勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国は、レアアースの主要生産地であり、世界中へ「レアアース主権」を振り回している。日本への輸出規制は厳しいもので、2026年1月から半年間の輸入量が、規制前だった24年の同じ期間の2割前後にとどまったことが分かった。日本経済新聞調査の結果だ。これによると、ベトナムや米国など中国以外からの代替調達が思うように進んでいない。このまま中国による輸出規制が続けば、日本企業の生産活動への影響は避けられない情勢と悲観論で覆われている。

     

    果たしてそうだろうか。財務省の輸入統計では、レアアース製品だけが急減しているが、実はレアアース鉱石で輸入して日本国内での精錬が始まっている。化学的精錬法(湿式精錬法)であるから公害が出るわけでなく環境親和性が極めて高いのだ。さすがの中国も、日本が国内精錬を始めたことに気付いていないのであろう。日本へ「勝ち誇った」姿勢で対処しているが、実態は日本の「判定勝ち」である。

     

    『日本経済新聞』(8月15日付)は、「レアアース、代替調達進まず 上期輸入、中国規制前の2割 EV・半導体に制約」と題する記事を掲載した。

     

    財務省が発表した貿易統計のデータをもとに、レアアースの輸入動向を調べた。

    レアアースの中でも特に希少価値が高く、EVやハイブリッド車(HV)に使うモーターの磁石に不可欠なジスプロシウムの原料「ジスプロシウム鉄合金」と、半導体製造装置部品のコーティングなどに使うイットリウムの原料「酸化イットリウム」の2品目を調査対象とした。

     

    (1)「ジスプロシウム輸入量は26年1~6月、13トンだった。中国による輸出規制が始まる前の24年1~6月と比べ82%減と大きく落ち込んだ。26年1月と2月、5月、6月の4カ月間に中国からの輸入実績がゼロとなった影響が大きい。同じ期間のイットリウムの輸入量は204トンで同74%減にとどまった」

     

    イットリウムの輸入量が、今年1~6月に24年同期比で74%も減った。これは、すべて中国の意向によるものでなく、日本国内供給が部分的に始まっている結果でもある。後述の三井金属がイットリウムの生産を始めているからだ。三井金属は、中国へ輸出する計画まであった。これは、「晴天の霹靂」である。日本が、レアアースを中国へ輸出するなど想定外であった。

     

    (2)「中国に代わる調達先を確保すべく、日本は中国以外での資源開発やリサイクル網の構築を急いでいる。2616月には中国以外では米国やオーストラリアなど12カ国・地域(2416月は3カ国・地域)からイットリウムを輸入した。ジスプロシウムも同期間にベトナムからの輸入実績があったが、いずれも十分な量を確保できていない」

     

    これは、財務省輸入統計だけを見ているから、あたかもレアアースが「不足」しているトーンの記事になっている。しかし、国内のリサイクル(都市鉱山)によって、国内需要の40~50%を自給している。軽希土類は年間1.5〜2万トン、重希土類1500〜2000トンを回収している。日本の重希土類需要の7〜8割に相当する。この隠れた事実が、レアアース不足を補っているのだ。財務省輸入統計には載らない数字である。

     

    さらに、鉱石輸入による国内精錬もレアアースの輸入統計には掲載されない。国内では、鉱石を輸入し三井金属、住友金属鉱山、信越化学の3社が26年から精錬を開始した。レアアースの国内精錬は、従来であれば公害問題で不可能であった。だが、化学的精錬法によってこれを克服している。中国にとっては、予想外の事態が起こっているのだ。レアアースは、リサイクルと国内精錬でほぼ賄える体制が出来上がった。日本が、尖閣諸島問題で中国のレアアース輸出禁止措置を受けた2010年以来、16年で懸案を自力で解決したことになる。

     

    (3)「日中の対立は、日本企業の活動にも影響が出始めている。三井金属は26年4月に中国東北部遼寧省にレアアースを扱う営業拠点を新設したばかりだが、池信省爾社長は「現在の状況が続くか、状況がさらに悪化すれば閉めるという判断も選択肢としてあり得る」と明かす。三井金属は福岡県の工場でイットリウムを中心に半導体製造装置向けのレアアースを製造し、中国に輸出して新設した営業拠点で販売する計画だった。ただ、中国からイットリウムの原料が満足に手に入らず、現状では輸出に回す余力がないという」

     

