勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    習近平氏は暴君である。中国国内の悪いニュースを報道するなと命じているからだ。だが、中国国民は、日々の生活状態から経済が悪化に向かっていることを肌身で知っている。米国との貿易戦争が、中国経済を圧迫するくらいのことは百も承知だ。習近平氏と彼を取り巻く民族主義者が、それを認識できなかっただけである。

     

    『レコードチャイナ』(12月21日付)は、「中国経済、困難はあるがそんなにひどくはないー中国紙社説」と題する記事を掲載した。

     

    官営メディア『環球時報』(12月19日付)は「中国経済は困難もあるが、言われているほどひどい状態ではない」とし、世論に冷静な視点を持つよう呼びかける社説を掲載した。以下はその概要である。

     

    (1)「14日、国家統計局が発表した統計が予想を下回り、特に11月の社会消費財小売総額は前年同期比8.1%となり、高い成長に見慣れた中では目立つ低成長率となった。中国経済の下向き圧力は明らかに大きくなっている。しかし、一部の人による悲観的な見方は、実際の状況に比べるとかなり誇張されている」

     

    11月の社会消費財小売総額が、前年同期比8.1%と鈍化したことはショックであろう。従来は10%増が当たり前であった。それが10%を割込み、あっという間に8%台スレスレの状態にまで落込んできた。耐久消費財の飽和化。それに、可処分所得の伸び率鈍化が、庶民の先行き不安を煽っている。これに加えて、世界最強国家の米国との貿易戦争である。中国庶民の鋭い嗅覚によれば、「中国敗退」と受け取っているに違いない。財布の紐は固くなるばかりであろう。

     

    (2)「国内のネット上でみられる中国衰退論は、社会に本当に存在する悲観的な感情を映し出すものであり、この感情については大いに注目する必要がある。確かに、中国経済は難しい状況に直面しているが、それは経済がモデルチェンジする中での段階的な問題だ。また、国際的な環境による部分もある。それを中国経済の崖っぷちとする見方は理論的に軽率であり、中国の実情とも合致しない。政府、学術界、メディアはみな客観的かつ冷静に中国経済を分析すべきであり、政府は国民の理性を十分に信用し、恐れることなくネガティブな情報を公開すべきだ」

     

    ネット上では、中国衰退論が飛び交っているという。客観的なデータに基づけば、中国経済は確実に衰退する。私のメルマガは、中国経済衰退論の根拠を「懇切丁寧」に説明している。中国ネット民が、まさかこれを読んでいるはずはない。彼らの生活観から、それを嗅ぎ取っているのだろう。

     

    (3)「中国国内で生じている問題の多くは、決して経済自身に起因するものではなく、官僚主義や形式主義から起こっているものだ。これらの問題は、具体的な経済目標の達成に不安を与え、改革の実行に対する疑念を生む。官僚主義や形式主義を一掃することが、中国が現在推し進めている様々な事業の中で最も重要なセクションなのである」

     

    中国経済の本質的な問題は、習近平式経済モデルの破綻である。市場経済を否定して、無理な計画経済が成功するはずがない。経済発展の初期段階では、計画経済にもそれなりの利点はある。現在は、逆に桎梏になっているのだ。この辺の理解が、習近平氏にできなかったのだ。彼は、自らの立身出世を優先し、中国経済のあるべき姿を考えるゆとりがなかった。その意味で、現在の沈滞ムードの責任は、習近平氏にある。

     

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    米検察当局が、多岐にわたる米政府機関や企業にサイバー攻撃を仕掛けたとして、中国人2人を起訴した。これを受け、米国と同盟3カ国は20日、中国が経済スパイ行為を行ったと強く非難した。

     

    『ロイター』(12月21日付)は、「米と同盟国、中国の経済スパイ行為非難、サイバー攻撃巡る起訴受け」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「起訴状によると、2人は中国国家安全省と関係があり、米海軍や航空宇宙局(NASA)、航空・宇宙・衛星技術関連企業など、少なくとも45の政府機関や企業から知的財産のほか、企業や技術関連の秘密情報を盗んでいたとされる。米国、英国、オーストラリア、ニュージーランドは、中国がサイバー攻撃によって知的財産を盗む行為を世界で展開していると非難した。関係筋によると、カナダ、日本、オランダ、スウェーデンも、中国のサイバー攻撃を非難する見通しだ」

