勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    岸田首相が22日(現地時間)、ニューヨークで10月11日から外国人旅行客の受入れを全面解禁すると発表した。この報道を最も歓迎しているのが韓国である。「反日メディア」で知られる『ハンギョレ新聞』までが大きく報じる騒ぎだ。

     

    韓国では、これだけ日本旅行のリピーターが多いことを示している。23日の格安航空券予約は普段の3倍に跳ね上がっているという。2019年に韓国で起こった「反日不買運動」以来の「日本旅行ブーム」になりそうだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(9月24日付)は、「扉を開く日本…ノービザに円安も重なり『観光特需』なるか」と題する記事を掲載した。

     

    日本の岸田文雄首相は、来月11日からビザなしでの外国人の日本入国を再開すると発表した。岸田首相は22日(現地時間)に米ニューヨークで行われた記者会見で、「入国者数についての上限撤廃、個人旅行の解禁、ビザなし渡航の解禁」を行うと述べた。日本の首相官邸が明らかにした。

     

    (1)「日本政府は新型コロナウイルスの世界的な拡散を受け、2020年春にすべての国を対象とした新規入国禁止措置を取った。その後はビジネス目的の入国の受け入れ、団体観光の再開と、徐々に規制を緩和してきた。これまでは1日の入国者数の上限を定めて規制しており、外国人観光客のビザなし入国および個人旅行は認めていなかった。しかし、コロナ感染者が次第に減っている中、円安による観光特需を期待する声の高まりを受け、突如として門戸を開いた」

     

    日本国内では、円安を歎いているだけでなく、逆に円安を武器に海外旅行客を全面受け入れするほうがプラス、という認識が高まっていた。韓国では、日本旅行が「近い・安全」という条件を揃えていることから、最も人気の海外旅行先になっていた。それが、復活するということだ。

     


    (2)「日本円は1ドル=140円台にまで円安が進み、ここ24年で最低水準を記録しており、日本銀行が約24年ぶりに円買いドル売りの為替介入に踏み切ったほどだ。韓国からの観光客は、コロナ禍に伴う2020年の規制前まではビザなしで日本に最長90日滞在できたため、今回の観光客の無ビザ入国再開で、韓日の往来がより容易になるとみられる。岸田首相は記者会見で、自国民の国内旅行やイベントの支援政策なども来月11日から開始すると明らかにした。「コロナ禍で苦しんできた宿泊業、旅行業、エンタメ業などを支援していきたい」と語った。

     

    韓国人にとって、円安のメリットは大きい。これまで訪日できなかった「モヤモヤ」を一気に張らすような雰囲気を感じる。すでに、知日派メディア『朝鮮日報』の論説委員は、日本旅行の楽しみをコラムで掲載するほど。この論説委員は、これまでに富士登山4回、全都道府県を取材で回ったというほど。だが、韓国の日本リピーターは、日本人の行かないような孤島まで足を延ばしていると指摘。韓国人の日本への関心の高さに脱帽している記事であった。

     

    『中央日報』(9月24日付)は、「韓国、日本ビザ免除発表日に航空券販売300%急増」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「ハナツアーは、今月1~22日の海外旅行予約は前月同期比173.7%増えたが、日本は同じ期間に776.6%増加したと明らかにした。9月の予約のうち日本が占める比率は36.1%にのぼる。チャムチョウン旅行も今月の日本商品の販売が前月比で500%増え、53件の日本旅行商品を販売中だと明らかにした。同社の関係者は「2019年7月に韓日関係が悪化してから3年以上、日本旅行商品の販売はほとんどゼロに近かった」とし「ビザ免除決定で2019年7月以前の水準を回復すると期待している」と述べた」

     

    九州は、観光旅行客で最も潤っていた地域である。団体旅行でゴルフをして楽しむ客が多かったからだ。個人旅行では、関西へ集まりそうだ。韓国人にはなぜか、関西の雰囲気が好みらしい。

     


    (4)「日本パッケージ旅行、航空券と宿舎だけの商品は9月に入って人気が高まった。一方、旅行会社を通さず航空券と宿舎を直接予約する個別旅行は再開時期が明確でなく、旅行者は状況を眺めていた。22日に岸田首相の発表が出ると、航空会社、ホテル予約サイトを通じて10月11日以降の予約が急増した。旅行コミュニティーサイトも各種旅行情報や質問などで久しぶりに活気を帯びている。LCCの日本往復航空券販売量も急増している。エアソウルは今月23日、11・12月出発の「アーリーバード」航空券販売を始めたが、同日午前の日本路線販売量は前日の同じ時間帯より300%増加した。エアソウルの関係者は「東京、大阪、福岡の順で航空券がよく売れた」とし「高松、米子などコロナ以前に運航した小都市も同期に再就航する計画」と伝えた」