    三井金属は、中国へイットリウムを輸出する計画であった。都市鉱山の回収製品であろう。現状は、日中対立で中国から原料が入手できず、中国への輸出商談は宙に浮いている。

     

    (4)「代替調達も進まないなか、日本勢の多くは在庫を切り売りしながら主要顧客への供給を何とか維持している状況のようだ。レアアースを扱う素材大手は「中国からの輸入が止まり非常に厳しい状況だ」と漏らす。AGCはイットリウムを使い、半導体製造装置部材の耐久性を高めるコーティングを手がける。「現状では生産に影響は出ていない」とする一方、中国以外の地域からの調達に向け代替品の性能評価も進める予定だ」

     

    代替調達も進まず、日本勢の多くは在庫を切り売りしているとしている。だが、8月から重要鉱物特恵市場が稼働している。年末にはフランス2社から、レアアースが輸入される。鉱石の手配さえつけば、国内製錬が可能になっているのだ。悲観論に陥る必要性は全くないと言えよう。

     

     

     

     

     

     

     

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    中国商用機C919は、米国の認証を受けずに「ローカル商用機」として飛行している。受注は、約1500機、確定注文が約1150機と豪語しているが、納入は3年半で42機、月平均では1機という極めて遅いペースである。これは、「紙の上では巨大産業、現実は試作機レベル」というギャップを象徴している。製造が遅いのは、自国でエンジンを製造できないという悩みに直面しているからだ。

     

    中国は、エンジンなどの精密工業に弱点を抱えている。中国の精密工業が、歴史的に弱い理由は、次の点にある。

     

    「手順・再現性」より「量・速度」を重視する文明だ。中国文明は古代から、大規模土木、大量生産、権力による動員を得意とし、精密・微細・再現性の文化が育ちにくい構造にある。精密工業は、0.1ミクロンの誤差を検出し、手順の厳密性が極めて重要である。不具合な点は共有して、改善を積み重ねることが必要でもある。中国の組織文化では、これと極めて相性が悪いのだ。

     

    「基礎科学」も体系的に育たなかった。中国は歴史的に、数学、物理、材料科学、計測学の体系化が遅れてきた。理由は、科挙が「暗記型」であり、科学的思考を育てなかったことだ。日本や欧州のように、実験、観察―再現性を重視する科学文化が育たなかったという致命的欠陥を抱えている。中国に、「化学的精錬法」が根付かないのは、実験、観察―再現性という習慣がないからだ。すべて、「アバウト」である。

     

    要するに、「失敗を共有する文化」がないのだ。精密工業は、失敗の記録改善標準化の循環が生命線である。中国は、失敗を隠す、データを改ざんするなど、トラブルを共有しない文化が根強く、品質の再現性が永遠に安定しないという欠陥を抱えている。本質的に、近代科学に不向きな性向である。

     

    『レコードチャイナ』(8月14日付)は、「中国『C919』、受注は1000機突破も納入は3年半でわずか42香港メディア」と題する記事を掲載した。

     

    香港メディア『香港01』(8月13日付)は、中国国産旅客機「C919」について、受注は1000機を突破しているものの納入は3年半でわずか42機にとどまっていると指摘した。

    記事によると、20267月までに対外的に公表されたC919の受注数は約1500機に上り、このうち確定している注文は約1150機に達している。

     

    (1)「航空会社に実際に引き渡された機体は、42機にとどまる。2212月の初号機引き渡しから37カ月が経過しているが、月平均の引き渡しは約1機、引き渡し率は約42%となっている。航空会社別では、中国東方航空の105機、中国国際航空の100機、中国南方航空の105機の計310機をはじめ、海南航空集団60機、チベット航空40機、春秋航空30機、吉祥航空20機など、注文は確実に積み上がっている。リース会社経由の注文も500機を超えている」

     

    凄い受注数である。実際に、受注があったかどうか不明だが、それにしては、生産が遅いものだ。

     

    (2)「生産・引き渡しは22年に1機、23年に2機だったが、24年以降は2桁となり、26年上半期はすでに910機と徐々に増加している。製造元の中国商用飛機(COMAC)は26年に45機、27年に55機、28年に80機の引き渡し目標を掲げているが、現時点では目標との差が大きい。記事によると、生産のボトルネックの一つになっているのがエンジンだ」

     

    大きな生産目標だが、現実の生産は微々たるものだ。

     

