勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    ロシアのプーチン大統領は、予備役30万人動員令を決めた。これは、大きな賭けとなろう。プーチン氏は、ウクライナ占領地で住民投票を行い、「占領地」をロシア「領土」にする意図を示した。これによって、ウクライナ軍の奪回作戦を逆に「侵略」と定義して、核爆弾を使う意図も仄めかしている。

     

    問題は、このような手品が思惑通り進むかだ。ウクライナをはじめとして、西側諸国は一斉に反発している。西側諸国は、ウクライナへさらなる大型重砲を供与して、支援する姿勢を明確にした。こうなると、ロシアは、予備役30万人動員だけでは間に合わなくなって、動員数を増やさざるを得なくなろう。それは、プーチン氏の政治基盤に大きな打撃を与えるのだ。今回の決定は、危険な賭に手を付けたと言うほかない。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月22日付)は、「予備役動員はロシア負け戦の証明」と題する社説を掲載した。

     

    ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ここにきてウクライナ侵略戦争をエスカレートさせる動きに出たことは、ロシアの強さを示すものではない。プーチン氏が21日に発表した予備役動員と、新たに示した核兵器使用の脅しは、ロシア国内の強硬派から成る批判勢力を当分の間なだめる上で役立つかもしれない。しかしそれによって、ウクライナの攻勢を止めることはできない。また、それによって西側諸国によるウクライナ軍への軍事支援加速が妨げられることがあってはならない。

     

    (1)「プーチン氏は「部分的動員」と表現された対応策を発表した。これによって最大30万人の予備役が動員される可能性があり、この数字は非常に大きいもののように聞こえる。しかしこの動員は、ロシア政府によるウクライナ侵攻作戦が失敗しつつあることや、現在の兵力が消耗し、不十分になっていると認めたことも意味する。予備役は、すぐに前線へ送り出せるような、戦闘経験豊富な部隊ではない。彼らの多くは、かつて徴兵された人々だが、職業軍人の経験を持っておらず、今後訓練が必要になる」

     

    これまで、ロシア軍のウクライナ侵攻正規軍は約18万名だ。そのうち、8万人程度がすでに死傷していると推計されている。30万人の予備役が加わっても、武器や戦い方が同じである以上、多くの死傷兵を出すのは確実である。気の毒である。

     


    (2)「プーチン氏はまた、開戦当初に示していた核兵器を使用するとの脅しを改めて行った。ロシア政府は、ロシア軍がウクライナで占領している4つの地域(ドネツク、ルガンスク、ヘルソンとザポロジエ)で、ロシア連邦に加わるべきかを問う住民投票を急いで行う準備を進め、この脅しを補強しようとしている。ロシアは2014年に同様の住民投票を行ってクリミアを編入した。プーチン氏はこうした不正に操られた投票を使って、自らのウクライナでの領地獲得にうわべだけの正当性を持たせようとしている。プーチン氏の脅しが暗に示しているのは、ウクライナがこれらの領地を奪回し続けるなら、ロシアの領地になる場所を守るために同氏が戦術核を使用することが正当化されるということだ」

     

    ロシアの核使用については、米軍が24時間体制で監視している。仮に、核使用に動き出せば、ウクライナ空軍機によって事前に攻撃させることもあり得るだろう。米国が、手をこまねいている筈がない。

     


    (3)「ウクライナが領地奪回を続けた場合、編入はプーチン氏にとってリスクを伴うものとなる。彼はロシアのものだと宣言したばかりの土地を失いつつある理由を説明しなくてはならなくなる。
    プーチン氏は恐らく、核兵器を使う準備を進めており、その脅しは真剣に受け止める必要がある。しかし、そうした措置はNATOによるウクライナへの一層の支援につながるほか、彼が戦争に関して今もなお保持している一部の国際的な支持をすべて失うことが確実だ。インド首相は先週、戦争に関してプーチン氏に公の場で厳しい意見を述べた。ロシアの戦争に対する中国の支持は、徐々に熱意のないものになっている。トルコのエルドアン大統領は今週、ロシアがクリミアを含め、ウクライナの領地から離れる必要があると述べた」

