勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国防疫当局は、コロナの感染ピークは過ぎたとして、早期の収束予測を始めている。だが、これを裏づける詳細なデータは未発表だ。WHO(世界保健機関)も、詳細なデータの発表を求めているほどである。 

    英医療調査会社エアフィニティーは、中国の統計に病院以外での死者数を含まれず、コロナ関連死の定義が狭すぎると指摘している。要するに、第三者機関は中国の主張するピーク説を検証できるデータが不足しているのだ。中国の政治的発表と見られる。 

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月28日付)は、「中国『脱ゼロコロナ』 専門家はデータ疑問視」と題する記事を掲載した。 

    中国は今週、新型コロナウイルス流行のピークが過ぎたことを示そうと、大量のデータを公表した。だが公衆衛生の専門家は、中国政府の情報に状況を正確に判断できるだけの透明性があるかと疑問を呈している。

     

    (1)「中国疾病予防管理センター(CDC)は、コロナによる病院での死者数について、1月上旬は1日約4300人前後だったが、27日までの1週間の春節(旧正月)休暇の半ば時点では、その2割近くに減少したとしている。CDCは同じ報告書で、コロナ感染者数と重症者数の激減も示した。このデータは、昨年12月に厳格なコロナ政策を3年ぶりに解除してからの最も難しい期間を乗り切り、コロナとの共存への移行が円滑で秩序立っているとする中国の主張を裏付けるものだ」 

    病院での死者数は、1月上旬がピークであったという。27日時点ではその2割近くまで減少したという。これをもって、中国はコロナ感染ピーク説を主張している。 

    (2)「疫学者の間では、中国の感染ピークが過ぎた可能性が高いことに同意しつつも、政策転換の影響を十分に判断するには政府の数字は不完全過ぎるとの声もある。世界保健機関(WHO)も、その点を問題に挙げている。今月に入り公表された直近の報告書によれば、入院と外来受診は年初ごろに天井を打った。また、今週は1月5日に記録した高水準に比べて入院者数が85%、重症者数が72%、それぞれ減少した。コロナの流行状況を測る指標である発熱外来の受診件数は、ピークをつけた12月23日の287万件からの減少が続いた。この報告書にはピーク値とトラフ値はあるが、1日ごとの内訳はない」 

    感染症を巡る判断では、日々の克明なデータが必要である。日本でも毎日、感染者数、重症者数、死者数が報告されている。中国では、それが伏せられているのだ。都合のいいデータだけを発表する。その意図は何かが問われている。

     

    (3)「WHOは26日公表した最新のリポートで、中国のコロナ死者数など関連の数字を付属資料に掲載した上で、中国政府の総論を裏付けるデータがないため同国の状況を独自に検証していないと説明した。WHOのマーガレット・ハリス報道官は先週、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)に、前週比での有意義な分析をするには「週次データが必要だ」と語った。WHOはこの点を26日付の報告書でも強調。地域別データの欠如にも言及した」 

    中国はWHOからも注文がつくほど、詳細なデータを公表せずにいる。 

    (4)「中国が開示した情報の正確性にはコロナ流行当初から疑問が投げかけられており、外部の専門家からの懐疑論は後を絶たない。それでも、中国が感染ピークを越えたという主張に同意する世界的専門家もいる。英イーストアングリア大学のポール・ハンター医学教授は、報告されたコロナの再生産数と、12月20日までの感染者数が2億5000万人とする中国政府の推計を踏まえると、中国は既に感染ピークを過ぎた見込みが十分にあるとし、「中国のピークは高いが期間は短かったようだ」と話した」 

    不正確なデータでも、中国の感染ピークは過ぎたようである。

     

    (5)「英医療調査会社エアフィニティーの分析担当ディレクター、マット・リンリー氏は、中国の統計には病院以外での死者数は含まれておらず、コロナ関連死の定義が狭すぎると指摘。「(中国が)発表するデータは大抵、現状把握に役立たない。このところの公式数値の多くは矛盾している」と述べた。エアフィニティーは先ごろ、地方のコロナ感染ペースが予想を上回った結果、死者数と感染者数がわずか数日前にピークに達したとする、より大規模で長期にわたる流行を予測した一部の著名な感染症専門家はこの予測に疑問を呈している。だが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の張作風・疫学教授は、中国のコロナ流行が政府の主張するピークよりはるかに長く続いたとの見方を支持。今月の春節前後の帰省ラッシュは新たな感染の波につながるリスクだと話した 

