勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国の昨年10~12月期の実質GDPが、前期比マイナス0.4%になった。新型コロナウイルスが拡散した2020年4~6月期から2年6カ月ぶりのマイナス成長だ。政府消費と建設・設備投資は増えたが、民間消費と純輸出が減少した結果である。2020年4~6月期もマイナス3%成長。民間消費と純輸出の減少が原因だ。2022年のGDP成長率は、前年比2.%であった。 

    『日本経済新聞 電子版』(1月26日付)は、「韓国で膨らむ住宅ローン金利、消費冷やし景気減速に拍車」と題する記事を掲載した。 

    韓国経済の減速に拍車がかかってきた。韓国銀行(中央銀行)が26日発表した2022年の国内総生産(GDP)の成長率は前年比2.%で、21年の同4.%を下回った。韓国銀行は23年の成長率を1.%と見込む。物価抑制や通貨防衛のための高金利策が、住宅ローンを軸に家計負債の金利負担を膨らませ、消費を冷やしている。

     

    (1)「韓国銀行は、23年の景気が「後半になれば改善する」と見込んでいる。だが、民間のシンクタンク各社は下振れを予想する。同年の実質GDPの伸びが1.%になると予想するLG経営研究院は「金利上昇で証券・不動産市場が振るわず、消費者心理にはマイナス効果を及ぼす可能性が高い」と指摘する。個人消費は韓国のGDPの5割近くを占める。高金利は家計に負担だ。足元の住宅ローン金利の膨張が23年も続けば、深刻な打撃となる」 

    個人消費は、GDP比46.14%(名目値 2021年)を占めている。これが、住宅価格急落と高金利に挟撃されている。22年10~12月期の個人消費が、マイナス0.4%になった背景だ。この状態には、早急な完全が望めないので、23年景気の足を引っ張る。

     

    (2)「19年にソウル市内のマンションを10億ウォン(約1億円)で購入した会社員の男性(37)は住宅ローンの金利負担が3年で2.5倍に急増した。「手取り給与の5分の1を利子払いにあてている。夫婦で倹約するしかない」と打ち明ける。厳冬のいま、室内でもコートを着て暖房費を抑えている。この例は特別でない。韓国銀行によると、同国の金融機関の平均貸出金利は22年11月が年5.64%で、前月より0.38ポイント上がった。前年同月比では2.41ポイントも高い。住宅ローン金利の8割超が変動制で、足元では最大で8%を超える」 

    住宅ローン金利の8割超が、変動制であり足元では最大で8%を超えている。これは、日本から見れば「異常高」である。政策金利0.5%時代が、約1年も続いた。この時の貸出金利は、約2.8%程度。それが、あっという間に急騰したのだ。個人消費へしわ寄せが行って当然であろう。

     

    (3)「韓国金融監督院によると、住宅ローンをはじめとする家計負債は22年9月時点で1870兆ウォンと、17年9月より4割増えた。家計負債のGDP比を21年のデータで比較すれば、韓国が104%で、米国(79%)、日本(64%)をいずれも大きく上回る。加えて金利負担が膨らめば家計の可処分所得は圧迫される。22年10〜12月の「民間消費」は前期比0.%減となった。新型コロナウイルス対策の行動制限が解除され、景気回復が期待されたが、実際には逆の結果になった。韓国銀行の担当者は23年の韓国経済についても「多額の家計負債が国内消費の回復には重荷になる」と警戒する」 

    家計負債の対GDP比は、韓国が104%と断トツである。この状況での高金利である。家計が悲鳴を上げても不思議はない。家計負債の対GDP比は、日本よりも40%ポイントも高いのだ。

     

    (4)「高金利の背景には、22年2月にウクライナ侵攻を始めたロシアへの経済制裁による物価上昇を抑え、対ドルで韓国通貨ウォンを防衛するための利上げがある。韓国銀行は米連邦準備理事会(FRB)と歩調を合わせる形で、政策金利をこれまでの約1年半で過去最低水準の年0.50%から3.50%に引き上げてきた」 

    韓国が、急速な利上げに走ったのは、ウォン安対策である。これが、輸入物価を押上げて国内インフレに点火した。現在、5%台の消費者物価上昇率である。金利引上げは、不可避であった。 

