勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米国の中国警戒姿勢は本格化している。米議会で超党派の賛成で成立した「国防権限法改定」が、中国警戒を強く打ち出している。中国は調子に乗って、これまで「太平洋は広大だから、西太平洋を中国海軍管轄に」と発言するまで増長していた。米国はそれを拒否したのは当然だが、具体的な対抗策を打ち出さずに見逃してきた。それもついに限界とばかり、中国へ「第一次警告」を送る意味で、軍需企業への輸出規制策を発表した。

     

    『SankeiBiz』(8月9日付)は、「米、中国軍需企業44社を輸出規制リストに」と題する記事を掲載した。

     

    「台湾中央通信によると、米政府の官報ウェブサイトはこのほど、米商務省は米東部時間8月1日から、国家安全保障ならびに外交上の利益を理由に、中国企業44社(8企業と36の付属機構)を輸出規制リストに入れ、技術封鎖を行うとする文書を発表した。中国の上海春秋発展戦略研究院と提携しているニュースサイト『観察者網』や香港紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』などの報道を総合すると、8社は中国航天(宇宙)科工株式有限公司第2研究院とその傘下の研究所、中国電子科技集団(中国電科)公司第13、第14、第38、第55研究所とその関連・傘下の単位、中国技術進出口(輸出入)集団有限公司、中国華騰工業有限公司、河北遠東通信(RP=東京)」

     

    先に、ZTE(中興通訊)が米国からの禁輸措置により、一時的に営業停止に追い込まれた。米国の高級半導体なしに、ZTEは製品を組み立てられなかったことを内外に証明した。軍需企業になればその傾向は一層深まるはずだ。代替製品を求めて日欧企業に接近するだろうが、絶対に応じてはならない。

     

    私は、以前から対中輸出では冷戦時代に行なわれていた「チンコム」(CHINCOM)復活を提唱してきた。日頃、中国からのメディア投稿を見ていて気づいたのは、日本の工作機と部品がなければ中国の武器製造はできないという現場労働者の声である。日本の精密工作機械は、世界の羨望の的だ。これを中国に輸出して日本の安全を脅かされる。これほど愚かなことはない。米国もこれに気づいて禁輸リストに中国企業44社を指定したことは良かった。EUも追随すべきである。日本も再点検して西側諸国の団結ぶりを見せる必要があろう。


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    インターネット金融の「P2P」(ピア・ツー・ピア)が、中国で大混乱状態にある。金融業者が破産、持ち逃げという事態に陥っているからだ。

     

    この問題は、すでにブログでも取り上げたが、高利に目がくらんだ投資家が騙されたもの。「ネズミ講」組織が、この「P2P」に利用されている。資金を集めても融資せず、高利配当をエサに新たな投資家から資金を吸い取る「悪魔」の金融ビジネスである。中には、真面目に事業を展開している業者もいるが、営業中の金融業者数よりも倒産業者数が多いという異常業界だ。

     

    倒産会社数は、2018年に入り約330社に達し、債務不履行額は少なくとも300億元(約4900億円)に達するというように、被害額が増えている。被害者は、政府に抗議して救済を求めているが、陳情活動は阻止されている。

     

    『大紀元』(8月8日付)は、「金融業者相次ぐ破綻、投資家が北京で陳情を計画、当局に阻まれる」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「8月6日、巨額な被害を受けた投資家は北京の中央政府に対して陳情活動を計画したが、当局に阻止された。米ラジオ・フリーアジア(RFA)が6日報道した。報道によると、中国全国各地の数千人のP2P金融投資家はソーシャルメディアを通じて、北京にある金融当局の前での陳情活動に参加しようとした。中国インターネット上に投稿された動画によると、一部の投資家は外出中、警官に身柄拘束されたほか、上海の投資家は在宅中に、無理やり自宅に押し入ってきた警官に、北京に行かないよう恫喝(どうかつ)された」

     

