勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    日本政府と国際協力機構(JICA)は東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国のエネルギー供給網の強化に乗り出す。フィリピンを「最優先支援国」に指定し、今夏にも官民の石油備蓄設備や制度などの課題を調査する。経済産業省が中心となり、国際シンクタンクの東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)、エネルギー・金属鉱物資源機構、国際協力銀行、国際協力機構などがチームとなってフィリピンを訪問する。千代田化工建設や商社など民間企業も参加する。調査対象国は、

     

    日本が「POWER Asia100億ドル支援」を決め、ASEAN首脳会談も承認した件である。調査期間は1年間を見込む。外交関係や民間企業の活動に影響が出ない範囲で公表することも検討するとしている。これまで、中国が石油製品として輸出してきた関係だけに、情報公開は限定される。フィリピン、ベトナム、インドネシア、タイの4カ国を支援対象にする。「最優先」がフィリピンで、ベトナムを「優先支援国」と定める。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月6日付)は、「石油備蓄支援でフィリピン『最優先』 政府、26年夏にも調査開始へ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「フィリピンは原油の調達のほとんどを中東に依存しており、米国とイランの武力衝突後に国家エネルギー非常事態を宣言した。備蓄制度は整備されておらず、製油所は1カ所しかない。このため、フィリピンを「最優先支援国」とした。「優先国」のベトナムも備蓄体制が不十分とみる。日本向けの医療物資のサプライチェーン(供給網)の重要拠点のひとつで、安定した医療サービスの提供のため支援が欠かせない。石油備蓄インフラが乏しいカンボジアやラオスはタイとベトナムに石油供給を依存している。タイとベトナム両国の調査を通じて課題を洗い出す。エネルギーの自給度が高いマレーシアは文献調査にとどめる」

     

    日本政府は、フィリピンを「最優先支援国」として原油備蓄体制を調査する。次は、「優先国」のベトナムの基礎調査に入る。インドネシアとタイは、調査対象という位置づけである。

     

    (2)「支援に乗り出す背景にはASEANが中国と経済の結びつきを強めている現状がある。石油の国家備蓄制度を持つ日本として、エネルギー安全保障の分野で中国と異なる価値を示す意図がある。日本から原油や石油を直接供給することは想定していない。現地の石油備蓄制度について調べ、製油所の立地や処理能力、老朽化の状況などを分析する。備蓄用タンクの容量や状態、用地拡大の余裕なども確認する。港湾やターミナルの立地、入港できるタンカーの大きさも調査する」

     

    日本から原油や石油を直接供給することは想定していないという。現地の石油備蓄制度について調べ、製油所の立地や処理能力、老朽化の状況などを分析する。これは、建前上の話である。製油所の立地や処理能力が低く、設備が老朽化しているから石油製品の供給不足が起っている。いくら調査をしても対応策が出なければ問題解決にはならない。日本は、極めて慎重に対応している。相手国からの具体的提案に従って対応するのであろう。「押しつけ」を控えるのだ。

     

    (3)「域内のエネルギー協力や備蓄の運用ルールに課題がある可能性がある。備蓄に関する法律が整っているかや国家備蓄と民間備蓄の内訳、管理体制などを見る。緊急時に放出を決める意思決定のプロセスも対象だ。原油の調達から石油製品の流通までのサプライチェーンにも着目する。代替航路があるかや、そこを通航した場合のコストを算出する。日本に向けて輸出されている医療用の手袋や透析回路など、医療・産業界への影響を明らかにする」

     

    原油の調達から石油製品の流通まで、サプライチェーンにも着目する。代替航路があるかや、そこを通航した場合のコストを算出する。小型の製油所を各国に作っても高コストでは競争力がない。結局、各国の自国製油と日本による代替製油のコスト計算もするのだろう。日本は、押しつけがましくならないよう対応するのであろう。

     

     