    (5)「韓国の不動産価格は過去5年間で平均8割上がった。対中関係の悪化や新型コロナの感染拡大で落ち込む景気を支えるため、韓国銀行が低金利政策を採用していたためだ。「緩和マネー」が不動産市場に流入した。将来の値上がりを見越し、所得に見合わない多額の住宅ローンを組んだ世帯も多い。韓国の「持ち家信仰」は強い」 

    韓国は、平野が少なく住宅地が少ないという立地条件だ。ソウルの立ち並ぶマンション群を眺めると、日本では想像もできないほどの「密集状態」である。その上、人々は職を求めてソウルへ集まるので、ますます住宅不足が深刻化している。不動産バブルの背景には、住宅地不足という問題もある。国土計画が不備であるのは否めない。

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    中国は、昨年12月初旬にゼロコロナ解除とともに富裕層の海外移住希望者が急増している。習近平氏の国家主席3期目の就任によって、富裕層へ風当たりが強くなることを警戒し、海外移住希望を強めているもの。これら富裕層は、巨額資金を持出すものと見られ、年間1500億ドル超の流出が起こるという予測まで出て来た。

     

    『ブルームバーグ』(1月26日付)は、「中国人富裕層の海外移住加速、巨額資本流出の恐れーゼロコロナ解除で」と題する記事を掲載した。

     

    中国が新型コロナウイルス禍に伴う渡航制限を解除したことで、中国人富裕層の海外移住の動きが加速している。こうした中国人が海外の不動産や資産を購入し、巨額の資本流出につながる可能性がある。

     

    (1)「複数の移住コンサルタントが、インタビューで明らかにしたところでは、ゼロコロナ政策が昨年12月に撤廃されて以来、多くの中国人富裕層が不動産のチェックや移住計画の最終確認のため海外に渡航し始めている。こうした中、金融市場を圧迫し得る資本流出に加え、頭脳流出が懸念されている。中国共産党に盾突かない限り富を増やし続けられることが当たり前になっていた富裕層はこの2年間、習近平国家主席によるテクノロジー・不動産・教育業界の締め付けや、同氏が推進する「共同富裕」で動揺せざるを得なかった。富裕層向けアドバイザーは、昨年10月の共産党大会で習氏が支配体制を強化して以来、富裕層の懸念は増していると指摘した」

     

    海外移住は、資本流出のほかに頭脳流出も含んでいる。中国にとっては、マイナス話である。習近平氏の強権政治を恐れた結果だ。

     

    (2)「カナダの移民問題専門の法律事務所ソビロフスによると、カナダへの移民を目指す中国人顧客が急増している。同事務所のシニア弁護士、フェルーザ・ジャマロワ氏は「この6カ月間でうんざりしたのだろう。相談の予約が急増している。中国の顧客は現在、移住に前向きであり、できるだけ早期を希望している」と説明した。ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏によれば、コロナ禍前は中国からの海外渡航者による資本逃避は年間1500億ドル(約19兆4000億円)前後だったが、今年は3年間海外旅行が実質禁止されていたこともあって増加する可能性が高い

     

    中国の国際収支では、これまで巨額の「誤差脱漏」が計上されてきた。原因不明とされてきたが、その正体は海外移住者が法をくぐって持出している資金であるようだ。通常は、年間1500億ドルの流出とされるが、23年はそれ以上の金額になる模様。習氏の強権がもたらす代償である。

     

    (3)「同氏は、「中国は今年、巨額の資本流出に直面し、これが人民元と経常収支を圧迫する公算が大きい」とし、多くの人が現金を持ち出せない場合は今年の資本逃避は過去の年を上回らないかもしれないが、それでも労働力や生産性、成長に影響を及ぼし得ると指摘した。クレディ・スイス・グループの昨年9月のリポートによれば、資産が5000万ドルを上回る超富裕層の人数で中国は3万2000人強と、米国に続き2位となっている」

     

    中国は、外貨準備高を3兆ドル台維持で躍起になっている。これから、海外移住者によるドル持出しが人民元相場と経常収支に影響するだろうという。中国は、資産5000万ドルを上回る超富裕層が3万2000人強もいる。潜在的ドル流出リスクだ。

     

