勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    ロシアが、動員令を発令したのは第2次世界大戦以降初めてだ。ウクライナ戦争で戦闘力の補強がそれだけ急がれる状況ということだ。これまで、プロパガンダで「大勝利」を喧伝してきただけに、国民は「だまし討ち」にあった感じである。それだけに反発も大きい。果たして、動員令は戦闘力に実質的なプラスになるのか。元韓国軍少将によると、ロシア軍の戦力にならないという厳しい診断である。

     

    韓国紙『中央日報』(9月23日付)は、「焦るプーチンの動員令『むしろロシア軍を亡ぼすことも」3つの根拠』と題する記コラムを掲載した。筆者は、パク・ジョングァン/韓国国防研究院客員研究員/予備役陸軍少将である。


    冷戦時代、ソ連軍の平時兵力は約340万人にのぼった。戦時に動員令が発令されれば1、2週以内に約500万人が追加され、全体兵力は約840万人以上に増えるという計画だった。こうした大規模な軍隊に必要な装備と物資を管理するため、補給廠では約120万人が勤務した。冷戦以降、このような巨大システムは消えた。第2次チェチェン戦争(1999年)とジョージア戦争(2008年)では、全体規模10万人以下の範囲内で特殊部隊と臨時編成部隊で作戦を遂行した。



    (1)「こうした経験を基づいてロシア軍は2008年になって大規模な動員を放棄した。その代わり契約による募兵で約100万人の兵力を維持することにした。2009年に徴集兵士の服務期間を18カ月から12カ月に短縮し、徴集兵士が海外に派兵されることを法で禁止した。しかし募兵は計画通りには進まなかった。ウクライナ侵攻直前まで募兵人員は全体兵力の約40%未満だった。問題は、海外軍事作戦に投入できる実際の兵力が約20万~30万人に限られたという点だ。さらに戦争が長期化する場合、作戦持続の限界もあった。2012~13年、ロシア軍もこうした問題点を認識し、米軍の州防衛軍制度と似た方法の導入を検討した。しかし実質的な措置はなかった。結局、プーチンの動員令はこうした構造的な問題点ために避けられない選択だ」

     

    ロシア軍は、冷戦時代のような大規模な補給廠を持たずに、その場しのぎの小規模な兵站でことを済ませてきた。今回は、30万人(一説では100万人)の動員令になったが、これに即応できるバックアップ体制が取れるか疑問視されている。

     


    (2)「次のような理由で、実質的な戦闘力増強効果は期待しにくいと予想される。動員兵力が装備および物資、訓練の側面で準備できていない可能性が高い。2009年から徴集兵士の服務期間が12カ月に短縮されたからだ。現在30歳過ぎまでの予備軍は、部隊で約6カ月だけ生活し、戦術訓練に熟達する前に転役した。こうした兵士にまともな戦闘力発揮を期待するのは無理だ。さらに動員のために必要な装備と物資が準備されていない可能性がある。2000年代初めまで続いたロシアの経済危機は、動員装備および物資管理体制を含め、優先順位が低い軍事システムから瓦解させた。2008年以降に本格化した国防改革は現役の将兵と部隊に集中した。動員戦力に関心を向けて予算を投入する余裕がなかったのだ

     

    このパラグラフでは、ロシア軍の弱点を公にしている。30万人の動員兵力が、装備および物資、訓練の側面でバックアップできる準備できていない可能性が高いというのだ。敗戦直前の日本軍は、兵士を召集しても鉄砲を十分に与える数がなかった。ロシア軍でも、ソ連崩壊後の財政危機で、兵站部が充実しているか疑問という。

     

    (2)「動員した兵力を戦場に補充する方法は2つある。各個兵士単位で補充する方法と部隊単位で補充する方法だ。戦闘力発揮の側面では当然、前者よりも後者が望ましい。米軍はベトナム戦争で個別補充方式を適用して失敗した。80年代に全般的な国防システムの革新を経た後、米軍は湾岸戦争とイラク戦争では部隊補充方式を適用して成功した。ロシア軍は個別補充方式を適用するしかないだろう。動員した兵力を受け入れる部隊が準備されていなかったからだ。すなわち、東部および南部の戦線に投入された部隊の死傷者発生で生じた空席を個別に満たすということだ。その兵力が従来の部隊員と戦闘に必要なチームワークを形成していく過程は決して簡単でない。このため新兵の半分以上が最初の戦闘で死傷する。ウクライナ戦争でもこうした現象が再現される可能性が高い」

