習近平指導部によって、中国は国家安全が最大の政策テーマとなっている。国内治安維持から経済の自給自足体制まで、「外敵」(西側諸国)との対決を前面に打出している。自給自足体制は、海外からの輸入を減らす。補助金付きで生産を奨励した結果、過剰輸出に依存する体制になるからだ。
要するに、輸入はしないで過剰な輸出で経済を回すという「畸形体制」ができあがっていう。これはこれで、中国が大きな悩みを抱える結果になる。世界が必然的に、中国の過剰輸出を防ぐべく、保護貿易によって自国産業を守らなければならないからだ。
『フィナンシャル・タイムズ』(11月27日付)は、「『買いたいモノがない』中国、世界貿易を壊すか」と題する記事を掲載した。
先ごろ中国本土を訪れた際、筆者は気が付けば経済学者、技術者、企業幹部に会うたびに同じ質問を繰り返していた。「貿易とは交換することだ。あなたが価値のあるものを提供するのと引き換えに、こちらも価値のあるものを供給する。中国が将来的に海外から買いたい製品は何か」。答えは示唆に富んでいた。「大豆と鉄鉱石」という返事はあったが、欧州の人間にとってはあまり意味がない。
(1)「中国が、輸入したいと思うモノはない。自国より良質で安価な製品を作れる国はないと思っているし、外国から入手し続けたいと願うようなモノもない。半導体、ソフトウエア、旅客機、最先端の生産用機械に関しては、中国はまだ顧客の立場にある。しかし顧客と言っても、学びの過程にある研修医のようなものだ。中国はこれらの製品の開発に取り組んでいる。すぐに生産、そして輸出に乗り出すだろう」
中国は、半導体、ソフトウエア、旅客機、最先端の生産用機械にまで国産化を目指している。2049年の新中国建国100年を目標に、世界の技術覇権を握る目的があるからだ。だが、その技術は既存体系の延長である。次世代通信網6Gは、日本の「光電融合」という全く違った次元で展開する。通信が電気から光へ転換するのだ。あらゆる先端製品は、この光電融合に歩調を合わせない限り命脈を保てなくなる。中国の国産化技術は、すべて「お釈迦」(無駄)になる危険性を秘めている。
(2)「筆者との会話相手は、中国が自給自足を目指しているという結論で一致したところで、相手は「われわれが責められる筋合いはない」と言葉を継ぐ。「米国が禁輸措置を武器にけん制してきたのを目にしているはずだ。中国の不安感の奥深さを理解してもらう必要がある」と。確かに一理ある言い分で、そこを批判するつもりはない。だが、すると筆者が中国で投げかけた次の疑問にぶつかる。「中国が貿易でこちらから何も買いたくないのであれば、われわれがどうして中国と貿易できようか」。脅しではなく、単に事実を述べたまでだ。欧州、日本、韓国、米国で労働者は仕事を必要としている。どの国も経済の発展を後戻りさせたくはない」
中国は、輸入するモノがないと豪語している。これでは、世界貿易は成り立たない。中国の輸出攻勢に苦しむ各国は、自国の市場を守るべくどう対応するのか。
(3)「米金融大手ゴールドマン・サックスが最近、2035年時点の中国の経済規模見通しを引き上げると、他の国々へのしわ寄せが浮き彫りになった。通常であれば、どこかの国の成長予測が上方修正されれば、世界に恩恵が行き渡る。需要が膨らみ、消費が増え、機会が拡大するからだ。ところが今後の中国の成長は、輸出を通じて他国から市場を奪うことでもたらされると見込んでいる。ゴールドマンによると、最も大きな痛手を被るのはドイツで、向こう数年間にわたって成長率が0.3ポイント下押しされる」
2035年時点の中国の経済規模は、輸出を通じて他国から市場を奪うことで維持できる。その被害を最も強く受けるのは、ドイツとされる。この予測には、次世代通信網6Gが世界を席巻しているという前提ではない。現在の技術体系に従っている。
(4)「中国は明らかに、相手国と対等な立場で交易に応じる意思がない。輸出はするが、輸入する気はない重商主義に染まりきったこのような国には、どう対処すべきだろうか。唯一の好ましい解決策は全て中国政府が握っている。デフレを克服し、国内消費者へのアクセスを阻む構造的な障壁を排除し、通貨を切り上げ、産業に対する多額の補助金と融資を撤廃する手が打てるはずだ。国家の競争力を高めるために生活水準が犠牲とされてきた中国国民にとってもプラスになるに違いない。とはいえ、海外からこうした呼びかけは何十年も前から行われてきた。口先ではいくら思わせぶりな発言が出てくるとしても、中国共産党の中央委員会がまとめた5カ年計画で変化への期待はしぼむ。消費の優先順位は3番目で、1番目と2番目には製造と技術が位置づけられている」
中国の政策優先順位は、1番目と2番目は製造と技術である。消費の優先順位は3番目である。この政策順位の間違いに気付いたとき、中国はもはや取り返しの付かない事態へ追い込まれる。6Gの新技術体系から完全に取残されるからだ。
(5)「中国が何でも安く輸出する半面、輸入するつもりが一切なければ、十分な効果は得られない。すると各国は国内需要に頼るしかなくなる。保護貿易という好ましくない解決策に帰結する。特に欧州の場合、産業を残すためには、大々的な保護貿易措置の導入は避けられないだろう。この筋書きは弊害が非常に大きく、危険を伴うため、推奨しがたい。中国は米国から課された関税の負担を吸収したが、米国は中国が対等と認める唯一の国だ。他の国が対中貿易障壁を設ければ、中国政府が反撃に出る公算が大きい。国際貿易システムの機能不全は深刻化するだろう。中国が資源と消費財以外は輸入しないつもりなら、他国も同様の措置の準備をせざるを得なくなる」
世界中が保護貿易に転換したとき、中国は生きる術を失う。過剰生産の重圧に沈むのだ。