     

    米国政府は、かねてより中国の大規模ハッカー事件の全容を公表するとしてきたが、今回の起訴がこれであった。精華大学の名前も出るかと見ていたが、それは伏せられていた。

     

    米国、英国、オーストラリア、ニュージーランドは、国際的諜報網「ファイブアイズ」5ヶ国のメンバー国である。カナダが抜けているが、自国民3人が中国で拘束されている事情を考慮し、名前を出さなかっただけであろう。中国は、世界主要国から非難の対象になったが、信頼は地に墜ちたと言うべきだ。中国包囲網が、自然に形成されていく感じである。

     

    (2)「米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は、記者会見で『米経済とサイバーインフラにこれほどの大規模かつ深刻な長期的脅威をもたらす国は中国のほかにない』と述べ、『中国の目的は米国に代わって世界をリードする超大国になることで、そのために違法な手段を使っている』と指摘した。米当局者らは中国のサイバー攻撃が2006年から行われているとしている。ポンペオ国務長官らトランプ政権の高官は、中国の行為が、商業目的でのサイバースパイ行為を阻止する2015年の協定の違反に当たると指摘している。英政府も、中国が欧米やアジアで企業秘密を標的としたハッカー攻撃を仕掛けていると非難した上で、中国国家安全省と関連のある『APT10』と呼ばれるグループがハッカー攻撃を行っていると指摘した。米検察当局は起訴した中国人2人がこのグループのメンバーだとしている。

     

    FBIレイ長官は、「中国の目的は米国に代わって世界をリードする超大国になることで、そのために違法な手段を使っている」と指摘した。その通りであろう。中国に不足する技術は、他国から奪取するというのが中国の基本戦略である。そのための「ツール」として通信関連技術の開発には異常な力をいれてきた。ファーウェイが世界一の売上規模になった背景は、すべてこれだ。

     

    今回の米中貿易戦争によって、中国は劣勢に立たされている。近くまとまる「合意書」では米国から徹底的に追い込まれることは明らかだ。今回の中国人二人に起訴は、その伏線と見るべきだろう。

     

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    12月19日のブログで、シェア自転車で最大手のofoに保証金の返金請求が殺到している話題を取り上げた。ofo本社ビルでは、1階からオフィスのある4階まで、階段を埋め尽くしているほか、外でも返金請求者が並んでいるという内容である。この続報が入ってきたので取り上げる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月20日付)は、「シェア自転車のofo 保証金の返金請求1000万人超える」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ofo(オッフォ)ブランドでシェア自転車事業を手掛ける北京拝克洛克科技が資金繰り難に陥っている。自転車メーカーなど取引先約10社が起こした未払い費用の請求訴訟をきっかけに、保証金の返金を求めるユーザー数が1000万人を超えた。中国メディアは、裁判所が同社や創業者の戴威・最高経営責任者(CEO)に支出制限を命じたと報じている。同社のシェア自転車は、初回利用時にユーザーが保証金を入金する仕組み。中国メディアによるとofoに保証金の返金を求めるユーザー数が1000万人を超えた。1人当たりの保証金を99元(約1600円)で計算すると、ofoが返済しなければならない金額は約10億元(約160億円)となる

     

    (2)「北京市内のofoの事務所には保証金の返金を求めるユーザーが行列しているほか、ネットでもユーザーが返金を申請している。裁判所は、同社や戴氏に対して、不動産・自動車の新規購入のほか、飛行機や一等寝台での列車移動などを禁じる支出制限命令を出した」

     

    先ず、保証金99元(約1600円)の返金を求めて殺到することに驚く。そう言っては失礼だが、わずか1600円の返金である。本社ビルの4階まで集まる人たちの金銭感覚が、日本とは随分違うと思う。考えようによっては、その保証金で、サービスを受けられたのだから、「保証金の請求を少し待つか」という気持ちにはならないのだろうか。

     

    見方によれば、中国経済が厳しい局面にあることを示唆している。1600円でも返して欲しい。そういう切実な願いを持つほどの事態に追い込まれているのかもしれない。

     

