勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    日本の水産業者が、輸出先の中国依存からの脱却を進めている。中国による輸入禁止措置が長期化し、東南アジア諸国連合(ASEAN)や米国などでの加工拠点の新設や販路開拓を急いでいる。政府も、漁業関係者への支援で輸出先の多角化を後押しする。中国が輸入を止めても危機克服の道はあるのだ。

     

    (1)「中国は、福島第1原発が2023年8月に処理水の海洋放出を始めたことに反発し、日本産水産物の全面禁輸に踏み切った。大きな影響を受けたのがホタテだ。22年の水産物輸出の4分の1ほどを占める主力品で、輸出額の45%が中国向けだった。国内水揚げ量の83%を占める北海道では輸出の大幅減少を受け、水産業者が販路開拓を進めた。財務省の貿易統計によると、北海道産のホタテの輸出は23年にASEAN向けが前年の2.5倍に、米国向けが2倍に拡大した。在庫を多く抱えていた倉庫業者は「足元でも東南アジア向けの輸出が進むなどして在庫が減っている」と説明する」

     

    北海道産水産物の最大の輸出先は中国だ。22年の輸出額は全体の6割強にあたる約530億円に及ぶ。その中国向け輸出が23年は4割以上減り、311億円となった。主要輸出品のホタテなどは45%減の242億円にとどまった。

     

    北海道の23年海産物輸出は、前述の通り中国向けが4割以上も減ったが、ASEAN向けが前年の2.5倍に、米国向けが2倍にも拡大している。積み上がっていた在庫が、減少に向っていることは明るいニュースだ。脱中国が着実に進んでいる。

     

    (2)「日本貿易振興機構(ジェトロ)は1月に生産者や加工業者、商社といった日本企業12社とともにベトナム入りし、加工施設の視察や商談をして回った。3月にはメキシコにも視察団を派遣し、米国ではバイヤーとの商談会も開く。政府は漁業者支援のため計800億円の基金を用意した。このうち、水産物の一時買い取りや保管のための300億円の基金は38件に計79億円ほど、漁場開拓などを後押しする500億円分は182件に計55億円ほどの交付が決まっている」

     

    水産業者の打撃を緩和すべく政府の支援が進んでいる。これによって、中国ショックを切り抜けられれば、ASEANや米国への市場開拓が進んで危機を乗り切れるはずだ。在日米国大使が、「ホタテ危機」回避へ向けてベトナムの皮剥き業者の斡旋や米国への直輸出へ道を開くなど、大変な努力をしてくれている。米国は、中国の非道な仕打ちに対して、怒りを高めており市場開発で協力している。これには、日本のホタテが、大粒で「海の牛乳」という高い評価を得ているという実績が幸いしている。

     

    (3)「禁輸措置の解除を巡っては、日中両政府が今年に入り、23年11月の日中首脳会談で合意した専門家による協議を非公表で始めたものの、目立った進展はなく、影響の長期化が懸念される。日本政府内からは「中国は国内向けに強硬姿勢を見せ続けた手前、引くに引けなくなっている」といった声が聞かれる」

     

    中国は、東日本大震災後も海産物の輸入規制を行ってきた。中国が、自国民に対して環境対策に厳格というイメージを植え付ける目的として、日本産海産物輸入禁止を行っているものとみられる。こういう政治目的からすれば、中国が輸入禁止措置を解除することは期待薄である。それよりも、日本も対抗措置として、中国の輸入品を禁止すれば目を覚ますことになろう。「目には目を」ということも時には必要である。

     

     

     

     

     

     

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    日経平均株価は、22日にバブル期に付けた最高値3万8957円44銭を突破した。一方で、円相場は1ドル=150円台と異常円安局面にある。日本は、「強い株価と弱い円」というパラドックスに見舞われている。この背景は何か。日経平均株価は米国株価の高騰による「アベック相場」的側面も現れている。円相場は、ドル高によって円安へ引き寄せられている。こういう二重構造が生み出した現象とみるべきだ。 

