勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    格付け会社フィッチ・レーティングスは4月10日、中国の信用格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。中国の財政リスクが高まっているためだ。格付け自体は最上位から5番目の「シングルAプラス」で据え置いた。昨年12月、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、中国の信用格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更している。中国の財政、経済、制度に広範な下振れリスクが生じていると指摘した。

     

    世界三大格付け会社のうち、二社が格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げたことになる。残るは、S&Pグローバルである。中国格付けをどのようにみているか。前記二社の見通し発表によって、おおよその見当がつくことになった。財政リスクの拡大だ。

     

    『ロイター』(4月10日付)は、「フィッチ、中国格付け見通し『ネガティブ』に下げ 成長にリスク」と題する記事を掲載した。

     

    格付け会社フィッチは9日、中国の格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げた。同国の財政見通しに対するリスクが高まっていることを理由に挙げた。新たな経済成長モデルへの移行で不透明感が高まっているとしている。格付けは「Aプラス」に据え置いた。

     

    1)「格付け会社ムーディーズも昨年12月、中国の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更。中国当局が債務問題を抱える地方政府や国有企業への資金支援を迫られることが予想されるほか、「不動産部門縮小に関連したリスク」も見通しの引き下げ要因とした。ナティクシスのアジア太平洋担当シニアエコノミスト、ゲーリー・ウン氏は「見通し変更は、成長鈍化や債務拡大という二重苦によって中国の公的財政の厳しさが増していることを反映した」と指摘。「中国がすぐにデフォルト(債務不履行)になることを意味するものではないが、地方政府の財政が悪化する中、LGFV(地方政府傘下のインフラ投資会社)で信用格差が広がる可能性がある」と述べた」

     

    中国は、不動産不況が経済に与える影響は「軽微」としている。現実は、経済の骨格を蝕んでいる。早急な手術によって、過剰債務処理をしなければならない事態へ向っている。

     

    2)「フィッチは、中央・地方政府の明示的な債務が今年、国内総生産(GDP)比61.3%と、昨年の56.1%から増加すると予想。19年の38.5%から大幅な悪化が見込まれている。一般政府財政赤字については、2024年にGDP比7.1%と、23年の5.8%から上昇すると見込んだ。予想通りなら、厳格化な新型コロナウイルス感染予防措置で景気が悪化した20年に記録した8.6%以来の高水準となる。今年の中国成長率については4.5%とし、昨年の5.2%から鈍化すると予想した」

     

    GDP比の財政赤字が、確実に膨張している。何らの対策も取らないで、「三種の神器」(EV・電池・ソーラーパネル)の輸出急増で乗切るという破天荒な政策が失敗である。この輸出大作戦は、世界中へショックを広げ新興国からも非難の声が上がっている。中国は、外交的に新興国の味方を装っているが、逆の事態を引き起こしている。

     

    3)「フィッチは、「格付け見通しの修正は財政見通しに対するリスクが高まっていることを反映している。中国は不動産に依存した成長から、政府がより持続可能と考える成長モデルへの移行過程にあり、経済見通しの不透明感が高まっている」と説明。「近年の高水準の財政赤字と政府債務拡大は、格付けの観点から見て財政バッファーを縮小させた」とした上で「名目成長率の低下で経済全般の高レバレッジ管理の困難さが増し、偶発的な債務リスクが高まっている可能性がある」との見方を示した」

     

    フィッチは、中国の名目成長率がデフレの影響で、低下していることを重視している。23年のGDPは、「名実逆転」で名目成長率4.6%、実質成長率5.2%となった。この事態は、今後も継続する見通しが強い。となれば、負債管理が厳しくなる。日本の名目成長率は、23年が5.7%で1977年以来46年ぶりに日中が逆転した。

     

    ムーディーズは昨年12月、中国の経済成長率が24年と25年にそれぞれ4%、26〜30年に年平均3.%に鈍化するとの予測を示していた。人口動態の変化など構造的な要因で、30年までには潜在成長率が3.%程度に低下すると分析した。

     

    4)「中国財政省はフィッチの決定は遺憾だと表明。地方政府債務に起因するリスクの防止と解消に向けた措置を取ると強調した」

     