    テイカカズラ
       

    米国は、韓国の李政権へ「対中融和」姿勢が強いことに疑念を持ち始めている。米国防総省は、韓国を兵器や情報の面で距離を置いているのだ。8月稼働する「重要鉱物特恵市場」では、韓国の扱いが宙に浮いている。韓国は、「米韓同盟健在」と繕っているが、底流は冷ややかな動きが垣間見え始めた。韓国が最近、親日姿勢を強めている裏には、最後の拠り所として日本を引き留めたいという「保険」の意味がありそうだ。

     

    『朝鮮日報』(6月6日付)は、「韓国の『親中左派政権』に警鐘 危機にひんする韓米同盟」と題する寄稿を掲載した。筆者は、峨山政策研究院・崔剛(チェ・ガン)院長である。

     

    米政界やシンクタンクは、韓国の政治・外交の基調を「親中左派」と規定している。ブルース・クリングナー元ヘリテージ財団上級研究員は昨年初め、「韓国に新たな進歩(左派)政権が誕生すれば、北京と平壌には融和的な一方でワシントンにはより敵対的になると思われ、中国はこれを大いに歓迎するだろう」と分析した。エバンズ・リビア元米国務省東アジア・太平洋担当上級次官補も「中国は親中的な傾向で知られる共に民主党の台頭を肯定的な展開と見なすだろう」と述べた。

     

    (1)「李在明(イ・ジェミョン)政権は、「韓米同盟を未来志向の包括的戦略同盟へと発展させる」と宣言したが、矛盾した動きによって米国に誤解と不信感を抱かせる隙を与えてしまった。韓国は今年2月、米国が提案した韓米日の空中合同演習に参加せず、西海上で実施された在韓米軍の空中演習に対して抗議した。こうした信頼の毀損により、防衛産業や通商分野でも韓国排除が感じられる」

     

    李氏は元々、「親中・反日」闘士である。駐韓中国大使館で、福島原発処理水排出に反対する中韓結束を呼掛けた人物である。日本では今、こういう李氏の反日姿勢を忘れているが、米国は決して忘れずに韓国への警戒心を捨てずにいる。

     

    (2)「米国防総省は、自国の先端スタートアップと日本の三菱重工業など約50社との間で防衛産業のサプライチェーンを構築し、ドローンを大量生産する方針だ。しかし、この巨大なドローン同盟から韓国は除外された。最近、インド太平洋軍が主導した指揮統制システム連携ネットワーク(IMN)においても、米国、日本、オーストラリア、カナダ、フィリピンなど太平洋地域の主要同盟国は対中軍事作戦情報をリアルタイムで共有しているが、韓国だけが除外されている。通商分野ではダレル・アイサ米連邦下院議員が、「韓国の親中左派政権がメタ社や『韓国のアマゾン』と呼ばれるクーパンなど米企業への攻撃を始めた」と批判した。さらに共和党研究委員会(RSC)所属の下院議員54人は、韓国内における米国企業への差別的扱いの中止を求める書簡を康京和(カン・ギョンファ)駐米大使に送った」

     

    韓国国防部は、今年2月、西海(黄海)上で実施された在韓米軍の空中演習に対して抗議し、米軍が謝罪した一件がある。米国防総省は、これを深く心にとどめている。屈辱を受けたからだ。以降、米韓の軍事面での交流はギクシャクしている。

     

    (3)「激変する国際秩序の中で、同盟の放棄は国家存亡に直結する。中国は、2049年までに世界の中心になるという「中国の夢」を掲げ、北朝鮮、イラン、ロシアなどの権威主義体制と連帯し、米主導の秩序を揺るがしている。北朝鮮は核能力の高度化により、韓国に「核の影」を落とす態勢を構築した。ビジネス交渉術になぞらえた「ディール外交」を繰り広げるトランプ政権は、米・イラン戦争において米国を積極的に支援しなかったNATO(北大西洋条約機構)加盟国に憤り、NATO脱退さえも検討している」

     

    米国の軍事的な最終目標は、中国の2049年目標である世界覇権論の阻止にある。韓国は、こうした米国の反撃体制にとって有害な動きをしているとみられ始めている。韓国左派政権が、米韓同盟の空洞化を狙っているとの疑念を抱いているのだ。