    『ロイター』(1月22日付)は、「強い日本株と弱い円 いつまで続くのかー熊野英生氏」と題する記事を掲載した。第一生命経済研究所主席研究員・熊野英生氏の寄稿である。 

    日本のマーケットは、1)強すぎる株価が実体経済の弱さと釣り合っていない、2)日銀が緩和修正に動くのに円安基調が続いてしまう──という2つのねじれを抱えている。 

    (1)「私たちはたとえ違和感がある世界に生きていたとしても、頭の中で何か整合性のとれる理屈を描いて、現状を理解しようと努める。それがマーケットの中で生きている人達の習慣とも言える。そこで「弱すぎる円と強すぎる株価」という2つの矛盾を整合的に成り立たせる理屈を提示したい。それは、強すぎるドルと強すぎる米株価という読み替えをすれば、よくわかるのではないか。すなわち、円安基調はドル高基調であり、米長期金利は足元でやや上昇してきている。日銀の内田真一副総裁は、たとえマイナス金利を解除したとしても緩和的な金融環境が続くというメッセージを2月8日の講演で説明した」 

    日本は、「弱すぎる円と強い株価」という状況にある。強い株価は、コーポレートガバナンスの改善と中国の抱える地政学リスクによって押し上げられている。熊野氏は、昨年下半期の実質GDPがマイナスを理由に「強すぎる株価」と判断している。この点で、私と見方が異なる。

     

    (2)「これで、米国での利下げによって米国経済が回復して、先々はドル高に向かうという思考に多くの市場関係者が見方をシフトさせていった。「円高要因<ドル高要因」への移行だ。強すぎる米株価は、もはや説明を要しないだろう。まさしく米国経済独り勝ちである。政策金利を5.25%も引き上げたにもかかわらず、景気は腰折れせず、一方でCPIは上昇率を鈍化させてきた。日経平均株価は、ナスダックやS&P総合500種とほぼ連動して上昇している。その背景には、米株のポートフォリオが膨らむと、日本株への分散投資が進むという原理がある。この分散は、このところ不振の中国株から日本株へのシフトも手伝っている」 

    円高要因とドル高要因を比較すれば、米国の高金利がドル高を支えていることは自明である。この米国が、いつ利下げに踏み切るかによって円相場の位置が決まる。

     

    (3)「米国経済独り勝ちの結果、世界の株式時価総額に占める米国株のウエイトが半分近くにまでになり、「池の中のクジラ」と化している。分散投資として日本株に向かってくる巨大マネーは、日本株を考えにくいほどに押し上げる。(米国の)「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7銘柄の時価総額だけで、日本株の時価総額の2倍以上になる。このエネルギーは、いずれ日本平均株価が4万円台に向かうと思わせる原動力になっている。以上が、強すぎるドル=弱すぎる円、強すぎる米株価=強すぎる日本株価という構図が成り立っている背景構造となる」 

    熊野氏の日本株への評価は、極めて低いことが分る。日本の株高は、米国株高の「おこぼれ」という認識のようだが、これは皮相的というほかない。 

    (4)「筆者を含めて多くの読者が知りたいのは「理屈はわかったが、この構図はあとどのくらいの期間続くのか」という論点だろう。2024年内か、それ以上なのか。いや、賞味期限はもっと短いという見方もあるかもしれない。まず、弱すぎる円の方は当分続くとみる。日銀が実際にマイナス金利を解除すると、それなりにドル/円レートは円高に振れるだろう。しかし、円高の滞空期間はそれほど長くないとみる。貿易赤字構造や、企業の直接投資資金が海外へ向かうという流れは、円安圧力として2024年央以降に目立ってくる。日銀も、米連邦準備理事会(FRB)の利下げがドル/円レートに与える影響を見極めようとするから、少なくとも追加利上げは半年間(9月ごろまで)ないと考える」 

