勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国の今年上期の経常収支が、8月6日に発表される。1~3月の実績は341億ドルの赤字であった。2001年4~6月期以来のこと。この傾向から見て、1~6月期の上半期に赤字が予想されている。これが現実になれば、中国がWTO加盟(2001年)以来の大事件だ。「衰えたり中国経済」との印象を拭えない。

     

    中国は現在、3兆1000億ドル台の外貨準備を擁している。無論、世界一の保有高である。2位日本の1兆2500億ドルをはるかに引き離している。中国の月間輸入高が大きいゆえに、それに見合った外貨準備高が必要としても、一時(2014年6月)は、4兆ドル台接近の外貨準備高を保有したこともある。その後は、2015年の株価急落と人民元安によって外貨が流出、3兆ドル割れを経験したここもある。

     

    中国は社会主義経済である。政府が全てを管理しなければ安心できない。そいう心理的な脆弱性を抱えているが、最大の理由は世界一の外貨準備高が国威発揚になると錯覚していることだろう。世界一の外貨準備高を保有する経済的な合理性はゼロである。むしろ、この他国を引き離す外貨準備高を持つデメリットが、経常収支構造を歪めている。この矛楯を気づかせるのが、8月6日発表の今年上期の経常収支赤字であろう。

     

    中国の適正外貨準備高はどのレベルなのか。

     

    みずほ総合研究所の試算によれば、次のような結果が出ている(2017年1月発表)。この試算には、IMFモデルを用いている。資本取引規制がある場合が1.7兆ドル。同規制がない場合は2.8兆円である。驚くことに、現在の3兆1000億ドル台の外貨準備高は、資本取引規制を外した場合の必要外貨準備高(2.8兆ドル)と3000億ドルしか余裕がないのだ。

     

    外貨準備高は、完全変動相場制に移行すれば、為替需給は為替相場によって調整される。そうなれば、中国は現在の1ドル=6.8元を守るか否かという問題を超えて、大幅な人民元安に見舞われるはずだ。極端にいえば、1ドル=10元を超える事態も発生する。こうなると、資本は大幅に流出するはずだ。中国経済は、見る影もなく発展途上国へ逆戻りとなろう。「米国覇権に挑戦する」などと言える状況でなくなる。

     

    こう見てくると、中国が必死で外貨準備高3兆1000億ドル台にしがみついている理由が分る。まさに、国威発揚をかけた闘いなのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月31日付)は、「トランプ氏、中国の対米黒字縮小に反応薄か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「エコノミストらによると、中国政府が8月6日に発表する今年1〜6月の経常収支は赤字となる公算が大きい。これは事実上、輸入額が輸出額を上回ったことを意味する。マッコーリー・キャピタルのエコノミスト、胡偉俊氏は赤字幅が240億ドル(約2兆6600億円)で、その大半は1~3月期に発生したものだと予想している。実際に赤字となれば、半期の赤字計上は、中国が2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟してから初となる」

     

    ここに登場するエコノミストによれば、1~6月の経常収支赤字は240億ドルと見込んでいる。1~3月は、341億ドルの赤字であった。上期が赤字であれば、2001年以来のこと。中国の競争力が低下した証明である。

     

    (2)「エコノミストらは、中国経済の成長減速で輸入が減るとみて、2018年通年では1000億ドル程度の経常黒字になるとの見方を変えていない。ただ、これだけの黒字を計上したとしても、国内総生産(GDP)に対する比率は1%弱で、1995年以来の低水準となる。対照的に、2007年には同比率が10%近くに達していた。それ以降、同比率は下がり続けており、2019年には0.5%へ落ち込むとモルガン・スタンレーやスタンダード・チャータードなどは予想している」

     

    2018年の経常黒字は1000億ドル程度に減って、対GDP比は1%との予測である。IMF予測では1.18%であるから大きな違いはない。2019年には0.5%へ落ち込むとの予測だ。2006~08年には、同8~9%の時代もあった。もはや、この時代に戻れるはずはないが、余りの凋落に息を飲む思いだ。「奢れる者久しからず」である。

     

     

     


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    最低賃金の大幅引上げに端を発して、韓国経済の基盤がメチャクチャであることが浮き彫りになってきた。「反日騒動」で見せたあの勝ち誇った姿は、もはやどこにも見られない。さらに、大きな社会問題になっているのは、自営業者の金策が著しく難しくなってきたことだ。

     