     

    (4)「もし韓国政府が、主権強化という大義名分ばかり掲げるのであれば、トランプ大統領は米国から1万キロ離れた台湾を交渉カードとして活用したように、在韓米軍削減や戦時作戦統制権早期移管などを対北朝鮮・対中交渉のカードとして切り出す可能性がある。在韓米軍のジェイバー・ブランソン司令官が、戦時作戦統制権の移管について「政治的な都合が条件に優先してはならない」と警告した理由はここにある」

     

    駐韓国連軍(米軍)は、韓国の戦時作戦統制権を保持している。韓国軍には、統帥権(軍隊を動かす権利)がない。仮に、韓国軍が統帥権を持った場合、北朝鮮軍が侵攻しても韓国軍が謀議して抵抗しなければ、韓国は北朝鮮によって占領される。韓国政府が、今ひとつ信頼できない以上、統帥権という最後のカギを渡せないのだ。

     

    (5)「米国の国防戦略書(NDS)は中国の膨張を阻止するため、九州・南沙諸島・台湾・ルソン・ボルネオを結ぶ「第1列島線」内の同盟国の役割を強調している。ジョセフ・ヒルバート米第8軍司令官も最近、「韓国もまた第1列島線に属している」と断言した。中国の顔色をうかがう同盟国は、米国の防衛線から除外される「21世紀のアチソン・ライン」が形成される可能性を示唆している」

     

    韓国は当時、米国にとって重要な存在でないとして、アチソン・ラインで外され北朝鮮の侵略を許した。米国が再び、韓国へこういう判断を下さないように、米韓同盟は関係を密にしなければならないであろう。日本にとっても、米韓同盟の密接化が大きな利益になる。

     

     

     

    ムシトリナデシコ
       

    韓国社会は、与野党の対立が激しく常に陰謀論がまかり通るほどである。それだけに、選挙管理委員会の公正性と信頼が最も重要である。今回の地方統一選では投票所で投票用紙が不足して有権者を何時間も待たせる事態が起った。しかも、野党候補が有利な選挙区で投票用紙不足が起ったとされる。選挙管理委員会の信頼性が大きく損なわれた。

     

    『朝鮮日報』(6月4日付)は、「投票用紙不足で投票中断、大半は野党優勢の選挙区まともな選挙とは言えない 韓国統一地方選」と題する記事を掲載した。

     

    ソウル江南地域など複数の投票所で投票用紙が足りなくなり、投票が中断するというあり得ない事態が発生した。

     

    (1)「同日午後にソウル市松坡区などの投票所を訪れた有権者は選管の追加で印刷した投票用紙が到着するまでかなりの時間を待機するしかなかった。ある地域では投票終了3時間が過ぎても投票用紙が到着せず、多くの有権者が参政権を行使できず引き返し、また地上波放送3社の出口調査が発表された後も投票が行われるケースもあった。野党は当然「開票中断」を要求した。テレビで各候補者の得票率が報じられる時間に投票所では投票が行われるような選挙が正常と言えるだろうか」

     

    投票用紙を「節約」して不足するという、あってはならない事態を引き起した。韓国では、選挙のたびにトラブルを引き起している。

     

    (2)「一部の投票所で投票用紙が足りなくなった理由について選管は、「投票率が想定以上に高かったため」と説明したが、これは到底納得できない。60%よりも少し高いくらいの投票率で投票用紙が足りなくなったという説明に誰が納得するだろうか。全ての有権者が投票する前提で投票用紙を準備するのが常識ではないのか。韓国はいまだにこの程度の国なのか。この深刻な事態について多くの国民は選管の発表ではなくカカオトークなどのSNS(交流サイト)を通じて最初に知ったという。選管は意図して問題を隠蔽(いんぺい)しようとしたのではないか」

     

    投票用紙を節約するという、「前代未聞」のことが引き起された。少し多めに印刷しておくのが常識であろう。

     