    弱すぎる円相場は、米ドルの異常高によってもたらされた現象である。ただ、これを「平常ペース」とみるかどうかである。歴史的にみたドル高相場は、転換点に入る時期を超えていると指摘されている。こうした基調が存在するならば、いつまでもドル高を前提にはできないだろう。

     

    (5)「焦点は、FRBの利下げが69月のタイミングで行われるかどうかである。結論から言えば、米利下げが仮になくなると「強すぎるドルプラス強すぎる米株価」が成り立たなくなるリスクがある。伏兵が潜んでいるとすれば、米国経済があまりに強くて、パウエルFRB議長が利下げシナリオを実行しないケースではないかと筆者は考えている(その可能性は、まだ低いことは言うまでもない)」 

    米国の利下げ時期はいつか。ドル高=円安の転換時期と関わる。ただ、米国自身も読めないほど、米国の好景気が続いていることが不透明要因になっている。

     

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    世界の半導体業界は、AI(人工知能)の実用化にともない、半導体需要が急増している。この好影響を最も受けているのは、エヌピディアとTSMCである。いずれも「台湾系」である。米国ではこれに対抗して、インテルとMS(マイクロソフト)が組んでAI半導体で地盤を築くと宣言。6年以内にサムスンを抜いて、世界2位を奪回するというのだ。 

    『東亜日報』(2月23日付)は、「『6年以内に三星を追いつく』インテルの半導体宣戦布告」と題する社説を掲載した。 

    米半導体企業のインテルが一昨日、2030年までファウンドリ(半導体受託生産)市場で2位になると公式宣言した。会社名については言及しなかったが、現在2位の三星(サムスン)電子を直接狙ったものだ。直ちにマイクロソフト(MS)と提携し、今年末までに1.8ナノチップの量産に乗り出すと明らかにした。

     

    (1)「公言どおりなら、25年に2ナノの量産を計画する三星電子や台湾TSMCより速いスピードだ。1.4ナノの超微細工程も、三星・TSMCと同様に2027年に量産する計画を明らかにした。一昨日、インテルが開催した初のファウンドリ行事は、米国がアジアに奪われたファウンドリの主導権を取り戻すという宣戦布告の場だった。現在、アジアに80%を依存する世界半導体生産の半分を欧米に持ってくるという 

    インテルは、半導体草分け企業としてメンツに賭けてもランクアップを図りたいところだ。減産時に、後発のサムスンに振り回されるという屈辱を味わって来た。それだけに、リーディングカンパニーとしての矜持を保ちたいところだろう。下線部には、米国のプライドが現れている。米国経済復活へのテコにしたいのだ。 

    (2)「レモンド米商務長官が第2の半導体法を予告し、破格の支援を約束し、MSやオープンAIなど米人工知能(AI)代表企業の最高経営者らも総出動して支援射撃を行った。「半導体は未来の石油」「インテルは米国のチャンピオン」「米国のサプライチェーンの再建」などの発言も出た。2021年3月、ファウンドリ産業に再挑戦した後発走者のインテルが、一気に先頭圏に躍り出ることはできないだろうという見方もある」 

    非メモリー半導体(ファウンドリ産業)は、高度の技術を持ちあらゆるユーザーの動向に合わせて技術蓄積している。TSMCは、研究開発部門も24時間3交代制という突貫態勢である。このTSMCを技術でキャッチアップするのは、極めて困難であろう。しかも、日本との連携強化によって設備・素材で最高の供給を受けられる体制を作りあげている。「アメリカンワンチーム」になれば、「日台ワンチーム」もこれに対抗して強化するとみられる。サムスンは、このいずれにも加わらず、どうするのか。

     

    (3)「インテルは過去、7ナノ工程でも苦労しており、現在、ファウンドリの市場シェアは1%前後に過ぎない。だが、往年に「半導体帝国」と呼ばれたインテルの底力に、米政府と企業が一丸となった「アメリカワンチーム」の全面的な支援まで考慮すれば、無視できない事態だ。インテルの参戦により、韓国の半導体に赤信号が灯っている。主力メモリー半導体の業況回復がまだ遅い状況で、ファウンドリ市場でややもするとTSMCとインテルの狭間になる危機に直面している」 

