勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    a0960_008527_m
       

    最近、米国の低信用「サブプライム」の中堅・中小企業に私募ファンド運用会社が融資するハイリスクの「私募融資市場」で破産・不良の事態が相次いでいる。2008年のリーマンショックと似たような危険信号の兆しが見えるという評価が出始めた。信用リスクへの警告音が鳴っているが、株価は日米ともに最高水準で「ノーリスク」状態である。虚を突かれることもありうる。「ご用心、ご用心」である。

     

    『ハンギョレ新聞』(11月12日付)は、「米サブプライムローン、相次ぎ倒産…『金融界全般に危険信号』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国のサブプライム自動車担保への融資を行うプライマレンド・キャピタルが10月22日、テキサス北部連邦破産裁判所へ破産保護手続きを申請した。プライマレンドは、低信用者を対象に自動車担保融資サービスを行ってきた中堅企業だ。信用等級が低い消費者に車を販売しながら高金利のローンを併せて提供してきたが、借主が高利の自動車分割払い金を払いきれず延滞が増え、破産につながったと分析されている」

     

    サブプライム(低信用者)を対象にして、自動車担保融資サービスを行ってきた中堅企業が倒産した。借り主が、ローンを返済できず、業者が資金的に行き詰まって倒産したものだ。

     

    (2)「これに先立ち、9月にも同様のサブプライム自動車ローン会社のトライカラーが破産手続きに入った。トライカラーに続き、自動車部品供給会社のファースト・ブランズも負債の負担で9月末に破産申請をした。私募ローンは、銀行でなく私募ファンドおよび資産運用会社が年金基金・保険など長期性向の投資家からファンド資金を集め、主に中小企業に直接融資する市場だ。国際金融センターニューヨーク事務所は、「サブプライムローンの場合、多くの融資金融会社に対する重複担保提供、担保操作・詐欺、財務情報操作などを投資家が事前に把握しにくいという構造的な脆弱性を示している」と評した」

     

    9月にも、サブプライムローン企業が倒産している。私募ローンは、私募ファンドおよび資産運用会社が、投資家からファンド資金を集め、主に中小企業に直接融資する市場である。サブプライムローンの場合、投資家が情報開示面で事前に情報を十分に把握しにくい事情があるからだ。

     

    (3)「サブプライム私募ローン市場はこの数年間、監督規制の空白の中で伝統的な銀行融資に代わって急成長したが、今回不良・破産事態が連鎖的に発生し、米国の金融市場全般に信用リスクの兆候が表れているという懸念が広がっている。私募ローン市場は、2008年のグローバル金融危機以降に銀行規制が強化されると、中小・中堅企業に直接融資を提供することで急速に成長。現在の世界の市場規模は約2兆ドル(米国が70~80%)に達するものと推定される。この10年間で3倍以上になるなど急激に成長した」

     

    この数年間、銀行融資は当局の監督が厳しくなっている一方、サブプライム私募ローン市場は規制の外で急速に成長してきた。2008年のリーマンショック以降、銀行規制は強化されてきたが、私募ローン市場はその圏外にあって急成長してきたのだ。現在の世界の市場規模は、約2兆ドル(米国が70~80%)と推定されるほどの急成長ぶりである。

     

    (4)「グローバル信用評価会社のフィッチによると、米国の私募ローン市場のデフォルト比率(元利金返済が60日以上延滞されたサブプライム借主の比率)は9月に8.4%となり、2022年以降増加し続ける傾向にある。私募ローンは主に不透明な非公開ローンなので、個別の融資条件と担保構造、借入者の財務情報などに関する実質的リスクを把握しにくく、借主に対する信用評価はほとんどが資産運用会社の自主モデルに依存するため、信用が過大評価される問題があるといわれている」

     

    サブプライムローンは、借主に対する信用評価は資産運用会社の自主モデルに依存するため、借り主の信用が過大評価されている。ここが、盲点になって焦げ付け債権を生んでいる。

     