     

    ロシアが核兵器を使用すれば、国際社会から孤立することは確実である。これまで、「親ロ国」とみられていた国々も、立ち去るであろう。ロシアへは莫大な賠償金が科される。第一次世界大戦時のドイツと同じ過酷な負担を背負わされることは間違いない。ロシアは没落である。

     


    (4)「プーチン氏の発表が示すように戦争は終わっていない。現時点でロシアにとっての最良の選択肢は、ウクライナとの交渉による決着を目指すことだろう。しかし、ウクライナ政府は、今が自国領土からロシアを追い出す絶好の機会だということを理解している。停戦は、ウクライナでの占領を強化し、今後新たな攻撃を仕掛ける時間的余裕をロシアに与えることになる。また、ロシアが占領し、その後ウクライナ軍によって解放された地域でロシアが働いた残虐行為を世界が知れば知るほど、早期停戦の可能性はますます遠のくとみられる」

     

    ロシアは、「停戦」という目くらましを使ってくる可能性もある。それに対抗するには、「占領地撤退」という原則論で立ち向かい、妥協してロシアに時間の余裕を与えてはならない、としている。

     


    (5)「ロシアが侵略を断念し、占領しているウクライナの領土を返還すれば、停戦は可能かもしれない。そうした動きがない場合、今は戦車、戦闘機、さらに長距離攻撃が可能な地対地ミサイル「ATACMS」を含むウクライナへの兵器供与を加速させる時期である。侵略が失敗し、損失を食い止める必要があるとプーチン氏を説得する上で、それが最速のルートである。

     

    「ATACMS」は、最大射程が165キロメートルである。現在、ウクライナ軍がロシア軍を苦しめている「ハイマース」(最大射程77キロメートル)の2倍以上の攻撃力を持つ。30万人動員令でかき集めたロシア兵も兵站部を叩かれれば、武器・弾薬・食糧は干し上がるだろう。ロシア軍の犠牲者を増やすだけだ。

     

    テイカカズラ
       

    韓国経済を揺るがすウォン相場は22日、ついに1ドル=1400ウォン割れに落込んだ。当局の必死の介入で1300台を維持してきたが、米国の利上げに抗すべくもなく1400ウォンとなった。オフショア市場では、9月22日22時17分に1402.36ウォンである。

     

    『ハンギョレ新聞』(9月22日付)は、「韓国ウォン、為替レート『年末に1500か』 外貨確保額は余裕あるが『超緊張』」と題する記事を掲載した。

     

    ウォン-ドル為替レートが心理的抵抗線とされてきた1400ウォン台を結局突き抜けて、今は年末に1500ウォンを超える可能性まで市場から出ている。

     


    (1)「22日、ソウル外国為替市場でウォン-ドル為替レートは前取引日より15.50ウォン下落し、終値は1409.7ウォンとなった。これまでに1400ウォンを割込んだのは、1997年の「自由変動相場制」導入以後、外国為替危機(1997~1998年)とグローバル金融危機(2008~2009年)2回。最近、当局は市中銀行にドル注文量をリアルタイムで報告するよう指示するなど介入に乗り出したが、市場の強力な1400ウォン割込みを防ぎきれなかった」

     

    米国の0.75%の利上げには抵抗できなかった。韓国の政策金利は、2.50%である。米国は、3.00~3.25%へ引上げたので金利差が大きく開いている。これでは、ウォン急落は避けられなかった。

     


    (2)「米連邦準備制度理事会(FRB)は、連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、年末から来年にかけて政策金利をより早く大幅に上げると予告した。連準委員らは、今後到達する政策金利目標で今年末に年4.4%(中間値)、来年末の金利を年4.6%(中間値)と見通した。前回6月の金利見通しの中間値は、今年末が3.4、来年末は3.8%で、3カ月で約1ポイントも高まった。FRBは今年、米国経済の成長率も過去の展望値(1.7%)を大きく下方調整した0.2%と提示した」