    中国政府は、政策の方向転換する気配を見せていない。このままだと、格付けは引き下げの一途という局面へ入り込む危険性が大きくなってきた。

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    米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が今月4日(現地時間)、「2024年米日同盟-統合された同盟へ」というタイトルで報告書を公開した。この内容が、10日(現地時間)に開催される日米首脳会談の議にのぼると予想されている。米外交は、超党派が原則である。シンクタンクの研究分析を重視するという慣行があるだけに、先のCSIS報告が注目されている。

     

    『中央日報』(4月10付)は、「『書かれたようになる』アーミテージ・ナイ報告書…『日本、グローバルリーダーになる準備できている』」と題する記事を掲載した。

     

    「2025年までに自衛隊の共同作戦を監督する新たな統合作戦司令部設立」。「米国は日本の米英豪3カ国安全保障枠組み(AUKUS=オーカス)ピラー2(先端防衛技術共同開発)プロジェクト参加などを支援」。「米国は軍需品の生産拡大およびシステム共同開発過程で日本との協力を優先視」。今月4日(現地時間)、米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が「2024年米日同盟-統合された同盟へ」というタイトルで公開した「第6次アーミテージ・ナイ報告書」に掲載された提言だ。

     

    (1)「この報告書は2000年10月、米日同盟の改善・強化のための政策提言を盛り込んで初めて出された。ジョージ・W・ブッシュ政府(共和党)で国務副長官を務めた知日派リチャード・アーミテージ氏とビル・クリントン政府(民主党)で国防次官補を務めたハーバード大学教授のジョセフ・ナイ氏が共同責任者であり、超党派的著名人が参加している。米国の東アジア戦略と日本の安全保障政策の下絵を描く「設計図」であり「指針書」の役割を果たしてきた。

     

    CSISの対日外交に関する提案は、極めて現実的であることが注目を集めている。米国政権で、多くの提案が採用されてきたからだ。

     

    (2)「4日、第6次報告書発刊当時に韓国で注目されたのは「韓国とオーストラリアが含まれる主要7カ国(G7)拡大改編が必要」という内容だった。だが、いざ報告書の核心は「不確実性が大きくなるグローバル環境で米国が引き受けてきたグローバル・地域リーダーシップの重荷は短期的に日本が徐々により多く担うことになるというものであり、日本はこのような役割を果たす準備が整っている」という一言に要約することができる」

    アジア安保において、日本の役割が増していること。日本が、その役割を担う覚悟のあることを取り上げている。

     

    (3)「4年前の第5次報告書のタイトルは「2020年米日同盟-グローバル議題に対する同等な同盟」だったが、今回の第6次報告書では「統合された同盟」という概念に進化した。両国同盟関係の対等性を超え、さらに深まった渾然一体の関係に進まなければならないという意味に解釈することができる。報告書は「日本が野心に充ちた戦略的軌道に入った今、米国と日本が経済と安全保障問題の連携等、より一層統合された同盟という次の段階に進まなければならない」と求めている」

     

    今回の報告書では、日米が防衛面で一体化することを求めている。「統合された日米同盟」という認識になっているのだ。これは、中国に対して大きな牽制要因になろう。

     

    (4)「今回の第6次報告書は経済安保、サイバー協力などの幅広い分野で米日同盟の拡張を通した東アジア戦略を提案している。具体的に見てみると、まず2025年3月までに日本自衛隊の共同作戦を指揮する新しい統合作戦司令部(J-JOC)を設立して、米国は作戦実行権を持つ4つ星級(注:大将)作戦司令部を設立することを提案した。報告書は、「できるだけ日本統合作戦司令部と在日米軍作戦司令部は有事の際にひとつに編成されなければならない」とした。最近、日本で「在日米軍に日米共同演習・訓練計画の樹立、自衛隊統合作戦司令部と情報共有などの権限を付与する方案が検討されている」と読売新聞発の報道があったが、アーミテージ・ナイ報告書と脈絡が同じだ」

     

    日米合同作戦では、日米一体化した部隊編成を提案している。米国は、在日米軍司令官に大将クラスをおいて、独立した作戦指揮権を与えるべきとしている。現在は、ハワイに司令部が置かれているが、日本へ移すという提案である。

     