    サムスンは、国内の「反企業ムード」と戦わねばならない。左派の地方自治体は「反企業ムード」が高く、企業の設備投資へ協力的でない。 

    (4)「インテルは、米政府を味方につけている。三星電子の前は茨の道だ。インテルは、米政府から13兆ウォン台の補助金を受け取ることになるという観測が出ているが、三星電子は現在、米国投資に対する補助金の規模などが不透明な状態だ。韓国国内投資に対する税額控除も、やはり競争国に比べて高い法人税率などでその効果は微々たるものだ」 

    サムスン電子の監査報告書によると、昨年7~9月期まで保有していたオランダ先端半導体製造設備授業のASML株式158万407株(持ち分比率0.4%)を10~12月期中に全て売却した。ASMLの株価から推計すると、売却により1兆2000億ウォン(約1350億円)前後の資金を手にしたとみられる。サムスン電子は2012年、次世代露光装置の開発協力のためにASMLの持ち分3.0%を約7000億ウォンで取得した経緯がある。それにもかかわらず、ASML株を全株手放したのは設備投資資金調達目的である。『聯合ニュース』(2月21日付)が報じた。できれば、売却したくなかったであろう。苦衷の決断だ。

     

    (5)「半導体市場は、急成長が予想されるAI半導体を先取りするための先端技術競争が真っ最中だ。オープンAIを皮切りに投資競争が激しく繰り広げられ、NVIDIAへの依存度を下げようとする多様な合従連衡が進められている。三星電子など国内半導体企業にとって、危機は新たなチャンスになり得る。結局、生きる道は超格差技術の競争力を確保することだけだ。政府も破格の支援と精巧な外交・産業政策で後押ししなければならないだろう。 

    エヌピディアが画像処理半導体(GPU)で培った技術は圧倒的である。ライバルが存在しなかったからだ。それだけに、エヌピディアとTSMCの台湾系連合軍を抜くのは困難である。となると、インテルはサムスンを標的にすることになろう。

     

     

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    太陽光発電では、フィルム状の超極薄電池「ペロブスカイト」が、日本発技術で商品化される。政府の支援で、2年以内の実用化を目指す「国策事業」だ。曇りや室内の薄日でも発電可能という新技術である。

     

    日本政府は、ペロブスカイト電池の量産を支援するため、600億円超の予算を計上している。現在の太陽光発電では、シリコンが使われている。日本が開発する「ペロブスカイト太陽電池」では、このシリコンを使わずに日本国内で豊富なヨウ素が主要素材になる。日本は、ヨウ素で世界2位の資源国だ。ペロブスカイト太陽電池の技術と資源を擁して、太陽光発電で世界トップの座を目指す。

     

    『日本経済新聞』(2月23日付)は、「曲がる太陽電池、寿命20年へ 名大「シリコン」みにメド 従来比4倍 普及後押し

     

    名古屋大学は折り曲げ可能で安価に作れる太陽電池「ペロブスカイト型」の寿命を24倍に延ばす技術を開発した。約20年と主流のシリコン型並みにできる。企業と製造法を工夫して2020年代後半の実用化を目指す。温暖化ガス削減に貢献する次世代太陽電池の普及を後押しできる。

     

    (1)「ペロブスカイト型は塗料のような材料をフィルムやガラスの基板に塗って作る。製造コストはシリコンの結晶を成長させて作るシリコン型の半分にできるとされている。基板に薄いフィルムを使えば重さは10分の1にできる見込みだ。軽くて曲げられるため、これまで取り付けが難しかった建物の壁や湾曲した屋根などに設置できる。発電に使える場所が広がり、温暖化ガスの削減に役立つため、国内外の企業が量産を始めている。ペロブスカイト型は主要な3層を有機物などで作る。水分や酸素、光に弱く、劣化しやすいため、屋外に設置した場合の寿命は5~10年程度でシリコン型の半分以下とされる」