    英医療調査会社エアフィニティーによれば、ピークは1月20日過ぎで、今後のより大規模な長期にわたる流行を予測している。この予測には反対論もあるが、春節の帰省ラッシュが新たな感染を引き起すリスクは指摘されている。 

    (6)「中国CDC所属で著名な疫学者の曽光氏は、1月初めの北京での会議で、コロナ流行の最も重大な影響は2カ月余り続く可能性があると、より保守的な見解を打ち出した。曽氏はWSJに、感染者数と重症者数が減少しても、高齢の患者は回復に2カ月余りかかる見込みで、多くの患者が再感染し、死亡さえする可能性が高いと話した。「さらに慎重な見積もりが必要だ」と語った」 

    中国の著名な疫学者の曽光氏は、3月頃まで続くコロナ感染症の悪影響を指摘している。ここは、慎重に見ておくべきであろう。

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    ウクライナ軍は、ロシア軍との1000キロメートルにも及ぶ戦線を突破するために、数百台規模の米欧製の戦車を必要としている。今回のドイツ戦車「レオパルト21」の供与決定によって、装甲車と組み合わせた機甲部隊の編成が可能になった。欧州13カ国の軍は、約2000両のレオパルト2を保有している。今年前半で供与されるレオパルト2は、100両を大きく超えるとみられる。主力戦車の訓練は、米英指導による「NATO方式」で1〜2カ月程度かかるとみられる。春から夏には、供与された戦車を軸とした機甲部隊を前線に投入できる見通しという。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月27日付)は、「ウクライナ戦車戦は『NATO軍式』、米英が戦術指導」と題する記事を掲載した。

     

    欧米各国が相次ぎウクライナへの戦車供与を決めたことに伴い、同国軍は春から夏にかけて大規模な反攻作戦に出る見通しとなった。発動される作戦は、戦車部隊を中心に編成し、2003年のイラク戦争でイラク軍を攻略した「北大西洋条約機構(NATO)軍式」の最新の機甲戦となる見通しだ。

     

    (1)「戦車は戦車だけで戦うわけではない。装甲の厚さゆえに視界が制限される戦車の弱点を補うため、戦車に準じた能力を持つ戦闘装甲車や兵員輸送車に搭乗し対戦車砲などで武装する歩兵が帯同し、全体で「機甲部隊」をつくる。米英仏独などは既に戦車供与に先立って戦闘装甲車などの供与を表明済みだ」

     

    「機甲部隊」は、戦車と装甲車から構成される。戦車部隊は通常、4両で1個小隊を構成する。さらに小隊3個+隊長車1両で1個中隊(計13両)となる。つまり、戦車13両で1個中隊の編成だ。

     

    (2)「NATO式機甲戦の強みは、戦車や装甲車、無人機(ドローン)と司令部を通信で常時つなぎ、連携して効率的に敵軍を無力化する「ネットワーク中心の戦い(NCW)」にある。砲弾が尽きた戦車が敵戦車を発見した場合、仲間の戦車やドローンに敵の場所を伝え、代わりに攻撃してもらうといったことができる。ロシアの戦車と比べ「走・攻・守」の基本性能がただでさえ優れている上に、こうした連携戦が可能な英独米の主力戦車をウクライナ軍が配備することの意義は大きい。今後、米欧製の戦車や装甲車に搭乗する兵員の訓練を進めれば、全体で数百両の戦車・装甲車からなるNATO式の機甲部隊に編成し、順調にいけば春から夏にかけて大規模な反転攻勢の準備が整いそうだ」

     

    ウクライナは、ITに長けている国である。現在でも、わずかな部品を組立てて独自の通信機能を維持して最前線で戦果を上げている。NATO式機甲戦は、戦車や装甲車、無人機(ドローン)と司令部を通信で常時つなぎ、連携して効率的に敵軍を無力化することだ。この方式は、直ぐにウクライナ軍に消化されるはず。短期間に機甲化部隊は軌道に乗るであろう。

     