    (3)「今回、どれだけ多くの有権者が投票を諦めたか確認は不可能だ。21世紀の大韓民国は投票用紙がなくて投票ができない国なのか。有権者に与えられた参政権はたとえ1人でも保障されなければならない今回の問題は国民の参政権が集団で妨害されたようなものだ」

     

    有権者は、「神様」のはずである。現実は長時間、待たされてしびれを切らした帰宅してしまった有権者も多いという。投票の権利を奪ったことになるだけに、選挙管理委員会委員長は辞任するほどの責任を痛感すべきだ。

     

    (4)「ドイツでも2021年の統一地方選挙で、投票用紙の不足と誤配布がベルリンで発生した。当日ドイツの連邦憲法裁判所はずさんな選挙管理を理由に全国での再選挙を命じた。厳正な選挙管理と公正な参政権の保障は民主主義の根幹だからだ」

     

    ドイツでも2021年に、今回のような事態を引き起し、連邦憲法裁判所から全国での再選挙を命じられている。こういう例があるのだから、韓国選管も慎重になるべきであった。

     

    (5)「選管は、前回の大統領選挙で投票用紙をざるに入れて運び、すでに記票された用紙を有権者に配布した。各党から出された監視員がいない状態で投票用紙を投票箱に入れるケースもあった。選管では縁故採用や金品授受がまん延している事実も明らかになった。今回は投票用紙不足という想像の域を超えた事態が起こった。投票用紙が、足りなかった地域の多くは野党が優勢とされていた。これは偶然だろうか。もし共に民主党が優勢な地域で同様の事態が起こっていればどうなったか考えなかったのか。こんな選管であれば廃止を求める世論が当然起こってくるだろう」

     

    韓国選挙管理委員会は、政府から独立した組織となっている。職員採用も独自で行っている。この結果、縁故採用が多く問題を起こしてきた「札付き」である。建前は、政治から独立であるが、現実は「革新派」の牙城とされている。選挙の中立性維持の上で大きな問題を抱えている。

     

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    米大手投資会社ブラックストーンは6月4日、個人投資家向けのBCRED(総資産13.5兆円) で、 解約請求の一部拒否を発表した。プライベートクレジットは、1年前から問題が指摘されてきただけに、「ついに火がついた」という受け取り方がされている。プライベートクレジット=非公開融資であり、流動性が低いという難点がある。すぐに解約ができないのだ。外部からは、実際の評価額がわからず、「見かけ上は安定しているが、実際には流動性がない」 という構造が露呈した。

     

    プライベートクレジットは、高金利で担保が脆弱な借り手で中堅企業 が多い。金利上昇で返済能力が急低下していることから、今回の事態になった。 ファンド側は、評価損を出したくないという強い思いがある。上場債券と違い、 時価評価を遅らせることができるという「暗部」を抱えている。一度、今回のような「解約請求拒否」が起こると連鎖が始まる。投資家心理は、「ブラックストーンで請求拒否が出た。 他のファンドも危ない。 早く解約しないと閉じ込められる」というもので、 銀行取り付けと同じ心理になる。

     

    この問題は、中国へ波及する。中国富裕層が多く投資しているだけに、プライベートクレジットに資金が凍結される事態になると、中国の外貨流動性に大きな「穴」が空く事態になる。中国は、すでに新規の海外投資を禁じる手を打っているが、多くの資金は凍結されかねないリスクを抱えている。これは、中国経済にとって「ドル流動性」において大きな支障を来すので、中国経済が「縮小均衡」迫られることになろう。これから中国は、プライベートクレジットで「一喜一憂」させられる。

     

    『日本経済新聞』(6月5日付)は、「ブラックストーン解約制限 巨大融資ファンド 日本では3316億円運用」と題する記事を掲載した。

     

    米大手投資会社ブラックストーンは4日、プライベートクレジット(ファンドなどによる融資)で運用する個人投資家向けファンド「BCRED」で解約請求の一部を制限したと発表した。

     

