勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    エヌビディアの時価総額が、半導体メーカーとして世界で初めて1兆ドル(約140兆円)に達すれば、一握りの限られた企業の仲間入りを果たす。5月25日の米市場で24%余りも急騰し、史上最高値を更新した。AIブームが追い風となり、コンピューティングの新時代が想定よりも速いペースで到来していることが好感されたものだ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(5月27日付)は、「エヌビディア、生成AIの勃興見抜いた先見性」と題する記事を掲載した。

     

    米半導体大手エヌビディアは2022年、最先端の画像処理半導体(GPU)「H100」を発表した。同社史上最も有力な製品の一つで、単価も約4万ドル(約560万

    円)と最高水準だった。インフレが進行するなか、企業が支出を削減しようとしていた矢先の発表は、タイミングを見誤ったように思われた。そして同じ年の11月、対話型AI(人工知能)「チャットGPT」が発表された。

     

    (1)「エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は「22年はかなり厳しい年だったが、一夜にして好転した」と振り返る。米新興企業オープンAIが大ヒットさせたチャットGPTは「ひらめきの瞬間」をもたらし、「即座に需要を生み出した」という。チャットGPTの人気が急激に高まったことを受け、世界のテクノロジー大手や新興企業の間でH100の争奪戦が繰り広げられている。ファン氏によると、H100は「生成AI(自然なテキストや画像を即座に作成できるAI)向けに設計された世界初のコンピューターチップ」だ」

     

    最先端の画像処理半導体(GPU)「H100」は発売当初、荷動きは低調であった。それが、チャットGPTの発表でで一気に人気商品となった。

     

    ‘(2)「エヌビディアは、爆発的な広がりを見せる生成AIの黎明(れいめい)期に成功をつかんだ。この技術は産業を作り替え、生産性の大幅な向上をもたらし、数百万人の雇用を奪う可能性がある。この技術的飛躍はH100によって加速するとみられる。H100は米プログラミング界の先駆者であるグレース・ホッパー氏にちなんで「ホッパー」と名付けられたエヌビディアの新しい半導体設計思想に基づいており、米シリコンバレーでにわかに注目を集めている。「ホッパーに基づいた生産に乗り出すタイミングで全てが動き出した」とファン氏は述べ、大規模な製造が始まったのは、チャットGPTが発表されるわずか数週間前だったと明らかにした」

     

    H100が、生成AIの流れを作った。インターネット登場以来、最大の技術革新とも言われ始めている。生成AIは今や、世界の流れを変えようとしている。

     

    (3)「ファン氏は、利益の継続的な確保に自信をにじませる。その理由の一つは、米マイクロソフトや同アマゾン・ドット・コム、同グーグルといったクラウド事業者や同メタ(旧フェイスブック)などのインターネット企業、法人顧客からの爆発的な需要を満たすうえで、半導体受託製造の台湾積体電路製造(TSMC)と協力してH100の生産規模を拡大できることにある。AIに特化したクラウドインフラを手がける米スタートアップ「コアウィーブ」のブラニン・マクビー創業者兼最高戦略責任者は「(H100は)地球上で最も希少な技術資源の一つだ」と語る。同社には23年初めにいち早くH100が納入された。膨大なデータモデルの訓練に必要なH100を数千単位で手に入れるのに、最長6ヶ月待たされる顧客企業もある。新興AI企業は、需要が本格化した途端に供給が不足するのではないかと懸念を表明している」

     

    エヌビディアCEOのファン氏は、マイクロソフトやアマゾン・ドット・コム、グーグルといったクラウド事業者やメタ(旧フェイスブック)などのインターネット企業からの受注に自信をのぞかせている。世界は、生成AI時代へ突入する。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月30日付)は、「エヌビディアとTSMC 生成AIに専用半導体 年内投入へ」と題する記事を掲載した。

     