    韓国では、なぜこれほどまでに自営業者のウエイトが高いのか。定年退職後、退職金のほかに借金までして自営業を始める理由は何か。韓国では、年金を含めた社会保障制度が完備していないことにある。これは、データ面で確認できる。日本で、定年退職後に自営業を始める人は珍しい。生活のために小商売を始めるよりも、今まで勤めた会社で嘱託などのコースを選ぶ。

     

    韓国では、高齢者の1人当たり社会保障費が、OECD35ヶ国中32位(2013年)、対GDPの社会保障費が、同34位である。日本はどうか。前者が10位。後者が7位である。日本の方がはるかに恵まれている。だから、老後に、商売を始める人がいないワケだ。

     

    『韓国経済新聞』(7月31日付)は、「借金まみれの韓国の自営業者、金利上がれば48万人が信用不良者」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「退職金に加え借入までして食堂などの店を開きながら借金を返せなくなり廃業する自営業者が増加している。『商売さえうまくいけば負債を返すのは一瞬』という考えから無理に貸付を受けたが利子も返せないほど、経営状況が悪化したためだ。急激な最低賃金引き上げなどで各種コストが増える中で景気が悪化し消費者が財布を閉じ始めたためと分析される。金融当局は事実上、自営業者への貸付総量を引き締め始めた。『貸付の崖』に直面した自営業者は消費者金融まで訪ね始めた。彼らが倒れれば金融システムだけでなく実体経済まで衝撃は避けられないと指摘される」

     

    自営業者の経営悪化問題は、最賃の大幅引上げがきっかけになって津波のように広がっている。これが、個人消費を沈滞化させており、自営業者の金繰りに影響を及ぼしている。正規の金融機関が警戒し始めており貸出を絞っている。日本のように、自営業に親身になる金融機関は存在しないのか。こういう韓国の金融システムでは自営業者を追い詰めるだけだろう。文政権は、自営業者の金融隘路を打開しなければ、自営業を救えない。最後に行き着く先が消費者金融では、高金利で自らの首を締めることになろう。

     

    (2)「自営業者は銀行、貯蓄銀行、農水畜協など相互金融の貸付が閉ざされると、消費者金融まで探しに出た。これに伴い、消費者金融利用者のうち自営業者の割合だけ増えたことがわかった。消費者金融で金を借りた低信用者のうち自営業者は昨年6月末の18.8%から12月末には21.6%に増加した。今年上半期は25%まで増えたというのが金融圏の分析だ」

     

    消費者金融まで金策に出かけるのは、韓国経済がすでに下降局面に入っていることの証明である。政府は、この実態も知らずに来年の最賃を10.9%も引上げている。何ともチグハグナ話だ。すでに、自営業者が消費者金融利用者の4分の1とは、尋常ならざることだ。

     

    (3)「金融当局は、全自営業借主約160万人のうち、償還力が落ち金利上昇に弱い借主は約48万人(貸付金38兆6000億ウォン)に達するとみている。このうち格付けが7等級以下や消費者金融などで高金利貸付を受けた約18万人(貸付金12兆5000億ウォン)は高危険群に分類している。金利上昇時には彼らが経済の信管になりかねないという指摘だ」

    全自営業借主約160万人のうち、約48万人が「信用不安者」に分類されているという。このうち、約18万人は「高危険群」である。文政権は、こういう実態を把握しているだろうか。文氏は毎日、午前3時まで資料を読んでいるという。それも結構だが、
    街へ出て庶民がどのような暮らしぶりしているのか、それを見るべきだ。

     



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    吉村洋文市長が7月24日、サンフランシスコ市のロンドン・ブリード市長に次のような書簡を送ったことが判明した。大阪市は、米国サンフランシスコの公園に設置された慰安婦像が、今後も設置される場合、姉妹都市提携を解消するとしたもの。吉村市長は、前サンフランシスコ市長に当てた書簡でも慰安婦像の設置継続であれば、60年にわたる姉妹都市提携を解消すると明らかにしていた。今回も同様の内容である。

     

    以下の記事は、韓国の『中央日報』(8月1日付)が、「慰安婦像を撤去しなければ姉妹提携解消、大阪市が米サンフランシスコ市をまた圧迫」と題する記事を掲載した。韓国メディアが、この問題をどのような視点で捉えているかを知るためである。

     

