中国の高利貸し手法による融資は、発展途上国の財政を悪化させている。こうした被害拡大を防ぐべく、G7(先進7ヶ国)が6000億ドルの融資で健全なインフラ投資を支援することになった。遅ればせながら、中国の野望を食止める防壁がまた一つ増える。
『ハンギョレ新聞』(6月28日付)は、「G7、中国の一帯一路に対抗し 途上国などに6千億ドル投資」と題する記事を掲載した。
米国をはじめとする主要7カ国(G7)が中国の一帯一路事業に対抗し、開発途上国のインフラに6000億ドルを投資すると発表した」
(1)「ドイツ南部バイエルン州エルマウ城で開かれている主要7カ国首脳会議に出席した米国のジョー・バイデン大統領は26日(現地時間)、米国がアジアやアフリカなどの途上国と中進国のインフラ開発に5年間2000億ドルを投入する計画だと明らかにした。さらに、他のG7構成国と欧州諸国まで含めた投資目標額は6000億ドルだとし、このような内容の「グローバル・インフラ投資パートナーシップ」の発足を宣言した」
今後5年間で、米国が2000億ドル、他のG7やEU(欧州連合)まで含めれば、合計6000億ドルのインフラ投資を支援する。中国の高利で担保を必要とする「商業的融資」と区別した、受益国本位のインフラ投資支援だ。中国は、自国利益の視点から融資先を選んでおり、受益国の利益を無視した融資である。
(2)「バイデン大統領は、「途上国はパンデミックのようなグローバルな衝撃を乗り越えていくのに必要な基盤がない場合が多い」として、「これは単に人道主義の面で懸念すべきことではなく、我々皆の経済と安全保障の面での懸念事項だ」と述べた。また「我々は世界各地の主なインフラ投資で、各国とその市民により良い選択肢を提供している」とし、「透明性やパートナーシップ、労働と環境保護」を追求すると明らかにした。「グローバル・インフラ投資パートナーシップ」は気候変化と清浄エネルギー▽安全で開放的なインターネットと情報システム▽性平等と公正性▽保健インフラの改善を4大軸としている」
下線部で、融資の目的を明らかにしている。西側諸国にとっての安全保障に資するという視点が強調されている。これは同時に、中国が狙っている地域でもあり、先手を打って中国の進出を食止める狙いである。中国の「一帯一路」は、中国の国益確保が前面に出ている。
(3)「ホワイトハウスは説明資料で、同事業の財源は政府資金と民間投資から作られると明らかにした。 ホワイトハウスは、米国機関が参加する初期事業として、アンゴラの太陽電池パネル事業やセネガルのワクチン製造施設、シンガポールから東アフリカを経てフランスにつながる通信網、インド農村投資ファンドなどを挙げた」
具体的なプロジェクトも上げられている。中国が手がけられないようなプロジェクトが入っている。ワクチン製造施設や通信網、農村投資ファンドなど民間資金も導入した大掛かりなものが予想される。中国の一帯一路プロジェクトでは、橋・空港・トンネル・港湾・建物といった土木事業が主体である。これよりもはるかに高度な内容のプロジェクトが見込まれる。
(4)「『グローバル・インフラ投資パートナーシップ』は、ユーラシア各地を鉄道や道路、港湾と5世代(5G)通信網で自国と連結する中国の一帯一路に対応する事業だ。米政府高官はブリーフィングで「(一帯一路事業として)支援を受け、いわゆる投資を受ける国々は数年後、借金がさらに増えたことに気づく」とし、「その投資というのはその国の人々に届かない」と主張した。また、米国などが参加した事業は負債を増やす方式にはならないとも述べた」
中国の「債務漬け融資」は、実に巧妙な形で行なわれている。先ず政治家を賄賂で抱き込み、過剰な融資で返済不能にさせ、担保を取り上げる「悪徳商法」そのものだ。こういう悪例から見れば、今回の先進国のインフラ投資支援は、受益国本位の投資内容になっている。
(5)「主要7カ国の首脳は同日、ウクライナへの支援やロシアへの圧迫強化策についても話し合った。参加国の首脳らは、ロシア産の金の輸入禁止も発表する予定だ。ロシアの最大輸入源である石油に価格上限制を適用することも議論されている。購買者がカルテルを形成し、ロシア産石油価格を制限しようという内容だ。ウクライナ戦争で悪化した食糧とエネルギー供給、インフレへの対処も主要テーマとなっている」
G7首脳は27日、ロシアとの戦闘が続くウクライナへの支持を長期的に継続する姿勢を強調した。G7首脳は、将来の平和的解決はウクライナの決断次第との考えを示しつつ、ウクライナが緊急に必要とする軍装備品などの供給で協力を継続する方針を示したものだ。G7内では、ウクライナ支援について温度差のあることが伝えられていたが、最終的に「支援継続」「和平はウクライナの決めること」と決定した。ウクライナ側は、「この冬までに和平を考える」としている。