    (5)「核心技術の保護およびサプライチェーン(供給網)の回復力強化など経済安保の側面での米日協力も強調した。報告書は、中国の過剰生産能力とダンピング防止のための米日とパートナーの協力強化 韓国とオーストラリアが含まれたG7の拡張 米国家安全保障会議(NSC)と日本国家安全保障事務局が主導する新たな経済安保対話を通した経済安保政策の調整強化--などを注文した」

     

    経済安保でも、日米が一体化した対応を求めている。サプライチェーンの共同運用という認識である。戦略物資では、日米が融通し合う点まで含まれているようだ。日本は、半導体復興戦略を取っているが、この裏に米国の協力がある。

     

    (6)「アーミテージ・ナイ報告書は、これまで提示された提案のうち相当部分が現実化するなど、米日安全保障政策に大きな影響を及ぼしてきた。「日本の集団的自衛権行使」を主張した2000年第1次報告書は平和憲法第9条改正論を後押ししたほか、2015年9月日本安保法制制定によって貫徹された」

     

    CSIS報告では、戦後日本の「平和憲法」をリードした米国が現在、ここからの脱却を求めるという行動に変わっている。時代の変化というものだ。

     

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    米国は将来、AI(人工頭脳)でホワイトカラーの3割が職を失う恐れを指摘されているなかで、「物づくり」人気が高まっている。半導体技術者から溶接など技能職が見直されているのだ。中国や韓国では、高い大学進学率だが卒業後の就職難で悪戦苦闘している。米国には、新しい風が吹いている。日本も半導体ブームである。九州・東北・北海道が半導体「主戦場」になる。これに備えた、人材養成が急務になる。

     

    『東亜日報』(4月8日付)は、「米国の州間で起きた誘致合戦から学ぶ半導体工場の誘致方法」と題する記事

     

    米国内の半導体工場の誘致合戦を取材していたところ、面白いことを知った。50州が激しい誘致合戦を繰り広げ、「半導体フレンドリー」環境へと自ら進化しているということだ。誘致合戦の失敗を教訓に、教育やインフラにさらに投資し、これを基に次の挑戦を準備している。

     

    (1)「先週、SKハイニックスが38億7000万ドル(約5800億円))の投資を発表した米インディアナ州は、2022年にインテルの200億ドル(約3兆円)規模の工場誘致合戦で失敗した経験がある。当時、隣国のオハイオ州と接戦の末、負けた。オハイオ州が、インディアナ州より税額控除や直接補助金のようなインセンティブをより多く約束したためだろうか?必ずしもそうでもなかった。補助金は同じような金額だったが、2つの州において最も大きな差は、「豊富な人材」だったというのが、当時の米マスコミの分析だ

     

    米国では、各州が半導体工場誘致合戦を繰り広げている。誘致で勝つには、半導体の豊富な人材を供給できるどうかがポイントとされている。

     

    (2)「(半導体誘致では)採用できる半導体の高級人材が、どれほど豊富なのかが重要条件であり、オハイオ州コロンバス市の大卒人材数が魅力的に働いたという。実際、インテルのオハイオ州新工場の敷地は、オハイオ州立大学から車で25分の距離だ。もう少し距離を広げて、車で数時間内にあるカーネギーメロン大学の存在も影響した。インテル招致合戦の当時、インディアナ州商務長官だったブラッド・チェンバース氏はニューヨーク・タイムズ(NYT)とのインタビューで、「多くの教訓を得た。最大の教訓は、大手半導体メーカーに提供できる土地やインフラ、人材プログラムをより魅力的なパッケージで準備しなければならないということだった」と明らかにした。補助金は当然であり、それ以外の総合パッケージも必要であることを身にしみて感じたのである。

     

    半導体誘致には、工場用地・インフラと並んで人材プログラムが不可欠である。

     

    (3)「(インディアナ州は)インテル誘致失敗後の2年間、「豊富な人材」の部門で高い点数を取るために、州内の理工系名門大学に挙げられるパデュー大学が乗り出した。パデュー大学は2022年、米国で初めて半導体学位プログラムを作った。昨年は1億ドル(約150億円)を投資し、5年内に半導体専門教授約50人を採用すると明らかにした。優れた博士志望生を連れてくるための支援プログラムも作った。インディアナ州に18億ドル(約2700億円)の投資を約束した米半導体企業のスカイウォーターが、パデュー大学の努力に感動し、他の4州を抜いてインディアナ州を選んだという報道が出るほどだ」

