勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国の消費者物価指数(CPI)は、5月も前年同月比0.1%のマイナス。4カ月連続のデフレ状態となった。価格競争が激化する中で、大型連休による消費の押し上げ効果も、国内需要の弱さを補い切れなかった。米国から課された高関税は、物価に転嫁できないほど内需が低迷している。生産者物価指数(PPI)は、前年同月比3.3%低下し、2年8カ月連続の前年割れと「超停滞」局面だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月10日付)は、「中国物価、下落続く 対米関税上げ、転嫁できず」と題する記事を掲載した。

     

    中国国家統計局が9日発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で0.%下落した。中国が2月以降に発動した対米追加関税で企業の輸入コストが増えているにもかかわらず、内需不振で価格競争が進み、企業は価格転嫁できずにいる。

     

    (1)「CPIの下落率は4月と同じで、4カ月連続のマイナスだった。原油安に伴いガソリンなどの交通燃料が12.%と大きく低下したのが主因だ。不動産不況による内需不足で家電・家具や自動車、バイクといった耐久消費財も値下がりした。長引く景気低迷で家計の節約志向は強まる。消費者は高価格帯の飲食店や商品を避け、安価なカフェや食料品を購入する。代替肉大手の米ビヨンド・ミートは2月に中国事業からの撤退を発表した。代替肉の価格は手ごろな食肉と比べて割高感があり、消費者離れが続いたためだ」

     

    米コーヒーチェーン大手のスターバックスは9日、中国で茶系飲料などの価格を5元(100円)前後値下げすると発表した。消費者の節約志向が強まり、低価格帯の飲料を提供する蜜雪氷城(ミーシュエ・グループ)など地元勢との競争が激化している。価格見直しで中国事業をテコ入れする。10日からアイスティーや「フラペチーノ」など数十種類の飲料の価格を改め、23元からとする。コーヒー以外の茶系飲料などが対象で、値下げ幅は平均で5元だ。

     

    (2)「企業間の取引価格も低下が続く。5月の卸売物価指数(PPI)は前年同月と比べて3.3%低下し、マイナス幅は4月の2.%から拡大した。不動産不況による需要不足や企業の過剰生産により原材料の価格は弱く、石油・石炭は14.%、鉄鋼は10.%、化学原料は5.%それぞれ下落した。中国は2月以降、米国による追加関税への報復措置として対米追加関税を引き上げたため、企業の輸入コストも上がってきた。5月中旬に米国と115%の追加関税の引き下げで合意した後も、米国からの輸入品に10%の追加関税を課している」

     

    PPIは、32ヶ月連続でマイナスという、卒倒するほどの事態が起こっている。過剰生産による値崩れが最大要因である。地方政府の補助金がついているので、こうした過酷な状況下でも操業続ける「死のロード」を歩んでいる。矛盾そのものの構図である。

     

    (3)「内需不振のなかで販売を増やそうと企業は商品の値下げを強める。中国電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)は5月にEVなど22モデルの値引きを発表した。他の大手も追随するなど価格競争が激しくなりつつある。企業が、コスト上昇分を価格に転嫁できない状況で、原材料などを輸入する企業は板挟みにあっている。コスト増や値下げにより企業の収益が悪化すれば雇用にも響き、経済回復の重荷となりかねない」

     

    自動車業界は、もはや値引き競争が不可能なほどの事態を迎えている。政府が、値下げ競争を止めざるを得ないほど、「血で血を洗う」地獄図へ陥っている。補助金がついているのでこういう無益な競争を続けてこられた。これも、最終局面だ。

     

    国家統計局の統計官は、生産者物価の大幅下落について、昨年の比較基準が高かったことに加え、石油製品や化学製品の国際価格下落を要因に挙げた。さらに同氏は、国内では石炭などの原材料が在庫の積み上がりで値下がりし、PPIを一段と押し下げたと発表資料で指摘した。

     

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    李在明(イ・ジェミョン)大統領と米国のトランプ大統領は、最初の電話会談をすでに行った。韓国側は会談の事実を公表した一方、米国は丸1日過ぎても正式に発表していないのだ。このため、その背景に関心が集まっている。

     

    韓国大統領室は、「両大統領が互いのリーダーシップを高く評価し、韓米同盟のために努力することで一致した」とし「良い雰囲気を作っていく電話であり、お互い親近感を確認した電話だった」と評価した。米ホワイトハウスは関連の論評を出さず、トランプ大統領のSNSにも電話会談関連のメッセージはなく、韓米間で微妙な温度差がみられた。一部では米国側が、李在明政権の標ぼうする実用外交の実体を正確に把握するため、慎重な態度を見せるのではという見方が出てきた。