    (1)「昨年、サンフランシスコに設置された慰安婦像は、韓国と中国、フィリピンの3人の少女が互いに手を取り合って背中合わせに円形に立ち、これを慰安婦被害者の金学順(キム・ハクスン)さんが見つめる構図となっている。像はカリフォルニア・カーメルで活動する著名な彫刻家Steven Whyte氏が「女性の強靭さの柱(“Comfort Women” Column of Strength)」というタイトルで製作した」

     

    (2)「昨年11月、当時のサンフランシスコ市長エドウィン・リー氏は、市内にあるセント・メリーズ公園に設置された慰安婦像の受け入れを公式化する文書に署名した。これに対し、サンフランシスコと姉妹提携都市である大阪市は、1カ月後に幹部会議を開いて提携解消を正式に決めた。だが、同月、親韓派に挙げられてきたリー氏が急逝し、大阪市は新市長の就任を待って書簡を送った」

     

    (3)「吉村市長は、『慰安婦像をサンフランシスコの公共物として扱わず、両市の市民が友好的に交流できる環境をつくる意向があるのなら、姉妹都市関係を継続することに異論はない』と迫った。また、吉村市長は今年9月末までの回答を求めたと共同通信は伝えた」

     

    サンフランシスコ市のロンドン・ブリード市長は、今年7月11日就任である。まだ日も浅いが、問題の経緯は充分に理解されているだろう。過去60年にわたる密度の濃い交流の歴史があるだけに、日本への理解も十分と思われる。日本が、第二次世界大戦後歩んできた道と、世界的にも平和国家という高いイメージ(ランキングでは5~6位)を得ている現実を十二分に理解して欲しいものだ。


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    習近平氏が、口を開けば必ず言うのは「中国製造2025」と「一帯一路」である。前
    者は、米国との貿易戦争が激化の気配を見せたので封印している。これ以上、米国を怒らせまいという配慮だ。後者の「一帯一路」の対象国は、財政上に難点がある国々である。中国マネーを高利で融資して工事を受注するという「ダブル・インカム」を狙ってきた。だが、「債務トラップ」という芳しくない評判を立てられている。習氏にとっては散々な状態だ。

     

    現実に、中国企業の「一帯一路」向け直接投資が減少に転じている。「債務トラップ」と噂が出るほどの国々へ直接投資してもリターンが得られる保証はない。こういう背景から、表題のように今年上半期の直接投資は、微減どころかかなりの落ち込みになった。

     

    『レコードチャイナ』(8月1日付)は、「一帯一路ブームに陰り? 中国企業の対沿線国投資1~6月は15%減」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国メディアの『人民網』(7月30日付)は、中国が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の沿線55カ国に対する中国企業の1~6月の直接投資は前年同期比で15%減少し、76億8000万ドル(約8526億円)と報じた。対外投資全体に占める割合は12.3%で、主な投資国はシンガポール、ラオス、マレーシア、ベトナム、パキスタン、インドネシア、タイ、カンボジアだった」

    中国は、対米直接投資(今年上半期)が21億ドルに落込んだ。昨年通年で294億ドルである。今年上半期を通年換算しても42億ドルに過ぎない。前年比で86%減になる。対米投資は、米国が中国のスパイ活動を警戒して拒否している結果だ。こういう特殊事情はあるにせよ、「一帯一路」直接投資の減少は、中国の外貨資金繰りと無関係ではない。習氏は、「大言壮語」しているが、懐状態はかなり悪化していると見るべきだ。

     

    (2)「仏『RFI』(中国語版サイト)は、『一帯一路をめぐっては、世界中で困難に直面していると疑いの目が向けられている』とした上で、『中国商務部が最近発表したデータは、一帯一路ブームに陰りが見られることを別の面から証明するものだ』と伝えた。報道によると、英紙フ『ィナンシャル・タイムズ』は7月、『一帯一路』関連プロジェクトをめぐり、『沿線国では市民の反対や労働政策への抗議、施工延期、国の安全への懸念など多くのトラブルが発生している』とし、『一帯一路は世界中で困難に直面している』などと報じた。これに対し、中国外交部の報道官は『偏った見方であり、事実に合わない無責任な言論だ』などと反発していた」

     

    「一帯一路」は、汚職も輸出している点が厳しく問われている。「債務トラップ」に陥った国は、採算を無視して工事を強行した結果だ。この際、中国政府が相手国首脳に賄賂を掴ませたケースが指摘されている。「債務トラップ」は、「賄賂トラップ」でもある。

     

