勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    韓国の文在寅大統領の支持率は、直近の世論調査で48.4%と就任以来の最低を記録した。原因は、歯止めのかからない失業率上昇による支持離れである。そこで、支持率回復の切り札として、北朝鮮の金正恩氏訪韓に期待をつないでいる。

     

    金正恩国務委員長のソウル答礼訪問日が13日または14日に決まったことが確認されたと、韓国の世界日報が8日報じたもの。韓国政府は、この事実を正式発表せずに曖昧にしているが、「サプライズ発表」で文氏の支持率アップを狙っているのでないか。そんな憶測を呼んでいる。それほど、文氏の支持率は急激な下がり方である。

     

    聯合ニュースによると、韓国の世論調査会社「リアルメーター」が12月3日に発表した111月最終週の文大統領の支持率は、前週より3.6ポイント低い48.4%だった。9週連続で下落し、就任後最低を更新した。不支持率は4.1ポイント上昇の46.6%。支持率と不支持率の差は1.8ポイントで誤差の範囲内(プラスマイナス20ポイント)となった。
    要するに事実上、支持率と不支持率はほぼ同一水準に並んだ。

     

    ここで、金正恩氏の訪韓で文大統領の支持率を回復させたい。それが、政権の狙いでもあろう。だが、これまで文氏を支持してきた自営業者や若者の支持離れが顕著である。朝鮮日報は12月7日、大学生・就職準備生・フリーランサーなど20代10人と集団討論会を開き、20代の考えを聞く企画を行なった。それによると、文政権への厳しい批判が出されている。

     

    『朝鮮日報』(12月8日付)は、「文在寅政権に失望する韓国の20代『朴槿恵政権と何が違うのか』」と題する記事を掲載した。


    (1)「討論会に出席した20代の最大の関心事は雇用だった。参加者らは、現政権の雇用対策について「視点そのものが20代と合っていない」と口々に語った。「国立大学の電気管理士(別名『電灯消しバイト』)は、なんとか仕事の口を突っ込んだようなものではないか」「20代には『自己実現できる場』が必要なのに、政府は単に『働く場』を作るだけ」だという。現政権になって3カ月間失業給付を受け取ったというある参加者は、『就職のため履歴書を提出したという事実さえ認められれば失業給付が出た。しかし勤め口の情報など、実質的な役に立つものはなかった』と語った。『金銭的支援』に焦点を合わせた雇用対策では、青年失業問題を解決するのは難しいという」

     

    文政権の杜撰な「雇用対策」が浮かび上がっている。「電気消しアルバイト」や「就職履歴書を提出した事実さえ認められれば失業給付が出る」という、考えられないことをやっている。これが、一国の雇用対策を言えるかというほどの代物である。文政権への支持率は、下落して当然という実態だ。「金正恩訪韓」で、これを覆い隠そうという姑息な遣り方が反発を受けている。

     

    (2)「政府は、『見せ物のような外交をやるばかりで、北朝鮮に対する具体的な情報を与えない』という指摘もあった。ある参加者は、『大統領が海外歴訪に出掛けると支持率が上がるが、政治的危機を打開するためのものではないか、と思うときもあった』と語った。また、軍服務を終えた参加者らは、『GP(監視哨所)の兵力撤収、鉄条網の撤去などの措置を見ると、早すぎるという思いを抱く』と、『(北朝鮮外交の)スピード調整論』を提起した」

     

    文政権が、対北朝鮮外交を「外交ショー」にしていることは事実だ。国会にも諮らないで予算措置をするなど目に余る行為をしている。こういう「北への偏愛」が、国民の支持を得られると思っているところに、文政権の限界がある。経済政策もダメ。外交もショー感覚であるなど、多くの問題を抱えた政権である。

     

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    中国の失業問題は深刻になっている。習近平氏の命令で情報遮断されているが、漏れてくるデータから見ると事態が急迫している。とても、米国へ対抗して貿易戦争の受け身になれる力はない。まず、この現実を知ることが重要だ。740万人の農民工帰郷は、中国農村農業省が11月8日発表した。政府は、「起業のため帰郷した」と取り繕っているが、この失業時代にあり得ない話だ。