    (3)「C919は現在、米仏合弁のCFMインターナショナル製LEAP-1Cを搭載しているが、255月に米政府が中国向け輸出許可を一時停止した。同7月に制限は解除されたが、同年の納入は15機にとどまった。他方、国産エンジン「長江-1000A」は25年末に型式証明取得、26年第1四半期に搭載試験が行われており、輸入・国産の二本立て供給体制の構築が進められている。記事は、「235月に商業運航を開始したばかりで、現在は量産化の立ち上げ段階にある」と言及。C919の最終組立ラインは現在、上海・浦東の1本のみで、浦東臨港で建設中のもう1本の組み立てラインが完成・フル稼働すれば、年間150機の生産が可能になる見込みだとした」

     

    国産エンジン「長江-1000A」は、25年末に型式証明取得とされているが、国内機関によるもので、海外では通用しない。

     

    (4)「一方で、「客観的に考えれば、新しい生産ラインが初年度から成熟した生産ラインと同じ速度で稼働することは不可能だ」とも指摘した。そして、「製造できる」ことと「大量に製造できる」ことの間には大きな隔たりがあるとし、「生産ラインの立ち上がりが遅いという現実と、紙面上で積み上がる注文の盛況さとの間には、依然として大きな緊張関係が続くことになる」と論じた」

     

    中国が、欧米に負けまいと必死で「背伸び」している。何か、痛々しく映るのだ。権威主義国家とは、国民に対しても「見栄」を張らなければならないのだろう。

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    中国の7月の新規人民元建て融資は、4月以来となる今年2回目のマイナスとなり、減少幅は過去最大となった。季節要因や家計の借り入れ需要低迷が重石となった。これは、「季節要因」で説明できない現象だ。家計・企業の両方が、金融機関から借りない(=需要が消えた)という構造的現象になった。

     

    26年7月は、中国が信用収縮過程へ「突入」したことを示している。日本経済の1998~2003年と同じ現象が始まった。もはや、「泥沼」から脱出するにはどうするか、という深刻な事態である。

     

    『ロイター』(8月14日付)は、「中国新規銀行融資、過去最大のマイナス 需要弱く個人・法人とも減少」と題する記事を掲載した。

     

    7月の新規融資は、中国人民銀行(中央銀行)が14日発表した統計に基づくロイターの算出で3400億元(504億3000万ドル)の純減となった。4月は100億元減少していた。

     

    (1)「キャピタル・エコノミクスは、リポートで「銀行の名目貸出金利が引き続き低下しているが融資需要は弱い」と指摘。「最近のインフレ率上昇により今年の銀行貸出金利は実質ベースで入って大幅に低下している」と述べた。中国の銀行は通常、第2・四半期末に向けて融資を前倒しした後、減速させる。人民銀は月次の内訳を公表していない。ロイターは17月データを16月データと比較し7月の数値を算出した」

     

    金利を下げても、貸出が減るどころか減っている。明らかに、信用収縮過程へ「飛び込んで」いる。最悪事態へ向っているのだ。

     

    (2)「人民銀によると、17月の新規融資は10兆3800億元。前年同期の12兆8700億元を下回った。7月末時点の融資残高は前年比5.1%増。伸び率は6月の5.2%増から鈍化し過去最低となった。市場予想の5.3%増も下回った。家計が、債務圧縮(デレバレッジ)を続け、民間部門の借り入れ需要が低迷する中で、融資回復の兆しは乏しい。7月の住宅ローンを含む家計向け融資はロイターの算出で4603億元の純減、企業向け融資は1300億元の純減。6月はそれぞれ2646億元増、1兆5000億元増だった」

     

    7月の新規貸出は、3400億元の純減(過去最大)である。家計向けは、4603億元の純減で住宅ローンが落込んだ。企業向けは、1300億元の純減で投資が止まったことを意味する。こうして、7月の融資残高伸び率が、前年比5.1%増(過去最低)となった。

     

    (3)「人民銀は12日、適度に緩和的な金融姿勢を維持し、必要に応じて実効性のある追加措置を導入する方針を示した。ただ具体論には踏み込まず、政策金利や銀行預金準備率の引き下げを明示しなかった。キャピタル・エコノミクスは、「人民銀は最近の信用データの弱さについて特に懸念していないようだ」としたが、今後1年で約30ベーシスポイント(bp)の利下げが実施されるとの見方を維持した」

     

    金利を下げたら、人民元は売られる。金利を下げても貸出が増える訳でもない。既に、「流動性の罠」にはまっているからだ。

     