    (4)「中国人富裕層の海外移住は、既に22年から始まっている。投資移住コンサルティング会社ヘンリー&パートナーズのデータ情報パートナーであるニュー・ワールド・ウェルスによると、2022年は約1万800人と、19年以来の多さとなった。世界ではロシアに次ぐ2位」

     

    世界で海外移住者が多いのは、ロシアが1位で中国は2位という。いずれも権威主義国家の強圧政治を嫌っての脱出である。

     

    (5)「ヘンリー&パートナーズによれば、中国の規制撤廃後、中国人からの移住に関する問い合わせが撤廃前の4倍強に増加。コロナ禍初期の移住は少なかったが、22年に問い合わせが倍増した。アジアの顧客への海外不動産販売を支援する不動産会社、ジュワイIQIによると、中国本土の買い手の問い合わせ件数は21年に26%、22年に11%それぞれ減少したが、今年に入って55%増加してその水準を維持しているという」

     

    中国人の海外不動産購入の問合せは、23年に入ってから55%の増加という。富裕層は、先を争って脱出しようとしている。国家衰退の前兆現象に見えるのだ。

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    ドイツは、自国製戦車「レオパルト2」をウクライナへ供与する問題で逡巡してきたが、米国も主力戦車「エイブラムス」を提供するとの合意を得て最終決定した。改めて、米国の存在がいかに大きいかを世界に見せつけることになった。ドイツは、ロシアとの関係がさらに悪化することを恐れ、米国が戦車を供与すればドイツも行なうと、米国の影に隠れたのである。

     

    もっとも、ドイツには第二次世界大戦中、欧州を戦乱に巻き込んだ負い目がある。その古傷が、ドイツ戦車が戦場に再び登場することでうずく、という心理的負担を抱える。このトラウマが、米国の戦車提供で薄められるというのである。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月25日付)は、「対ウクライナの戦車供与、米国の影に隠れた欧州」と題する記事を掲載した。この記事は、ドイツがウクライナへ戦車供与を正式決定する直前に執筆され、その舞台裏が明らかにされている。

     

    ドイツが自国製戦車の供与になかなか同意しないことに対し、多くの欧州諸国が不満を募らせているのは、ドイツ製戦車が戦場において有用なだけでなく、ドイツの姿勢により、ウクライナ戦争への欧州の対応が米国に左右される度合いが高まっていることも理由だ。

     

    (1)「オラフ・ショルツ独首相は何週間もの間、米国がまず米軍の主力戦車「エイブラムス」をウクライナに供与すれば、ドイツは自国製戦車「レオパルト2」を引き渡すと主張してきた。米国が供与を行えば、ロシアが反発しても、ドイツへの怒りはより抑制されることになると独政府は説明していた。あるドイツ高官によると、独政府は米国との合意が発表され次第、約14台の「レオパルト2」をウクライナに供与すると約束するほか、ポーランドなどの国々が申請しているウクライナへのドイツ製戦車の引き渡しを製造国として承認する意向だ」

     

    ドイツとロシアは、皇帝時代から密接な関係にあった。ロシア官僚として、多くのドイツ人が勤務した歴史がある。ショルツ・ドイツ首相が、ウクライナへ戦車を提供するにはそれなりの戸惑いがあったのであろう。ロシアから恨みを買いたくなかったのだ。

     

    (2)「こうしたエピソードは、西側同盟国の間で不満を引き起こした。英国・ポーランド・エストニアなど他の欧州諸国は、欧州には米国の後ろに隠れる余裕はないとの立場を示している。米国はウクライナに対する軍事援助を拡大しているが、エイブラムスはウクライナが必要とするものではないと述べている。エストニアの首都タリンにあるシンクタンク、国際防衛安全保障センター(ICDS)のクリスティー・ライク副所長は「欧州諸国の米国依存は懸念すべき状態だ」と指摘。「幾つかの国はこれに気付き始めている」と述べた」

     

    ポーランドやエストニア三国は、歴史的にロシアに苦杯を舐めさせられてきた関係にある。ロシアへは、独仏と違った被害者意識を持っているのだ。それだけに、ドイツの逡巡する姿勢に強い違和感を示してきた。欧州が防衛面でまとまるには、ドイツのように米国の影に隠れる事態が水を差す、と批判的である。