     

    『大紀元』(12月7日付)は、「倒産の嵐で雇用低迷、中国当局、対策を打ち出すも改善困難の声」と題する記事を掲載した。

     

    この記事を読むと、中国の雇用問題がいかに深刻な状態になっているか理解できる。IT大手まで、人員整理計画を伝えられる状況だ。この現実をしかと見つめるべきである。

     

    (1)「中国ではこのほど、雇用低迷に関する報道が増えている。『財新網』が11月28日に掲載した記事によると、国内雇用低迷のため『202万件の求人広告が消えた』。この記事は掲載後、間もなく削除された。ポータルサイト『網易』が10月22日、『今年上半期国内504万社が倒産、失業者数200万人超』とのタイトルを付けられた記事を発表した。『財新網』の記事と同様に、その後取り下げられた。中国当局が、失業者の人数急増によって社会的不安が急速に広がると危惧して、情報統制を強めたとみられる」

     

    雇用市場の窮迫状態が手に取るように分る。

    202万件の求人広告が消えた。

    今年上半期国内504万社が倒産、失業者数200万人超。

    このような深刻な状態に追い込まれている。習近平氏は、恥を忍んで米国の要求の前に膝を屈せざるを得なかったのだ。

     

    (2)「中国求職情報サイト『智聯招聘』が10月23日に発表した統計によると、2018年79月期の求職申請者数は46月期と比べて、24.4%減少した。企業側の求人数は同20.8%縮小した。また、79月期のIT関連企業の採用者数は前年同期比51%減となった。中国メディアは10月、中国電子商最大手のアリババ集団や京東、通信大手の華為(ファーウェイ)などの大企業は人員削減を計画していると相次いで報じた。中国雇用市場および国内経済が厳しい局面にあると示された」

     

    79月期の求職申請者数は46月期と比べて、24.4%減少した。これは、求職活動しても、仕事がないだろうと諦めた結果である。

    企業側の7~9月期の求人数は前期比20.8%縮小した。

    79月期のIT関連企業の採用者数は前年同期比51%減

    IT大企業は人員削減を計画していると相次いで報じられている。

     

    この状況を見れば、中国がもはや米国と対抗して貿易戦争を継続できる余力を失った。「休戦」に持ち込み、これ以上の被害を出さないことが、習近平氏の最大の務めである。それが、習氏への非難拡大を防ぐ道であろう。

     

    日本の敗戦前夜も、こういう状況だった。今日は、日本の太平洋戦争開戦日である。敗戦の憂き目も想像できずに米国へ宣戦布告したのだ。中国が、向こう見ずに「徹底抗戦」を叫んだ状況と瓜二つである。日中ともに、米国の国力を見誤って無謀な戦いを挑んだのである。アジアの日中二国は、米国の実力が理解できないで失敗した。

     

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    ファーウェイ副会長の逮捕で、中国政府の中は二派に分かれて「闘論」を繰り広げているという。このことからもファーウェイという企業が、中国最高指導部と密接な関係のあることを証明している。人民解放軍の別働隊というイメージが間違っていなかったのだ。

     

    中国の内部問題については、私のメルマガ11号「米トランプに追い込まれた中国、習近平の座に揺らぎはないか」を読んでいただきたい。

     

    『ブルームバーグ』(12月7日付)は、「中国、対米報復巡り政府内で意見が二分、華為CFO逮捕で-関係者」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国では華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の孟晩舟最高財務責任者(CFO)逮捕をきっかけに、米国との貿易交渉を継続するべきか、2つの問題を結びつけて報復するべきか論争が起きている。(ブルームバーグが)5つの政府機関に務める合計7人から匿名を条件に話を聞いたところ、経済重視派と国家安全保障を担当する部署との間で、意見が二分している。前者は2つの問題を切り離すべきだと考えているが、後者は米国に対してもっと強力に押し返すよう望んでいる」

     