    (4)「中銀系の金融時報は、国内の信用システムが多様化しているとし、銀行融資だけでなく債券発行やその他の資金調達チャネルと併せて融資動向を投資家は評価すべきと論じた。中銀によると、2025年の社会融資総量の増加分に占める割合は、融資が45%、債券と株式による資金調達が合わせて47%と、初めて融資を上回った」

     

    これは、「信用システムの多様化」ではない。銀行が融資を渋っている結果、債券発行や株式発行に頼らざるを得なかっただけである。中国経済の現状が、資金調達多様化をさせるほど、まだ発展していないからだ。資金調達コストの一番安いのは銀行借入である。そこが貸出を渋っているのだ。要するに、銀行借入は最も安いが、銀行は貸さない。だから、企業は高コストの債券・株式へ依存せざるを得ないのだ。その結果、比率が逆転しただけである。これは、資金調達の「多様化」ではなく。「信用収縮の表れ」である。現実を見誤ってはならない。

     

    (5)「人民銀のデータによると、7月の広義マネーサプライ(M2)残高は前年同月比7.7%増と、アナリスト予想(7.9%増)を下回り、6月(8%増)から伸びが鈍化した。信用と流動性を示す広範な指標である社会融資総量残高は、前年比7.4%増で6月から変わらずだった。政府債の発行が加速すれば、こうした資金調達額が押し上げられる可能性がある」

     

    7月のM2増加率が、ついに8%割れの7.7%になった。中国経済の現状では、5~6%がM2の適正増加率とされてきた。この過剰供給分が、資金の海外流出原因とみられている。M2増加率鈍化は、7月の手形市場の閉鎖による当局の意図した結果とも言えよう。人民元相場維持という「最終防衛ライン」を守る準備である。第二次世界大戦の「ダンケルク」の戦いである。

     

     

     

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    韓国の最新世論調査で、「韓国経済は10年後に日本を上回る」という回答が、なんと51.9%と過半に達した。「日本が上回る」(14.0%)の3.7倍である。この結果は、GDPで韓国が日本を抜くという意味であろう。現在、韓国GDPは日本の3割程度である。それが、10年後に日本を抜くというのだ。こういう飛躍した結論を、何の疑いもなく信じているところに、大いなる危うさが潜んでいる。

     

    この結果が出たのは、半導体景気が絶頂であることや、李大統領の「半導体大国論」が国民世論でそのまま信じられていることだ。韓国半導体は、メモリである。汎用品で市況が大きく変動する。今はそのピーク状態にあるが、2年前は大赤字であった。こういう過去を忘れて、今は舞い上がっているのだ。日本のラピダスが、メモリ半導体よりも高付加価値のロジック半導体を27年から量産体制に入ることなど、韓国国民は全く知らず暢気なものである。

     

    ラピダスが、前工程(韓国が得意)と後工程(高付加価値化)を世界で始めて全自動化して、歩留まり率を極限まで引上げるという、韓国半導体が想像もできない世界が実現する。これにより、世界初の「分散型フィジカルAI」半導体を送り出す。これは、まず機械に装着されて日本工業製品の付加価値をぐっと引上げるのだ。韓国GDPは、日本よりもさらに引離される厳しい現実が到来する。これも知らずに、はしゃいでいる構図はメディアの責任でもあろう。

     

    『中央日報』(8月14日付9は、「『韓日の経済力は対等、10年後には韓国が上回る』韓国人の日本認識アンケート調査」と題する記事を掲載した。

     

    韓国人の相当数が、国家経済力は韓国と日本がほぼ同じ水準と見ている一方、個人の生活水準では韓国が日本を上回っていると感じていることが調査で分かった。また、10年後には韓国経済が日本を上回るという回答が多く、13の主要産業分野を比較した場合も韓国が9分野で優位だった。


    (1)「13日、エリムネットのオンラインアンケートプラットフォーム「ナウアンドサーベイ」は、光復81周年を迎え、全国の満20歳以上の1007人を対象に実施した「韓国人の日本認識」調査の結果を発表した。調査は7日から10日までの4日間実施され、標本誤差は95%の信頼水準で±31ポイント」

     

    韓国は、半導体景気でサムスンやSKハイニクスが一人5000万円台のボーナスが出たことで、国民全体が舞い上がっている。この状況は、永遠に続くわけでない。ラピダスのフィジカルAIが、出荷され始めた時点で冷や水を掛けられるであろう。こういう迫りくる「技術革新」の大波を、全く知らずにいるだけなのだ。

     