     

    (3)「英当局者によると、同国政府は今月に入り、他の欧州同盟国にウクライナ支援の強化を促すため、ウクライナに戦車「チャレンジャー2」の一群と追加の大砲を供与することを決めた。西側諸国が軍事支援を加速しない限り、流血を伴う長いこう着状態が続く恐れがあることを理由に挙げた。英当局者は、バイデン大統領が十分な超党派の支持を得られず、今年の秋以降に米国の軍事支援が滞る恐れがあることを心配している。共和党議員の一部はウクライナ支援に何十億ドルもの資金を費やすことに批判的だ」

     

    英国は、米国の国内政治情勢の変化に懸念を持っている。共和党議員の一部に、ウクライナ支援に批判的意見の集団が存在することである。それだけに、いつまでも米国の傘に入っていることは、ウクライナ支援で結束を弱める結果になるとしている。戦争を長引かせないためには、欧州のさらなる結束が必要という立場だ。

     

    (4)「こうした背景の下、北欧と東欧の多くの国々は、ドイツがより積極的なウクライナ支援をためらう態度を繰り返し示していることに憤っている。こうしたドイツの姿勢は、欧州の軍事防衛と対ロシアの政治的指導力という点で、欧州が米国依存を深めるという意図せぬ結果を招いている。ウクライナへの兵器や弾薬の供給量では、米国が欧州諸国を優に上回るものの、ドイツは自国が英国と並ぶ最大の供給国の一つだと指摘している」

     

    ドイツは、欧州最大の経済大国である。そのドイツが、米国の影に隠れてロシアの風当たりを防ごうというやり方をしている。北欧と東欧の多くの国々は、こういったドイツに批判的である。

     

    (5)国際舞台で欧州が一層の自立をはかるという面で、仏独両国が主導的役割を果たし得るとの認識も、ウクライナ戦争によって脇に追いやられてしまった。仏独の対ウクライナ兵器供与に関する慎重な対応や、和平合意に向けたロシアのウラジーミル・プーチン大統領への外交的働き掛けといった行動を受けて、NATO諸国内で地理的にロシアと近接するポーランド、バルト諸国などは仏独に対する長年の不信感をさらに強めている」

     

    ドイツは、ウクライナ侵攻後の対ロシア外交を頭に描いているのであろう。経済的利益の復活である。これは、早急に復活するとは思えない。NATO全体が、ロシア戦略をどのように描くかという構図に関わるからだ。北欧や東欧が、ドイツと対立しそうである。

     

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    中国文化という土壌は、毛沢東や習近平氏のように度を超した独裁者が出てくる危険性を秘めている。中国4000年の歴史で、独裁体制を維持させている裏には、市民社会という根っ子のないことが悲劇の出発点であろう。だが、今や大学教育を受けた人間が、毎年1000万人以上も卒業する社会になった。「習近平独裁」が、いつまで続けられるか、だ。

     

    『日本経済新聞』(1月26日付)は、「習氏一極、中国にもたらす災禍」と題する寄稿を掲載した。筆者は、米ユーラシア・グループ社長で国際政治学者のイアン・ブレマー氏である。

     

    中国の習近平国家主席は、2022年10月の第20回共産党大会を経て、与党・共産党、ひいては国全体への支配を強め、毛沢東以来で最も強力な指導者となった。習氏が集権化に向けて動き出した10年前に比べ、内部の抵抗はさらに弱まった。その結果、10億人を超える国民の生活を左右することも可能になり、絶大な権限を手中にした」

     

    (1)「世界経済の安定と地政学的な権力均衡への中国の重要性は毛沢東時代より格段に高い。習氏への権力集中は世界共通の問題だ。習氏が最近下した決定をいくつか振り返ってみたい。外国製のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの輸入を拒否し、14億人の国民は新型コロナウイルスに著しく感染しやすくなっている。死者数は欧米諸国の数分の1にとどまっているが、経済的にも社会的にも大きな代償の上に成り立っているだけに、この成功が続かないと懸念する根拠は十分にある。中国製ワクチンすら接種が進まず、数百万人が重症化や最悪のケースに至るリスクがある」

     