    半導体設計大手の米エヌピディアと半導体受託生産首位の台湾積体電路製造(TSMC)が、生成AI向けの専用半導体を年内に投入する。AIが回答を導き出す過程の速度を前世代品に比べて最大12倍にする。半導体は「新型コロナウイルス特需」の反動で市況が悪化するなか、米台の2強が次の成長分野でリードを固める。

     

    (4)「エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は5月30日、台北市内で記者会見し、「(AI向け半導体の)需要は非常に強い。サプライチェーン(供給網)のパートナーとともに増産を急いでいる」と生成AI向け市場の成長性を強調した。台湾出身のファン氏は同日開幕したIT(情報技術)見本市「台北国際電脳展」(コンピューテックス台北)に合わせて訪台した」

     

    ファンCEOは、台湾出身である。生産や、TSMCが担当する。

     

    (5)「エヌビディアは、AI分野で広く使われる画像処理半導体(GPU)を手掛け、AI向け半導体で世界シェア8割を握る。「Chat(チャット)GPT」に代表される対話型の生成AIの急速な進化を受け、AIデータ処理に特化した専用半導体を年内に投入する。エヌビディアが設計した半導体をTSMCが量産する」

     

    AIデータ処理に特化した専用半導体を年内に投入する。エヌビディアが、設計した半導体をTSMCが量産する。期せずして台湾にゆかりのある企業が、生成AI時代を切り開くことになった。

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    中国は、荒れた山野に植林して緑を増やす運動をしていたが、再び農地を増やす運動を始めている。食糧自給率が、70%台前半まで低下してきたからだ。台湾侵攻となれば、米国の経済封鎖は当然起こる。中国のトウモロコシの最大輸入国は米国だ。2035年には食料自給率が65%近辺まで低下するという指摘もある。すでに、大豆にいたっては15%まで低下しているのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月31日付)は、「米・ウクライナが牛耳る中国人の胃袋 習近平氏の不安」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の中沢克二編集委員である。

     

    造林をやめて畑に戻せ――。中国のインターネット言論空間で今、最もホットな言葉である。中国語のスローガンとしては「退林還耕」という四字熟語になる。各地で始まった公園をつぶしての耕地化、林伐採が映像付きで出回り、「税金の無駄遣いではないのか」といったシビアな声を含む賛否両論が巻き起こっているのだ。

     

    (1)「2012年、習近平(シー・ジンピン)が中国共産党総書記、続いて国家主席に就くと、自らの時代を特徴づける政策として「緑色運動」の旗を大々的に振ったのだ。温暖化防止という世界の潮流にも合致する環境重視は、習時代の「一丁目一番地」の政策だと誰もが思っていた。中国全土で上意下達式の「政治運動方式」によって緑化が進んでいたのだから」

     

    習氏は、国家主席就任と同時に、大々的に緑化運動を始めた。あれから10年経って、食料自給率向上を叫ぶという巡り合わせになった。

     

    (2)「ところが、ここ数カ月で様相が変わってきた。主な原因は、習がよく口にする「百年に一度しかない大変局」である。「(中国内では)既に『退耕還林』は、口にしにくい時代になった。皆、トップの一挙手一投足に敏感になっている」「我が中国は、食糧増産に転換する兆しがある。理由は、ウクライナでの戦争、そして米国が主導する中国包囲網だ。そこには、インド太平洋経済枠組み(IPEF)だって関係している」。これらは、中国の学者、知識人らが、内外のインターネット空間上を含めて発信している声である」

     

    中国包囲網の進行によって、中国は食料自給率低下を認識するほかなくなった。中国にとって最大の食料供給国は、ほかならい米国である。中国は、その米国の覇権を奪うという野心をたぎらせている。誰が見てもムリであることは明確である。

     

    (3)「もっと切実に中国人民の生活に直結する問題が浮上している。それは、ロシアによるウクライナ侵攻で一気に顕在化した。実は、中国人民のおなかを直接、間接的に満たしていたのは、世界の穀物庫といわれる農業大国、ウクライナのど真ん中の穀倉地帯で育つトウモロコシでもあった」