    (2)「経済重視派は、貿易協議が決裂すれば華為CFO逮捕以上の痛手を中国経済が被ると懸念する。トランプ米大統領は協議が90日以内にまとまらない場合、2000億ドル(約22兆5800億円)相当の中国からの輸入品に25%の追加関税を課す方針を示している。最悪の場合には中国からのすべての輸入品に25%の追加関税が適用される事態になりかねず、ブルームバーグ・エコノミクスの試算によると、中国の経済成長率は2019年に5%と、今年の6.6%から急減速する」

     

    経済重視派と安全保障派が、ファーウェイ副会長逮捕に対して、真逆の意見を持っているという。経済重視派は、ここで米国と決裂したならば即、2000億ドルの関税が25%に引き上げられる。それを避けるため、中国は貿易交渉のテーブルについた。こういういきさつを考えれば、「決裂」などはあり得ない選択である。

     

    (3)「安保問題に関わる担当者らの視点は異なる。習近平国家主席は譲歩しすぎ、弱いリーダーとの印象を与えているとの見方だ。こうした一派は、逮捕は取引材料を増やそうと米国が打ってきた一手にすぎないとし、中国は米国企業に打撃を与える措置で反撃するべきだと主張している」

     

    安保派は、人民解放軍である。彼らにとって、ファーウェイは「親戚同様」の関係である。ファーウェイ製品に秘かに仕組まれている「バックドア」が、ユーザー情報を北京へ集めている。その貴重な情報収集先が「一大事」である以上、米国へ一太刀浴びせろという直情径行論である。これは、軍人特有の短絡論である。まさか、習近平氏がこの安保派に取り込まれることはないだろう。ただ、習氏は根っからの民族主義者である。「中華再興」などと言っている御仁だ。安保派に鞍替えする懸念はゼロと言わないまでも、劉鶴副首相の尽力に期待するほかない。

     

    (4)「少なくも公には2つの問題を切り離すのが、当面中国が取る姿勢だ。中国外務省の耿爽報道官は7日、米企業に対して中国が報復措置を打ち出すとの臆測を打ち消し、『中国は国内の外国人の法的権利と利益を常に保護する』と述べた」

     

    中国が仮に、米国企業に報復する事態になったら、躊躇なく「中国締め出し」に動き出すべきだろう。こういう事態になれば、中国はWTO(世界貿易機関)の規則改定作業で不利な立場に立たされる。

     

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    日産のゴーン前会長による有価証券不記載問題は、捜査段階で次々と庶民とはかけ離れた「錬金術」が浮かび上がってきた。世界的な名経営者として知られていたカルロス・ゴーン氏だ。意外と金銭に対する執着心の強いことが分って残念である。日本人的な感覚から言えば、「清廉潔白の士」であって欲しかった。

     

    『ブルームバーグ』(12月7日付)は、「ゴーン容疑者ストックオプション制度も設定-退任後に90億円を想定」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日産前会長のカルロス・ゴーン容疑者が、取締役を対象にした100億円規模のストックオプション制度を設定し、このうち90億円がゴーン容疑者自身に支払われるよう計画していたことが新たに分かった。事情に詳しい関係者2人によると、各取締役が退任時に自社株を1株当たり1円で購入できる仕組みだった。過去1年間の株価平均値の約1000分の1で、無償供与に限りなく近い水準ながら有価証券報告書での開示義務を免れるよう設計されていた」。

     

    日産株を1株1円というタダ同然の値段で入手するストックオプション制度を設定。そのうち90億円はゴーン氏の取り分だという。時価のおよそ1000分の1とか。

     

    (2)「ゴーン容疑者は退任後に高額の報酬を手にしようと、いくつかの策を講じていた。ストックオプションによる報酬は、すでに記載漏れの疑いがあった株価連動型インセンティブ受領権(SAR)や、総額約90億円の先送り報酬とは別。ゴーン容疑者は弁護士に対し、このストックオプション制度は2017年1月に無効となったほか、SARについては19年3月で失効すると話していると、捜査状況に詳しい関係者の1人が語った」

     

    前記の1株1円のストックオプション制は、2017年1月に無効になったという。

     

    (3)「関係者によると、ゴーン容疑者はストックオプション制度について、同時に逮捕された前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者や秘書ら少数の側近とのみ共有しており、取締役会や株主には知らせていなかったという」