     

    ペロブスカイト型太陽光発電は、屋内の微光でも発電可能である。ただ、屋外設置では耐用年数が5~10年程度でシリコン型の半分以下とされる。この問題点が解決した。

     

    (2)「普及させるには太陽光を受けて発電する発電層、電子を運ぶ電子輸送層、正の電荷を運ぶ正孔輸送層の劣化を防止し、耐久性をシリコン型と同等に高める必要がある。名古屋大の松尾豊教授らは電子輸送層に着目して、レゾナックと協力して耐久性を高めた。従来は炭素原子60個からできている「フラーレン」と呼ぶ素材で作っていたが、時間がたつと分子が塊になる。塊と塊の間に隙間が生じて、電子を運ぶ性能が下がる課題があった。そこで、フラーレンに酸素原子などをくっつけた新素材を電子輸送層に使った。フラーレン分子が塊になりにくくなるほか、水分などに触れて生じる劣化も防止できる。性能を確かめるため、真空中で原料を蒸発させて素材を堆積させる真空蒸着を使い、発電層の上に電子輸送層の膜を作り、1.5センチメートル角の太陽電池を試作した」

     

    フラーレンとは、1985年に発見された炭素原子60個で構成されるC60など多面体の総称である。このフラーレンにいち早く注目したのが三菱商事で、その物質特性を生かして二つの会社を立ち上げた。一社は工業分野での事業化を目的に、三菱化学とともに2001年に設立した会社で、次世代の太陽電池のペロブスカイトの素材である。名古屋大学の研究では、このフラーレンに酸素原子などをくっつけた新素材を利用する。

     

    もう一社が、2003年に設立されたビタミンC60バイオリサーチ株式会社だ。ライフサイエンス分野での研究開発及び事業化を進めており、現在は、フラーレンの「抗酸化力」を生かして化粧品市場にフラーレン化粧品原料を供給している。

     

    (3)「試作した太陽電池をセ氏25度の環境に置いた。16日後も太陽光を電気に変える変換効率はシリコン型並みの22%を維持した。温度をセ氏70度に上げても、変換効率は11日後に当初の9割にあたる20%を保った。一方でフラーレンを使う従来型は14%に低下した。松尾教授は「フィルム基板の上で封止して水分などの侵入を防げば、従来の2倍の20年の寿命実現につながる」と話す」

     

    フラーレンに酸素原子などをくっつけた新素材によって、屋外での耐用年数を従来の2倍である20年に伸したペロブスカイト太陽光発電パネルが可能になった。

     

    (4)「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は政府のグリーンイノベーション基金事業で21~25年度にかけて太陽電池の大型化や封止技術の開発を支援している。積水化学工業や東芝、カネカなどが研究開発を進めている。30年度までに一定の日射条件などのもとで、産業向け電気料金並みの1キロワット時あたり14円の発電コストを目指す。資源エネルギー庁はペロブスカイト型の開発と普及を後押し日本全体で二酸化炭素(CO2)の排出量を30年に年約60万トン、50年に同約1億トン削減できると試算する。経済波及効果は30年に約125億円、50年に約1兆2500億円に達すると見込む」

     

    政府は、30年度までに一定の日射条件などのもとで、産業向け電気料金並みの1キロワット時あたり14円の発電コストを目指す、としている。日本にとって、「脱炭素」の大きな技術革新になる。

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    共産党が中長期的な経済政策を討議する中央委員会第3回総会(3中総会)は、23年終盤に開催されるとみられていた。だが、未だに日程すら決まっていないという惨憺たる状態に追込まれている。景気の現状が悪すぎて、将来の計画が立たないのだ。

     

    『ロイター』(2月23日付)は、「中国経済に『閉塞感』、限られる成長への選択肢 全人代も望み薄」と題する記事を掲載した。

     