    (5)「最近の米国サブプライム私募ローンの連鎖不良に対して、JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営者(CEO)は先月14日、「ゴキブリが1匹現れたら、実際にはさらに多くいる」とし、今回の破産は市場全般においてもっと広範囲な問題を表わす信号でありうると警告した。破産した数社に限った単発事件ではないということだ。国際決済銀行(BIS)は、米国の保険会社が保有している私募ローン資産で信用等級が過大評価されている可能性があると警告した。2008年の金融危機直前、米国の住宅担保サブプライムモーゲージが慣行的に高評価されたことが想起させられるということだ」

     

    JPモルガンのダイモンCEOは、かねてからサブプライムローンの私募ファンドに警戒の目を向けてきた。私募ファンドは、当局の規制が少ない点に警告を発してきた。

     

    (6)「私募ローン市場の主な借入者は、中小・中堅企業で高金利、インフレ、景気低迷などに脆弱な方だ。私募ローン業者の今回の連鎖破産問題は、今後米国で景気低迷および信用サイクル下降局面が発生すれば、深刻な信用リスクに広がりうるということだ。投資銀行ムーディーズは最近、「私募ローンのポートフォリオの不良情報は他の公開市場よりもはるかに不透明で、問題が生じても表にあらわれるシグナルが遅い」として、私募ローン市場の潜在的リスクを警告した」

     

    私募ローン市場には、制度が監視していないという大きな問題がある。これが急激な成長をさせた面もあるだけに、脆弱性を抱えているのだ。この「金融制度からの落ちこぼれ」が、大きな禍根を残すリスクを抱えていることに留意すべきである。米国経済は、絶えず成長の芽を求めて躍動している。それが、金融危機を生む要因でもある。こうした意味で、米国でサブプライムローン危機が起こらないという保証はどこにもない。日本は今、それに備えておくべきである。株価が,最高水準にあるだけに衝撃は大きいだろう。

     

     

    caedf955
       

    トランプ米大統領に逆風が吹き始めた。立て続けに、国内選挙で民主党候補に敗れたからだ。「山高ければ谷深し」の喩えのように、無党派が反共和党へ向っている。理由は、消費者物価の高騰である。トランプ米大統領は14日、220品目を超す食料品を対象に相互関税を撤廃するための大統領令に署名した。原産国を問わずコーヒーや牛肉、バナナなど多くの食料品に相互関税がかからないようにし、価格高騰に対処する。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月16日付)は、「失速し始めたトランプ2.0 外交・内政とも誤算、離れる無党派」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米政権の発足から10ヶ月。投資減税や移民対策などで当初は成果を出したものの、足元では対中外交や物価対策で苦戦が目立つ。中間選挙や大統領選で重要な無党派層の支持率が低下し、関税の一部引き下げなど過激な政策の修正に動き始めた。

     

    (1)「トランプ政権幹部は、「深刻に受け止めているのはニューヨーク市長選ではなくバージニア知事選」と指摘。同州では民主党が4年ぶりに知事の座を共和党から奪還した。勝敗を決めたのは無党派層。2021年の前回選挙では、無党派の54%が共和党候補に投票した。今回は一転して59%が民主党候補に票を投じ、共和党候補(40%)に19ポイントもの大差をつけた。

     

    「死に体」であった民主党が、トランプ氏の「敵失」で復活してきた。無党派が、民主党支持に回ったからだ。理由は、物価高である。物価が、政党支持率を左右するという「原則」を立証している。

     

    (2)「米国は無党派が4割。中間選挙や大統領選も無党派層が左右するが、トランプ大統領への支持率は急低下する。米ギャラップの調査によると、無党派層の支持率は政権発足直後の46%から33%へと低下した。失速の理由は何か。無党派が重視するのは、思想信条ではなく国内景気。ミシガン大の消費者態度指数をみると、無党派のデータは1月の68.3から11月には45.0へと大幅に悪化した。トランプ政権はスタート半年で大型の減税・歳出法を成立させ、日本などと関税交渉もまとめ上げた。それでも無党派の支持率と景況感が悪化するのは、生活コストの改善が進まないことにある」

     

    米国では、無党派が4割とされる。この層が、自らの生活感覚に合わせて支持政党を決めている。物価が、重要なメルクマールである。日本も同じだ。

     