     

    インディアナ州は、インテル誘致失敗後の2年間、「豊富な人材」育成に努力した。パデュー大学へ資金援助して、半導体専門教授を約50人採用した。半導体企業のスカイウォーターは、インディアナ州へ工場建設を決めた条件として、この人材教育プログラムの存在が決め手になったという。

     

    (4)「パデュー大学は、今回のSKハイニックスの投資においても主要パートナーとして浮上した。SKハイニックスの新しい高帯域幅メモリ(HBM)パッケージングの生産基地は、学内研究団地に位置する。パデュー大学は、敷地の割引などを含め、SKハイニックスに対し、約6000万ドル(約90億円)の支援も約束した」

     

    パデュー大学は、SKハイニックへ約90億円の支援を約束した。卒業生の就職先としてだけでなく、産学協同という意味もあるのだろう。

     

    (5)「一つの大学だけでなく、州政府の1兆ウォン(約1100億円)規模の直接・間接補助金、市政府の支援、地元のエネルギー企業までがパートナーとして参加し、SKハイニックスの誘致合戦に飛び込んだ。インディアナ州のデービッド・ローゼンバーグ商務長官も記者との電話インタビューで、「我々は半導体生態系を作って、テーブルの上に置いた」と繰り返し強調した。SKハイニックスの誘致に失敗したまた別の州は、おそらく今回の失敗を教訓にまた別の「半導体フレンドリー」戦略を組んでいるだろう」

     

    米国哲学は、プラグマティズムである。「失敗から学ぶ」哲学である。米国の底力を見せつける話だ。

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    日本半導体の素材・部品・装置企業では、国内新工場建設および増設が続いている。韓国メディアが9日、日本の半導体関連ニュースを取り上げるほど注目されている。日本政府が、半導体の生産に必要な材料を国内で調達するサプライチェーンづくりを本格化させているからだ。 

    『日本経済新聞』(4月9日付)は、「信越化学、半導体素材で56年ぶり国内新工場 供給網強化」と題する記事を掲載した。 

    信越化学が、群馬県に半導体素材の新工場をつくることが8日、わかった。国内での製造拠点新設は56年ぶり。三井化学も山口県の拠点で増産体制を整える。半導体の製造装置や素材は、日本企業のシェアが高い製品が多い。戦略物資として各国が半導体産業の集積を進めており、日本でも素材まで含めたサプライチェーン(供給網)づくりが本格化する。

     

    (1)「信越化学の新工場は2026年に完成し、フォトレジスト(感光材)や原版材料といった半導体ウエハーに回路を描く露光工程で使う材料を生産する。群馬県伊勢崎市に約15万平方メートルの事業用地を取得し、約830億円を投じる。国内での拠点新設は塩化ビニール樹脂などを手がける1970年の鹿島工場以来となる」 

    TSMCの熊本進出でも、地元での半導体関連投資が盛り上がっている。いよいよ半導体素材の増産投資という、「本丸」へ投資が波及してきた。信越化学の56年ぶりの工場建設が、象徴的な出来事になった。 

    (2)「フォトレジストは、露光材料の中でも日本企業が強みを持つ素材のひとつ。特に信越化学は世界シェアが約2割で、先端品に限ると4割以上とみられる。現在は、新潟県と台湾で生産しており、台湾は2021年、新潟県は22年に増設している。新拠点は半導体材料の戦略的な拠点として韓国や米国などへの輸出も担うほか、将来的には研究開発も手がける方針」 

    信越化学は、先端半導体材料では世界シェア4割に達している。国策半導体企業ラピダスは、27年からの本格操業を予定している。需要がますます増える情勢だけに、信越化学は投資に迷いがなかったであろう。

     

    (3)「三井化学は、半導体回路の原版を保護する薄い膜材料「ペリクル」を生産する山口県の工場を増設する。50億〜90億円を投じて、25〜26年に従来品より性能を高めた製品を量産する。ペリクルは露光装置で半導体ウエハーにレーザーを当てて回路を描く際、原版に傷やホコリが付着するのを防ぐ。露光装置を手がけるオランダのASMLは、より微細な回路を描ける次世代装置の投入を予定している。三井化学は、それに合わせて材料にカーボンナノチューブ(CNT)を採用し、従来品よりも強度と光の透過率を高めた次世代品を発売する」 