     

    戦乱の坩堝になっているウクライナは、中国にとって重要な食料供給国である。中国は、本来ならウクライナの国益を配慮する立場に立つべきだが、ロシア側に付いている。ここら当たりにもムリがあるのだ。

     

    (4)「かつて、全輸入量に占めるウクライナの割合は8割強だった。その後、米トランプ政権時代の米中貿易戦争の妥協策として米国産が急増。21年には米国産が7割、ウクライナ産が3割になった。既に中国の需要の1割以上を占め、さらに増加傾向だった輸入トウモロコシを牛耳っていたのは、米国・ウクライナ両国なのだ」

     

    従来、中国の輸入トウモロコシは、米国・ウクライナ両国に大きく依存していた。今後、この両国との関係はどうなるか分らないという不安定な状態にある。

     

    (5)「中国政府は「自給率は十分、高い」と主張してきた。だが、1人に供給される食料全品目の熱量に占める国産の割合を示すカロリーベースの食料自給率を国際統計から計算すると、70%台半ばにすぎないとの推計もある。ここには中国の食の米欧化による肉類の輸入急増も関係している。ウクライナ侵攻1年を経て、中国のトウモロコシ輸入はどうなったのか。中国側報道によれば、23年1〜3月のトウモロコシ輸入先ビッグスリーは、米国ブラジルウクライナの順になった。輸入先シフトでブラジル産が急増したが、3位のウクライナ産との差は大きくない

     

    トウモロコシは、飼料にもなるが重要な食糧でもある。その3大輸入先は最近時でも、米国・ブラジル・ウクライナである。こういう構成を見ると、中国は米国とは争いをしてはならない重要な国と言うことになろう。

     

    (6)「なんだかんだ言っても、中国は食べ物を米国に頼っている。これから急速に「退林還耕」に動き、小麦、大豆、トウモロコシを増産したとしても、胃袋を米国に握られている構造は当面、変えられない。万一、台湾海峡を巡る緊張などがさらに激化したとき、習が頻繁に口にしてきた「戦いへの備え」は十分なのか。「長期戦」にも耐えうる食糧を確保できるのか。国家指導者にとって最大の不安が、すぐに解消されることはない」

     

    中国にとって最大の弱点は、食料自給率の低下である。これをカバーしつつ、米国と覇権争いをするとは、なんとも解せない行動に映るのだ。

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    韓国社会は今日も、「福島原発処理水」と「旭日旗」が話題を独占している。よく飽きもせずに同じことを続けていると不思議で、ここから脱する突破口はなさそうだ。社会全体が、噂や風評に惑わされ、自分の頭で判断することが少ない結果である。合理的に判断する基準が、確立していないのだろう。

     

    このことは、経済面によく現れている。合理的に判断すればあり得ないことが、韓国では起こっているからだ。家計債務は、対GDP比で102%とOECD(経済開発協力機構)でワーストワンである。企業の営業利益が、支払金利をカバーできない「利子補償倍率1以下」が、22.1%と警戒水準を超えている。

     

    『中央日報』(5月30日付)は、「緊縮でも防げなかった『家計負債1位の韓国』、企業負債増加速度も世界4位」と題する記事を掲載した。

     

    韓国銀行が2年近く金融引締め基調を継続しているが、韓国の家計負債は依然として国の経済規模を考慮すると主要国のうち最も多い水準と現れた。

    (1)「国際金融協会(IIF)の「世界負債報告書」によると、1~3月期基準で韓国の国内総生産(GDP)比の家計負債の比率は102.2%で、調査対象34カ国(ユーロ地域は単一統計)で1位だった。調査対象国のうち家計負債規模がGDPを超える国は韓国が唯一だ」

     

    韓国国民の「借金好き」は、昔から変わることがない。計画性のない支出が債務を増やし続けているからだ。朝鮮李朝時代も「宵越しの金を持たない」浪費癖が指摘されていた。民族特性であろう。韓国が一番比較したがる日本は、65.2%である。