     

    このストックオプション制度は、取締役会や株主に報告しなかった。重大な背任容疑になると思うがどうだろうか。人間、だれでも叩けば埃がでるというが、「埃がですぎる」感じだ。人間、金銭欲はほどほどにすべきという教訓か。

     

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    12月1日の米中首脳会談が、中国の申し入れで「休戦」になった理由の一つは、大量失業問題の重圧である。農民工は、大きな荷物を天秤棒で担ぎ、帰郷する姿が写真に撮られている。政府は、「地方で起業のため帰郷する」と繕っているが、天秤棒を担いでいる人たちの後ろ姿から、「起業家」のイメージは湧かない。どう見ても、失業者の群である。

     

    740万人の農民工帰郷は、中国農村農業省が11月8日発表したもの。都市部の仕事がなくなった結果だ。米中貿易戦争の影響で輸出受注が減少したこと。住宅建設が下火になっていることなどが理由である。輸出もダメ、内需も不振となれば、中国経済は行き場を失った形だ。

     

    この状態で、中国が米国と貿易戦争を継続できるはずがない。こういう実情を知らない「机上派」は、今回のファーウェイ副会長逮捕が、米中貿易交渉に悪影響を与えると力説している。果たしてそうだろうか。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(12月7日付)は、「米中休戦を危うくするファーウェイ逮捕」と題する社説を掲げた。

     

    (1)「孟氏の逮捕は米国のイラン制裁と関係しているのかもしれない。だが、ファーウェイに対する警戒ムードの高まりを踏まえると、純粋な法執行ではなく政治的、経済的目的を達するために米国の権力を使ったと解釈される恐れがつきまとう。もちろん中国政府はそう受け止めており、貿易紛争の激化につながる報復措置を取ろうとするかもしれない」

     

    この社説が忘れている点は、中国が感情にまかせて米国との約束を反故にすれば、2000億ドルの関税が10%から25%に即時に引き上げられることだ。中国は、米国から与えられた「執行猶予の身」である。中国は、この関税率引上げの影響を恐れて、話し合いのテーブルに着いたのだ。その点では、北朝鮮と同じで「圧力」をかけた成果である。この米中の力関係を見落とした議論は、読者に対して説得力を持ち得ない。

     

    (2)「中国を隔離しようとする米国の動きは際限なく続くと中国側が確信すれば、トランプ政権の改革要求に従うべき理由はほとんどなくなる。先週末、トランプ氏は中国の習近平国家主席との会談で90日間の休戦に応じ、中国製品に対する新たな追加関税の発動を先送りした。その合意はすでに崩れそうな様相を呈している。孟氏の逮捕後、前進への期限が時限爆弾の期限に変わったかのようだ」

     

    ここで、中国が反発して米中通商協議を中止したとしよう。このデメリットは、関税引上げで中国にはね返る。さらに恐ろしいことは、米国がファーウェイへソフトと高級半導体輸出を禁止すれば、どうなるかだ。中国には、ZTE(中興通訊)を上回る悪影響が出る。無論、米国側にも被害は及ぶが、ファーウェイのビジネスはストップする。ZTEですら倒産寸前に追い込まれた。それ以上の事態が起ることを覚悟すべきである。

     

    米国政府が、ここまで踏み込んで逮捕を委託する以上、すべてのケースを計算し尽くしているはずだ。中国人民日報では、「通商協議と切り離す」と報じている。中国最高指導部が、感情にまかせて動き出せば、二度目の失敗になる。一度目は、「徹底抗戦する」と発言して、米国の感情を逆なでした。こうして、現在の合計2500億ドルのもの関税引き上げを招いた。その結果が、740万人の農民工が、職を失い天秤棒を担いで帰郷の羽目に追い込まれた。

     

    中国は、米国の怖さが身にしみて分ったはずだ。民族主義者の習近平氏は当初、徹底抗戦を主張した。その習氏が、米中首脳会談で淡々と中国提案を発表する羽目に陥った。習氏一人が中国側の発言者となったという。その心境は、自らの失言が招いた災いの大きさに、臍(ほぞ)をかむ思いであっただろう。

     

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