    陳情活動に参加しようとした被害者が、外出中に警官に身柄拘束されたり、自宅に訪ねてきて恫喝されるなど、日本では考えられないことが起こっている。この程度の国が、世界覇権を狙うというのだから呆れる。

     

    (2)「フランス通信(AFP)の報道によれば、投資家らは6日に、北京市内の月壇公園に集合した後、同区にある中国銀行保険監督管理委員会(銀監会)まで進行し、銀監会の庁舎前で陳情しようとした。事前に情報を入手した警察当局は、各地で警戒態勢を強化した。銀監会から釣魚台国賓館まで距離3キロの道路上では、陳情者を地元に送還するために、120台のバスが待機していた。北京市警察当局はまた、一部の陳情者の身柄を拘束した」

     

    中央政府に陳情することが、こうして阻止されている。いったい、国民の不満はどこが聞いてくれるのか。政府は、口を開けば「法治国家」と言うが、実態は権力国家である。不都合なことには、耳をふさいでいる。

     

    (3)「中国では2007年以降、P2P金融会社が各地で現れ、12年に急速に発展し、15年には業者数は4000社を上回った。投資家の人数も数十万人から300万人に急増したという。現在、P2P金融の利用者は5000万人いるとみられる。カナダ在住の時事評論家の文昭氏はRFAに対して、事実上『高利貸し』であるP2P金融の急速な拡大の背景には、当局の厳しい規制で、国民には十分な資産運用ツールがない現状があるとの見方を示した」

     

    中国で、「P2P」という高利貸しビジネスが異常に拡大した理由は、政府の資本規制にある。3兆ドルの外貨準備高を維持しなければ、国家の体面が維持できないという「メンツ論」が、外貨流出を抑える資本規制策を生んだ。国家のメンツとは何か。海外から中国の存在に一目置いて貰いたい。最高指導者の非合理的な欲望=メンツの維持のために、行き場を失った国内貯蓄が非正規の「P2P」という「あだ花」を生んだ。習氏は罪な男だ。


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    米中貿易戦争は、新たな段階へ進む。中国は目下、恒例により河北省北戴河の保養地に集まり、重要案件を非公式に協議している。今年の最大の焦点は、対米貿易摩擦とされている。習氏としては、メンツのためにも米国へ強く出ざるを得ない。

     

    『ブルームバーグ』(8月8日づけ)は、次のように伝えた。

     

    (1)「中国は新たに160億ドル(約1兆7800億円)相当の米国製品を対象に8月23日から25%の関税を賦課することを確認した。これより先に米政府が発表していた追加関税と同規模の措置で対抗する。発表文によれば、今回の関税は北京時間午後0時1分と、米関税と同時に発動される。中国商務省は発表文で、中国製品160億ドル相当に25%の追加関税をかけるという米国の決定は『非常に理不尽だ』とし、正当な利益と多国間貿易体制を守るために報復せざるを得ないと表明した」

     

    米国と同時刻、同金額の報復を科すことは、演出も十分に意図している。北戴河(ほくさいが)会議中であるから、米国に対して強く出て党内の不満を押しつぶす意図も透けて見える。習氏が貿易戦争へ突入した裏には、党内序列5位の王滬寧(ワン・フーリン)政治局常務委員の存在が上げられている。彼の「主戦論」に引っ張られた側面も強く、習氏は強行突破を図って、米国へ対抗する姿勢を保っているのでないか。

     

    (2)「160億ドル分のリストは6月に公表済みだが、対象を入れ替えた。品目数は114から333に増えた。原油に高関税をかければ、国際価格が高騰した時に純輸入国の中国に不利と判断したようだ。7月6日から追加関税をかけた自動車の対象車種を大幅に広げた」。以上は、『日本経済新聞』(8月9日付)が伝えたもの。

     