    習氏が、欧米のmRNAを拒否したのは、中国製ワクチンが欧米製よりも優れていると宣言した手前、自らの権威に傷がつくというメンツ論であった。個人の思惑が先行して、多くの人々を犠牲にした。

     

    (2)「習氏の支配欲は他の面でも大きな痛手をもたらす。国内の情報の流れに民間テック企業が影響力を持ちすぎているという危惧からか、これら企業を取り締まった。その結果、画期的なデジタル技術の構築力が損なわれ、国際的に投資家の信認も揺らいだ。中国の民間部門で最も効率的なセクターの一つで時価総額数兆ドルが消えた」

     

    ITなどテック企業を抑制したのは、政敵である江沢民一派がテック企業の株主に潜り込み莫大な利益を得ることで、反習近平運動を始めないように先手を打ったことだ。「無軌道な資本の膨張抑止」は、後からとってつけた理由である。

     

    (3)「外交面では、ロシアによるウクライナ侵攻開始のわずか3週間前に、習氏は中国とロシアの友好関係には「制限がない」と宣言した。欧米では習氏がプーチン大統領と同じく国際秩序の再構築を狙っているとの懸念が高まった。習氏は国内の官僚から助言を受けただろうが、同氏の強権主義的な性格、政治的、経済的支配の強化への欲求、強硬な外交姿勢が優先された。しかもこれは、習氏が昨年10月に最高指導部の政治局常務委員に側近を引き上げ、毛沢東後に続いていた常務委員会の総意による統治体制を捨てる前のことだ」

     

    習氏は、プーチン氏と手を携えて自らの超長期政権を目指している。個人的にも、プーチン氏という存在が必要である。ただ、プーチン氏に失脚という事態が起こった時、習氏への逆風になることを覚悟する必要があろう。その意味で、プーチン氏との密着は習氏にとってリスクを増すであろう。

     

    (4)「習氏への権力集中に伴う問題は23年に大きくなるはずだ。まず、慎重な準備もなくゼロコロナ政策を全面解除した結果、中国で100万人以上の死者が出る懸念が浮上している。ワクチン接種率が低い高齢者は、特に感染しやすい。混乱が生じても、政府は外国や国民からひた隠しにするだろう。これほどの方針転換は"皇帝"習氏しかできない。致死率の高い変異型に対しても習氏は中国全土、国境をまたぐ感染の急拡大を容認するのではないか。突然、検査の規模が大幅に縮小され、変異型を検出する力は弱まるはずだ。医療機関は重症患者を受け入れ始めているが、準備状況は危うい。19年末にコロナが発生した経緯から見て、中国が必要な情報を共有するのかは怪しい」

     

    習氏の政策は、予見不可能になってきた。物事が、氏の思いつきで変わるリスクが高まっているからだ。これは、国民にとって常にブレーキを踏みながら進むという行動パターンを強いることになる。下線部のコロナ検査の大幅縮小によって、変異株を検出する力が弱まれば、新たな感染拡大につながる。

     

    (5)「現在、文化大革命や大躍進政策の兆しはない。習氏が過激な政策を導入しようとしても、都市部の教育水準の高い中間層が同氏への数少ない抑止力の一つになる。だが、習氏は既に中国と国民に多大な犠牲を強いている。23年はいっそう犠牲が膨らむだろう」

     

    都市部に大学卒業生が増えている。ただ、就職難で中間層を形成できず、一部は「寝そべり族」という無為・無抵抗の層になっている。この層が、社会変革という大きなうねりが起これば、立ち上がる可能性もあろう。

     

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    ドイツは、ようやくウクライナへの主力戦車の供与問題で決着をつけた。ロシアとの全面衝突を避けるために供与に慎重だったが、国内外の批判を受けて外堀が埋まった結果だ。隣国ポーランドのモラウィエツキ首相は、「他国と連携して戦車をウクライナに送る」とドイツに主力戦車「レオパルト2」の供与を認めるよう圧力をかけ続けた。ポーランドは、かつてドイツの侵攻を受けた歴史を持つ。そのポーランドが、ドイツの背中を押してウクライナへの提供を決めさせた。複雑な第二次世界大戦への感情があったのだ。

     