     

    FRBでは、今後の政策金利目標をさらに引上げる示唆をしている。今年末は、年4.4%(中間値)、来年末の金利が年4.6%(中間値)となっている。来年も引上げる可能性を秘めている。これは、ウォン相場にとってマイナス材料である。

     


    (3)「市場では、FRBの積極的緊縮と米国の景気鈍化可能性により、安全資産であるドルの価値がさらに高まり、ウォン相場は急速に下落した。こうした状況で貿易収支の赤字転換、半導体輸出鈍化の可能性、韓国国内居住者の海外投資増加などの国内要因までがウォンの価値をさらに引き下げている。ウォン相場を転換させる変数はまったくなく、年末には1500ウォン割れとの声も出ている。NH先物研究院のキム・スンヒョク研究員はこの日、「今年第3四半期をウォン安の頂点と見たが、この日1400ウォンを割込んだだけに来年初めまでウォン相場はさらに下がりうる」とし、「ウォンレートの安値を1500ウォン水準に修正する」と明らかにした」

     

    ウォン相場急落局面を変える要因はゼロである。年末には、1500ウォンへ続落すると悲観論である。

     

    (4)「ウォン相場が過去の経済危機を想起させる水準まで下落し、危機感も高まっている。ウォン下落は輸入製品価格を引上げ、消費者物価上昇率をさらに煽りかねない。ただし歴代の経済危機と比較して現在は、国内のドル調達状況はまだ余裕がある。専門家は、外国為替市場とドル資金を借り貸しする外貨資金市場の両方を一緒に注視している。外国為替危機は、企業や金融機関のドル調達が難しくなり、ドルの流動性に問題が生じたときに発生する。外貨資金市場の側で、資金繰りどれだけうまくいくかが重要な理由だ」

     

    韓国は当面、ウォン急落はあってもドル資金繰りに破綻はなさそう。FRBが2020年、米国債相場の下落を防ぐ目的で考案した制度(FIMAレポファシリティ)があるからだ。海外中央銀行が、保有する米国債をFRBへ担保として提供し、ドルを借りる方式である。韓国銀行も昨年、上限600億ドル(調達金利年0.25%)で契約を締結した。米国債保有限度で自動的にドル資金を借り出させるのだ。韓国は、この制度があるにも関わらず「通貨スワップ協定」締結を持出し騒いでいる。

     


    (5)「韓国銀行は、この日の「金融安定状況」報告書で、グローバル金融危機と同様の水準で韓国国内の銀行および外国銀行の韓国支店から外貨資金が流出しても、銀行全体の外貨資金確保額に対する流出額の割合は56.4%に過ぎないと分析した。現在、銀行圏が衝撃に対応する外貨資金は十分に確保しているという意味だ。チュ・ギョンホ副首相兼企画財政部長官は「過去の金融危機などに比べて現在の韓国の対外健全性指標は良好な状況だ」と話した」

     

    前記の「FIMAレポファシリティ」を計算に入れて、ドルの資金繰りを計算していると見られる。ただ、想定を超えたウォン大投機が起これば、対応不可能になる。

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    中国は、台湾侵攻目標に向かって着々と動き始めている。中国は、ロシアがウクライナ侵攻で外貨準備高を凍結された事態を回避すべく、米国債の保有高を減らして金保有にシフトし始めているからだ。だが、こういう動きが活発化すると、米国は直ぐに気付くはずで、警戒心をさらに強めよう。中国が今後、米国債の保有を減らしても、万一の場合はドル決済網から除外される。このリスクは事前回避できないのだ。

     

    『日本経済新聞』(9月22日付)は、「中国、米国債保有1割減 上期1000億ドル分 資産凍結を警戒か 租税回避地に移管も」と題する記事を掲載した。

     