    対象品目から原油を外した点に注目したい。ギリギリの線で米国への配慮が隠されていることだ。米国が原油国として再登場しているので、中国は将来の対応を見据えたのではないか。原油価格高騰時に、中国へ不利というのは表向きのこと。米国への恐怖感が中国政府を支配していると見るべきだろう。


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    訪日外国人観光客目標は、2020年の4000万人である。達成に向けて着実に進んでいる。その有力武器は、「オモテナシ精神」であることが立証された。旅は、人と人とのふれ合いだ。言葉は十分に分らなくても、真心込めて接待すれば分ってくれるものだろうか。

     

    『中央日報』(8月8日付)は、「中国旅行客が選ぶ最も親近感のある国1位は日本」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国人が、『歓迎を受けている気分になる国』ランキング(2018年調査)で、1位は日本、2位はタイ、3位は香港、4位は韓国、5位はオーストラリアだった。2017年調査で、タイは1位、日本は2位、韓国は6位だった。2017年、中国人が多く訪問した国家は1位香港、2位マカオ、3位台湾、4位タイ、5位日本だった」

    この調査は、米オンラインホテル予約サイト『ホテルズドットコム』が最近、「中国人海外旅行報告書(CITM)」を発表した。1億3000万人以上(2017年)が海外に出かける中国が世界に及ぼす影響を分析した報告書だ。今年は過去1年間で海外旅行経験のある中国人3047人(18~58歳)を対象に調査を進めた。

    中国人が外国旅行した国の旅行者数ランキングで、日本は5位である。だが、満足度では1位だ。これは、旅行業関係者の並々ならぬ努力の結果に違いない。日本は「満足度で金賞」に輝いたのも同然の快挙。ご苦労様です。日本の国際収支の「サービス収支」改善に大きな貢献である。

     

    (2)「調査に参加した中国人の65%は自由旅行を選好すると回答した。これは昨年調査より11%増となる数値で、18~38歳回答者は71%が自由旅行を選好すると答えた」

    もはや、団体旅行の時代から個人旅行(自由旅行)が主力になってきた。若い世代ほど、自由旅行の比率が高まっている。リピーターを増やすには、「オモテナシ精神」が最大の武器となろう。日本人は接客業に向いている。

     

    (3)「ミレニアム世代(1980年代初めから2000年代初めに生まれた世代)の支出規模も目を引く。海外旅行中、一日の支出額が80年代生まれは346ドル(約3万8620円)、90年代生まれは314ドルで、70年代生まれ(299ドル)よりも多かった。調査に応じた中国人は平均的に所得の28%を旅行に使っていることが明らかになったが、90年代生まれは所得の36%を旅行に使うと答えた。90年代以降生まれは昨年よりも海外旅行支出額が80%増えた」

     

    中国の若い世代ほど、旅行中の消費額が増えている傾向が掴める。調査に応じた中国人は、平均的に所得の28%を旅行に使っていることが明らかになった。90年代生まれは所得の36%を旅行に使うと答えた。この数字を見て、本当だろうかと訝るほどである。中国の若い世代は、国内で自由を奪われた生活を余儀なくされている。せめて海外へ出たときは「パッ」とカネを使う気持ちも分らないではない。余計なことを言って申し分けないが、中国の国際収支では、「サービス収支」が大赤字になっている。理由の一つは、この海外旅行での消費にある。日本が「オモテナシ精神」を発揮すればするほど、中国の「サービス収支」は赤字幅が増えて、日本のそれが黒字になるという関係だ。


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    昨日のブログで、中国序列5位の王滬寧(ワン・フーリン)政治局常務委員が、7月に入って姿を見せない問題を取り上げた。その後の記事で、習近平氏自身への批判が出てきた点を取り上げたい。昨秋以来、初めての「習批判」である。

     

    これは、国民の経済的な不安が、米中貿易戦争によって増幅されてきたことが背景にある。これまで、不動産バブルの後遺症で苦しんできた上に突如、米国との関税戦争に巻き込まれたからだ。国民は、この政治的な不手際を批判する矛先を、習近平氏に向け始めたように思える。