     

    動員した兵力を戦場に補充する方法は2つある。各個兵士単位で補充する方法と部隊単位で補充する方法だ。ロシア軍は、各部隊へ個別兵士を補充する方法を採用するとみられる。これは最悪で、新兵の半分以上が最初の戦闘で死傷するという。そうではなくて、部隊全体を入れ換えて戦う手法では戦闘力を増すという。ロシア軍に、兵站面でその余力がないのだ。



    (3)
    結論的に言えば、ロシア軍の動員令は戦闘力にも実質的なプラスにならず、国民の戦争持続意志を決定的に弱める可能性に注目する必要がある。ブリンケン米国務長官も「ロシア軍がそれだけ弱まったという信号であり、失敗の信号でもある」と評価した。プーチンの立場でそのような状況は最悪だ」

    30万人動員令が、何ら成果を上げずに「討ち死」という最悪事態になれば、ロシア国内は収拾のつかない事態に陥るだろう。その危険性が、極めて高いという結論である。

     



    あじさいのたまご
       

    韓国は、文政権時代の不動産無策によって、住宅価格が5年間に8割も暴騰した。この急騰劇は、相次ぐ利上げで下落に転じている。下落率では、すでに10年前に匹敵するほど。自壊作用が始まった。

     

    OECD(経済協力開発機構)が、7月に出した「OECD国家の住宅課税制度」報告書によれば、韓国は100平方メートル(約30坪)の住宅を買うのに、平均の年間可処分所得対比で16.6年を要する結果が出た。31加盟国の中でワースト2位である。この異常な状態は、崩れ去って当然である。

     


    『ハンギョレ新聞』(9月23日付)は、「
    韓国の不動産市場が非常事態、住宅価格の下落幅はさらに拡大か」と題する記事を掲載した。

     

    9月21日(現地時間)に米国の連邦準備制度理事会(FRB)が断行した3回連続となる「ジャイアントステップ」(政策金利の0.75ポイント引き上げ)を受け、韓国の金利も急激に上昇すると予想されることから、それが不動産市場に及ぼす影響も注目されている。

     

    (1)「22日の不動産業界の話によると、このところの金利引き上げや、景気萎縮への懸念、住宅価格がピークに達したという認識の拡散などにより、全国の住宅価格が安定傾向を示している中で、国内の金利が再び急激に上昇すれば住宅価格の下落幅はさらに大きくなりうるとの見通しが示されている。とりわけ、ここ12年の間に急激に価格が上昇した首都圏のマンション市場が直撃を受ける可能性が提起されている」

     

    韓国の不動産価格が、年間の平均可処分所得比で16.6倍にも跳ね上がっている実態は異常である。是正(値下がり)されて当然だ。下落することはあっても、値上りすることはない。

     


    (2)「ソウルをはじめとする首都圏の最近のマンション価格は7カ月連続で下落しているが、取引量は多くなく、価格の下落幅も小幅にとどまっている。韓国不動産院の調査によれば、今年初めから8月までにソウルのマンション売買価格は0.92%、京畿道は1.55%下落した。昨年のソウルの年間上昇幅が8.02%、京畿道が22.54%にのぼったことと比べれば微々たる下落だ。しかし、今後金利がさらに急激に上昇したり、物価上昇によって景気の萎縮が深刻化したりするなど、経済状況が悪化すれば、首都圏の主要地域を中心に住宅価格が大きく動揺する可能性は排除できないというのが不動産業界の分析だ

     

    下線部のように、不動産業界は不動産暴落を予知し始めている。これが現実になれば、多額の保証金を積んで月々の家賃がゼロの借家制度「チョンセ」は、空中分解の恐れが強まる。不動産下落で新規の保証金も下落するからだ。家主は、前の高い保証金返済資金をどこから調達するのか。新たな問題が発生する。

     