     

    LCC(格安航空券)の予約が、300%増という人気ぶりである。円安も加わって、格安航空を運行する企業は久しぶりの「春」になりそう。「反日不買運動」直前には、日本向けLCCを目的に設立した航空企業が2社も出るほど。それほどの加熱ぶりを見せていたのである。そういう時代に戻るかどうか。

    テイカカズラ
       


    韓国は、米国が主導する半導体の「チップ4」(米国・日本・韓国・台湾)へ参加するかどうかで苦悩している。中国が、韓国を引留めているからだ。中国にとって韓国は、半導体製品供給で最後の「頼み綱」である。

     

    中国のケイ海明・駐韓大使が9月20日、韓国与党・国民の力で半導体特別委員長を務め、現在は無所属の梁香子(ヤン・ヒャンジャ)国会議員を訪ねて、「中国も参加するチップ5に拡大してはどうか」などと発言したとされる。率直な口調で、チップ4に不快感を表明したものだ。このように、中国は韓国引留めに必死である。

     


    『日本経済新聞 電子版』(9月23日付)は、「韓国半導体に『踏み絵』、米国が供給網連合に参加要請」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府と企業が半導体を巡る米中対立に苦悩を深めている。米国は新たな半導体供給網の枠組みに韓国を引き入れようとし、中国は韓国の米国傾斜を強くけん制する。韓国は半導体輸出の6割を中国向けが占め、サムスン電子は中国に半導体工場を持つ。米中双方に配慮しバランス外交を続けてきた韓国に米国が踏み絵を迫る構図だ。

     

    (1)「米政府は半導体のサプライチェーン(供給網)を安定させる枠組みづくりのため準備会合を調整している。招かれるのは製造装置や材料技術で蓄積のある日本と、最先端品の生産でリードする台湾、そして台湾に次ぐ生産能力を持つ韓国だ。4つの国・地域の枠組みで、韓国では「チップ4」と呼ばれる。新たな連合体の詳細は決まっていないが、半導体技術の確立を急ぐ中国を供給網から排除しようとする意図は明確だ。米国はトランプ前政権時代から中国のハイテク企業への規制を続けてきた」

     

    半導体は、戦略物資である。ロシアが現在、ウクライナ侵攻で戦局不利になっている最大の理由は、半導体不足にある。中国が、ロシアの二の舞いならぬように、深刻になっている背景はこれだ。

     


    (2)「米政府は8月に計527億ドル(約7.5兆円)の補助金を投じ半導体の国内生産を立て直す新法を成立させた。自国企業だけでなく、当面は半導体技術を持つ台湾や韓国、日本と連携し米国内に生産基盤を築く考えだ。アジア勢とともに中国への技術流出の抜け道をふさぐ狙いもある。この呼びかけに戸惑うのが韓国だ。長く経済面で中国との関係を重視し、安全保障面では米国に頼る「経中安米」を基本方針としてきた。米韓同盟を重視する尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が参加意欲を示すなか、中国が揺さぶりをかける。8月の中韓外相会談で中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は韓国の朴振(パク・ジン)外相に「中韓両国は独立自主を堅持し、外部の障害と影響を受けてはならない」とクギを刺した」

     

    中国は、なり振り構わずに韓国へ圧力を掛けているのだろう。だからこそ、中国を振り切るべきだ。中国が半導体で弱体化すれば、それだけアジアは平和が続くことを意味する。台湾侵攻を遅らせることが可能だ。

     


    (3)「韓国にとって中国は2021年の輸出入の24%を占める最大の貿易相手国で、稼ぎ頭の半導体の輸出の60%に当たる768億ドルが中国向けだ。化学品や機械など主要産業の輸出先としても中国が高いシェアを持つ。仮に中国が関税引き上げなどの制裁を科した場合、韓国の基幹産業がダメージを受ける可能性が高い」

     