     

    韓国は、「一攫千金」の夢を追いたがる特性を持っている。株式投資でも貯蓄を振り向けるのでなく、借金して株式を買うという常識を外れた行動をとる結果、株価下落の際に受ける痛手は強烈である。債務が丸々残る事態に見舞われるのだ。


    (2)「企業負債も増えた。GDP比の非金融企業の負債比率は1~3月期基準で118.4%。香港の269.0%、中国の163.7%、シンガポールの126.0%に続き4番目に高かった。1年前と比較すると3.1ポイント増えたが、上昇幅も34カ国中4位と高い方だ。世界的な金融緊縮基調にも関わらず、この1年間で企業負債が高まった国は韓国をはじめ10カ国だけだ。政府部門負債のGDP比の割合は44.1%で22位と中位圏だった」

     

    不動産バブル崩壊に直撃されている中国企業は、163.7%である。これに対して、韓国企業は118.4%である。輸出不振で債務が増えた結果である。これでは、設備投資は抑制されるので景気は悪化する。韓国経済は、こういう悪循環過程へ嵌まっている。

     

    『東亜日報』(5月30日付)は、「IMF、韓国などアジア企業の負債の不良債権化を警告」と題する記事を掲載した。

     

    国際通貨基金(IMF)は、金利高の中、アジア企業の負債負担が急増しているとして負債が不良債権化する可能性を警告した。韓国も、企業負債全体でデフォルト(債務不履行)の可能性が高い負債割合が世界平均をはるかに上回り、危機の警報が大きくなっている。

     

    (3)「IMFは最近、独自のブログに「金利高の中、アジアは企業負債の上昇をめぐり、モニタリングをしなければならない」という指摘し、「アジア企業は、低金利の時期に負債の割合を高めてきて、2008年の金融危機時より負債のレベルが高くなっている」とし、「これは、金利引き上げと高まった市場変動性に負担を加重させている」と指摘した。韓国も、2021年7月~2022年6月まで、利子補償倍率(ICR)が1より少ない企業負債が企業負債全体の22.1%と現れた。世界平均(16.8%)やアジア平均(13.95%)より高い数値だ

     

    営業利益で利子を払えないのは、利子補償倍率(ICR)が1以下と定義される。韓国は、そういう企業負債が全負債の22.1%も占めている。これでは、税金を払えないから法人税も減って、財政にはマイナス要因だ。日本は15.8%で世界平均を下回っている。

    (4)「IMFは、5月初めに発表したアジア太平洋地域の経済予測報告書で、金利が急激に上がる場合、韓国やシンガポール企業の不良債権を懸念した。企業負債の金利が1.5ポイント上がる小幅の下降シナリオで計算しても、利子補償倍率が1未満の限界企業が続出することが分かった。不動産分野では、韓国とベトナムが不良債権の割合が高いとIMFは警告した

    韓国では、不動産企業の不良債権増加が警戒されている。建設会社が、不動産開発プロジェクトで行き詰まっているので、IMFの警戒は現実味を帯びている。

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    中国の地方政府は、どこでも経済不振に見舞われている。新型コロナウイルスの感染地となった武漢市では、債務返済(税金延滞か)の滞っている259社の社名を公表。早期返済を求めるという異例の手段に出ている。これによって、武漢市の資金繰りを楽にするという意図と見られる。

     

    『ロイター』(5月29日付)は、「中国武漢市、企業に債務早期返済求める 259社公表」と題する記事を掲載した。

     

    中国湖北省の武漢市財務当局は、政府に対して負債を抱える259社を公開し、早期返済を促した。第一財経が27日に報じた。

     

    (1)「こうした動きは、中国の地方政府の財政が一段と圧迫されていることを示している。武漢市は2019年末に始まった新型コロナウイルス感染の震源地。それぞれの負債額は約1万~1000万元(約145万ドル)で、総額1億元(1447万ドル)を超えるという。債務者には地区財務局や科学研究機関、国有企業、上場企業、民間企業などが含まれている。武漢市の財政は中国の他の多くの地方政府同様、新型コロナや景気低迷、不動産市況の落ち込みの影響を受けており、第1・四半期の歳入は前年比8.5%減少した」