    ウクライナが、ドイツ製戦車「レオパルト2」の提供を求め続けたのは、軽量であることと高い信頼性にあるという。ドイツ機械工業の結晶である。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(1月24日付)は、「ドイツ製戦車が最適、ウクライナが欲する理由」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍は、ロシア軍から領土を奪還しようしており、作戦上、最新鋭戦車は必須とみられている。そのロシアは新たな攻勢に向けて15万人の兵士を動員した。ロシア側は兵員の装備や武器を更新すべく、同国の国防産業は戦時体制を取っている。双方にとって次の6カ月が非常に重要になる。

     

    (1)「米国の「エイブラムス」、英国の「チャレンジャー2」、ドイツの「レオパルト2」といった西側の戦車は、ウクライナ軍がロシア軍の防衛線を突破し、軍事的主導権を握るための火力をもたらす。ロシア軍が今後、再攻勢に出た場合にウクライナの防衛線を守るうえでも必要だ。領土を奪還するための歩兵部隊と火砲による機動作戦において、戦車は決定的な要素だ。加えて、西側の戦車はロシアの戦車に対して優位となる。装甲の防護力、砲撃の精度、夜間作戦などを可能にする操縦・誘導システムなどが優れている」

     

    ウクライナ軍にとって、ドイツの「レオパルト2」を不可欠としている。軽量であることから、ウクライナの橋梁を補強しなくても通過できるというメリットがあるのだ。ドイツが、欧州13ヶ国が保有する「レオパルト2」のウクライナでの使用を認めたので、ウクライナ軍にとっては大きな戦力補強になる。

     

    (2)「専門家によると、ドイツのレオパルト2は性能面で米国のエイブラムス、英国のチャレンジャー2と似通っているが、いくつか利点がある。エイブラムスより軽量で、ガスタービンエンジンの同戦車より燃料補給が簡単だ。信頼性の点でチャレンジャー2に勝るともみられている。だが決定的な利点は、手に入れやすいことだ。英シンクタンクの国際戦略研究所(IISS)によると、レオパルト2は欧州13カ国の軍が合計約2000両を運用している。そのうちどれだけがすぐに実戦投入できるか、改修が必要な車両はどれだけなのかは不明だ。だが、ウクライナにとっては豊富な供給源になりうる。交換部品や整備の要員もそれだけ得られやすい」

     

    レオパルト2は、欧州13カ国の軍が、合計約2000両も運用している。そのうちどれだけがウクライナへ提供されるか不明だが、ウクライナにとっては豊富な供給源になりうる。

     

    (3)「ウクライナ軍は、旧ソ連時代の戦車を持っていた。だが、ウクライナを支援する国々の間では、旧ソ連時代の戦車の砲弾や交換部品がごく限られる。したがって火砲と同様、ウクライナは西側の標準装備の戦車に転換する必要があり、さもないと砲弾や砲身などの交換部品が尽きる恐れがある。これがレオパルト2のもう1つの利点だ。配備数が多い同戦車をウクライナ軍が使えるようになれば、修理や交換部品、砲弾が一本化され、後方支援が簡素化する」

     

    欧州で保有されているレオパルト2が、ウクライナ軍へ提供されれば、砲弾や砲身などの部品交換が簡単に行えるというメリットが出てくる。

     

    (4)「米国は、エイブラムスを供与しないとしている。ウクライナには保守整備が困難であることに加え、欧州内に適切な選択肢、つまりレオパルト2が多数あることが理由だ。ドイツ政府は、北大西洋条約機構(NATO)を引き込むことにつながるような紛争の激化につながるとロシアに認識される恐れがあることから、レオパルト2の提供をためらっている(注:その後に承認)」

     

    ドイツがためらった理由は、第二次世界大戦中にドイツ軍戦車とソ連軍戦車が激突した光景が再現することを恐れているという。ドイツは、当時の最新鋭戦車を相次ぎ投入したものの、物量で勝るソ連軍に圧倒された経緯がある。それだけでなく、戦闘中に多くの住民や捕虜を虐殺し、占領地を経済的に収奪した。こうしたことが、ドイツ史の汚点として刻まれている。ドイツのこうした古傷が、レオパルト2の提供でうずくというのである。同じ敗戦国の日本も、このドイツの気持ちが理解できるであろう。

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