    韓国は、恒常的に対中輸出で黒字を出していたが、この5月から連続赤字に陥っている。中国経済の急減速が理由である。中国は、不動産バブル崩壊の後遺症とゼロコロナによって窒息状態である。回復には、かなりの時間がかかるだろう。

     


    (4)「企業も口をつぐむ。サムスン電子は半導体メモリーの生産量の2割を西安工場(陝西省)が担う。SKハイニックスは無錫工場(江蘇省)に加え、21年には米インテルの大連工場(遼寧省)を買収。今や半導体生産の4割を中国工場が占める。韓国財界からは「もはや企業が対処できる問題ではない」との声も漏れる。SKの崔泰源(チェ・テウォン)会長は7月に米ワシントンを訪問してバイデン米大統領に現状を説明。韓国企業は米韓政府に企業活動への影響を軽減するよう要望を繰り返している」

     

    将来、米中戦争が起こって韓国が米国側につけば、韓国の中国工場は接収される運命だ。半導体高級品製造はリスクを伴うから、接収されてもいい程度の投資に抑えておくべきだろう。

     


    (5)「尹大統領の米国重視の姿勢は揺らぐ。8月には訪韓したペロシ米下院議長との対面会談を休暇中との理由で断った。ソウル市内にいた尹氏が電話会談にとどめたのは中国に配慮したためと受け止められている。韓国政府は保守・革新問わず、米中双方の顔色をうかがう外交姿勢を徹底してきた。文在寅(ムン・ジェイン)前政権は北朝鮮との融和を重視するため中国寄りの姿勢を強めたが、米国への配慮も欠かさなかった。米中対立の先鋭化で韓国の「米中バランス外交」は大きな転換点を迎えた。半導体を巡る米主導の新たな枠組みに飛び込むかどうか。尹政権は韓国経済の未来を左右する決断を迫られている」

     

    韓国は、現実化する米中冷戦のリスクを避ける工夫が不可欠である。もはや、二股外交は不可能である。甘い夢を捨てて、厳しい現実に向かい合うべきである。米韓同盟の精神に従うことだ。

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    プーチン氏はウクライナ侵攻によって、決して優れた戦略家でないことを証明した。21世紀になって、隣国領土を手に入れようという野望を持つこと自体、時代遅れであるからだ。さらに、第二次世界大戦後にタブーとなった「核」を気軽に喋って、相手を恫喝する点でも時代遅れであることを知らしめた。

     

    プーチン氏が、仮に戦略核を投下しても、軍事専門家によればその戦略効果はほとんどないという。ウクライナ軍が一カ所に固まって軍事行動していないからだ。逆に、ロシア軍は核投下した後を進軍するので、多大の被害を受けるマイナス効果の方が大きいのである。さらに大きな問題は、ロシアが国際社会から孤立する危険である。ロシア友好国も、手を切らざるを得まい。ロシアの国連常任理事国の座も危うくなる。すべて、マイナス点だけがロシアを襲うのだ。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月23日付)は、「プーチン氏の脅しに効果も、核使用なら返り血」と題する記事を掲載した。

     

    西側諸国はここ数カ月で、ロシアが核兵器の使用に向けて準備を進めている兆候は認められないとしている。とはいえ、プーチン氏が予告通りに核兵器を使う確率はゼロではないため、脅しを真剣にとらえる必要があるという。

     

    (1)「西側では、ロシア軍の劣勢が伝わる中で、プーチン氏が相当追い込まれていることの表れだとの受け止め方が広がっている。ただ、核兵器を使用しても、ロシアに恩恵をもたらすシナリオは考えにくいというのが、専門家の共通した意見だ。プーチン氏が核兵器の使用も辞さない構えをみせたことについて、ロシアが仮に第2次世界大戦以降のタブーを破って核兵器の使用に踏み切れば、多くのシナリオにおいて、ロシアはさらに窮地に追い込まれると想定されている。そうなれば、ウクライナ侵攻以降もロシアへの支持を表明していた数少ない友好国すら、失う恐れがある」

     

    プーチン氏は、「大ロシア帝国」再興を夢見ている。だが、核投下は、その夢を自ら粉砕することになる。ロシアはそういう取り返しのつかない大きな矛楯を抱えているのだ。核投下は、プーチン氏とロシアを滅ぼすのである。

     