     

    武漢市に債務を負っているのは、地区財務局、科学研究機関、国有企業、上場企業、民間企業など。国有企業から研究機関、民間企業と顔ぶれは「多彩」だ。公的機関までが税金を滞納しているのであろう。総額は100億円規模を超えるという。資金繰りに苦しむ地方政府としては、早期収納で業務の円滑化を図ろうとしている。

     

    税金を滞納するのは、経済活動が不振である結果だ。肝心の企業収益動向はどうなっているのか。工業利益の動向が、その手がかりを与えてくれる。

     

    『ブルームバーグ』(5月27日付)は、「中国、1~4月の工業利益は20.6%減」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「中国国家統計局が5月27日発表した1~4月の工業利益は前年同期比20.6%減となった。世界2位の経済大国で、需要低迷と生産者物価下落の影響が広がっている。統計局のデータによれば、4月単月では前年同月比18.2%減少。3月は19.%減だった。1~3月では前年同期比21.4%減である」

     

    1~4月の工業利益が、前年同期比20.6%減である。昨年同期とは、ゼロコロナで都市封鎖が行われていた時期だ。現在の工業利益が、その閉塞していた時期より2割以上も落ち込んでいるとは異常である。中国経済が、こういう事態になっていることを強く認識しなければならない。

     

    (3)「ジョーンズラングラサールの大中華圏担当チーフエコノミスト、ブルース・パン氏は「有効需要の回復が弱く、設備稼働率が圧迫され続けており、コスト削減の難しさも重なり、工業利益の回復にはもっと辛抱強くなる必要がある」と述べ、「年初からの伸びが前年同期比でプラスに転じるのは、10~12月(第4四半期)以降になる可能性があるとの見方を示した」

     

    工業利益が、前年同期比でプラスに転じるのは、10~12月期以降としている。その前提は、生産者物価指数がプラスに転じることだ。その条件が生まれるかどうかである。

     

    (4)「製造業活動が幾らか持ち直したとはいえ、中国の工業企業は昨年の新型コロナウイルス禍による不振からの立ち直りに苦しんでいる。商品需要も依然低迷し、景気回復は主にサービス業における個人消費がけん引。米国をはじめとする先進国は、「リスク回避」のため中国製品購入の動きを鈍らせている。生産者物価のデフレも製造業の価格決定力と利益を損ねている。4月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比3.6%低下と、2020年以来の大きな落ち込みを記録した」

     

    4月の生産者物価指数は、前年比-3.6%である。指数では、110.1だ。少なくも、今後1年以上は継続的にプラスへ転じる可能性はなさそうだ。ということは、価格面で企業が利益に転じる要因はないということである。生産者物価指数がマイナスであるのは、企業心理を萎縮させるのだ。

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    ロシア軍は、陸上攻撃が減る一方、首都キーウへのロケットと無人機攻撃が行われている。28日現在、14回目のロケットと無人機の攻撃が行われた。29日の朝は、ロシアの砲撃がウクライナ西部の空軍基地を襲い、航空機5機と滑走路が損傷した。ここ数日で2度目の大規模なロケットとドローンによる攻撃である。

     

    『CNN』(5月29日付)は、「ウクライナ首都への攻撃、ロシアが多大な労力をかける理由は」と題する記事を掲載した。

     

     ウクライナの首都キーウがロシア軍による空からの攻撃の標的となったのは5月に入り14日目となった。ウクライナ当局者の推計によれば、28日未明にキーウに対して行われた攻撃で、ロシアはドローン(無人機)50機あまりを送り込んだ。市当局によれば、ドローンの大部分は防空システムによって破壊され、死傷者や損害も最小限に抑えられた模様だ。

     