    (3)「国務省元高官は、「トランプ政権の弱体化をみて、中国もロシアも米国に譲歩するのをやめてしまった」と憂慮する。トランプ政権は中国製品の関税率を一時145%まで引き上げて圧力をかけた。中国側はレアアースの供給カットで対抗。トランプ氏の支持率に陰りがみえると、10月末の首脳会談で貿易不均衡の解消につながる譲歩策を一切出すのをやめた。「就任初日の停戦合意」を主張したウクライナ和平も膠着状態にある。トランプ氏は10月、ロシアのプーチン大統領に再会談を持ちかけたが、ロシア側が譲歩を拒んで首脳会談自体をキャンセルせざるを得なくなった。中国もロシアも、トランプ政権を焦らせるほど新たな譲歩が引き出せるとみる。支持率が低下するトランプ政権は短期的な成果を求めざるを得ず、外交カードを狭めて失策を重ねるリスクがある」

     

    中ロが、トランプ支持率の下落をみて米国への譲歩を取り止めたとしている。これは、いささか言い過ぎであろう。中国もロシアも長期の外交戦略に従って動いている。ならば、米国の物価動向が、中ロの外交政策を左右するという「珍説」になる。

     

    (4)「排他的な移民政策を敷くMAGA(米国を再び偉大に)路線も転換の兆しがある。トランプ氏は11日のテレビ番組で「米国には特定の才能が不足しており、国内に入れなければならない」と合法移民を認めるような発言した。米国景気の下支え役はハイテク分野の設備投資。建設と運営には海外の人材が欠かせない。「優秀な移民が必要? 耳を疑ったね。グローバリストの入れ知恵だ」。トランプ氏の発言にかみつくのはMAGA派のスティーブ・バノン元首席戦略官。MAGA派を代表するマージョリー・テイラー・グリーン下院議員も移民対策などでトランプ氏を批判し、怒ったトランプ氏は同議員の支援を取り消すと表明した」

     

    排他的移民政策は、MAGAを熱狂させたが、弊害も大きくなって来た。人材不足である。本来、移民国家の米国が、移民排除とは大きな矛盾である。MAGAの人たちも、移民の子孫である。既得権益主義の限界である。

     

    (5)「無党派を意識して現実路線に立ち返れば、今度は岩盤支持層の離反につながるジレンマがある。26年11月の中間選挙まで1年。高値圏の株価が頼みの綱だが、トランプ体制は失速と迷走の2つのリスクを抱え始めた」

     

    トランプ氏は、国民に向けて得意の「ディール」を行わなければならなくなった。物価を引下げるには、関税が障害になる。最高裁の判決が年内に予想される。相互関税が違憲となれば、トランプ支持率は大きな影響を受ける。どう手を打つか、だ。

     

    a0001_001078_m
       

    スタバは、1999年に北京市で中国1号店を開き、コーヒーが一般的ではなかった同国にカフェ文化を広めた。中国内陸部の雲南省では、コーヒー農園を支援し、グローバルでの調達力を背景に現地のコーヒー豆市場でも強い影響力を持ってきた。そのスタバが、現地資本の現地資本のボーユーと合弁会社を設立し事業の立て直しを急ぐ。企業価値は、40億ドル(約6100億円)で、ボーユーが6割、スタバが4割を出資する。合弁会社はスタバ本社からブランド使用のライセンス供与を受けて事業を展開する。

     

    『レコードチャイナ』(11月15日付)は、「スタバなどが中国事業を一斉売却?その真相は…―中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディア『第一財経』(11月13日付)は、米スターバックスなど外資系飲食チェーン企業が中国事業を「一斉売却」するという情報の真相について報じた。

     

    (1)「記事は、スタバが今月3日に中国事業について、自社が40%、中国企業が60%の株式を保有する合弁会社を設立して店舗運営を行う戦略的提携を発表し、米ファストフードチェーンのバーガーキングも10日に中国事業について合弁会社を設立し、中国の投資会社が83%を出資する計画を明らかにしたと紹介した」

     