    三井化学は、「ペリクル」増産で山口工場を増設する。オランダのASMLが、日本へ研究所を設置するので、連絡を密にして開発を進めるのであろう。 

    (4)「日本は、経済安保の観点からも半導体の国内生産に取り組んでいる。台湾積体電路製造(TSMC)は、熊本県に日本初の生産拠点を設け、稼働を始めた。ラピダスは北海道に工場を新設し、27年にも生産を始める計画。半導体生産に必要な材料も国内で調達できるようにすることは、供給網の強化につながる。日本酸素ホールディングスは、製造時に使うネオンを26年めどに国産化し、富士フイルムは研磨剤「CMPスラリー」の国内生産を始めた」 

    TSMCは、熊本工場新設で政府補助金を支給される。その条件として、素材の6割を日本国内で調達する義務が課されている。国内素材メーカには、自然と市場が拡大された形だ。

     

    (5)「半導体材料は、マニュアル化できないノウハウや知見を持つ現場の職人的な技術蓄積がモノをいう分野でもあり、日本が技術優位性を保っている。英調査会社オムディアによると、日本勢の半導体材料主要6品目のシェアは約5割と、台湾の17%、韓国の13%を大きく上回る。ただ、高性能化する半導体の生産に最適な素材や装置を開発するには、顧客との継続的な擦り合わせによる改善が欠かせない。そのため一部の素材や装置で、生産や研究開発の拠点を海外に設ける動きが広がっていた」 

    下線部は、日本企業の強みである。トヨタ自動車の全固体電池の開発でも、電解質の素材が出光興産による「マニュアル化できないノウハウ」という職人芸へ依存している。半導体も全固体電池も、素材の生産ではこういう微妙な「技」が生きている。 

    (6)「半導体の供給網強化は、各国が取り組んでいる。韓国は2030年までに、装置や材料の外国企業の誘致を拡大する目標を掲げ、半導体産業の企業を誘致する大規模な工場団地の建設を進めている。台湾は20年に材料の自主生産を目標に掲げ、総額56億台湾ドル(約264億円)の予算を確保した」 

    韓国や台湾は、国産化比率の引上げに努力している。半導体製造では、装置が長年使用している日本製素材特性にマッチしてしまうという不思議な現象が起こっているという。この結果、韓国や台湾が素材国産化を進めれば当面、製品歩留まり率に影響が出るという。半導体素材が「マニュアル化できないノウハウ」の結果であろう。

     

     

     

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    岸田首相は、現地時間8日に米ワシントンへ到着した。韓国外交界では、岸田首相の今回の訪米によって、日本が米国の次期安保構想と合わせ、米国と分業して世界安保に関与する立場へ変化する契機と警戒する姿勢が見え始めた。韓国の立場が埋没するからだ。 

    『中央日報』(4月9日付)は、「日章旗掲げたホワイトハウス、日本『格子型安保』の中心国に浮上か」と題する記事を掲載した。 

    今回の訪米は、日本の首相として9年ぶりとなる国賓待遇の訪問だ。米英豪の国防相は、岸田首相の出国に合わせ共同声明を通じ、「米英豪3カ国の安全保障の枠組みであるAUKUS“ピラー2”プロジェクトに日本が合流する案を議論している」と発表した。 

    (1)「AUKUSはオーストラリアに原子力潜水艦を提供する“ピラー1”と、海底・量子技術・人工知能(AI)・サイバー・極超音速・電子戦武器などを共同開発する“ピラー2”で構成されている。日本が“ピラー2”に合流すれば、米国と未来先端武器技術を事実上共有できることになる。インド太平洋で中国の脅威に対応する米英豪3カ国同盟のAUKUSが、日本が参加する「JAUKUS」に変貌する様相だ」 

    日本が、AUKUSの“ピラー2”へ参加すれば、米国と未来先端武器技術を事実上共有できる。これまで米国は、日本へ軍事技術を開示しないできたが、その壁を取り外す。その代わり、日本は海底・量子技術・人工知能(AI)・サイバー・極超音速・電子戦武器などの技術開発で協力する。これによって、事実上の「JAUKUS」になるというのだ。

     