    中国が保有資産を入れ替えている。7月の米国債保有額は2021年末から9%減り、8月の金輸入額は過去最大だった。米欧日によるロシア中央銀行の海外資産凍結に衝撃をうけ、ドル依存への警戒を強めている。ただ急速な運用先の多様化も難しい。タックスヘイブン(租税回避地)などで米国債の一部を「隠れ保有」している可能性もある。

     

    (1)「米財務省によると、中国の米国債保有額は7月末時点で9700億ドル(約139兆円)だった。前月をわずかに上回ったが、6月までは7カ月連続で前月比減である。米中貿易戦争が始まった18年から減少傾向だが、22年上期だけで1割近い1000億ドルを減らした。半期でみると16年7~12月以来5年半ぶりの圧縮額だ。対照的に、代表的な租税回避地のケイマン諸島保有の米国債は同期間に385億ドル増加した。バミューダ諸島も同70億ドル増えた。中国が削減した一部を移管し「隠れ保有」を増やした可能性もある」

     

    中国は、米国の制裁を受けて米国債の売却が難しくなっても、「隠れ保有」なら制裁の目をかいくぐりやすいと見ている。米国債は、安全で金利が付きいつでも売却できる点で、最も流動性が高い資産である。魅力があるから、「隠れ保有」する動機になっている。

     


    (2)「直接的な保有額の削減をめぐり、中国の金融当局関係者は「米金利上昇に伴う損失を避けるためだ」と語る。ただ市場動向に照らした運用のほか、ロシア中銀の海外資産凍結も契機になったとみられる。中国政府関係者は対ロ制裁が固まった3月、「国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除よりはるかに打撃が大きい」と驚いた。習近平指導部は台湾の武力統一も辞さない構えだ。台湾有事で米欧日が金融制裁に動けば、3兆ドルを超す外貨準備の多くが凍結され、経済への打撃は計り知れない」

     

    中国は、米国と戦争する気構えであるが、その意図を100%隠しきれるものではない。必ず「尻尾」を表す筈で、米国を100%出し抜くことは不可能である。その意味で、米国債保有を減らしても無意味に思える。愚策だ。

     


    (3)「中国の外貨準備は16年時点で59%がドル資産だった。ドル資産の代表といえる米国債を減らすのは、貿易決済などで以前ほどドルに依存しなくなったこともある。ロシアは中国との貿易を中心に人民元決済を拡大している。ロシア国営ガスプロムは6日、中国への天然ガス輸出における決済通貨を従来のドルなどからルーブルと人民元に切り替えると表明。ロシア最大手銀ズベルバンクは人民元建て融資を始めた。SWIFTが調べた中国大陸以外での人民元の決済比率をみると、ロシアは7月時点で香港と英国に次ぐ第3位に浮上。中国にとってドルを介さずロシアから化石燃料を調達する利点は大きい」

     

    SWIFTは、ドル決済の本流である。ここから人民元が締め出されれば、対先進国貿易は完全にストップする。中国経済は、それに耐えられるかという問題があるのだ。安易に考えていては、拙いだろう。

     

    (4)「ドル資産からの代替候補の一つが金だ。中国税関総署によると、8月の金輸入額は103億5800万ドルと前年同月の2.3倍だった。中国の統計で遡れる17年以降で最大だ。どんな通貨とも交換できる金は「無国籍通貨」といえ、換金しやすい利点もある。ロシアやトルコなど米国と距離を置く国も米国債を減らし、金保有を増やした。中国の外貨準備資産に含む金保有量は19年9月末から今年8月末まで約1950トンで変わらない。国有銀行などが保有しつづけ、外貨準備以外の形で「安全資産」を増やしている可能性がある」

     

    世界の中央銀行は、これまで政治リスクやドル通貨の価値下落リスクを回避するため、外貨準備で金(ゴールド)保有を増やす傾向を強めてきた。中国が最近、金保有を増やしている背景はこれだ。だが、国際基軸通貨のドル価値は、下がるどころか上がる一方だ。中国が敢えて金保有を増やす意図は、米国との対立という政治リスク回避であろう。

     