    (2)「仏シンクタンク、戦略研究財団(FSR)の国防顧問、フランソワ・エスブール氏は、戦術核兵器を戦場で使えば「相当大きな爆発が起きるが、実のところ、相対的な軍事面での利点はほとんどない」と述べる。ウクライナは兵力を分散させており、核兵器で標的にできるような大規模な部隊が集中配備されているところはない。一方で、ロシア軍が核攻撃に乗じて優位に立とうとすれば、核爆発による放射性降下物が降り注ぐ中で進軍する必要がある。そうなると、ロシアが核の脅しやテロを実行する場所は、人口が密集するウクライナの都市部となる。

     

    ロシア軍は、前線で核投下しても効果がなければ、都市部を狙うことになろう。これが、ロシアを地獄へ叩き落とす「1丁目」になる。

     


    (3)「西側の専門家は、そのような作戦に出ても、戦略的な利点は何ら得られず、むしろこれまで抑制的な対応にとどまっていた米国や同盟国の態度が一変する可能性が高いと話す。ジョー・バイデン米大統領は、ロシアが核兵器を使用すれば、何らかの報復を受けることになるとの考えを示唆している。その場合、米国が核兵器を対抗して使用する可能性は低いが、ウクライナに展開するロシア軍には著しい危険が及ぶことになるとみられる

     

    ウクライナ都市部への核投下は、米国と同盟国(NATO)の対応を一変させる。下線部は、米軍の最新兵器でロシア軍を全滅させる戦術を展開すると予想される。報復作戦だ。

     

    (4)「(ロシアの)核兵器使用の利点とコストを計算する上で、別の要因も影響してくる。核兵器を搭載する可能性が高いミサイルは、今回の戦争で事故率が高く、核を搭載した状態で失敗すればロシアにとっても大きなリスクとなる。軍事専門家は核弾頭を爆発させることが、プーチン氏にとっては最後の危険な賭けとなるだろうとみている。またプーチン氏はロシアという国家よりも、自身の面目を保つことを狙っているフシがあるという。これとは別に、ロシア軍の司令官がそのような指示に従うかどうかも、プーチン氏が見極める必要のある賭けだ

     

    下線部は、真実を衝いている。プーチン氏の個人的名誉を狙ったウクライナ侵攻で、核という「悪魔の兵器」の片棒を担ぐロシア軍司令官がいるか、である。人類への犯罪である「核攻撃」に加担する軍人は、真の軍人とは言えないからだ。

    ムシトリナデシコ
       

    ロシアのプーチン大統領9月21日、部分的動員令を発表した。即日から実施という慌ただしさだ。30万人の動員令である。翌日から召喚が行なわれている。その状況を米『CNN』(9月23日付)は、次のように報じた。

     

    「ロシアの一部の地域、特にカフカスと極東地域で「部分的動員」の第一段階が進行している様子をとらえた動画が、ソーシャルメディアに投稿されている。極東のネリュングリ市でバスに乗り込む大勢の男性に別れを告げる家族の映像も投稿されている。女性が泣きながら夫を抱きしめて送り出し、夫がバスの窓から娘に手を伸ばす姿が映っている」

     

    映像では、幼児の「パパ、パパ」と泣き叫ぶ情景もあり、戦時中の日本の応召姿とは全く異なるものの、悲壮感が漂っている点では同じだ。戦争は悲劇である。

     

    ロシアは「部分的動員令」で、戦局を変えられるだろうか。その可能性は極めて少ないという指摘があるので取り上げた。

     

    『CNN』(9月22日付)は、「ロシアの部分動員、『戦況に劇的な変化』もたらす公算小 戦争研究所」と題する記事を掲載した。

     

    米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は21日の分析で、ロシアのプーチン大統領による部分動員の発表が戦争の流れを劇的に変化させる可能性は少ないとの結論を示した。

     


    (1)「ISWの分析では、予備役の戦闘準備が整うには数週間から数カ月かかるほか、ロシアの予備役はそもそも練度が低いと指摘。(米)国防省が示した慎重な配備の段階をもとに判断すると、ロシア兵が突然押し寄せて戦況を劇的に変化させる事態は考えにくいと述べた。プーチン氏の命令は兵役を終えた「訓練済み」の予備役の一部を動員する内容だが、数カ月は大した戦力にならないだろうと指摘。死傷者の穴を埋めて現在の兵力を来年も維持するには十分かもしれないが、現時点ではそれすら定かではないとの見方を示した

     