    スタバが、現地資本と組んで合弁会社にした理由は、中国市場が不況で未曾有の低価格追求時代になっているからだ。スタバの国際標準の経営システムを適用困難になったので、すべてを現地化する目的である。上海市中心部で11月初めにアメリカンコーヒーを注文する場合の価格は、スタバが27元(約590円)からなのに対し、ラッキンは割引クーポンを適用すれば14元からと約半分という。消費者が、節約志向を強めるなかで、スタバは「ぜいたく品」に映る。スタバが、生き残るには低価格化路線へ転換するほかないのだろう。トヨタもEV(電気自動車)では、部品からすべて現地化している。

     

    (2)「外資系飲食チェーンの中国事業をめぐる2大トピックにより、中国国内ではハーゲンダッツやコスタ、ピザハット、デカトロン、イケアなどさまざまな外資系ブランドの中国事業売却に関する未確認情報が飛び交う状況となり、「激しい市場競争や消費トレンドの変化に適応できず業績を悪化させている外資系ブランドが中国から一斉に撤退するのでは」という議論が起きていることを伝えた」

     

    中国では、外資系ブランドの中国事業売却に関する情報が飛び交っている。

     

    (3)「一方で、スターバックスが先月29日に発表した2025会計年度通期決算で、中国事業の売上高が31億500万ドル(約4780億円)ドルと世界平均を上回る前年比5%増となったことを指摘。店舗運営利益率も二桁水準を維持しており、同社が中国を国際市場の中で「最も収益性が健全な地域の一つ」と評価していることを紹介した。その上で、スタバやバーガーキングによる合弁会社設立の動きに関連して起きた外資ブランドの「集中撤退」の論調について、業界関係者が否定するとともに「運営モデルを調整している」ことの現れと強調したことを伝えた」

     

    スタバは最新決算において、中国市場で世界平均を上回る前年比5%増の売上を上げている。より高い利益を上げるには、現地化がベターという選択なのだろう。

     

    (4)「記事によると、業界関係者は、中国が巨大な消費市場であり、外資ブランドにとって引き続き魅力的な市場である一方、現地での競争が激化しており、外資ブランドは競争に対応すべく「運営や拡大の権限を現地のチームに委譲し、国境をまたぐ管理コストを抑えるいわば『軽資産型』モデルへの切り替えを進めている」との見方を示したという。また、確立されたブランドと予測可能な成長性を持つ外資ブランドは、中国資本にとっても魅力的な投資対象であると指摘。スターバックスの案件も「特に引く手あまただった」としている」

     

    外資ブランドは、厳しい中国での競争に対応すべく「運営や拡大の権限を現地のチームに委譲し、管理コストを抑える」という選択に切替えた。自前主義から提携主義への転換だ。

     

    (5)「記事は、バーガーキングの合弁会社設立も中国事業でさらなる成長を求める上での積極的な「戦略的行動」であることを示す情報として、中国資本の資金と力を使って35年までに中国国内の店舗数を現在の約1250店舗から4000店舗以上へと大幅に拡大する目標を設定していることを伝えた」

     

    バーガーキングの合弁会社設立も、中国資本の資金と力を使って35年までに中国国内の店舗数を3.2倍へ拡大する。「郷に入っては郷に従う」という外資の経営転換だ。

    a0960_008527_m
       

    韓国は、世界で8番目の原潜保有国になれると喜んでいる。これにより、米国への依存度合いを少なくした「自律軍隊」になれるとしている。だが、韓国が原潜を保有できるまでには米議会の承認が必要という。来秋、米中間選挙で民主党が議会の主導権を握れば、韓国原潜の審査には大きな壁が生じる。原潜が、朝鮮半島周辺防衛でとどまれるはずがなく、インド太平洋戦略へ引っ張り出されるというのだ。

     

    『中央日報』(11月14日付)は、「韓国は原子力潜水艦保有国になれるのか」と題するコラムを掲載した。筆者は、マイケル・グリーン/豪シドニー大米国研究センター長/CSIS副理事長である。

     

    10月、トランプ大統領は韓国の原子力潜水艦建造を承認した。これが実現する場合、韓国は世界で8番目の原子力潜水艦保有国になる。原子力潜水艦は戦略的価値が非常に大きい。海上艦艇はミサイル攻撃に脆弱だが、潜水艦はいくら技術が発展しても探知が容易でない。また原子力潜水艦は潜航距離が長いため、数カ月間も水面に浮上する必要がなく、速度も速い。