    (3)「最近の住宅価格統計の流れも風雲急を告げる。この日、韓国不動産院の調査を確認すると、今週の全国のマンション売買価格は先週に比べ0.19%下落し、不動産院による2012年5月のマンション相場調査開始からの10年4カ月間で最大の下落幅を記録した。ソウルのマンション売買価格は17週連続で下落し、京畿道(-0.25%)、仁川(インチョン)広域市(-0.29%)でも大幅に下落している。これにより、首都圏全体のマンション売買価格の下落幅(-0.23%)は10年1カ月前の2012年8月の-0.24%に次ぐものとなった」

     

    首都圏全体のマンション売買価格の下落率を比較すれば、10年1カ月前の下落率に次ぐという。だが、今後の政策金利引上げを見込めば、さらなる下落は必至である。相場は、急騰あれば急落あり、という経済原則に従うだけだ。

     

    (4)「不動産業界では、年内のさらなる金利引き上げや景気低迷に対する懸念の拡大により、市場では非常に急を要する売り物件のみが取り引きされる「取引の絶壁」現象が続くと見ている。KB国民銀行のパク・ウォンガプ不動産首席専門委員は「政府はここ3カ月で2回にわたり規制地域を大幅に解除するなど、住宅取引の活性化を図っているが、金利引き上げと景気萎縮に対する懸念を克服するには足りない」とし「ここ12年で住宅価格が急騰したソウル・首都圏地域を中心に、当面は実取引価格の下落が相次ぐ見通し」だと語った」

     

    下線のように、売り物件だけが目立って、買い手は先安を見込んで引っ込む事態が予想される。そうなれば、韓国経済の沈滞感が一層浮き彫りにされよう。

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    韓国は、家計や企業の民間部門が不振を極めている。今年6月末の民間部門の債務残高は、対GDP比で2.2倍という異常に高い債務残高を抱えていることが分った。現在のウォン相場急落とからめ、為替投機筋に売り材料として狙われるであろう。

     

    こういう事態が起こった背景には、過去5年の文政権による経済無策が影響を及ぼしている。強引な最低賃金引上げによる失業者増加と、住宅対策失敗による価格高騰のもたらしたローン増加が、民間債務を膨らませたものだ。韓国は、昨年から人口減社会に突入している。この状況下での債務残高急増は、潜在成長率を一段と低下させるであろう。膨らむ借金と低下する成長率。韓国経済は、急速に「伸び代」を失っている。

     


    韓国『東亞日報』(9月24日付)は、「家計と企業の借金がGDPの2.2倍、これ以上の不良融資の『爆弾回し』はダメだ」と題する社説を掲載した。

     

    韓国の家計と企業が、今年6月末現在抱えている借金の合計額は4345兆ウォンで、史上最大だという韓国銀行の報告書が出た。名目国内総生産(GDP)の2.2倍で、先進国の中では最高水準だ。借金が多いだけではなく、急激な利上げの影響で利払いの負担まで急速に増大している。適切に制御できなければ、金融システムの不良化につながり、韓国経済を脅かす潜在的な爆弾だ。

     

    (1)「6月末の家計負債は1869兆ウォンで、1年前に比べて3.2%増加し、企業負債は2476兆ウォンで10.8%増えた。不動産市場の低迷と取引の崖で、家計負債の増加傾向はやや鈍化しているが、原材料価格や人件費、電気料金などすべての生産コストが同時に高騰したため、企業の負債増加速度は速くなっている。利払いの負担がさらに大きくなれば、資金難のために融資を増やした企業の中では、稼いだ金で利子も返済できない限界企業が増加せざるを得ない」

     


    6月末の家計負債は、1年と比べて3.2%増。企業負債は、同10.8%増である。企業負債の増加ぶりが大きい。輸入物価上昇の影響を大きく受けていることは間違いない。韓国は、もともと支払い利息を営業利益で払えない「ゾンビ企業」が増えている。それだけに、この状況はゾンビ状態を一段と悪化させていることを覗わせている。

     

    (2)「その中でも、1年前より15.8%急増した994兆2000億ウォンの自営業者向け融資は、深刻な危険要因だ。社会的距離確保は解除されたものの、景気回復は遅い状態で、高金利による衝撃が追加で迫ったためだ。金融当局が、自営業者・小規模事業者に対する融資の満期、元利金の返済猶予措置を引き続き延長したため、問題はまだ起きていないが、内部では深く病んでいる。20代や30代の青年層の過度な借金も、遠からず社会問題へと飛び火する可能性が高い。借金をして投資したが、株式や仮想通貨価格の暴落で損害を被った青年たちが、突然、会社や学校に出ず、周辺と連絡が途絶えることも少なくないという」