    (2)「生活水準については、「韓国が高い」と回答した人が37.2%だった。これは「日本が高い」(23.3%)より13.9ポイント多い。また、国家としての経済力を比較した場合、「韓国が高い」が33.5%、「日本が高い」が30.0%と、韓国が3.5ポイント上回った。「ほぼ同じ」は36.5%だった。「10年後には韓国経済が日本を上回る」という回答は51.9%で、「日本が上回る」(14.0%)の3.7倍にのぼった」

     

    韓国では、住宅高騰や家計債務が重くのしあがっている点を全く無視している。「10年後には韓国経済が日本を上回る」が、51.9%と過半である。現実を客観視できない韓国社会に対して、冷静さを求めたい。韓国経済界が、なぜ、「日韓経済統合論」を唱えているか。その客観的データを吟味すべきであろう。

     

    (3)「産業競争力の調査では5段階評価(1点=日本が優位、5点=韓国が優位)で、半導体が425点と最も高い評価を受けた。続いて文化コンテンツ(407点)、造船・海洋(401点)も4点を超え、韓国が優位と分類された。このほか、人工知能(AI)・ソフトウェア(373点)、二次電池(372点)、電子製品・家電(371点)、防衛産業(359点)、バイオ・ヘルスケア(326点)、自動車・モビリティ(324点)も韓国が優位という評価となり、13の産業分野のうち9分野で韓国が上回った」


    ここにずらりと並んだデータは、韓国の未来を保証するものではない。ラピダスのフィジカルAIが登場すれば、吹飛ぶことが目に見えている。自動車・モビリティで、韓国が日本を上回っているならば、現代車がトヨタ自動車を抜いて世界一になっていなければおかしいであろう。現実は、逆になっている。ムードでなく、現実感をもって韓国技術を評価すべきである。

     

    (4)「基礎科学・基盤技術は269点で、13の産業分野のうち唯一、日本が優位と評価された。また、先端素材・部品・装置(317点)、精密機械・ロボット(317点)、航空宇宙(309点)など基礎技術基盤産業については韓日間の格差は大きくないいう調査結果となった。これは完成品やコンテンツ分野では韓国の競争力を高く評価する一方、基礎科学や基礎技術の分野では日本の優位性を認める回答が相対的に多かったことを示している」

     

    自己過信状態の韓国でも、「基礎科学・基盤技術」となると冷静さを取戻すのであろう。工業発展の原動力は、基礎科学と基盤技術の強固さにある。この大前提を認めるならば、10年後に韓国経済が、日本を抜くことはありえない点を自ら認めているに等しい。シェイクピアの「夏の夜の夢」は、儚いものとされている。韓国は今、この状況にある。


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    中国の元首相朱鎔基氏が、8月12日に亡くなった。中国が、台頭する重要な時期に最も大きな影響力を振るった経済政策の立案者である。朱氏は、大規模な改革開放政策を実施したが、地方財政の土地依存、輸出依存、内需の弱さなど、現在抱える諸問題の発端をつくった人物としても記憶される。しかし、朱鎔基政策は、市場化を進める方向で改革した。問題は、朱氏の後継に当たる習近平氏が「改革続行」でなく、「改革阻止」した責任は重大である。

     

    習近平氏の政策は、朱鎔基氏とは「逆方向」であった。民間企業の締め付け、国有企業の強化、不動産規制の急ブレーキなどだ。これは、改革が既得権益と党支配を揺るがすことを理解していたからだ。党支配力を強める方向で、経済政策の舵取りを行ったのである。習近平氏は、改革ではなく統制を、市場ではなく党支配を、分配ではなく締め付けを選んだ。つまり、朱氏は改革方向を追及したが、習近平氏は改革そのものを拒否するという、「改革阻止」に動いた。こういう意味で、習近平氏こそ批判されるべき立場にある。朱鎔基改革は「構造的欠陥」を残したが、習近平氏はそれを「悪化」させたのである。

     

    『ロイター』(8月13日付)は、「中国悩ます朱鎔基改革の光と影、習指導部に迫る『棺おけ』の覚悟」と題するコラムを掲載した。。

     

    朱氏は中央政府の税収基盤を強化し、後に世界貿易機関(WTO)加盟を実現させた。この二つの功績は数十年にわたる経済成長を促した半面、不動産の売却と輸出に過度に依存する経済モデルを生んだ。20兆ドル規模の中国経済がこうした構造的欠陥を克服するには、朱氏に劣らぬ大胆さが求められる。

     