    中国のこういう過剰なまでの自己意識を見ていると、吹き出すほどおかしく思える。中国が、まともに米国と戦争して勝てると思っているところに、大きな錯覚を感じるからだ。戦前の日本も、現在の中国と同じで「勝てる」と思って開戦した。その挙げ句に、原爆を2発落とされる「報復」を受けた。中国も同様に、痛い報復を受けるであろう。国家としての「基礎力」が余りにも違い過ぎるのだ。中国は、それに全く気付いていない。日本は、敗戦によって、それが余りにも大きいことを気付かされたのである。後の祭りであった。

    あじさいのたまご
       

    ロシアのプーチン大統領が、ついに奥の手を出してきた。9月21日発効で予備役30万人の動員令を下した。予備役とは、過去5年以内に徴兵制で現役であった人たちだ。ロシアには、200万人が登録されている。現役兵士は90万人在籍しているはずで、予備役まで動員することは、兵士の逼迫が激しいことを伺わせている。予備役30万人動員令によって、ロシア国内はパニックに陥っている。

     

    『中央日報』(9月22日付)は、「『なぜプーチンのために死ぬ必要が?』…ロシア動員令に『腕を折る方法』検索が急増」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「21日(現地時間)、『ニューヨーク・タイムズ』(NYT)や『ロイター通信』など複数の外信によると、この日ロシア38都市で動員令反対デモが起き、少なくとも1000人以上のデモ隊が警察に逮捕されたとロシアの人権監視団体「OVD-Info」が集計した。動員令の発表以降、ロシアでは市民の反発以外にも国外脱出ラッシュが続いている。モスクワからノービザに行けるトルコ(テュルキエ)、アルメニア、アゼルバイジャン行きの航空便が完売したとガーディアンは伝えた。


    これまで、ウクライナ侵攻への反戦デモは弾圧されてきただ、今回の予備役動員令で一挙に反戦ムードが高まる気配だ。ロシア国防省は、この日声明を通じて大学生を除く18~27歳の男性のうち、1年間の義務軍服務を終えた人たちが対象と発表した。徴兵対象が明らかになった以上、この人たちは海外脱出へ殺到している。

     


    『中央日報』(9月22日付)は、「『30万人動員令』にロシア脱出…高額のトルコ航空券も売り切れ」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアからトルコに向かう航空便が売り切れた。ロシアが予備軍部分動員令を下してから起きたことだ。

     

    (2)「21日(現地時間)、dpa通信は同日から週末までトルコに向かう航空便が動員令発表の数時間前にすでに売り切れたと、トルコ航空会社を引用して報じた。トルコ航空のウェブサイトでは今後3~4日間、モスクワからトルコ・イスタンブール・アンカラ・アンタリアに向かう飛行機便を購入することができない。航空券の価格も急騰した。モスクワ発イスタンブール行きの飛行機チケットの最低価格は、8万ルーブル(約18万円)から17万3000ルーブルへと2倍以上急騰した。トルコ航空関係者は「今のように需要が集中すれば追加航空便の配置も検討する可能性がある」と話した。また、他のトルコ航空会社のペガサス航空もモスクワ発イスタンブール行きの飛行機便が土曜日まで売り切れた。欧米の制裁でロシアからはアルメニア、アラブ首長国連邦やトルコなど限られた数カ国へのみ出国できる」

     

    欧米の制裁で、ロシアから出国できるのはアルメニア、アラブ首長国連邦やトルコなど数カ国のみ。航空券が手に入るかどうかが、兵役を逃れるかどうかの分かれ道である。気の毒に思う。2月24日のウクライナ侵攻以来、若者は大挙して出国している。特に、IT関係の技術者がすでに脱出した。

     


    (3)「ロシア上院は前日、下院が議決した軍紀違反兵士に対する処罰強化法改正案を承認した。改正案は動員令や戒厳令のうち部隊を脱走した兵士に対する最大刑量を従来の5年から10年に増やした。戦闘を拒否したり、上官の命令に不服従したりした兵士も最大10年の懲役を受けることができる。自主的に降伏した兵士は最大10年、略奪を犯した兵士は最大15年の懲役刑を受けることになる