     

    6月の自営業者の債務残高は、1年前より15.8%である。最低賃金大幅引き上げの後遺症とパンデミックの被害が重なっているのであろう。韓国は、自営業者比率(24.64%:2019年)が8位と高い国である。韓国よりも上位にある国は、トルコやメキシコなどだ。自称「先進国」の韓国としては、雇用構造の前近代性を改革しなければならない。

     


    韓国で自営業者比率が高いのは、中途退社するものの他企業に転職できない結果、自営業に転じることを意味している。「喧嘩早い」国民性ゆえに、些細なことで退職しても、転職の受け皿が少ないことで、こういう結末になっている。

     

    (3)「米国主導の利上げは、少なくとも来年まで、グローバル景気低迷はさらに長引く見通しだ。新型コロナの発生後、2年半以上累積した家計や企業負債を減らすために、出口戦略を実行に移さなければならない時だ。にもかかわらず、政府は自営業者などに融資満期は3年間、元利金返済猶予は1年間ずつさらに伸ばす一括措置を検討しているという」

     

    米国は、強い姿勢でインフレ抑制に臨んでいる。来年も利上げ続行姿勢だ。韓国は、米国に追随して利上げしない限り、資金流出が起こるリスクを抱える。となれば、韓国の利上げは今後も続くであろう。その分、債務者の金利負担が大きくなる。

     


    (4)「このような状況が続けば、健全な企業に投入されるべき資源が、再生可能性のないゾンビ企業に使われ、金融不安だけが大きくなる。庶民や青年などの脆弱階層のための負債調整プログラムを、早く施行するものの、自営業者を含む企業負債に対しては、金融会社に裁量権を与え、玉石を選別できるようにしなければならない。爆弾回しのように、不良企業への融資を延長することは自制しなければならない」

     

    韓国政府は、すでに金融弱者の救済策を発表しており、利払い期間の延長などに取り組むことになっている。早く、これらの「重篤債務者」を別枠で処理しないと、金融全体の流れが滞ると指摘しているものだ。韓国では、こういう扱いが常態的に行なわれている。「金融規律」が弛緩している結果だ。

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    ロシアのプーチン大統領は21日、「部分的動員令」を発表した際に核使用を仄めかしたことで、「核危機」が浮上している。米軍は、核を24時間体制で監視しているが、ロシア軍に対して非公式だが警告も与えているという。核を使用した場合、米軍が報復攻撃するという内容だ。

     

    一方、米諜報機関の情報によればプーチン氏が、自らウクライナ前線のロシア軍を指揮しているというのだ。前代未聞の話である。プーチン氏はウクライナ侵攻の結果が、自らの政治生命に直結する危機感に怯えている。こうなると、「部分的動員令30万人」も一部で報じられているように「100万人説」を否定できなくあろう。ともかく、プーチンの政治生命のかかる異常な戦争が繰り広げられている。

     


    米『CNN』(9月24日付)は、「米、ロシアに核兵器投入を警告 非公式接触で過去数カ月間」と題する記事を掲載した。

     

    複数の米政府当局者は24日までに、米国が過去数カ月間、非公式の接触手段を通じウクライナに侵攻したロシアに対し核兵器を使った場合、相応の結果を招くと警告してきたことを明らかにした。

     

    (1)「この接触手段の詳細や警告した時期などは即座にわかっていない。ただ、米政府当局者は米国務省が関与していることは認めた。バイデン米政権は、ウクライナ侵攻に備えた兵力集積や侵攻開始の時期に情報機関を通じて機微に触れるメッセージを伝えてきてもいた。ロシアのプーチン大統領は今月21日の演説で、ウクライナにおける戦況の劣勢が目立ち始めたことを受け、核兵器使用も威嚇していた。米政府当局者によると、プーチン氏が核兵器攻撃に触れたのは今年2月のウクライナ侵攻の開始以降、初めてではない。ただ、一部専門家は21日の威嚇は過去の類似の言動と比べ、より具体的かつ可能性の拡大をにじませたものと受け止めている」