    (3)「米軍や英軍は03年のイラク戦争で大規模な機甲戦を展開し、旧ソ連製戦車を配備していたイラクのサダム・フセイン政権軍を一気に打倒した。この実績を踏まえ米英軍は、ウクライナ軍に戦車などを供与するのと並行して具体的な戦術を指導しているもようだ。イラク戦争当時と現在が異なるのは、地上戦において無人機が普及したことだ。ロシア軍はなお各種ミサイルも保有している。ウクライナ軍が大規模な機甲戦に踏み切る際には、ロシア軍の空からの反撃に備える必要がある」

     

    イラク軍は、ロシア製戦車を砂漠の中に埋める奇想天外な待ち伏せ作戦を行い大失敗した。米英軍の理詰めの戦術に対抗できなかったのだ。こういう失敗から、ロシア軍はどのような戦い方をするのか。空からの攻撃も考えられるのであろう。

     

    (4)「ロシア軍は今後、ウクライナ軍の機甲戦準備が整う前に、兵士に多大な犠牲を強いる力任せの従来型戦術で攻勢をかけてくる見通しだ。ウクライナ軍や同軍を支援する欧米各国が戦いの主導権を握るには、今後の新機甲部隊の編成と戦闘準備をいかに前倒しできるかにかかっている」

     

    軍事戦略の専門家は、次のような予測をしている。「ロシア軍司令官は、ウクライナが新型兵器をどこでどのように使用するか予測し、最善の対策を見極めようとするだろう。ロシア政府は、防御と攻撃のバランスをどう取るか、機先を制するか、それとも春に予想されるウクライナの攻撃を待ち構えるか決断する必要がある」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月27日付)

     

    ロシア国防省は25日、戦闘地域の近くで「急襲部隊」が訓練を受けている映像も公開した。「ウクライナ軍の最も困難で陣形の整った防衛地区を突破する」ことを想定していると指摘した。こういう秘密作戦を公開したのは、逆に言えば「行なわない」という意味でもある。虚々実々の駆引きをしているところだ。

     

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    日本の半導体は現在、汎用品とされる「40ナノ」(ナノは、10億分の1メーター)の生産に止まっている。それが、新会社Rapidus(ラピダス)は、一挙に「2ナノ」へ挑戦するので世界が驚いている。米IBMの新技術「GAA(ゲートオールアラウンド)」を導入して、この技術的遅れを飛び越す「荒業」で挑戦するのだ。

     

    日本半導体は1980年代、米国半導体を追い抜き世界一の座についていた。これが、米国との経済摩擦の種になり、米国へ妥協して後退を余儀なくされた経緯がある。それだけに、日本の半導体基礎技術は盤石である。さらに、半導体製造設備や半導体素材では強い競争力を持っている。こうして、日本半導体が世界トップへ踊り出られる潜在的総合力は十分に備えている。

     

    『日本経済新聞』(1月25日付)は、「ラピダス、25年前半に先端半導体試作ライン TSMC追う」と題する記事を掲載した。

     

    最先端半導体の国内生産を目指すラピダスは、2025年前半までに試作ラインを構築する。同ラインでスーパーコンピューターなどに使う2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体生産技術を確立し、20年代後半に量産工程を立ち上げる。25年に「2ナノ品」の量産を計画する台湾積体電路製造(TSMC)など世界大手に迫り、日本の半導体産業の復権を目指す。

     

    (1)「ラピダスの小池淳義社長が24日、日本経済新聞の取材で明らかにした。20年代後半に量産を始めるには、技術の確立などに取り組む試作ラインの稼働が25年前半までに必要と説明した。国内の候補地の条件として、水や電気などのインフラが安定していることに加え「国内外の人材が集まりやすい場所であること」を挙げた。選定作業を進めており、3月までに正式決定する。試作ラインを設置した場所に量産工場も置く方針だ」

     

    ラピダスが手がける「2ナノ」は、27年から量産化の見通しである。この「2ナノ」が最先端プロセスである時期は、2030年代前半までと予測されている。日本は「2ナノ」半導体を世に送れば、先行メーカーの台湾TSMCや韓国サムスンと技術的な肩を並べられるという。日本にとっては周回遅れが俄然、トップランナーに追いつけるのだ。

     

     