    (1)「世界主要国の海軍は潜水艦乗組員出身者が参謀総長を遂行している。米国、オーストラリア、日本、英国は潜水艦の建造を船舶建造の最優先順位に置いている。今後、強大国間の海上紛争で戦艦の役割を潜水艦が代わりにすることになるだろう。中でも原子力潜水艦が最高の位置を占めるはずだ。いくらトランプ大統領とはいえ、彼の承認が直ちに政府の公式政策決定や米議会の承認を意味するわけではないからだ。AUKUS(オーカス)協定で自国内において原子力潜水艦を建造する予定のオーストラリアの場合も、必要な輸出統制、技術移転および技術力量改革過程が順調でなかったのを筆者は実際に見てきた。オーストラリアが経験した過程に韓国を代入してみよう」

     

    海軍において、原潜は最高の地位を占めている。それだけに技術移転は、最高の機密を要する。壁が厚いのだ。

     

    (2)「まず、専門家らは韓米原子力協定に注目する。この協定に基づくと韓国は高濃縮ウランを使用できない。韓国内の核管理問題に対する米国の懸念から過去の韓米原子力協定改定は順調でなかった。たとえトランプ政権が協定を改定して米上院が批准するとしても、韓国は米国のITAR(国際武器取引規定)輸出統制再整備のための協議に入らなければならない。完ぺきな核管理・監督履歴と敏感な極秘情報保護履歴を持つオーストラリアも改編交渉に数年かかった。ITAR改定を通じてAUKUS協定の履行が可能になったが、米議会は暗黙的にこうした改定が韓国や日本に拡大しないと前提にした」

     

    完ぺきな核管理・監督履歴と敏感な極秘情報保護を要求される。その折衝が数年かかるというのだ。

     

    (3)「原子力潜水艦は米海軍の核心的な差別点であり、こうした技術を共有するというのは今まで韓国の政府や産業が経験したことがない徹底的な検証を踏むことを意味する。さらに費用の問題もある。英国・オーストラリア海軍は原子力潜水艦建造、乗船人員補充、潜水艦維持に全体の海軍予算を投入しなければならない。原子力潜水艦は北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイルに対応する韓国海軍の優位を強化するだろう。しかしこれだけでは米議会の承認を受けるには足りない。特に来年の中間選挙で民主党が議会を掌握すればなおさらだ。もちろん韓国の原子力潜水艦導入が対中国集団抑止力強化のための措置ということに米議会の確信があれば不可能なことではない」

     

    原子力潜水艦は、北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイルに対応する韓国海軍の優位を強化するだろう。ただこれだけでは、米議会の承認を受けるには不足している。プラスαの交渉条件が課されるであろうという。

     

    (4)「こうした議論は、今まで韓国国内でなかった。在韓米軍の「戦略的柔軟性」を韓国政府が公式的に認めるのが難しい状況で、中国の攻撃に対する連合対応に投入される可能性があるという前提で韓国が原子力潜水艦を導入できるだろうか。米議会と海軍は疑いを抱くしかない。トランプ大統領の原子力潜水艦承認後に表れた状況のアイロニーはまさにこの点にある。韓国の業界とメディアはあたかも原子力潜水艦が容易に韓国に渡り、米国からの独立が可能というような大きな関心が続いている」

     

    韓国が、原潜を保有する目的は単一ではない。中国の攻撃に対する連合対応という前提で、は、韓国が原子力潜水艦を導入できないと示唆している。

     

    (5)「しかし、英国とオーストラリアの場合は違った。英海軍は、原子力潜水艦管理技術を米国に大きく依存していて、米国真珠湾を出港するバージニア級原子力潜水艦には遠からずオーストラリア乗船員が搭乗する予定だ。米原子力潜水艦は保守のためにオーストラリア基地に停泊できることになる。オーストラリアが今後、戦争に共にするという予測があったため、原子力推進技術の移転決定も相対的に容易だった。「一緒に行こう」として知られる韓米連合軍の朝鮮半島連合態勢は有効だが、朝鮮半島を越える域内に範囲を広げれば状況は変わる」

     