    残酷である。前線兵士への締め付けを厳しくしており、下線のような罰則が強化される。大義のない戦争へ駆り出されて、しかも重罰を科すとは一体どういうことか。こうなった誰でも逃げ出すのが当然であろう。逃げ遅れれば、死が待っている。過酷な運命と言うほかない。気の毒だ。

     


    英『BBC』(9月21日付)は、「ロシアのプーチン大統領、予備役の部分的動員表明 『あらゆる手段』でロシア防衛と」題する記事を掲載した。

     

    プーチン大統領は国民向けのビデオ演説で、西側諸国はロシアとウクライナの和平など望んでいないとして、ウクライナ国民を犠牲にしてでもロシアを滅ぼすことが西側諸国の目的だと明らかになったと批判した。その上で大統領は、ロシアの目的はドンバスの解放だとして、「解放された土地」の住民を守るため緊急の判断が必要だと説明。「だから私は国防省に、部分的動員に合意するよう要請した」と述べた。

     

    (4)「プーチン氏の演説を受けてイギリスのベン・ウォレス国防相は、ロシアのウクライナ侵攻が失敗しつつあるしるしだと反応した。英国防省は、「国民の一部を動員しないという約束をプーチン大統領が自ら違え」たことで、「侵略が失敗しつつあると認めたことになる」というウォレス氏のコメントをツイート。その中で国防相は、「(プーチン氏)と国防相は何万人もの自国民を、満足な装備を与えず、粗末な指揮官のもと、死に追いやった。どれだけ脅してプロパガンダをまき散らしたところで、この戦争に勝ちつつあるのはウクライナで、国際社会は団結しており、ロシアが世界的なのけ者になりつつある事実は、隠しようがない」と述べた」

     

    厳しい言葉でのプーチン批判である。当然だ。他国領土を侵略しながら「大義」を語るその偽善性に唖然とする。独裁者とは、こういうロジックを使うのだ。習氏も台湾侵攻の際に、プーチン発言をなぞるのであろう。権力者の欲望が、人の生命を弄ぶ。許せない振る舞いだ。

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    ロシアは2つの問題に悩む

    同じ病に感染している中ロ

    極秘の電子兵器を捨て遁走

    購入契約破棄のロシア武器

     

    ロシアのウクライナ侵略戦争は、9月に入って大きな局面転換を見せている。ウクライナ軍が、北東部で約8000平方キロを奪回したからだ。この過程で起こったロシア軍の遁走は、これまで言われてきた「軍事大国」ロシアの姿とほど遠かった。小国の兵士が、先を争って逃げ去る状況を彷彿とさせた。「ロシア敗北」を強く印象づけたのである。中ロ枢軸に、空中分解の恐れも否定できまい。

     

     

    振り返って見たとき、戦争には大きな「ヤマ場」がある。太平洋戦争で日本軍は、真珠湾奇襲攻撃で大勝を収めたが、その7ヶ月後のミッドウェー海戦で大敗北を喫した。これで、日本海軍は主力艦隊を失って日本敗戦への道に繋がった。

     


    ロシアは2つの問題に悩む

    ロシア軍のウクライナ北東部での敗北は、二つの要因によってもたらされた。兵士不足と武器不足である。

     

    前者は、ロシアが開戦時に擁した兵員15~20万のうち、すでに7~8万人の死傷者が出ていると米英の軍事専門家は推計している。こういう、悲惨な戦い方になれば、兵士の士気が高まる筈がない。

     

    「明日は我が身」と思う兵士は、勝手に戦線離脱(逃亡)を始めている。この数は、相当数に上っているようだ。ロシア議会下院は9月20日、戦闘中の兵士が指示に従わなかったり、脱走した場合などの処罰を重くする法案を可決した。自発的に降伏した兵士には、10年の懲役刑が科せられる。

     