    (1)「4日付のBCREDの投資家向け書簡で明らかにした。BCREDは四半期ごとに解約請求の機会があり、純資産総額の5%を上限に解約に応じる仕組みを設けている。46月期には純資産総額の約10%相当の解約請求があり、このうち実際に解約に応じて資金を払い出すのは上限の5%のみとした。ブラックストーンは大和証券グループ本社を通じて、日本でもBCREDを提供している。日本証券業協会によると4月末時点で3316億円の運用残高がある。BCREDのように「ビジネス・デベロップメント・カンパニー(BDC)」と呼ばれる投資法人形態の個人投資家向けファンドでは、昨秋から解約請求が徐々に増えていた」

     

    2020年代に始まると予測されている金融問題は、プライベートクレジット、プライベートエクイティなどだ。これらは 市場価格が存在しないので、 危機が「静かに」進行する。今回のブラックストーン問題は、 その「静かな危機」が表面化した最初のサインである。金融危機は、長期化の恐れが強まる。

     

    (2)「米国の自動車関連企業の相次ぐ破綻や、主要な融資先であるソフトウエア企業の事業モデルが人工知能(AI)普及で揺らいだことなどを受け、個人投資家が解約を通じて投資回収に動いた。BCREDの投融資先の27%はソフトウエア企業向けで、業種別で最も大きい。1~3月期に同業他社が運営するBDCでは上限5%を超える解約請求が寄せられ、次々と解約制限に動いた。BCREDにも13月期に7.%相当の解約請求があった。当時は、ブラックストーン本体と同社従業員がBCREDに合計約4億ドルを新規投資したこともあり解約制限の措置は発動しなかった。今回初めて解約制限に動く」

     

    これから起るのは、 銀行の貸し渋りが加速することだ。銀行は、プライベートクレジットの裏側に融資している。 評価損が出れば、銀行の自己資本が圧迫されるからだ。ただ、大手銀行は、対策済みとされる。中小の金融機関が損害を被るリスクが高まるであろう。

     

    中国が、「資本流出に急ブレーキ」を踏んだ理由は、プライベートクレジット危機と連動 している。 中国の富裕層・企業は、香港経由で米国のプライベートクレジット商品へ投資し、オフショア口座から米ドル建てへ資金移動している。中国国内の不動産危機から逃げるため、外貨資産へ逃避してきた。その逃避先が、問題を起こしている。

     

    今、 プライベートクレジットが、「 解約できない」結果、 資金が海外で凍結される危険性が高まっている。中国政府は、海外送金の規制強化、銀行の外貨購入制限、富裕層の海外投資審査の厳格化 を一気に強めている。これが、逆に外資の中国流入を妨げるので、総合的にみて中国経済に強いマイナス要因となる。

     

    中国はこうして事実上、「資本鎖国」状態へ落込む。これが、中国経済へ深刻な事態を生むであろう。海外企業の対中投資や融資は、「回収モード」に入る。外資は、「新規投資」でなく「どうやって資金を回収するか」に頭を使うのだ。この結果、中国向け資金を減らして、他地域(日本・ASEAN・インド)への資金シフトが進むであろう。中国は、素通りとなる。今までなかった事態が起るのだ。

     

    日本では、円キャリートレードが「返済方向」に向かうという期待感が強まっている。円キャリーの返済圧力が強まり円高になる。その理由は3つある。

    1)プライベートクレジットの解約制限 によって、ドル流動性不足が起る。

    2)中国の資本規制強化によって、 アジアのドル流動性が低下する。

    3)FRBの利下げが遅れる可能性 である。プライベートクレジット危機は、FRBの利下げを遅らせる方向に働く。

     

    プライベートクレジット危機は、「静かな長期危機」であり、 利下げしても解決しないうえ、現在はインフレ再燃リスクがある。こうして、FRBは利下げを遅らせる方向に動く。これは、 キャリーの妙味が低下するので、手仕舞って円高に作用する。このように、プライベートクレジット危機が中国と日本では違った角度へ影響を与えるであろう。 