    パキスタンが、中国から50億ドルの債務で「一帯一路」工事を行なっている。このままでは財政が困窮するので、IMFへ緊急融資を依頼するだろうと見られる。これが、実現するとIMF筆頭出資国の米国が乗り出し、「一帯一路」がはらむ不明朗関係を洗い出すと宣言した。これに驚いているのが、中国政府とパキスタン軍部といわれている。中国は、自らの悪事が露見する。パキスタン軍部は、「一帯一路」工事で甘い汁を吸っているからだ。要するに、中国は叩けば埃の出る身なのだ。ご立派なことを臆面もなく仰るが、その裏ではどす黒い計画を練っている国である。


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    中国では間もなく恒例の「北戴河会議」(河北省)が始まる。中国共産党の指導部や長老らが河北省の避暑地に集まり、人事や重要政策について非公式に議論する会議だ。この機会を狙うかのように、米国トランプ大統領は「対中貿易戦争」へ直撃弾を撃ち込む準備を始めた。中国輸入品2000億ドルへの追加関税を25%に引上げるというものだ。これまでは、10%関税案であった。

     

    習氏をめぐる環境は、大きく変わってきた。中国内部では、米国と貿易戦争することへの「厭戦気分」が高まり、これが「習批判」となっている。先の「北戴河会議」開催地では、党のスローガンは掲げられているが、「習近平」なる言葉はめっきり減っているという。習氏が低姿勢になっている証拠だ。理由は、米中貿易戦争である。事態をここまで拡大した習氏の不手際が責められているという。

     

    『ブルームバーグ』(8月1日付)は、「米国が中国輸入品2000億ドルへの関税引き上げ計画」

     

    (1)「トランプ米政権は中国からの輸入品2000億ドル(約22兆3660億円)相当に関税を課す計画について、税率を従来予定の10%から25%に引き上げることを提案する。内部の協議に詳しい関係者3人が明らかにした。中国に公式な通商協議のテーブルに戻るよう圧力を強化する動きとなる。関係者によると、トランプ大統領がライトハイザーUSTR代表に対し、同関税率を25%に引き上げるよう指示した」

     

    トランプ氏特有の強力な「ディール」を持出している。輸入品2000億ドルに10%関税をかける案であったが、25%に引上げる計画の検討を命じたもの。中国にとっては致命的な打撃になる。米国へも被害は及ぶが、米国景気は絶好調ゆえに吸収可能だ。トランプ氏は、EU(欧州連合)に対しても、この「ディール」で大成功を収めている。

     

    (2)「この動きと並行して、ムニューシン米財務長官と中国の劉鶴副首相の各代理が非公開協議を進めており、正式な交渉を再開する方法を探っていると、事情を知る関係者が匿名を条件に明らかにしていた。米通商代表部(USTR)によれば、中国からの輸入品2000億ドル相当を対象とする米関税に関する意見公募期間は今月20ー23日の公聴会を経て、30日に終了する。公聴会前に関税率引き上げを公表する必要がある。公表すれば、トランプ政権が中国に大幅譲歩を促す圧力を強める警告となる。ムニューシン、劉鶴両氏の各代理の協議を明らかにした関係者によると、具体的な日程や議題、協議の形式はまだ固まっていないものの、さらなる交渉が必要との点でムニューシン、劉鶴両氏は一致している。中国当局者は交渉再開の見通しについてコメントをしていない」

     

    米国は、2000億ドル輸入品関税で8月20~23日に公聴会を開く。その前に関税率を公表する必要がある。10%か25%かに決める。中国に与えられた時間は少ない。「イエスかノーか」という米国の圧倒的な交渉優位の前に、習氏はどう出るのか。「徹底抗戦」などという声は、もう聞かれないのが「淋しい」。

     

    習氏の敗北は、中国官製メディアが例の「中国製造2025」について報道しなくなったことに現れている。日米貿易戦争の発端は先のプロジェクトにあった。「あれさへ、表面化させなければ良かった」のにという思いが、「中国製造2025」をお蔵に入れた背景だろう。習氏の誇大宣伝が招いた「舌禍事件」とも言える。

     

    (3)「内部の議論の事情に詳しい関係者によると、米国は中国から一定の譲歩を引き出そうとしており、中国が同意すれば米国が追加関税の対象拡大を控えることもあり得る」

     

    米国の目的は、関税率引き上げにあるわけでない。中国が不正貿易慣行を改めることにある。中国が世界覇権などという夢想にこだわらず、現実をしかと認識する必要があろう。


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