勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    北朝鮮外交はつかみ所がない変幻自在である。握手をしたと思って安心していたら、翌日は知らん顔という事態が起こっている。米国と北朝鮮は7月12日、板門店において朝鮮戦争で戦死した米兵の遺骨返還に向けた方法や日程などを話し合う実務協議を開催する予定だった。とこが、北朝鮮側は姿を見せず協議は行われなかった。こういう北朝鮮の動きを見ると、驚くことばかりだ。

     

    一方、金正恩氏は米大統領トランプ氏に送った親書では、別の顔を見せている。トランプ大統領が公開した手紙は7月6日に作成されたもので、マイク・ポンペオ国務長官が北朝鮮を訪問した時だ。ポンペオ長官が受け取ってトランプ大統領に届けたものとみられる。金委員長の親書は次の通りだ。

    『中央日報』(7月13日付)が、下記のように報じた。


    「『24日前、シンガポールで行われた閣下との意味深い初めての対面と、我々が一緒に署名した共同声明はまことに意義深い旅程の始めとなりました』という言葉で始まる。続いて『私は両国の関係改善と共同声明の忠実な履行のために傾けている大統領閣下の熱情的で格別な努力に深い謝意を表します』とし、『朝米間の新たな未来を切り開こうとする私と大統領閣下の確固たる意志と真剣な努力、独特の方式は必ず立派な実を結ぶことになると堅く信じています』と記した。また『大統領閣下に対する変わりない信頼と信頼が今後の実践過程により一層強固になることを願いつつ、朝米関係改善の画期的な進展が我々の次回の対面を操り上げるだろうと確信します』と終え、首脳会談が再び開催される可能性も示唆した」

     

    この親書では、「朝米関係改善の画期的な進展が我々の次回の対面を操り上げるだろうと確信します」として、次回の首脳会談開催に言及している。こうなると、先の板門店における米朝事務会談のすっぽかしはどういう意味なのか。

     

    韓国の文在寅大統領は、訪問先のシンガポールで次のように「解説」している。

     

    「文大統領は、『米朝首脳間合意はうまくいったが、具体的な実行計画づくりに向けた実務交渉は順調ではない部分もあり、時間が長くかかるだろう』としながら、『それを象徴的に示したのがマイク・ポンペオ長官の訪朝結果だった』と述べた。文大統領は引き続き『評価は交錯しているが、私は(米朝実務交渉が)正常過程に入り、具体的な実務交渉が本格的に始まったとみている』として米朝間の異見を『戦略』の側面から説明した。文大統領は、『北朝鮮が外務省の談話を通じて米国を非難したが、内容を見ると、自身は誠意を尽くして実質的措置を取っているのに米国が相応の措置を講じていないという不平』としながら、『これは交渉過程で十分にありえる戦略』と評価した」(『中央日報』7月13日付)

    文大統領は、米朝首脳間の信頼関係が維持されている限り、実務者間でのやり取りに神経を払わなくていい、という結論だ。北朝鮮の交渉担当者が、米国を非難してもそれは「戦術」のうちだから聞き流すこと、である。何か、若者の恋愛テクニックのような感じがする。「嫌いは、好きの別表現」なのだろうか。


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    米国が、中国へ2000億ドル相当の製品に10%の追加関税を発表した。中国は、いかなる報復措置を取るのか、関心が集まっている。これまで、中国が他国へ行なってきた報復措置には、一定のパターンがある。不買運動、旅行禁止、輸入時の通関業務のサボタージュなど。米国に対して、こういう月並みな嫌がらせをやったところで、効果があるのか疑問視されている。

     

    そこで、次のような案が考えられるという。

     

    中国は輸入額が相対的に少ないため、再び関税賦課で米国に対抗することはできないが、その代わり、新税導入や米企業への規制強化のほか、当局認可の引き延ばし、市民に米製品不買運動を促すなどの措置を活用し得る。また、米クアルコムによるオランダのNXPセミコンダクターズ買収計画はまだ当局の最終承認を待っている状態だ」(『ブルームバーグ』7月12日付)

     

    ここでは、「新税導入や米企業への規制強化」によって、米企業を虐めるという考えが浮上している。これは、極めてリスキーである。米企業を中国から追い出すことになりかねない。中国政府は、地方政府に対して米国企業が中国を脱出するか否かを探らせている。なんと言っても米国企業は、世界のナンバーワン。中国への誘致では三拝九拝した過去がある。それを忘れて、掌を返したような冷たい対応すれば、中国を捨てて他国へ立地する恐れも出てくるのだ。

     

    次の指摘に注目すべきである。

     

    「寧波供応鏈創新学院のシャオシュアン・リュウ教授は、関税による長期的な影響として、すでに一部の産業で始まっている新興国から米国など先進国への生産回帰の流れが加速する可能性があると指摘する。中国に生産拠点を設けている企業はすでに人件費の高騰に直面しており、関税はコストをさらに押し上げるという。リュウ氏は『関税によって変化が生じるのは確実だ』としている」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』7月12日付「米国の対中追加関税、電子部品が標的に、水産物なども」)