     

     

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    レアアース(希土類)は、中国が世界に誇る重要鉱物である。鄧小平はかつて、「中東に石油、中国にレアアース」と豪語し、資源国家を標榜してきた。だが、中国はレアアース製品で約9割の世界シェアを持つものの、その製法は至って「原始的」である。環境破壊を厭わず、ひたすら量産化と低コスト化を追求しており、日本の化学的精錬法の前に「兜を脱ぐ」事態になっている。

     

    『ロイター』(6月1日付)は、「『レアアース学士号』 中国の大学専門課程に年500人超 人材で圧倒的優位に」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロイターの調査によると、中国は最先端の研究を生み出す40超のレアアース専門研究所から成るエコシステムを築いてきた。これを補完する形で、少なくとも11の大学・専門学校がレアアース学位課程を設け、毎年合計500人超を受け入れている。この蓄積された専門知識が、中国政府による加工済みレアアースの世界的な供給支配を支えている。ロイターが確認した限りでは、中国以外でレアアースに特化した学士課程を設ける教育機関は見当たらなかった。米アイオワ州にある同国エネルギー省傘下のエイムズ国立研究所は、研究対象が鉱物科学にとどまらないものの、レアアース研究で高い評価を受けている」

     

    中国の研究者は、 体系的な化学的理解よりも、「工程の反復・最適化に偏る」という危険性が指摘されている。レアアース精錬の本質は、 化学反応のを理解し、微妙な条件調整を積み重ねる技術とされている。これは、温度、pH、酸化還元、不純物の挙動、反応速度、結晶化の癖など、数十年の経験でしか蓄積できない暗黙知が支えている。日本の精錬技術(住友金属鉱山、三菱マテリアルなど)は、70年以上の蓄積があり、大学を増やしても再現できる問題ではない。中国の研究所がいくら増えても、 暗黙知の壁は越えられない。つまり、中国文明の「粗さ」では、日本の「精緻さ」に及ばないのである。

     

    (2)「ロイターは今回初めて、中国のレアアース研究・教育システムの規模を集計した。調査は研究論文、授業資料、中国に長く滞在した西側の鉱業幹部・研究者11人への取材に基づく。その結果、学術界と産業界の緊密な関係が明らかになり、これが中国企業による迅速かつ低コストのレアアース生産を支えていることが浮かび上がった。レアアース企業ネオ・パフォーマンス・マテリアルズとモリコープの元最高経営責任者(CEO)、コンスタンティン・カラヤンノプロス氏は「中国では大学を出たばかりの若者を採用しても、すぐに戦力になった」と語った。「他の国では3年訓練しなければならない」と指摘する」

     

    レアアース精錬の本質は、 化学反応の「癖」を理解し、微妙な条件調整を積み重ねる技術である。これは、日本文化の特色である「繊細さ」に通じている。最適例は、中華料理と日本料理の違いである。中華料理は、具材を強烈な火力と油で短時間に炒める。日本料理は、全く異なる。具材の良さを引出しその微妙な味を楽しませもの。レアアース製法の違いは、中華料理と日本料理の差でもある。

     

    (3)「中国指導部は今、この専門知識を厳格に守っている。長年にわたり、レアアース関連技術や設備の輸出規制を強化してきたほか、業界関係者と外国人との接触も制限している。この業界に詳しい3人によると、一部の技術者はパスポートの提出を命じられた。パスポートを没収した政府機関名は明らかにしなかったが、取り締まりはトランプ氏が25年4月に「解放の日」関税を打ち出した後に強まったという」

     

    中国の精錬は、廃液処理を甘くする、汚染を外部化する、労働安全を軽視する、などでコストを下げている。これは技術の優位ではなく、制度の欠陥である。こういう「ラフ」な技術を守っても意味がない。日本の精錬は、廃液ゼロ、高純度分離、省エネ、高歩留まり、という「化学としての合理性」で成立している。中国は、この領域で日本に追いつけないというのが世界的評価である。(つづく)

     

     

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