最近、米国の低信用「サブプライム」の中堅・中小企業に私募ファンド運用会社が融資するハイリスクの「私募融資市場」で破産・不良の事態が相次いでいる。2008年のリーマンショックと似たような危険信号の兆しが見えるという評価が出始めた。信用リスクへの警告音が鳴っているが、株価は日米ともに最高水準で「ノーリスク」状態である。虚を突かれることもありうる。「ご用心、ご用心」である。
『ハンギョレ新聞』(11月12日付)は、「米サブプライムローン、相次ぎ倒産…『金融界全般に危険信号』」と題する記事を掲載した。
(1)「米国のサブプライム自動車担保への融資を行うプライマレンド・キャピタルが10月22日、テキサス北部連邦破産裁判所へ破産保護手続きを申請した。プライマレンドは、低信用者を対象に自動車担保融資サービスを行ってきた中堅企業だ。信用等級が低い消費者に車を販売しながら高金利のローンを併せて提供してきたが、借主が高利の自動車分割払い金を払いきれず延滞が増え、破産につながったと分析されている」
サブプライム(低信用者)を対象にして、自動車担保融資サービスを行ってきた中堅企業が倒産した。借り主が、ローンを返済できず、業者が資金的に行き詰まって倒産したものだ。
(2)「これに先立ち、9月にも同様のサブプライム自動車ローン会社のトライカラーが破産手続きに入った。トライカラーに続き、自動車部品供給会社のファースト・ブランズも負債の負担で9月末に破産申請をした。私募ローンは、銀行でなく私募ファンドおよび資産運用会社が年金基金・保険など長期性向の投資家からファンド資金を集め、主に中小企業に直接融資する市場だ。国際金融センターニューヨーク事務所は、「サブプライムローンの場合、多くの融資金融会社に対する重複担保提供、担保操作・詐欺、財務情報操作などを投資家が事前に把握しにくいという構造的な脆弱性を示している」と評した」
9月にも、サブプライムローン企業が倒産している。私募ローンは、私募ファンドおよび資産運用会社が、投資家からファンド資金を集め、主に中小企業に直接融資する市場である。サブプライムローンの場合、投資家が情報開示面で事前に情報を十分に把握しにくい事情があるからだ。
(3)「サブプライム私募ローン市場はこの数年間、監督規制の空白の中で伝統的な銀行融資に代わって急成長したが、今回不良・破産事態が連鎖的に発生し、米国の金融市場全般に信用リスクの兆候が表れているという懸念が広がっている。私募ローン市場は、2008年のグローバル金融危機以降に銀行規制が強化されると、中小・中堅企業に直接融資を提供することで急速に成長。現在の世界の市場規模は約2兆ドル(米国が70~80%)に達するものと推定される。この10年間で3倍以上になるなど急激に成長した」
この数年間、銀行融資は当局の監督が厳しくなっている一方、サブプライム私募ローン市場は規制の外で急速に成長してきた。2008年のリーマンショック以降、銀行規制は強化されてきたが、私募ローン市場はその圏外にあって急成長してきたのだ。現在の世界の市場規模は、約2兆ドル(米国が70~80%)と推定されるほどの急成長ぶりである。
(4)「グローバル信用評価会社のフィッチによると、米国の私募ローン市場のデフォルト比率(元利金返済が60日以上延滞されたサブプライム借主の比率)は9月に8.4%となり、2022年以降増加し続ける傾向にある。私募ローンは主に不透明な非公開ローンなので、個別の融資条件と担保構造、借入者の財務情報などに関する実質的リスクを把握しにくく、借主に対する信用評価はほとんどが資産運用会社の自主モデルに依存するため、信用が過大評価される問題があるといわれている」
サブプライムローンは、借主に対する信用評価は資産運用会社の自主モデルに依存するため、借り主の信用が過大評価されている。ここが、盲点になって焦げ付け債権を生んでいる。
(5)「最近の米国サブプライム私募ローンの連鎖不良に対して、JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営者(CEO)は先月14日、「ゴキブリが1匹現れたら、実際にはさらに多くいる」とし、今回の破産は市場全般においてもっと広範囲な問題を表わす信号でありうると警告した。破産した数社に限った単発事件ではないということだ。国際決済銀行(BIS)は、米国の保険会社が保有している私募ローン資産で信用等級が過大評価されている可能性があると警告した。2008年の金融危機直前、米国の住宅担保サブプライムモーゲージが慣行的に高評価されたことが想起させられるということだ」
JPモルガンのダイモンCEOは、かねてからサブプライムローンの私募ファンドに警戒の目を向けてきた。私募ファンドは、当局の規制が少ない点に警告を発してきた。
(6)「私募ローン市場の主な借入者は、中小・中堅企業で高金利、インフレ、景気低迷などに脆弱な方だ。私募ローン業者の今回の連鎖破産問題は、今後米国で景気低迷および信用サイクル下降局面が発生すれば、深刻な信用リスクに広がりうるということだ。投資銀行ムーディーズは最近、「私募ローンのポートフォリオの不良情報は他の公開市場よりもはるかに不透明で、問題が生じても表にあらわれるシグナルが遅い」として、私募ローン市場の潜在的リスクを警告した」
私募ローン市場には、制度が監視していないという大きな問題がある。これが急激な成長をさせた面もあるだけに、脆弱性を抱えているのだ。この「金融制度からの落ちこぼれ」が、大きな禍根を残すリスクを抱えていることに留意すべきである。米国経済は、絶えず成長の芽を求めて躍動している。それが、金融危機を生む要因でもある。こうした意味で、米国でサブプライムローン危機が起こらないという保証はどこにもない。日本は今、それに備えておくべきである。株価が,最高水準にあるだけに衝撃は大きいだろう。