    (2)「小池社長は技術の確立までに2兆円、量産ラインの準備に3兆円規模の投資が必要になるとの展望を示している。ラピダスが量産を目指すのは2ナノ品と呼ばれる最先端の演算用半導体だ。スパコンや人工知能(AI)などの「頭脳」を担う。回路を微細にして性能を高める必要がある。現在、TSMCは3ナノ品を手掛けており、25年に2ナノ品を量産する計画を示している。2ナノ品は、微細な回路を形成する技術だけでなく、回路を形作る構造自体も大きく変化するため、量産に必要な技術的なハードルが高くなっている。国内ではTSMCが熊本県で24年に量産開始を予定する半導体工場でも12〜28ナノ品にとどまる」

     

    日本半導体が、台湾や韓国などの半導体と異なるのは、国内に世界一流の製造業を擁していることだ。スパコンや人工知能(AI)をテコにし、日本製造業の競争力が飛躍的に増すという希望が出てくる。

     

    (3)「先端半導体は回路が微細で複雑になった分、設計し、量産するまでに必要な時間が長くなっている。小池社長は、ユーザー企業への設計支援や量産工程の見直しなどを進め、量産に必要な時間を短縮する考えを示した。最先端品を短期間で提供するビジネスで、量で圧倒するTSMCや韓国サムスン電子との差異化を目指す。将来的には「先端品のみを量産する体制を目指し、高収益なビジネスモデルを築く」という。ラピダスが22年末に技術ライセンスを結んだ米IBMは21年、2ナノ品の試作に成功している。ラピダスは米国に近く社員を派遣し、必要な基礎技術の習熟を進める。小池社長は技術開発から量産工程の確立に向け「数百人規模のエンジニアが必要になる」との見方を示し、順次採用を進めている」

     

    下線部は重要である。半導体ユーザー企業と一体化できることだ。これが、半導体製造時間を短縮してコスト切り下げが可能になるとしている。少量生産でも受注できる体制を整え、先行2社との競争に備える。

     

    (4)「ラピダスにはトヨタ自動車やソニーグループ、デンソー、キオクシアなどが出資している。出資企業からラピダスに派遣された社員もおり「各企業の得意分野のエンジニアなどにも来てもらい(半導体を使った)製品の新しい価値を生み出していきたい」と語った。今後も最先端半導体の用途開発などを見据え、出資企業との連携を進める」

     

    ラピダスは、トヨタ自動車やソニーグループ、デンソー、キオクシアなどが出資している。需要家でもあるので、注文を直接聞けるのも大きなメリットに上げられている。ラピダスは、日本の発注先の製造業に直結しているのは、何と言っても強みとなろう。

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    中国は、日本・オランダから先端半導体製造設備の輸入をストップされることになった。米国による対中半導体規制へ協力するもの。中国半導体は設計技術を高めているが、肝心の製造や製造設備の面で大きく出遅れている。米国は、この弱点を突いて軍需物資の生産を止めるのが目的だ。

     

    『ブルームバーグ』(1月27日付)は、「日本とオランダ、米の対中半導体規制への参加に同意―関係者」と題する記事を掲載した。

     

    日本とオランダは、中国による先端半導体関連装置へのアクセスを制限する米国の取り組みに参加する方向だ。交渉に詳しい複数の関係者が明らかにしたもので、独自の半導体製造能力の構築を目指す中国政府に対抗する強力な同盟となる。

     

    (1)「中国企業への供給を認める装置について新たな制限を設けることを巡り、日米蘭の当局者は米国時間27日にも協議を終える見通しだ。協議が公になっていないことを理由に同関係者が匿名を条件に語った。交渉はワシントンで26日の遅い時間にも続いている。実施が見込まれる制限措置についての発表は予定されていないという」

     

    米国バイデン大統領は、すでに日蘭の両首脳とも会談して大筋で合意を得ていた。米国は、中国を強力な軍事力の競争相手と位置づけており、半導体製造設備では世界の「2強」である日本・オランダの企業に輸出規制で協力を求めていた。半導体が、戦略物資である以上、やむを得ない措置であろう。

     

