易」だけでなく、「自由で開かれた海」と「民主主義の原則」の受け入れを求めている。これは、米国の包括的な要求であり、少なくも習近平氏が現役でいる間は実現不可能だ。
(2)「中国の王岐山国家副主席はダボス会議に直々にやってきた。唯一注目に値したのは、どの国も「技術的覇権を求めるべきでない」との発言だ。携帯電話技術、ロボット工学、バイオテクノロジー、人工知能(AI)など、未来産業で中国が主導権を取ろうとする取り組みを米国が阻止しようとすることに対する中国政府の懸念を表明した。多くのダボス参加者にとって最大の疑問は、貿易協定交渉の中で中国が産業政策や知的財産権に対する方針を根本的に変えることにトランプ政権が本気でこだわるのかどうかだ。それがホワイトハウスの方針ならば、妥協が実現すると考える人はほとんどいないし、3月2日までにはまずない」
米国は、中国が産業政策や知的財産権に対する方針を根本的に変えることに本気でこだわるとなれば、3月2日までの妥結は不可能としている。
(3)「トランプ氏は、米国の産業界と金融市場の双方から貿易戦争をエスカレートさせないよう、強い圧力を受けている、と多くのダボス参加はみている。そうだとすれば、トランプ政権が関税を現行の10%に据え置くことで、不都合な事態を防ぐための譲歩を受け入れることが期待(または希望)される。例えば、中国が米国製品の輸入増を確約し、大豆への関税など米国に対する報復措置を撤回するといったものだ」
妥協策としては、2000億ドルの関税を10%に据え置いたまま、中国が米国からの輸入増を約束する事態を想定している。中国は、2000億ドルの関税が25%になるのを免れるという意味だ。中国経済は、現在の苦境が続く点で変わりない。大きな負担である。