    (1)「なぜロシアは、見返りが限られるなかでも、攻撃にこれほどの労力をつぎ込むのだろうか。一つにはイラン製のドローン「シャヘド」がキーウに対して何らかの苦痛を与えるのに安価な方法だということだ。キーウは昨年の大部分、ロシアによる侵攻の影響を免れていた。

     

    キーウへの攻撃は、防空システムによってほぼ撃ち落とされている。ただ。イラン製ドローンは安価であることから、ウクライナ市民を苦しめる目的で使われている模様だ。

     

    (2)「ロシアは数百機のドローンを購入しているが、ドローンの価格はミサイルの20分の1程度に過ぎない。夜間の攻撃では、数千人の人々が避難所や地下室に逃げ込む。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、キーウで空襲のサイレンが鳴った時間は887時間におよぶ。歴史的に見て近いのは、第2次世界大戦の末期に、ナチス・ドイツがV2ロケットを使って英首都ロンドンに対して行った空爆かもしれない」

     

    キーウの空襲サイレンは、887時間にも及ぶ。第二次世界大戦で、英国ロンドンがドイツの攻撃で受けた空襲サイレン時間に匹敵するという。

     

    (3)「キーウ市は、28日に1500年以上前の建都を記念した「キーウ市の日」を祝う準備を進めていたが、ロシアによる攻撃は偶然ではないだろう。こうした攻撃が行われ、避難と疲れにもかかわらず、キーウの人々の姿勢は弱まるどころか強さを増しているようだ。ロシア側がドローンを送り込む目的は、ウクライナの防空能力を疲弊させ、少なくなっている弾薬をドローンに対して使わせることにある可能性が高い」

     

    ロシアは、ウクライナを屈服させるべく「奇策」を使っている。だが、ウクライナ市民の抵抗精神はますます高まっている。侵略期間が長くなるほど、ロシア経済が追い詰められることを忘れているのだ。

     

    ロシア中央銀行は5月26日、次のような報告を発表した。「ロシア株式市場において、個人投資家の信頼が低下した場合、長期的に資金が外部へ流出し、ロシア企業の長期資金調達能力の低下リスクがある」と警告している。『ロイター』(5月29日付)が報じた。ロシアは、イラン製ドローンでウクライナを威嚇している愚かさに気づくことだ。ウクライナ政府は、イランに対しても対抗措置を講じる。

     

    『CNN』(5月29日付)は、「イラン製ドローンによる首都攻撃、イランに相応の結果を警告 ウクライナ」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は、首都キーウに対する攻撃にイラン製ドローン(無人機)「シャヘド」が使われたことを受けて、イランに対して相応の結果を警告した。

     

    (4)「ポドリャク氏はツイッターへの投稿で、イラン政府はウクライナでの戦争で、ロシア政府の重要な同盟国となり、民間の都市に対する攻撃用の武器を意図的に供給していると指摘。ポドリャク氏は、28日のキーウへの攻撃で50機のシャヘドが使われたこともイランによる武器供給という真実を雄弁に物語っていると述べた。ポドリャク氏は「法律的観点から言えば、イランは直接的な意図を持ち、その行動の結果を理解した上で、これを行っている。そこには必ず結果が伴う」と述べた」

     

    ウクライナは、イランへの制裁措置を検討している。イラン政府は、公式にはロシアへの無人機販売を否定している。

     

    (5)「ポドリャク氏によれば、ウクライナのゼレンスキー大統領は政府に対して、50年間のイランへの制裁を提案するという。大統領府高官によれば、提案される制裁は、イラン人に対する貿易や金融、技術の制限、ウクライナ領内のイランの船舶や飛行機の通過の禁止など」

     

    ウクライナは、イランへの制裁措置を早急に発表すべきだ。ポドリャク氏のBBCとのインタビューで、「ゼレンスキー大統領は、強い性格の持ち主である。ゼレンスキー夫人以外、彼の意思を変えられる人はいない」とジョークを飛ばした。イランへ強い制裁措置を考えているに違いない。

     

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