    ロシアの兵役は1年間である。新兵が、この間に学ぶことは軍隊生活と基本的な訓練だけであろう。その1年間の兵役後に、継続したサポートを受けているわけでないという。つまり、時間が経てば忘れてしまう危険性が高いのだ。この状態で動員しても、数ヶ月の訓練がなければ、「一人前」の兵士にはなれないであろう。

     


    (2)「さらに、「ロシアの兵役期間はわずか1年で、徴集兵が兵士としての技能を学ぶ時間はそもそもほとんどない。この最初の期間の後には追加訓練がなく、時間が経つにつれ身に着けたスキルの劣化が加速する」としている」

     

    戦う相手のウクライナ兵は、多くが民間人であったが「祖国防衛」という強い信念に燃えている。NATO軍や米軍から合理的な戦い方を学び、ロシア兵と比較して格段の逞しさと強さを身に付けている。ウクライナ軍の長距離重火砲は、ロシア軍を圧倒しており、ロシア軍が戦線挽回の可能性は低いとみられている。

     

    ロシア国民の多くは、ウクライナ侵攻直後は「反戦デモ」を行なったが、その後は取締り強化もあって消えてしまった。そこへ、突然の「予備役動員令」によって、ウクライナ戦争が身近になって恐怖感に襲われている。動員令から逃れるには、国を出るほかない。道は、空路か陸路しかないのだ。空路は、予約が殺到して航空券を手に入れられるか分らない。ならば、陸路での脱出である。

     

    『CNN』(9月23日付)は、「ロシア出国を待つ長い車列、複数の隣国との国境で確認」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのプーチン大統領が「部分的動員」を発表した翌22日、ロシアといくつかの隣国との国境ではロシアから出国しようとする長い車列ができ、その様子を収めた映像がソーシャルメディアに投稿された。

     

    (3)「カザフスタン、ジョージア(グルジア)、モンゴルとの国境の検問所には行列が出来ていた。21日撮影のあるビデオでは、ジョージアとロシアの国境の検問所に一晩中何十台もの車が並んでいるのが映っている。その列は、22日にはさらに長くなっているように見える。ビデオでは長い列が国境の後ろの山まで延びており、ある男性は「5〜6キロの長さだ」とコメントしている」

     

    動員令を逃れるには、国を出る以外に方法しかない。家族が一緒かどうかは分らない。逃亡を余儀なくされるのは、命を守るギリギリの決断であろう。

     


    (4)「22日に投稿された別のビデオには、モンゴルとの国境の長蛇の列がうつっている。カザフスタンとの国境の町トロイツクで同日朝に撮影されたビデオでは、何十台もの車が並んでおり、ある男性が「ここはトロイツク。トラックと乗用車の列ができている。列の始まりも終わりも見えない。皆ロシアから逃れている」と話している」

     

    車の列の始まりも終りも見えないとは、「渋滞」というイメージを超えている。予備役は、200万人いる。該当者は、逃げることで命を守るのだ。

     

    (5)「カザフスタン議会上院議長のマウレン・アシンバエフ氏は、カザフスタンはロシア人の入国を制限することはできないと述べたと、ロシア国営RIAノーボスチ通信が22日に報じた。しかしアシンバエフ氏は、在住許可を取得するためには申請者は法律に準拠した書類一式を用意しなければならないと述べている」

     

    カザフスタンでは、在住許可を取得するために書類一式が必要という。大慌てで家を出て来たであろうから、そのような時間はなかったはずだ。パスポート一つと預金だけであろう。こうなると、無事に在住許可を得られるか心配だ。

     

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    弱い犬ほどよく吠えると言われるが、ロシアのプーチン大統領はこの類いかも知れない。ウクライナ侵攻して数日後、核攻撃を示唆して世界を驚かせた。開戦後のロシア軍は、精鋭を誇った空挺部隊が約1000名も殲滅され危機感を強めたのだ。これが、プーチン氏の「核発言」の背景である。

     

    今回は、ウクライナ北東部でロシア軍が大敗北した危機感が、二度目の「核発言」をもたらしたものだ。人間も弱い者ほど強がるが、国家も似ているようである。

     

    米国は、冷戦時代からソ連の核動向を常時、監視している。その体制は、現在も変わらないという。プーチン「核発言」が、これからどうなるかは米軍の監視体制によってウォッチされるのだ。

     