     

    『朝鮮日報』(6月9日付)は、「李在明・トランプ初の韓米首脳電話会談、公式発表を行わない米政権の対応が話題に」

     

    李在明大統領は当選直後の今月4日に大統領に就任し、米国トランプ大統領と米国東部時間の6日午前9時(韓国時間6日午後10時)に約20分にわたり電話会談を行った。会談直後、韓国大統領府は会談の内容とその背景について詳細に説明した。

     

    (1)「米ホワイトハウスとトランプ大統領は、現地時間の7日午後になっても、会談が行われた事実もその内容も正式に公表していない。これまで、プレスリリースや報道官の会見はもちろん、トランプ大統領がたびたび使用するSNS(交流サイト)「トゥルース」にも言及がない。ロイター通信は6日、ホワイトハウス関係者の話として「トランプ大統領は李在明大統領を米国に招待した。二人は近く会う計画だ」と報じたが、これは非公式の話に過ぎない」

     

    トランプ氏は、SNSで頻繁に発信している。李氏と電話会談しながら無反応なのは、話の内容がトランプ氏のハートを掴むような魅力がなかったとも言える。「沈黙」は、「無関心」にも通じるのだ。

     

    (2)「トランプ大統領は2期目の政権発足後、他国の首脳との電話会談やその内容をトゥルースで自ら公表してきた。ただし全てが明らかにされたわけではなく、何を公表するかは相手やその内容により変わってきた。一例を上げるとトランプ大統領は、今年4月の韓悳洙(ハン・ドクス)大統領権限代行との電話会談後「在韓米軍の防衛費分担金問題を話し合った」と自ら公表した。だが、同じような電話会談を全て公表しているわけではない。3月にカナダのカーニー首相と行った電話会談はSNSで直ちに公表したが、先月8日に行ったドイツのメルツ首相との電話会談は公表しなかった」

     

    ドイツのメルツ首相との電話会談は、公表されなかった。これは、メルツ氏がトランプ批判をするような発言をしたことや、トランプ氏自身がドイツへの関心が薄いという点もある。ドイツは、もともと米国とは距離を置いている国だ。韓国も、ドイツ並みの関心度になっているのかも知れない。

     

    (3)「そのため、今回の李在明大統領との電話会談をトランプ大統領が公表しないことも特に「異例」とは言えないと考えられる。ただし複数の外交関係者は、李在明政権発足後もトランプ政権の対応が比較的静かな点に注目している。両首脳による電話会談が行われた時期も大統領選挙から3日後で、これは選挙後1~2日以内に電話会談が行われた過去の事例とはかなりの違いがあった」

     

    ホワイトハウスは、李氏が大統領に当選した時から「淡泊」な感想を述べてきた。「冷淡」とも言える姿勢だった。李・トランプ会談もその延長にあるのかも知れない。

     

    (4)「外交関係者の間では、今月15~17日にカナダで開催されるG7(先進7カ国)首脳会議で(招待される)李在明大統領とトランプ大統領の最初の会談が実現するかに注目が集まっている。会談が実現すれば、李在明政権に対するトランプ政権の認識がさらに明確になる具体的なメッセージが出されるとみられる」

     

    李氏側近では、李政権の外交スタンスが明確になっていない以上、G7への招待出席を見合わせた方が良いとの意見もある。招待国の韓国が、G7という同じ価値観の国々に混じって出席することが、中国やロシアとの関係悪化をもたらすという慎重論もあるほどだ。

     

    韓国は、G7の後で開催されるNATO会議にも招待されている。この会議には「欠席論」も囁かれている。李政権内に、対中ロ関係悪化を懸念するグループがいるからだ。李氏は、「実用主義」外交を唱えている。その都度、立場を明らかにする「コウモリ外交」である。米中対立激化の中で、韓国のこういう姿勢が西側諸国に受入れられるか不明である。

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    中国は、補助金政策の弊害によって過剰設備を生んでいる。これによる値引き競争が、際限なくつづくドロ沼状態に陥ってきた。こうした中で、中国の新車市場で過度な価格競争を見直す動きが出ている。大手の比亜迪(BYD)が、5月下旬に始めた値引きに対し、政府や業界団体が批判を強めているためだ。自動車製造業の収益が悪化するなか、過当競争を避ける思惑も秘められている。「共倒れ防止」というギリギリの限界にきている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月9日付)は、「中国・吉利、『車工場新設せず』 生産能力余剰の他社と協業拡大へ」と題する記事を掲載した。

     