    (3)「ofo2014年に設立。ピーク時には利用者が2億人を超え、日本を含め約20カ国に進出した。当局の指導によって集めた保証金を利用者に返金する義務が発生し、資金繰りが悪化。日本など海外事業も整理を進めている。ofoは今年3月の資金調達時には30億ドル(約3400億円)の企業価値があると評価された。中国メディアは、主要出資者のアリババ集団や配車アプリ大手の滴滴出行は負債の大きさを理由に救済に後ろ向きと伝えている」

     

    ピーク時には2億人もの人が利用したという。それが現在は、保証金返金を求めて1000万人が殺到する。これだけでも、中国社会の自主性のなさを感じる。他人がいいと言えば殺到する。悪いニュースが出れば保証金の返金を止めて行列をつくる。付和雷同を絵に描いたような光景に見えるのだ。DNAとして専制社会に慣れきっているのだろう。個の確立がないから、こういう行動が見られるに違いない。

     

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    カナダは19日、中国に拘束されているカナダ人がもう1人いることを明らかにした。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟最高財務責任者(CFO)が今月1日に米国の要請を受けてカナダ当局にバンクーバーで逮捕されて以来、中国に身柄を拘束されたカナダ人は3人になった。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月20日付)が、伝えた。

     

    中国のカナダに向けた圧力は、成功するだろうか。中国の信頼を落とすだけで終わる公算が大きいように見える。最大の理由は、次の点にある。

     

    「米国が機密情報共有協定を結ぶカナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランドのいわゆる『ファイブアイズ』を動員していることだ。これによって、世界最大の通信機器メーカーの中国ファーウェイ枯死作戦を本格化している。過去の東西冷戦時代に活躍した情報同盟が乗り出して、中国とのサイバー新冷戦に突入した格好だ。ここに米国の核心同盟である日本とドイツまで米国のファーウェイ封鎖に先を争って加勢している」(『韓国経済新聞』12月17日付)は、こうした解釈である。

     

    「ファイブアイズ」とは、第二次世界大戦中の1940年、米国と英連邦(英国、カナダ、豪州、ニュージーランド)が結束して、国際諜報網を結成したことに由来する。米ソ冷戦時代もこの諜報網は重要な役割を果たした。その後は休眠状態だったが、9・11で復活し中国の軍事的な台頭とともに注目されている。正式には,UKUSA協定と言われる。UK(英連邦)とUSA(米国)の結語である、

     

    中国は、この「ファイブアイズ」という歴史的な結束力を誇る関係をひび割れさせる狙いだ。だが、カナダは米国との外交的関係離間覚悟で、ファーウェイ副会長を釈放するとは思えない。米国側が提示している証拠に合理的な根拠があれば、裁判所の判断を仰ぐという手続きを中断させるはずがない。法的に問題がなければ無罪判決が出るであろう。

     

    中国は、「ファイブアイズ」の存在を軽視しているが、中国の諜報活動にとって最大の防壁になりそうだ。前記の『韓国経済新聞』は、次のように続ける。

     

    「米政府のファーウェイ枯死作戦は全方向的だ。ロイター通信は14日、米移動通信3位と4位の企業であるTモバイルとスプリントが合併承認を受ける代わりにファーウェイ製品を買わないことで米当局と合意したと報道した。この合意の影響はドイツ、日本まで及ぼす雰囲気だ。Tモバイルの大株主はドイツテレコムで、スプリントの大株主は日本のソフトバンクだからだ。これまで日本の移動通信事業者のうち唯一第4世代(4G)通信装備でファーウェイ製品を使い続けたソフトバンクは最近4Gと5Gの両方で中国製の使用を排除することにした。また、ファーウェイの通信装備を多く使ってきたドイツテレコムも14日、「現在の装備調達戦略を再評価している」と明らかにした。フランス最大通信会社のオレンジは14日に5Gネットワークからファーウェイの装備を排除すると発表した」

    米国が、世界覇権をかけて新興国・中国のいかなる挑戦も断固排撃するという姿勢を見せている。この裏には、中国が仕掛けた次の法律がある。

     

    「2017年6月28日に中国で施行された新法の内容に、日米の安全保障関係者は言葉を失った。新法の名は『国家情報法』。効率的な国家情報体制の整備を目的に掲げ『いかなる組織及び個人も、国の情報活動に協力する義務を有する』(第7条)と明記する」(『日本経済新聞』12月20日付)。