    こうした兵士不足状況を穴埋めすべく、プーチン大統領は21日、予備役の部分動員と親ロシア派地域の事実上の併合に踏み切る意向を強調した。予備役の部分動員は即日実施されるが、戦場へ出すまでに数ヶ月の訓練を要する。当面の戦局に影響なさそうだ。

     


    予備役の部分動員で止まったのは、総動員に拡大した場合に国内での反発を危惧した結果と見られる。大規模動員になれば、これまでウクライナで「勝利」してきたというプロパガンダを自ら否定することになる。その矛楯を避けるには、最小規模にするほかないという悩みを抱えている。プーチン氏の最大の悩みはここにある。自分の「ウソ発言」に縛られて動きがとれないのだ。

     

    武器不足の問題も深刻である。これまでロシアは、世界2位の武器輸出大国として発展途上国へ輸出してきた。そのロシアが今や、イランや北朝鮮へ武器譲渡を求めるという、想像もできなかった事態に追込まれている。これは、西側諸国が経済制裁で戦略物資の輸出を禁じた結果だ。ロシアは、西側の部品で武器弾薬を製造してきたことを白日の下にさらしたのである。要するに、ロシアの武器製造は西側の部品供給が止まれば不可能という、技術的脆弱性を曝したのである。

     


    「軍事大国」ロシアが、戦いで「軍事小国」ウクライナに追込まれたのは、ロシア製武器がウクライナ軍の西側製武器に比べ性能が劣ることを証明した。ロシアの武器不足の問題は、ロシア製の武器輸入国に大きな衝撃を与えている。この問題は、兵士の戦い方とも関わるため、あとで詳細に取り上げたい。

     

    同じ病に感染している中ロ

    中国軍は、ロシア軍と共同演習を重ねるなど密接な関係を築いている。ロシアのパトルシェフ連邦安全保障会議書記が9月19日、中国外交担当トップの楊潔チ共産党政治局員と会談した。この席で、中ロは戦略的提携を深化して防衛協力を拡大し、主要な地政学的問題で両国が連携を強化するよう要請した。中ロは、「さらなる軍事協力と参謀本部間の連絡強化で合意した」という。

     

    この中で注目すべきは、「軍事協力と参謀本部間の連絡強化」である。中ロの軍隊が協力するとは、同じ部隊運営システムであることが前提になる。

     


    米国防大学は最近、中国軍がウクライナで苦戦するロシア軍と同じ潜在的な弱点を抱えており、同様の戦争で敗北する可能性があるという衝撃的な報告書を公表した。米『CNN』(9月17日付)が報じた。
    これによると、中ロの協力関係強化は中国軍にマイナスになるという報告である。ロシア軍の脆弱性が、そのまま中国軍の弱点になるという注目すべき内容なのだ。

     

    報告書では2021年までの6年間、中国人民解放軍(PLA)の陸海空軍とロケット軍、戦略支援部隊の5軍種に所属する幹部将校300人以上の経歴を調査した。その結果、どの軍種においても、幹部はキャリアを開始した軍種以外で作戦経験を積む機会に乏しいことが判明した。別の言い方をすれば、PLAの陸軍兵は陸軍兵のまま、海軍兵は海軍兵のまま、空軍兵は空軍兵のままキャリアを過ごすのである。これは、ロシア軍と全く同じ道である


    報告書では、PLAの要員がそうした狭い組織の外に出ることはまれだと述べている。米軍が、1986年から法律で義務付けられており、軍種をまたいだ訓練を行なっている。米軍将校は、「オールランドプレーヤー」として、陸・海・空の知識を収めているので臨機応変な軍事判断が可能である。(つづく)

     

    次の記事もご参考に。

    2022-09-05

    メルマガ392号 中国ファーウェイ「巣ごもり宣言」、米国の技術輸出禁止で「ノックアウト」

    2022-09-12

    メルマガ394号 米中「始まった新冷戦」、米国は技術情報封鎖へ 中国はスパイで対抗?

     

     

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