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、プーチン氏がロシア軍に核投下を命じた際、ロシア軍がそれに従うか、と疑問符を投げかけている。これは、米国が非公式にロシア軍へ警告している事実を踏まえた記事であったことが分る。米情報当局は、これまでもロシア軍の動きについて相当微妙な部分までキャッチしていることから言えば、この「核警告」はロシア軍中枢へ届いているはずだ。

     


    仮に、ロシア軍が戦術核を投下した場合、米軍が直ぐに非核による殲滅的な報復攻撃することで、ロシア軍が壊滅的打撃を受けるとすれば、ロシア国内の反戦ムードは確実に高まる。それは、2024年のロシア大統領選挙に大きく響くことになろう。プーチン氏が、こういう「損得計算」をすれば、簡単に「核使用」という決断を下せないであろう。

     

    (2)「米中央情報局(CIA)の最高幹部らは公には、ロシアが核兵器の使用を準備している兆候はないと説明している。しかし、一部の軍事アナリストらはウクライナでの形勢の不利を踏まえ戦場での威力にとどめる戦術核を投入する事態を危惧してきた。米情報機関当局者たちは、プーチン氏はロシアあるいは自らの支配体制の存在が危険な局面に陥ったと判断した場合のみ、核の選択肢に頼る可能性があるとみてきた。ウクライナ戦争での敗北への直面がこれに該当するのかどうかは不明となっている」

     

    下線部のように、プーチン氏は自らの政治生命に関わる事態を防ぐべく核を使用すれば、逆に米国の報復攻撃によって、自らの政治生命が危険になる。こういう重大なリスクを背負っていることに気付くべきである。

     

    『CNN』(9月24日付)は、「ロシア軍、ウクライナ反攻への対応で意見割れる 米情報筋」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍の今月の進撃を受け、ロシア軍内でどのような対抗策が最善か、意見が割れていることが分かった。米国の諜報に詳しい複数の情報筋が明らかにした。ロシアは現在、ウクライナ東部と南部で守勢に立たされている。

     

    (3)「米欧の諜報に詳しい情報筋2人によると、ロシアのプーチン大統領は自ら戦場の将官に指示を与えている。これは現代の軍では異例の管理手法で、開戦当初からロシアに付きまとってきた指揮系統の機能不全を示唆していると情報筋は指摘す情報機関が傍受した通信では、ロシアの将校が互いに言い争ったり、母国の友人や親類とのやり取りで政府の意思決定について不満を漏らしたりする様子が確認できるという。情報筋の1人が明らかにした。また、ロシア軍幹部はどの地域の防衛線強化に集中すべきかでも一致できておらず、戦略をめぐる深刻な意見対立が生じているという」

     


    下線部のように、プーチン氏が戦場の将官へ作戦指示を与えているという。驚くべき「私兵化」である。軍務経験ゼロのプーチン氏が、手駒を動かすように軍隊を動かすのだ。古代の王になったような気分を味わっているに違いない。プーチンは「戦争狂」になった。ドイツのヒトラーは、塹壕の中からドイツ軍を指揮したが、プーチンも同じことを行なっている。「敗戦意識」が強くなってきたのだろう。


    (4)「
    ロシア国防省は、ウクライナの進撃が最も目立つ北東部ハルキウ州に軍を移動させていると主張するが、欧米の情報筋によると、ロシア軍の大部分は依然として南部にとどまっているという。ウクライナは南部ヘルソン周辺でも攻勢を掛けている」

     

    ロシア軍の主力部隊は、南部に止まっているという。ウクライナ軍のクリミア半島奪回作戦阻止という布陣だ。

     

     

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    中国は、共産党大会が10月16日から開催される。習氏の国家主席3期目が決まるというのが大方の見方である。同時に、共産党の規定に「台湾統一」を加えるかどうかも注目されている。習氏の国家主席中に、台湾統一を果たせという目標になるというもの。いずれにしても、前例を破っての国家主席3期目入りである。台湾侵攻と無関係ではない。

     

    中国は、ロシアのウクライナ侵攻を目の当たりにして、台湾侵攻作戦のマイナスがいかに大きいかを知ったはずである。だが、習政権発足以来10年間、台湾侵攻による「祖国大業」実現を唯一の目標にしている。習氏が、これに政治生命を賭けていることは明らかだ。ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ侵攻による「大ロシア帝国復活」を目指したのと同じレベルの目標である。

     