    豪州が、原子力潜水艦保有が認められたのは、AUKUSで米英と一緒に戦うことが条件であった。

     

    (6)「筆者が見るに、原子力潜水艦は韓国により大きな抑止力と地政学的影響力を与えるだろうが、それが自律性を意味するわけではない。原子力潜水艦保有国に入ることは域内およびグローバル同盟の強化を意味する。トランプ大統領と李在明(イ・ジェミョン)大統領の原子力潜水艦に対する熱意は歓迎するが、現実的に越えるべきヤマはこのように多い」


    韓国が原潜を許される条件は、インド太平洋戦略で米国などと共に戦うことが前提になるだろう。「半島主義」で朝鮮半島周辺の防衛では、許されないに違いない。

     

    a0005_000022_m
       

    中国の「戦狼外交」が復活した。中国政府は、高市首相の「台湾発言」に反発して、日本旅行を控えるように警告を発した。日本への嫌がらせである。中国人による日本の不動産漁りが、これで止まれば大歓迎である。家賃が高騰して、日本人は迷惑を受けてきた。津波のように押し寄せてこられるのは迷惑である。

     

    『レコードチャイナ』(11月15日付)は、「中国外交部が注意喚起『日本での治安悪化、渡航は当面控えて』」と題する記事を掲載した。

     

    中国外交部と在日中国大使館・総領事館は中国国民に対し、「当面の日本への渡航を控えるように」と注意を呼びかけました。

     

    (1)「中国外交部と在日中国大使館・総領事館は中国国民に対し、「当面の日本への渡航を控えるように」と注意を呼びかけました。今年に入ってから、日本の治安は不安定であり、中国人を狙った犯罪が相次いで発生しています。日本滞在中の中国人が襲撃される事件も多発しており、一部の事件は未解決のままで、中国人の日本での安全環境は悪化し続けています」

     

    日本は、世界一治安の良い国である。中国よりも数段上である。国を間違えているようだ。この日本へ、これまで押すな、押すなというほど中国人観光客が来ていた。事故が起こったか聞きたい。怒りの余りとは言え、よくぞこういう偽りの情報を出すものと「感心」する。

     

    中国の中産階級が、家族連れで日本へ避難してきている事実を認識しているだろうか。中国で、子供を教育したくないから日本へ移住してきた人々がどれだけいるか。自らを省みて発言することだ。「自省」の欠如が,どれだけ無謀かを知ることが必要だ。中国は、福島原発処理水の放出が無害であるにも関わらず、「有害」と騒ぎ立ててきたが、いかに非科学的発言であったか、世界中へその無知を晒した国だ。発言は、科学的・合理的にすべきである。感情にまかせた「暴走発言」は、国家の恥になることを知るべきである。

     

    (2)「さらに、日本の指導者による台湾問題に関連する露骨な挑発的発言の影響で、中日間の人的交流の雰囲気が著しく悪化し、日本に滞在する中国人の身の安全や生命に重大なリスクが生じています。外交部と在日中国大使館・総領事館は、中国国民に対し、当面の日本への渡航を避けるよう強く注意喚起するとともに、すでに日本に滞在している人々に対して現地の治安状況に十分注意し、安全意識を高め、自身の身を守るよう警告しました。また、緊急事態に遭遇した場合は、速やかに警察に通報し、在日中国大使館・総領事館に連絡して支援を求めるようと呼びかけました」

     

    日本で不法滞留している中国人が、自主的に帰国してくれることを祈るのみだ。もう一つ、日本の不動産の買い漁りも止めてすぐに売却すべきであろう。不動産物件の高騰が家賃の値上がりに跳ね返って日本人は迷惑を受けている。即刻、手持ち不動産を売って帰国して貰えれば、日本経済の安定に寄与するであろう。

     

    中国は、これまで韓国やフィリピン、豪州へもこういう「お触れ」を出して牽制してきた。結果は,いずれも「反中意識」を盛上げただけで、そのブーメランが中国を襲っている。中国外交部は、戦狼外交が得意である。だが、相手国を間違えると、手痛いしっぺ返しを受けるだろう。中国の恐喝は、日本には通用しないのだ。

    このページのトップヘ