     

    4次産業革命の波に乗って、製造業の技術革新は日進月歩である。中国で大量生産して、世界中へ輸出するという形態の見直しが始まっている。中国は人件費と地価上昇による賃貸料金の上昇で、生産拠点としてのうま味が消えかけている。米国企業虐めは、「脱中国」の動きを加速しかねないのだ。こうなると、中国の米国への報復措置は限られる。

     

    「これまでのところ、中国当局は米企業を狙い打ちにしたり、10億人余りの国内消費者のナショナリスト的な感情をあおって米製品をボイコットしたりすることは避けている。過去に貿易問題で対立した韓国などに対しては、そうした戦術を持ち出した。欧米諸国は長年、中国国内で展開する外国企業のために公平な事業環境を整えるよう中国政府に迫ってきた。UBSグループの中国担当主任エコノミスト、ワン・タオ氏は『全面的な貿易戦争は自国にとって経済的打撃がより大きくなることを中国政府は理解しているため、その回避に力を尽くすだろう』との見方を示した」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』7月12日付「米追加関税、対応に苦慮する中国、報復手段を模索」)

     

    この記事では、中国が感情任せの嫌がらせをしないで、慎重に対応するだろうとしている。中国は、弱い相手には徹底的に笠に着た、上から目線の行動を取る。だが、強い相手には慎重な対応をする「使い分け」をする国家だ。これ以上、トランプ氏を怒らせない方法を探る可能性もある。


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    英国の『フィナンシャル・タイムズ(FT)』は1888年の創刊である。世界に誇る英経済紙だ。2015年に日本経済新聞社が買収した。このFTが、トランプ米国大統領を「危険な無学者」と切り捨てるコラムを掲載した。タイトルは、「トランプ氏 貿易戦争招く」(7月11日付)である。

     

    確かにトランプ氏は、乱暴者というイメージが強い。こういう人物が育った家庭環境はどういうものだったのか。聞いてみたい気がする。それほど強烈な性格の持ち主である。

     

    さて、ここからからが本論である。

     

    トランプ氏が仕掛けた米中貿易戦争は、決して褒められるスタイルではない。ただ、中国のような名うての「ルール破り」に対応するには、トランプ氏のような「スパイス」の効いた人物でないと対応できないのも事実だ。中国は、WTO(世界貿易機関)のルールである自由貿易原則を守っていると宣伝するが、中国ほど破っている国はない。未だに、日米欧は中国をWTOの「非市場経済国」に指定しているほど、市場経済ルールを守らない国である。

     

    具体的には、あらゆる分野で企業に補助金を出すことだ。これが、企業保護に当る。研究開発費補助、生産コスト補助など形はいろいろあるが、国内企業を保護している。具体策は、次のパラグラフで取り上げる。この結果、中国に進出している外資系企業は、差別されるのが日常茶飯事となっている。

     

    こういう前歴を持つ中国に対して、公正な貿易慣行を守らせるにはどうするのか。自由貿易原則は、互いにルールを守ることが前提である。中国は、このルールを犯して政府から補助金を支給されて生産費自体を引下げている。この結果、サムスンは中国でスマホ市場を失った。生産費を補助して国内販売価格を下げるから「反ダンピング法」に抵触しない。警察に賄賂を渡しているから捕まらないような話である。

     

    以上のような事実を知らないで、FTは、次のように一刀両断だ。

     

    中国に対し301条を根拠に関税を課すのは、さらに理解しがたい。その狙いは、中国の対米貿易黒字の削減、あるいは中国のハイテク産業育成策『中国製造2025』の阻止、あるいは強制的な技術移転の阻止のようにもとれる。だが、中国に貿易赤字削減を求めるのはばかげているし、次の産業育成策阻止は交渉できる類いのものではない。最後の強制的技術移転阻止は道理にかなった要求だが、達成は難しい」

    自由公正な貿易慣行を踏みにじる中国が、自由貿易を原則とする世界市場で、「一人勝ち」するのは当然である。サッカーW杯でも、最終的には「反則」の数が少ないティームが勝利を得るように、競争(市場経済)は公正であることが前提である。この視点で言えば、中国の流儀は世界経済の障害になる。その障害を取り除くべく、やむなく関税を科すのは「次善の策」として認められるものだろう。中国の「狡」が公認されるならば、各国が見倣うに違いない。

     

    トランプ氏のやり方はスマートではないが、このくらいのパンチで対応しなければ、世界経済の障害物を取り除けないのだ。中国は、南シナ海で勝手に相手国の島嶼を奪い取る手法で、世界貿易もルール破りをしている。困った存在である。


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    米中貿易戦争は、新たな段階を迎えている。トランプ米政権が10日、中国からの輸入品2000億ドル(約22兆4000億円)相当を対象とする関税リストを発表した。実施は8月末と見られるが、中国経済にとってはさらに「圧迫材料」が増えている。