    習氏に誤算があるのは、盟友プーチン氏の戦略が粗雑であったことだ。だが、中国軍の組織もロシア軍譲り。同じ弱点を抱えていることに気づかずにいる。米軍は、すでにそのウイークポイントを知っている。米軍は、その弱点をつくだろう。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(9月19日付)は、「米、対中で有事計画作れ ホワイトハウスに総責任者を」と題する記事を掲載した。

     

    米中間の緊張は憂慮すべきレベルまで高まっており、とりわけ台湾を巡る対立は緊迫感を増している。米上院外交委員会は9月14日、世界が使う高性能半導体の92%を生産する台湾を支援する取り組みの一環として、台湾に65億ドル(約940お億円)に上る直接軍事支援をする「台湾政策法案」を可決した。

     


    (1)「(米国では)中国の台湾攻撃を抑止すべく、新たな対中制裁が検討されているだけに、台湾政策法案は地政学的緊張を一気に高める。にもかかわらず米国はいまだに、そうした紛争がもたらし得る様々な経済的影響に対応するための詳細なアクションプランも、今も続く米中経済の分断に対処する詳細な行動計画すらも作っていない。筆者が話を聞いた政府、民間部門の関係者で、この問いに明快かつ完全な回答を持っていた人は1人もいなかった」

     

    米国が、中国に対する具体的な経済面での行動計画を立てていないのは、中国の行動を見ている結果であろう。習氏が、国家主席3期目に入り「軍事経済化」すれば、一挙に進むに違いない。現在は、その予備段階である。

     


    (2)「米政府の対応は今のところ2つに分かれる。一つは中国が何かしでかせば報復措置として関税や制裁を科していく。もう一つは、米国の産業基盤を再構築するという政府主導の大所高所からのアプローチだが、現段階では曖昧な点が多い。トランプ前政権の対応は大半が前者だった。バイデン政権は、半導体、環境対応型の電池、主要鉱物、医薬品などの戦略的物資は国家的安全保障の対象とし、国内およびパートナーと呼べる地域と協力して、強靱性とある程度の余裕を持った生産体制を確立すること(フレンドショアリング)を目標としている」

     

    バイデン政権は、半導体の「チップ4」(日米韓台)形成に努めている。戦略製品では、これが最大のポイントになる。韓国が、まだ右往左往している。最終的には、自国の安全保障の観点から参加せざるを得まい。IPEF(インド太平洋経済枠組)は、半導体、環境対応型の電池、主要鉱物、医薬品など自由経済圏での供給網設立を目指している。レールは敷かれた。

     


    (3)「10月16日から開かれる中国共産党大会で再任され3期目入りがほぼ確実視される習近平総書記が、国家の安全保障の確保は経済成長以上に最優先すべき事項との考えを明らかにしている以上、我々はまさしくこうした問題を考える必要がある。中国政府はすでに最も必要な物資や技術については自給自足できるようにする「フォートレスチャイナ(中国の要塞化)」戦略を積極的に進めている。米政府も必要な物資と技術については自給自足できる体制を築きたい考えだ。とはいえ米国の場合、経済は分散化しており、民間企業が主体なだけに、どんなリスクがどこにあるのかを特定するのは容易ではない」

     

    習氏は、すでに「安全保障の確保は経済成長以上に最優先すべき事項」としている。これは、台湾侵攻に伴う西側諸国との軍事対立を前提にしている。中国が、経済制裁されるので、それに耐える経済システムを作ろうとしているのだ。中国は、経済成長政策を完全に放棄したので、米中の経済逆転もあり得ない。夢に終わった。

     


    (4)「米国が、経済を発展させるために中国のトップダウン型をまねるべきだと言っているのではない。イノベーションを起こすという意味で、米国は経済が分散化している点が強みとなっている。だが米中分断が進む世界にあって、軍事的な戦争であれ経済戦争であれ、衝突が起きた場合に備えて、しっかりとした対策プランを立てないままに安全保障上のリスクを高めるのは得策ではない」

     

    米中デカップリングは、中国を世界市場から切離すという意味だ。米国経済システムは、何ら変更なしである。中国は、グローバル経済であったから、初めて成長発展できたに過ぎない。封鎖経済になれば、技術も資本も西側から流入せず後退必至である。このことを、「東昇西降」という誤った概念で見誤っている。「弁証法」の誤読だ。 

     

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