    (2)「オランダは、同国の半導体製造装置メーカー、ASMLホールディングに対する規制を拡大し、一部の種類の先端半導体の製造に不可欠な深紫外線(DUV)露光装置の中国への販売を禁止する。この装置がなければ製造ラインの構築は不可能となる。日本もニコンに対し、同様の制限を設ける。西村康稔経済産業相は27日午前の閣議後会見で、米国による半導体製造装置の輸出規制について「さまざまな議論をし、レモンド米商務長官とも意見交換している。米国を含む関係者と議論を行う」と語ったが、「詳細は外交上のやり取りなので控える」とした」

     

    中国は、日本へ報復措置を取るであろうと予想されている。自民党の青山繁晴参院議員は、米政府が求める半導体の対中国輸出規制を日本が受け入れた場合、中国からの報復が「100パーセントある」との見解を示した。21年の日中貿易は、10年ぶりに過去最高を更新した。輸出では、集積回路や半導体デバイスなどの器械類が牽引している。日本企業には痛手だが、青山氏は「経済安全保障の観点からアジアやアフリカ、南米などで新たな需要を開拓すべきだ」と述べた。『ブルームバーグ』が報じた。

     

    欧州最大の半導体製造装置メーカー、ASMLホールディングのピーター・ウェニンク最高経営責任者(CEO)は25日、「輸出規制が、最終的には中国による独自の先端半導体製造装置開発を招く」との見方を示した。ただ、半導体の基本技術は米国が握っているので、これに抵触しない半導体製造設備の開発が著しく困難であろう。世界で半導体製造設備を生産できる企業は日本・オランダ・米国とわずかである。それだけ、高度の技術を必要とするのだ。

     

    (3)「今回の共同の取り組みは、バイデン政権が昨年10月に発動した対中半導体規制を拡大するものだ。同規制は中国が独自の先端半導体を製造したり、海外から先端半導体を購入したりすることを制限するのが目的。こうした半導体が中国の軍事力や人工知能(AI)技術の向上に寄与する可能性があると懸念されている。米半導体関連装置メーカーは、バイデン政権が課した一方的な規制により米国メーカーが制約される一方で、海外の競合メーカーが引き続き最大の市場の一つである中国で事業を継続することができ、中国の軍事技術向上を制限するという目標も骨抜きになるとして不満を表明してきた」

     

    米国が、日本・オランダにも協力を求めたのは、米国企業の不満を抑えることでもあった。米国企業だけ輸出禁止で、日蘭企業が自由というのでは「不公平」という不満解消のためでもある。いずれにしても、中国は米国覇権へ挑戦してロシアと協調する姿勢を見せたことが、今回の事態を招いた背景だ。中国にとって痛手である。

     

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    ロシアは過去の戦争で、祖国防衛を守り抜き勝利を収めたと自信を見せている。確かに、その通りだが、それは侵略を受けた祖国防衛戦であった。今回のウクライナ侵攻は立場が逆転して、侵略する側である。過去の祖国防衛戦は、今のウクライナに該当しており、ウクライナ軍が必死の戦いをしているのは、皮肉にも過去のロシアの姿である。 

    ウクライナ侵攻では、ロシアが西側に同盟国を持たない初めての戦いである。しかも、その西側から経済制裁まで受けており、武器弾薬の生産で大きな障害になっている。ロシアにとって、この戦いが極めて不利な状況にあることは紛れもない事実だ。勝利への展望がないままに戦いを続ける悲劇は、ロシアの経済的疲弊と国際的地位の激落をもたらすだけだ。一刻も早く、ウクライナ侵攻を止めなければ、ロシアの傷は永久に癒えないであろう。 

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(1月17日付)は、「ロシア、勝利維持の道なし」と題する記事を掲載した。 

    ウクライナの情報機関はロシアが今年、ウクライナに新たな攻撃をしかけるために、さらに兵を動員し軍の規模を200万人まで拡大する可能性があるとみている。ウクライナのゼレンスキー大統領は最近、ロシアが再び首都キーウ(キエフ)を制圧しようとするかもしれないと警告を発した。 

    (1)「プーチン氏と彼の支持者は相変わらずロシア史を都合よく解釈している。ロシアは1812年のナポレオンによる侵攻と第2次大戦でヒトラー率いるナチスドイツによるソ連侵攻で激戦を強いられ大きな犠牲を払ったが、最終的には勝利を手にした。ただ、いずれも侵攻から自国を守る防衛戦だった。退却先がないと知っていたロシア軍は最後まで戦い抜いた。だが今回、祖国を守ろうとしているのはウクライナの方だ。しかも過去の大戦ではロシアは欧州の大きな軍事同盟の一部だった」 