     

    率直に言って、習氏の政治体質は国粋主義的である。「中国の夢」を唱道し「米国覇権挑戦論」を掲げるなど、ヒトラー的な扇動政治家の要素を持っている。現在の中国経済の置かれている状況を確認せず、領土拡張型の帝国主義時代を彷彿とさせる政策を追い求めてきた。それをバックアップ、ないしリードしたのが前記の王氏である。習―王のペアは、時代錯誤型の盲進タイプである。それだけに、王氏への批判は、同時に習氏へ向けられる要素を持っている。習氏にとっては、楽観していられる場面ではない。

     

    『ブルームバーグ』(8月8日付)は、「内患外憂の習近平氏に吹き始めた逆風ー中国国民に不安広がる」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「数カ月前、中国の現職最高指導者としての習近平氏の勢いを止めることはできないように見えた。国家主席の任期制限を撤廃し、数十年ぶりとなる政府組織の抜本改革を発表。昨年11月のトランプ米大統領訪中を成功させ、米国との貿易戦争を阻止できるように思われた。共産党総書記でもある習氏への党からの礼賛も相次いだ」

     

    半年前の習氏を取り巻く政治状況と、現在では大きく変わってきた。昨秋、トランプ氏の訪中時は、米中首脳が協力しあえる雰囲気を漂わせていた。これは表面的なこと。米国側はすでに経済問題で警戒感を強めていた。中国は、大型商談で米国の関心を逸らしたとほくそ笑んでいたが、トランプ氏が中国を離れるとき、米代表団は「もうこれ以上は騙されないぞ」と冷たく言い放っていた。この間の事情は、WSJ(『ウォール・ストリート・ジャーナル』)が正確に伝えていた。トランプ訪中は、「敵情視察」である。

     

    中国は、米国を軽くあしらった積もりでいたが、米国はその上を行っていた。中国の不正貿易慣行(技術窃取や政府の補助金支給)を是正しない場合、関税引き上げで罰を加えるという基本方針を立てていた。中国は、追加関税問題だけを取り上げて騒いでいるが、その原因である不正貿易慣行の存在については口をつぐんでいる。中国は否定しているが、これは全く改める意思のないことを表明したことだ。中国は、自らの非を認めず、米国へ報復関税で逆襲する「恥知らず」な国家に身を落とした。習氏の「強いリーダー」演出が後退時期の判断を誤らせたと言える。

     

    (2)「こうした圧倒的に強いリーダーとしての存在感が裏目に出るかもしれない。景気減速や株式相場の急落、粗悪ワクチンを巡る不祥事などは全て国民の不満を招く。欧米や世界の金融センター各地では、中国の野心に対する警戒感が広がりつつある。一段とエスカレートしつつある米国との貿易戦争は、中国が当初想定していた展開とは異なり、習氏の失敗を映し出すプリズムとなっている。中国人民大学の王義桅教授(国際関係)は、『貿易戦争が中国の腰を低くさせている。われわれは謙虚にならなければならない』と話し、習氏肝いりの現代版シルクロード構想『一帯一路』の下での大規模なインフラ整備事業をどのように進めていくかについてさえも再考すべきだとの考えを示唆した」

     

    中国で起こっている問題は、中国国民を不安にさせている。景気減速や株式相場の急落、粗悪ワクチンを巡る不祥事などは、国民を不安に陥れるに十分な「事件」だ。とりわけ、金融不安では、庶民が気楽な利殖手段として利用してきた「インターネット融資」(P2P)の倒産を多発させている。こういう事件は、中国が国家として成熟していれば起こりえない問題だ。金融制度の未成熟さは、政府の責任である。国民の財産も安全に守れない政府が、「大言壮語」して世界覇権論など語る資格はない。習氏に向けられている不満の原点は、この一点にあるに違いない。


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