    (1)「朱氏は1991年に副首相に就任し、その後、中国人民銀行(中央銀行)総裁も兼務。危機的な局面にあった中国経済の事実上のかじ取り役となった。インフレ率は20%近くまで上昇し、中国は1989年の天安門事件がもたらした外交的打撃と、それに伴う経済的余波になお苦しんでいた。市場重視の改革は共産党内の保守派から激しい抵抗に遭い、当時の最高指導者トウ小平氏は政治的な行き詰まりを打開するため、92年に南巡講話に踏み切らざるを得なかった」

     

    朱鎔基氏が始めた市場重視の改革は、共産党内の保守派から激しい抵抗に遭った。これを救ったのが、トウ小平による「南巡講話」である。こういう苦闘を経てきた中国経済が、習氏によって簡単に「市場軽視」政策へ切替えられた。民営企業への抑圧である。

     

    (2)「機能不全に陥った中国経済に処方箋を示した医師がトウ氏だとすれば、執刀医は朱氏だった。その大胆な手術の影響は今も残る。朱氏が94年に実施した財政改革は中央政府の財政を立て直し、その力を強めた。一方、税収を中央に集中させながら、歳出の多くを省や市に負担させたため、地方当局は土地売却や簿外融資を収入源として頼るようになった。このため、習近平国家主席が2021年に不動産開発業者の債務削減を進めると、既に不安定だった地方財政は窮地に陥った」

     

    朱氏が94年に実施した財政改革で、地方当局は土地売却や簿外融資を収入源として頼るようになった。いわゆる「土地本位制」を構築するきっかけである。これが、不動産バブルを引き起すテコになったが、習氏はこれを利用して軍事費拡大を行った。

     

    (3)「朱氏が、国際舞台で成し遂げた最大の功績は、01年に中国のWTO加盟を実現し、その後数十年にわたる輸出主導の成長に道を開いたことだ。しかし、その代償として中国経済は海外市場と外国からの投資に大きく依存するようになり、25年の貿易黒字は過去最大の1兆2000億ドルに膨らんだ。内需が低迷する中、この成長モデルの弊害は一段と鮮明になっている。政府が「内巻」と呼ばれる消耗的な過当競争の抑制に乗り出しているにもかかわらず、企業は必死に値下げを続けている。一方、中国国内で行き場を失い海外に向かう製品に対し、貿易相手国の反発も強まっている」

     

    中国は、WTO加盟で一挙に工業国家へ仲間入りした。だが、WTO規定にないダンピングを使って、相手国市場を攪乱する手法を多用した。これが、中国製品を締め出す「デカップリング」を正統化させるきっかけになった。先進国と中国の「付加価値構造」を比較すると、中国は、「低賃金・低付加価値」であり、先進国の「高賃金・高付加価値」と全く相容れないことが判明した。

     

    このまま、中国製品の輸入を認めることは、先進国の「文明崩壊」招きかねず、デカップリングは正しい政策として位置づけられる。その意味で、米国は最初から中国工業製品を締め出してきた。正解であった。欧州が今、その分岐点に立たされている。日本は、中国製品を寄せ付けない深層構造になっている。

     

    (4)「中国政府が今日直面する問題は、多くの点で朱氏の経済改革が残した課題だ。当局は、不動産不況に歯止めをかけ、債務を抱えた地方政府の新たな財源を確保し、消費主導型の成長への転換を目指している。しかしこれらの目標を達成するには、朱氏が得意とした専門官僚的な政策対応だけでは不十分だ。富裕層と貧困層、中央政府と地方政府、国有部門と民間部門の間で資源と権限を再配分するという、政治的に困難な改革が必要になる」

     

    朱鎔基氏の残した課題について、習近平氏は見向きもせずに国有企業復活を推進した。朱氏の政策に反することを行った。その財源調達で、土地依存を一段と深めた。朱氏に従って民営化を推進すれば、現在のような経済不振を招くことはなかった。

     

    (5)「こうした改革は、既得権益層を動揺させかねない。朱氏はそのことをよく理解しており、かつて敵のために99個、自分のために1個の棺おけを用意したと語ったことで知られる。後継者たちが現在の難題に立ち向かうには、朱氏と同様の決意が求められる」

     

    習氏は、粛清という強圧手法で立ち向かってきた。「自分用」の棺おけなど、全く存在せず責任をすべて他人へ押し付けてきた。これ一つ取っても、朱鎔基氏と習近平氏は別次元の人間である。

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