    ロシアは、歴史を自国に都合のいいように解釈しているが、それは歴史の教訓を正しく学ばない結果である。 

    (2)「ロシア軍情報部の元大佐でロシア政府に近いストラテジスト、ドミトリー・トレーニン氏は最近書いた記事で「ロシアは歴史上、初めて西側に同盟国を持たない状況にある」と指摘した。それどころか反ロシアで結びついた勢力は欧州にとどまらない。同氏も「英語圏諸国や欧州、アジアなど米国を中心とする同盟各国の結束ぶりは過去にないレベルに達している」としぶしぶ認めている」 

    ロシアが歴史上、「初めて西側に同盟国を持たない状況にある」との指摘は、ウクライナ侵攻でロシア最大の弱点になっている。この現実を認識すべきだ。核をちらつかせれば、それにたじろぐ相手ではない。 

    (3)「根本には、ロシアが大国としての地位を既に失っているという事実を受け入れられないことがある。他の欧州諸国はロシアより早くこの現実を受け入れた。プーチン氏がいまだに固執する旧来の欧州の秩序は大国間の対立を軸に構築されていた。EUや北大西洋条約機構(NATO)という大きな傘の下で各国が協力し合うという新しいシステムを理解できない同氏は、ロシアを欧州大陸全体から孤立させてしまった」 

    ロシアの現状は、一国でNATOに立ち向かっている形だ。NATOは、戦場に立たぬが武器弾薬を供給している。この戦いの帰趨は、すでに決していると言っていい状況だ。 

    (4)「もしプーチン氏が、ロシアが超大国の1つ下に位置するレベルの国だと受け入れていたら、ロシアは中堅国として各国のパワーバランスを図るべく政治手腕を発揮する機会が何度もあっただろう。しかし、プーチン氏はそんな地位に甘んじることはできずウクライナに無理やり侵攻した。皮肉にもロシアは、その世界的地位をこの戦争でさらに失う可能性が高い」 

    ロシアは、この戦いが終わった時に厖大な賠償金を科される。西側諸国に差し押さえられている外貨準備も賠償金の一部に回されるほか、経済制裁も継続されるだろう。ロシアが、「100年前の姿」に戻るというのは、決して過剰な表現ではない。 

    (5)「ロシアが極めて劣勢に追い込まれたことで、同国の一部エリートらの間には一種のニヒリズム(虚無主義)が広がっており、彼らはテレビで核戦争やアルマゲドン(最終戦争)さえ今や現実になりかねないなどと述べたてている。ロシアの戦略家らが戦争を続けるべきだと主張するのは、勝利する見込みがあるからではなく敗北など考えることすら受け入れ難いからだ。(先の)トレーニン氏は先の陰鬱な記事で「理論上はロシアが降伏する選択肢はある」が、それは「国家の破滅的状況、予想される大混乱、主権の無条件の喪失」を必然的に伴うため受け入れられないと論じている 

    この下線部分は、すでに「内戦説」となって報道され始めている。この危機的状況をどうやって防ぐかが問われている。中国やインドは、傍観していないでロシアを説得すべき役回りになっている。 

    (6)「こんな結末を恐れるあまり彼(トレーニン氏)は、たとえ「長年」にわたり「大きな犠牲」を払う必要があってもロシアには「自国の主権と領土の一体性を守る戦闘国家」として戦い続けるしかもはや道はないと結論づけている。この血みどろの道を突き進むには「エリート階級の無条件の愛国心」が必要だとも指摘した。しかし、これは非常に奇妙な愛国心だ。祖国の貧困と孤立をさらに深め、独裁をさらに助長し、世界からもっと非難される残忍な侵略戦争に、ただ命を奪われるために同胞を送り込み続けたいとする愛国心を持つロシア人などどこにいるのか」 

    ロシアにとって、真の愛国心とは何か。戦いを止めることだ。これが可能な人々は、獄窓にいるか国外へ脱出している。日本の敗戦時には、「天皇」という絶対的権力によって戦いを止めた。ロシアでは、その絶対的権力者が戦争継続の姿勢である。まさに、ロシア存亡の危機だ。

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