    (2)「読売新聞は9日、今回の首脳会談で極超音速滑空体(HGV)の探知と追跡に向けた衛星網の構築に協力することを確認する予定だと報道した。HGVは音速の5倍以上の速度で飛行し探知と迎撃が難しいミサイルで、北朝鮮と中国、ロシアなどがHGV開発に全力を挙げている。また、メディアは共同声明に宇宙戦争などに備えて米国が日本の低軌道衛星網構築に協力するという内容も明示されるだろうと伝えた」 

    日本は、極超音速滑空体(HGV)の探知と追跡で米国へ協力する。日本が、HGV技術を既に開発している。2025年度頃から射程数百キロの「ブロック1」の配備を開始予定。2030年代からは、射程3000キロで極超音速飛行が可能な「ブロック2B」の配備を開始する予定だ。また対艦用途を視野に入れた性能向上や、潜水艦発射型の開発も検討されているという。「ブロック2B」では、中国本土が射程圏へ入る。 

    (3)「エマニュエル駐日米国大使はこの日、山田重夫駐米日本大使とともに参加した戦略国際問題研究所(CSIS)主催の対談に「これまでの『ハブ・アンド・スポーク』の同盟構造は現時点に適していない。重大な転換の時期を迎えて『格子型構造』を構築している」と説明した。彼が言及した「格子型構造戦略」は、ミニラテラリズム(少数主義)を意味する。北大西洋条約機構(NATO)のようなハブ・アンド・スポーク型同盟の代わりに共同の利害関係を持つ3~4カ国程度の「小数精鋭」協議体を通じて多様な事案別に離合集散し中国を迅速できめ細かく牽制する方式だ」 

    エマニュエル駐日米国大使は、NATO型の防衛システムでなく、3~4カ国程度の「小数精鋭」協議体で迅速に中国を牽制できると指摘している。参加国は多いと、意見調整に時間がかるからだ。この視点で言えば、韓国は外されるだろう。左派が政権を取れば、「親中」で結束を乱すからだ。

     

    (4)「エマニュエル大使は、格子型安保戦略を構成する要素としてAUKUSとともに米日印豪の安全保障の枠組みであるクアッド、キャンプ・デービッドでの首脳会議で構築された韓米日三角同盟、11日に予定された米日フィリピン3カ国首脳会議を挙げた。日本が、AUKUSに合流すれば、日本は米国主導のすべての核心多国間協力体に参加する唯一の同盟国になる。事実上、米国と安保を分業する役割を任されることになる。この席でエマニュエル大使は「大西洋とインド太平洋は分離できない単一な戦略的領域で、(格子グループを)包括的全体で統合することになるだろう」と話した。こうした構想が実現するならば日本の役割がインド太平洋を超えて拡大することもできる」 

    米国が少数精鋭主義に転じれば、「日本は米国主導のすべての核心多国間協力体に参加する唯一の同盟国になる」と韓国外交界はみている。 

    (5)「在日米軍司令官は現在、3つ星将軍(注:中将)である。だが、実質的作戦権を持つ4つ星将軍(注:大将)に格上げする案が議論されている。(韓国)外交界では、「米国が長期的に東京へ北東アジア司令部を創設して、韓米連合司令部の役割を統合する可能性も排除することはできない」という観測も出ている。実際に、米国のアジア核安保政策を総括したリチャード・ローレス元米国防副次官は最近、中央日報とのインタビューで「対北朝鮮対話の進展がなければインド太平洋軍司令部、韓国、日本をさらに深く統合しなければならない」として、北東アジア司令部創設の可能性に肯定的な立場を明らかにした」 

    韓国では、在日米軍司令官が将来、作戦指揮権を持つ大将クラスになると予想する。これは、米韓連合司令部の指揮権が、在日米軍司令官に移る事態を想定しているからだ。となると、米韓司令部が、在日米軍司令分に所属すると危惧している。 

    (6)「(韓国)外交消息筋は、「現実的にすぐ実現される可能性は低いが、北東アジア司令部の創設は北朝鮮を狙った在韓米軍の性格変化を意味する。北朝鮮を防がなければならない韓国の立場では、米国に反対しなければならない状況に置かれることになりかねない」と懸念する」 

    韓国は、何かに付けて「日韓対等論」を主張している。米国が東京へ北東アジア司令部を創設すれば、韓国側から反対論が出るであろう。

     

     

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