韓国の昨年10~12月期の実質GDPが、前期比マイナス0.4%になった。新型コロナウイルスが拡散した2020年4~6月期から2年6カ月ぶりのマイナス成長だ。政府消費と建設・設備投資は増えたが、民間消費と純輸出が減少した結果である。2020年4~6月期もマイナス3%成長。民間消費と純輸出の減少が原因だ。2022年のGDP成長率は、前年比2.6%であった。
『日本経済新聞 電子版』(1月26日付)は、「韓国で膨らむ住宅ローン金利、消費冷やし景気減速に拍車」と題する記事を掲載した。
韓国経済の減速に拍車がかかってきた。韓国銀行(中央銀行)が26日発表した2022年の国内総生産(GDP)の成長率は前年比2.6%で、21年の同4.1%を下回った。韓国銀行は23年の成長率を1.7%と見込む。物価抑制や通貨防衛のための高金利策が、住宅ローンを軸に家計負債の金利負担を膨らませ、消費を冷やしている。
(1)「韓国銀行は、23年の景気が「後半になれば改善する」と見込んでいる。だが、民間のシンクタンク各社は下振れを予想する。同年の実質GDPの伸びが1.4%になると予想するLG経営研究院は「金利上昇で証券・不動産市場が振るわず、消費者心理にはマイナス効果を及ぼす可能性が高い」と指摘する。個人消費は韓国のGDPの5割近くを占める。高金利は家計に負担だ。足元の住宅ローン金利の膨張が23年も続けば、深刻な打撃となる」
個人消費は、GDP比46.14%(名目値 2021年)を占めている。これが、住宅価格急落と高金利に挟撃されている。22年10~12月期の個人消費が、マイナス0.4%になった背景だ。この状態には、早急な完全が望めないので、23年景気の足を引っ張る。
(2)「19年にソウル市内のマンションを10億ウォン(約1億円)で購入した会社員の男性(37)は住宅ローンの金利負担が3年で2.5倍に急増した。「手取り給与の5分の1を利子払いにあてている。夫婦で倹約するしかない」と打ち明ける。厳冬のいま、室内でもコートを着て暖房費を抑えている。この例は特別でない。韓国銀行によると、同国の金融機関の平均貸出金利は22年11月が年5.64%で、前月より0.38ポイント上がった。前年同月比では2.41ポイントも高い。住宅ローン金利の8割超が変動制で、足元では最大で8%を超える」
住宅ローン金利の8割超が、変動制であり足元では最大で8%を超えている。これは、日本から見れば「異常高」である。政策金利0.5%時代が、約1年も続いた。この時の貸出金利は、約2.8%程度。それが、あっという間に急騰したのだ。個人消費へしわ寄せが行って当然であろう。
(3)「韓国金融監督院によると、住宅ローンをはじめとする家計負債は22年9月時点で1870兆ウォンと、17年9月より4割増えた。家計負債のGDP比を21年のデータで比較すれば、韓国が104%で、米国(79%)、日本(64%)をいずれも大きく上回る。加えて金利負担が膨らめば家計の可処分所得は圧迫される。22年10〜12月の「民間消費」は前期比0.4%減となった。新型コロナウイルス対策の行動制限が解除され、景気回復が期待されたが、実際には逆の結果になった。韓国銀行の担当者は23年の韓国経済についても「多額の家計負債が国内消費の回復には重荷になる」と警戒する」
家計負債の対GDP比は、韓国が104%と断トツである。この状況での高金利である。家計が悲鳴を上げても不思議はない。家計負債の対GDP比は、日本よりも40%ポイントも高いのだ。
(4)「高金利の背景には、22年2月にウクライナ侵攻を始めたロシアへの経済制裁による物価上昇を抑え、対ドルで韓国通貨ウォンを防衛するための利上げがある。韓国銀行は米連邦準備理事会(FRB)と歩調を合わせる形で、政策金利をこれまでの約1年半で過去最低水準の年0.50%から3.50%に引き上げてきた」
韓国が、急速な利上げに走ったのは、ウォン安対策である。これが、輸入物価を押上げて国内インフレに点火した。現在、5%台の消費者物価上昇率である。金利引上げは、不可避であった。
(5)「韓国の不動産価格は過去5年間で平均8割上がった。対中関係の悪化や新型コロナの感染拡大で落ち込む景気を支えるため、韓国銀行が低金利政策を採用していたためだ。「緩和マネー」が不動産市場に流入した。将来の値上がりを見越し、所得に見合わない多額の住宅ローンを組んだ世帯も多い。韓国の「持ち家信仰」は強い」
韓国は、平野が少なく住宅地が少ないという立地条件だ。ソウルの立ち並ぶマンション群を眺めると、日本では想像もできないほどの「密集状態」である。その上、人々は職を求めてソウルへ集まるので、ますます住宅不足が深刻化している。不動産バブルの背景には、住宅地不足という問題もある。国土計画が不備であるのは否めない。