     

    こうした劣勢を反映して、中国人民元相場には「売り圧力」が高まっている。1ドル=6.66元(12日19時)であるが、オフショア市場では全く違った様相を呈している。オフショア市場とは、国内市場とは異なり、非居住者が規制を受けない自由市場である。このオフショア市場は国内市場の先導役を果たすので要注意だ。11日、6.7192元となり2015年8月以来の安値を記録した。このことから、国内市場への波及が予想されている。

     

    『ブルームバーグ』(7月12日付)は、「人民元がデッドクロスを形成、2015年切り下げ以来初ーチャート」と題する記事を掲載した。やや専門的だが要約すれば、チャート上で人民元相場は大きく値下がりする兆候を見せているので、注意を呼びかけているもの。

     

    「中国のオフショア人民元相場は11日に2016年1月以来の下落率を記録するとともに、テクニカル的には売りのシグナルとして知られる『デッドクロス』を形成した。人民元・ドルの移動平均線を見ると、50日線が200日線を上から下に抜けていることが確認できる。3年前のショッキングな人民元切り下げ以来の現象だ。JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバルストラテジスト、デービッド・レボビッツ氏によると、中国はもう少し元安を容認することはできるが、過度な元の下落は逆効果であり、その場合はある時点で介入することになる、としている」

     

    人民元相場の下落は、中国経済の弱さを裏付けるものだ。中国政府は、人民元安を誘導して輸出テコ入れ策に利用したいところ。この思惑が外れて15年のように歯止めのきかない事態を避けたいというのも本音だ。オフショア市場の動きは、国内市場へ波及していくので推移を見守りたい。

     

    7月12日の上海総合指数の終値は、2837ポイントで、前日比59ポイントの上昇である。当局の相場テコ入れに違いない。12日の『ブルームバーグ・ニュース』では、20年間も運用してきた中国株から撤退したファンド・マネジャーのインタビューが報じられている。それによると、マクロ経済指標に多くの問題を抱える中国株を売却して、タイやベトナムの株式が妙味あると強調。理由は、マクロ経済指標に懸念がないとしている。中国株が売られタイ・ベトナムが買われるとは、アジア経済の主役が交代する印象を与える。時代は変化している。


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    2016年12月から17年3月まで、韓国は朴槿惠大統領(当時)の弾劾をめぐり、左右両派が激しい対立をした。互いに、相手陣営に向けて「暴力革命を起こす」などと威嚇しあう姿は、醜いものだった。抗議の自殺者も出るなど騒然とした情勢は、日本まで緊迫感を伝えた。感情的にいきり立った韓国国民は、日本人の想像もできない行動をするのだ。

     

    韓国軍は、こういう騒乱一歩手前の状況を見て、国家転覆という事態にならぬように、「文書」だけは書いて「心の準備」をしていた。今その文書の存在が公になって、「戒厳令を準備していたのでないか」と問題視されている。文大統領が、捜査命令を出したから騒ぎが大きくなっている。

     

    文政権トップでは、1980年の光州事件(軍の戒厳令拡大に反対する市民が、軍と衝突した事件)で火焔瓶を投げつけた、元学生運動家の多数が大統領府に秘書官として加わっている。こういう事情があって、文大統領が軍による一片の文書を重視しているもの。

     

    『朝鮮日報』(7月11日付)は、「弾劾による国家転覆の危機に韓国軍はどう対応すべきか」とだいする社説を掲載した。

     

    朴槿恵(パク・クネ)大統領=当時=の弾劾判決目前の昨年3月、国軍機務司令部が「戦時戒厳と合捜業務方案」という題の文書を作成していたことについて、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日、独立捜査団を結成して捜査するよう、訪問先のインドで特別指示した」

     

    「軍事独裁を経験した韓国人の記憶の中で、『戒厳』は否定的な印象しかない。しかし、この文書は弾劾判決直前の状況で、文字通り究極の最悪の状況への対処方法を検討したものだ。弾劾判決目前の昨年3月、賛成派も反対派もそれぞれ数十万人がソウル市内中心部で対峙(たいじ)し、憲法裁判所まで行進して、自身が望む結果を出せと圧力を加えるようなデモをした。31日の集会では警察が600台を超えるバスでバリケードを築き、双方の衝突を防がなければならないほどだった。弾劾判決の結果がどちらになっても、国が混乱するのではないかと多くの人々が懸念した」

     

    当時の緊迫した状況は、韓国メディアが悲痛な思いで報じていた。万一の事態に備える軍の「文書」ぐらいあっても不思議はあるまい。もし、左右両派が激突して、死者が出る騒ぎとなれば一層、事態は悪化するのだ。それを防ぐには、騒乱に備える研究をしておくことは許されるのでなかろうか。文大統領は「好機到来」とばかり、この問題を拡大させて政治的に利用する魂胆であろう。

     


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