    中国指導部は全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が3月に迫る中、経済の長期的な成長に向けて大胆な政策決定を下すよう市場から圧力を受けている。年初に中国株は成長懸念から5年ぶりの安値まで下落し、デフレは世界金融危機以来の水準まで深刻化。同じように指導部が行動を迫られた2015年になぞらえる見方もある。

     

    (1)「コメルツ銀行の中国担当シニアエコノミストであるトミー・ウー氏は、「現在の状況はもっと複雑だ」と指摘。「今年は中国にとって経済安定に向けた重要な年になる」と語る。中国は15年の危機を人民元切り下げと資本勘定引き締めで資金流出を防ぐ一方、不動産とインフラに資源を投入し、金利を100ベーシスポイント(1%)以上引き下げることで乗り越えた。今やそうした「弾薬」は使い果たされるなどしており、選択肢は限られている。追加の金融緩和は他国との金利差拡大による元安を招き、過剰設備の国内産業に低利資金が流れ込むことでデフレ圧力を悪化させるリスクがある」

     

    中国は政策金利を引下げれば、米中金利差拡大で資金流出を招き、人民元安に拍車を掛けるリスクを抱えている。同時に、利下げしても資金需要が出ないことも承知だ。「流動性の罠」に嵌まっている。

     

    (2)「今のところ3月5日に開幕する全人代で大規模な景気刺激策や壮大な改革計画が打ち出される気配はない。ロディウム・グループのパートナー、ローガン・ライト氏は、「『政策バズーカ』が放たれることはないだろう。それは従来のやり方であり、今や成長への良い選択肢がないためでもある」と話す。逃げ出した投資家は構造的問題解決へのロードマップを中国当局が示していないことに不満を表明している。市場が求めているのは不動産セクターの浄化、地方債務の再編、債務依存型の過剰投資を減らし家計消費に依存するような持続可能な成長モデルへの転換など、明確で長期的な計画だ

     

    中国政府は、財政赤字の拡大に神経質になっている。格付けの引き下げになることを警戒しているのだろう。完全に「守りの姿勢」になっている。

     

    (3)「ファゾム・コンサルティングの試算によると、中国経済に10元投資するごとに増加する生産高は現在0.2元で、02年の2.1元から縮小した。需要面でも消費者信頼感が低迷している。トリビアム・チャイナの経済アナリスト、ジョー・パイセル氏は「投資家の信頼感も企業の信頼感も欠如している。しかし、その根本的な原因は消費者信頼感にある」と指摘。「これに対処する最も効果的な方法は消費者の懐により多くの現金を入れるような改革だが、習近平国家主席は以前から現金給付や手厚い社会保障に否定的な姿勢を示しており、その可能性は低い」と述べた。エコノミストや投資家が現在求めているリバランス政策は習氏が13年の時点で表明していたものだが、中国は一度も実行に移さず、債務水準は経済よりも速いペースで膨れ上がっている」

     

    中国経済は、10元投資するごとに増加する生産高は、現在0.2元で、02年の2.1元から約10分の1へ縮小した。それだけ投資効率が悪化(資本係数の上昇)している。インフラ投資をいくら増やしても、リターンが一段と悪化している証拠である。需要面でも不動産バブル崩壊で消費者信頼感が低迷している。

     

    (4)「一部アナリストは、中国指導部が異なる発展モデルによって引き起こされる混乱への懸念から、成長の持続性よりも社会の安定と国家安全保障を優先しているようだとの見方を示す。アメリカン・エンタープライズ研究所の中国経済専門家、デレク・シザーズ氏は「中国は自らの選択によって行き詰まっている」と語った」

     

    中国の不動産依存モデルは破綻した。新たな成長モデルは個人消費増大である。だが、政府にその気がないから不可能である。そういう財政的余裕があれば、国防費を増やしたいと考えているに違いない。発想の原点が、西側諸国と全く違うのだ。これでは、景気回復は不可能である。

     

     

     

     

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