     

    「例えば、中国に有益な米国の技術情報を入手できる在米中国人エンジニアが、中国の情報機関にスパイ行為を働くよう指示されれば拒めない。中国企業も同様だ。中国は既に、中国国民の成人などを、国家の有事の際に動員できるようする『国防動員法』を施行していたが、今回の『国家情報法』はその『インテリジェンス版』だ」(前記の日経紙)

     

    中国がここまで、企業と個人を巻き込んで諜報活動を展開している以上、ファーウェイなどの中国企業が中国政府の命令でスパイ活動することは不可避と判断されている。

     

    米国政府は、この中国政府の動きを受けて、「19年度国防権限法」で次の項目を挿入した。「ファーウェイ製品などを使っている企業とは今後、米政府は一切の取引をしない」などと徹底した対策を盛り込んだ。

     

    以上から分ることは、ファーウェイが中国の「国家情報法」によって、諜報活動の一端を担わされていること。米国はこれを防ぐために「19年度国防権限法」を盾にして、ファーウェイを枯れ死させる戦略に立っていることだ。こういう視点で見ると、カナダ政府が、ファーウェイ副会長を無罪放免で釈放する可能性は低いと見られる。

     

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    中国ほど金銭にまつわるトラブルの多い国もない。金融市場の未整備が最大の理由である。しかも、金利統制をしているから低金利である。庶民にとっては、少しでも預金金利の高いところへ目が向く。だが、前記の低金利で一律に縛られている。そこで、正規の金融機関でない非正規金融機関が雨後の竹の子のように出てきた。

     

    この非正規金融機関が悪質で、時には当局の保護を受けているような宣伝をする。中には、地方政府の幹部と結託して資金集めをし、「ドロン」する悪者も登場する。百鬼夜行である。

     

    今日の話題のP2P(ピア・ツー・ピア)とは、スマホでプラットフォーム(資金仲介会社)を介して資金の貸借を行なうもの。このプラットフォームが不正行為を行い、資金を持ち逃げするなどの事故が多発している。

     

    『ブルームバーグ』(12月20日付)は、「中国、P2P融資市場閉鎖へ、デフォルト急増や詐欺続出で投資家から不満の声」と題する記事を掲載した。

     

    中国は貸し手と借り手をインターネット上で結び付けるP2P融資市場の実験終了の準備を進めている。

     

    (1)「中国のP2P融資市場は1760億ドル(約20兆円)規模を持つ。だが事情に詳しい複数の関係者によるとデフォルト(債務不履行)急増や詐欺、投資家からの不満の声を受け、当局は中小規模のP2P貸し出しプラットフォームを全国的に閉鎖に向かわせる計画。大規模プラットフォームに対しても融資残高を現水準から増やさないよう命じた上で、時間をかけて減らしていくよう勧告する可能性があるという。関係者は非公開の議論であることを理由に匿名で語った」

     

    約20兆円もの巨額資金が、なんの保証もないP2P融資市場に放り出されているのだ。金融当局が、この事態を放任していたことに驚く。「計画経済」を旗印にしている中国が、P2Pだけを放置していたのは、その裏に賄賂が使われていただろう。

     

    (2)「独立系のインターネット金融調査会社、零壱財経で調査責任者を務める於百程氏は『市民がこれ以上の損失を被ることがないよう、当局は特に小規模なP2Pプラットフォームの生き残りをいっそう難しくしつつある』と指摘した。上海の調査会社、盈燦集団によれば、国国内にある6200のP2Pプラットフォームのうち、8割以上がこれまでに閉鎖されたか深刻な問題を抱えている。資金の持ち逃げや投資の失敗などが要因だという」

     

    笑い話だが、「中国人の6割は信用できない。日本人の4割は信用できない」という中国人の言葉を思い出した。日中双方に信用できない人間はいる。ただ、中国の比率が高いところに問題がある。金融業は、「性善説」で運営できないビジネスである。貸付金回収のために担保を徴するように、「性悪説」に立たざるをえないのだ。中国のP2Pは、性善説に立ったルールである。だから、性悪説を実行する人間の食い物にされたのだ。

     

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