    米『ニューズウィーク 日本語版』(9月22日付)は、「プーチンが核攻撃を決断すれば『アメリカが検知する』」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による再度の「核の脅し」を受けて、今度こそロシアの核攻撃が迫っているのでは、と懸念する声が上がっている。だがアメリカは、プーチンが攻撃を計画した段階で、それを検知することができるという。

     

    (1)「プーチンは9月21日、NATOが核兵器でロシアを「脅そうとした」と非難した。事前収録されたテレビ演説の中で、ロシア側も「さまざまな大量破壊兵器を保有しており」、反撃の用意があると警告。「ロシアと国民を守るために、あらゆる手段を行使する」つもりだと述べ、「はったりではない」とつけ加えた。ロシアにとっても核兵器の使用は最後の手段だが、専門家は、もし本当にプーチンが核攻撃を決断しても、アメリカは事前にそれを検知することができるだろうと指摘する。米軍備管理不拡散センターの政策担当シニアディレクター、ジョン・エラスによれば、こうした核活動の監視は冷戦以降、当たり前のことになっていると本誌に語った」

     

    プーチン氏は、ロシアだけが核を保有しているような発言をしているが、米国は冷戦時代からソ連(ロシア)の核攻撃を事前に察知すべく監視網を敷いている。米国は、数分以内に報復攻撃が可能な体制を維持しているのだ。

     


    (2)「全米科学者連盟の核情報プロジェクト責任者であるハンス・クリステンセンは本誌に対し、プーチンが核兵器の使用を決定した場合、中央保管施設から持ち出さなければならない短距離核戦力よりも、既に警戒態勢に入っている長距離核戦力を使用する方が迅速に動けるだろうと指摘した。米情報当局はロシアの核兵器保管施設を監視しており、核弾頭がトラックやヘリコプターに積み込まれたり、核兵器を扱うための特殊訓練を受けた部隊の活動が活発化したりした場合に、それを検知することができる。これらの活動は、プーチンが短距離核戦力による攻撃の準備に着手したことを示すものとなる」

     

    核は常時、厳重に保管されている。これを取り出し攻撃体制へシフトさせるには、それなりの過程を踏む。そこで、米国の監視網がこれを検知できるシステムになっている。

     


    (3)「一方で地上型の移動式発射台、ミサイル潜水艦や巡航ミサイルの移動が通常よりも増えた場合には、長距離核戦力が使用される可能性があると予測できる。「核兵器の指揮統制システムや通信全般における検知可能な活動が増えることからも、何かが起きていることが伺える」とクリステンセンは指摘した。全米科学者連盟によれば、ロシアは世界最大の核兵器保有国で、保有する核弾頭は推定5977個にのぼる。世界で2番目に多いのがアメリカの4428個、その次がフランスの290個だ」

     

    下線部のように、ロシア軍の通信網を傍受しているであろう米軍は、「核異変」が起これば直ぐに察知する体制だ。


    (4)「
    プーチンが核攻撃の警告を発したのは今回が初めてではない。ウクライナへの軍事侵攻を受けて西側諸国が対ロ制裁を発動し、またグローバル企業がロシアから撤退し始めた2月末には、核戦力を含む「核抑止部隊」を、任務遂行のための高度な警戒態勢に移行させると言った。だが当時はプーチンが核攻撃の準備を行っていることを示す動きはみられなかった、とクリステンセンは言う。彼は今回も当局者たちが前回同様にロシアの動きを観察し、脅威がどれだけ差し迫ったものか否かを明らかにすると期待している。またアメリカ側も1000発近い核兵器を数分以内に発射できる態勢にあるため、プーチンが核攻撃を行っても、すぐに反撃できるともいう」

     

    米国は、ロシアの核攻撃の動きを察知すれば、事前に世界へ公表するであろう。同時に、米国も報復する旨を伝えて抑止への動きを強める筈だ。

     






    (5)「米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー報道官は21日、もしもロシアが核兵器を使用すれば「深刻な結果」がもたらされることになると述べたが、現時点ではウクライナでの戦闘がそこまでのレベルにエスカレートすることを示す情報は「一切ない」とも説明した」

     

    現状では、ロシアの核攻撃の気配はゼロという。米国の情報網は、「ファイブアイズ」(米・英・豪・カナダ・ニュージーランド)によって、第二次世界大戦中から高度の機密情報を収集している。情報戦で一歩先を行く米国が、ロシアの「核クライシス」予防に向けてフル回転するはずだ。

     

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