中国は、レアアースの主要生産地であり、世界中へ「レアアース主権」を振り回している。日本への輸出規制は厳しいもので、2026年1月から半年間の輸入量が、規制前だった24年の同じ期間の2割前後にとどまったことが分かった。日本経済新聞調査の結果だ。これによると、ベトナムや米国など中国以外からの代替調達が思うように進んでいない。このまま中国による輸出規制が続けば、日本企業の生産活動への影響は避けられない情勢と悲観論で覆われている。
果たしてそうだろうか。財務省の輸入統計では、レアアース製品だけが急減しているが、実はレアアース鉱石で輸入して日本国内での精錬が始まっている。化学的精錬法(湿式精錬法)であるから公害が出るわけでなく環境親和性が極めて高いのだ。さすがの中国も、日本が国内精錬を始めたことに気付いていないのであろう。日本へ「勝ち誇った」姿勢で対処しているが、実態は日本の「判定勝ち」である。
『日本経済新聞』(8月15日付)は、「レアアース、代替調達進まず 上期輸入、中国規制前の2割 EV・半導体に制約」と題する記事を掲載した。
財務省が発表した貿易統計のデータをもとに、レアアースの輸入動向を調べた。
レアアースの中でも特に希少価値が高く、EVやハイブリッド車(HV)に使うモーターの磁石に不可欠なジスプロシウムの原料「ジスプロシウム鉄合金」と、半導体製造装置部品のコーティングなどに使うイットリウムの原料「酸化イットリウム」の2品目を調査対象とした。
(1)「ジスプロシウム輸入量は26年1~6月、13トンだった。中国による輸出規制が始まる前の24年1~6月と比べ82%減と大きく落ち込んだ。26年1月と2月、5月、6月の4カ月間に中国からの輸入実績がゼロとなった影響が大きい。同じ期間のイットリウムの輸入量は204トンで同74%減にとどまった」
イットリウムの輸入量が、今年1~6月に24年同期比で74%も減った。これは、すべて中国の意向によるものでなく、日本国内供給が部分的に始まっている結果でもある。後述の三井金属がイットリウムの生産を始めているからだ。三井金属は、中国へ輸出する計画まであった。これは、「晴天の霹靂」である。日本が、レアアースを中国へ輸出するなど想定外であった。
(2)「中国に代わる調達先を確保すべく、日本は中国以外での資源開発やリサイクル網の構築を急いでいる。26年1~6月には中国以外では米国やオーストラリアなど12カ国・地域(24年1~6月は3カ国・地域)からイットリウムを輸入した。ジスプロシウムも同期間にベトナムからの輸入実績があったが、いずれも十分な量を確保できていない」
これは、財務省輸入統計だけを見ているから、あたかもレアアースが「不足」しているトーンの記事になっている。しかし、国内のリサイクル(都市鉱山)によって、国内需要の40~50%を自給している。軽希土類は年間1.5〜2万トン、重希土類1500〜2000トンを回収している。日本の重希土類需要の7〜8割に相当する。この隠れた事実が、レアアース不足を補っているのだ。財務省輸入統計には載らない数字である。
さらに、鉱石輸入による国内精錬もレアアースの輸入統計には掲載されない。国内では、鉱石を輸入し三井金属、住友金属鉱山、信越化学の3社が26年から精錬を開始した。レアアースの国内精錬は、従来であれば公害問題で不可能であった。だが、化学的精錬法によってこれを克服している。中国にとっては、予想外の事態が起こっているのだ。レアアースは、リサイクルと国内精錬でほぼ賄える体制が出来上がった。日本が、尖閣諸島問題で中国のレアアース輸出禁止措置を受けた2010年以来、16年で懸案を自力で解決したことになる。
(3)「日中の対立は、日本企業の活動にも影響が出始めている。三井金属は26年4月に中国東北部遼寧省にレアアースを扱う営業拠点を新設したばかりだが、池信省爾社長は「現在の状況が続くか、状況がさらに悪化すれば閉めるという判断も選択肢としてあり得る」と明かす。三井金属は福岡県の工場でイットリウムを中心に半導体製造装置向けのレアアースを製造し、中国に輸出して新設した営業拠点で販売する計画だった。ただ、中国からイットリウムの原料が満足に手に入らず、現状では輸出に回す余力がないという」
三井金属は、中国へイットリウムを輸出する計画であった。都市鉱山の回収製品であろう。現状は、日中対立で中国から原料が入手できず、中国への輸出商談は宙に浮いている。
(4)「代替調達も進まないなか、日本勢の多くは在庫を切り売りしながら主要顧客への供給を何とか維持している状況のようだ。レアアースを扱う素材大手は「中国からの輸入が止まり非常に厳しい状況だ」と漏らす。AGCはイットリウムを使い、半導体製造装置部材の耐久性を高めるコーティングを手がける。「現状では生産に影響は出ていない」とする一方、中国以外の地域からの調達に向け代替品の性能評価も進める予定だ」
代替調達も進まず、日本勢の多くは在庫を切り売りしているとしている。だが、8月から重要鉱物特恵市場が稼働している。年末にはフランス2社から、レアアースが輸入される。鉱石の手配さえつけば、国内製錬が可能になっているのだ。悲観論に陥る必要性は全くないと言えよう。