    中国民営自動車大手、浙江吉利控股集団の李書福董事長は7日、重慶市で開かれた自動車の国際会議で「新たな自動車工場を建設しない」と述べた。世界的に余剰となっている生産能力を活用するなどして他の完成車メーカーとの協業に前向きな姿勢を示した。

     

    (1)「李氏は、動画でのスピーチの中で「現在の世界の自動車産業は深刻な過剰生産能力問題に直面している」と指摘した。2月には仏ルノーのブラジル工場で吉利の車両をつくることで合意したと発表した。「自動車産業は終わりなきマラソンのようなもので、短距離走とは本質的に異なる」とも述べ、専門人材の育成に力を入れるなど持久力を高める努力をしていると強調した。吉利は2027年までにグループ販売台数を24年実績比5割増の500万台に増やす目標を掲げている。米コンサルティング会社のアリックス・パートナーズによると、中国では24年時点で146の自動車ブランドがひしめく。過当競争による価格競争が激しさを増しているほか、生産能力の過剰問題も指摘されている」

     

    これまで2027年までにグループ販売台数を24年実績比5割増の500万台に増やす目標を掲げてきた。だが、業界は深刻な過剰生産問題に直面している。吉利は、こうした事情によって「新たな自動車工場を建設しない」と発言せざるを得ない状況になった。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月9日付)は、「中国車市場、値引き競争に官が『待った』 けん引役のBYDに反発」と題する記事を掲載した。

     

    中国の新車市場で過度な価格競争を見直す動きが出てきた。大手の比亜迪(BYD)が5月下旬に始めた値引きに対し、政府機関や業界団体が批判を強めているためだ。自動車製造業の収益が悪化するなか、過当競争を避ける思惑がある。ただ採算が向上するメドはたたず、厳しい経営環境が続く。

     

    (2)「中国内陸部の重慶市で開かれた自動車の国際会議。政府系経済団体、中国国際貿易促進委員会で自動車分野トップを務める王俠会長は6日、「際限のない価格競争などは企業の合理的な利潤を圧迫し、製品やサービスの質に悪影響を与え、長期的には企業と消費者に不利益をもたらす」と強調した。自動車メーカーからも価格競争に反対する声が相次いだ。国有大手、重慶長安汽車の朱華栄董事長は、「際限なく、道徳もない、法律も守らない悪性の競争に反対する」と表明。中堅の賽力斯集団(セレス・グループ)の張興海董事長も「サプライチェーン(供給網)の協力に悪影響を与え、産業の強靱(きょうじん)性を弱める」と述べた」

     

    自動車業界全体が、過剰生産と値引き競争で疲弊しきっている。背景には、政府補助金がドロ沼競争を強いてきたのだ。地方政府の支援がなければ、無駄な競争がここまで続かなかったであろう。計画経済の無駄が現れている。

     

    (3)「各社が念頭に置くのは、BYDが先導する形で始まった価格競争だ。同社は「夏だけの一律価格」と打ち出し、5月23日から期間限定の値引きを始めた。主力ブランド「海洋」「王朝」で計22モデルを対象とする。海洋の小型EV(電気自動車)「海鷗」は最安モデルの価格を5万5800元(約110万円)と従来より2割引き下げた。競合も反応し、浙江吉利控股集団傘下でEVなど新エネルギー車のブランド「吉利銀河(ギャラクシー)」や新興EVの浙江零跑科技(リープモーター・テクノロジー)、国有大手の上海汽車集団の高級EVブランド「智己汽車」などが値引きに踏み切った」

     

    BYDが、徹底的な価格競争を巻き起こした。経営に余裕をもった競争でなく、ライバルを追い落とす狙いだ。BYDも、手厚い政府補助金が支給されている。純粋な競争ではなかった。

     

    (4)「BYDは24年2月にもモデル刷新に伴う形で複数車種を値下げし、中国各社や米テスラが追随した経緯がある。新興勢の参入が多く競争が激しい中国の車市場で、シェアを奪うため値下げに乗り出すことは珍しくなかった。ただ、今回の値下げに対する反発は大きい。業界団体の中国汽車工業協会は5月30日付けで発表した声明で、「5月23日以来、ある企業が率先して価格を下げ、多くの企業も追随したことでパニックを引き起こした」と言及した。実質的にBYDを名指しで批判した形で、企業名を示唆するのは異例だ」

     

    企業は、補助金を支給されていなければ、ここまでドロ沼競争にならず、途中で撤退したであろう。補助金漬けが、無益な競争を行わせた。中国経済の無駄が、ここに現れている。

     

    (5)「背景には、内向きな過当競争で消耗戦を強いられている状態を示す「内巻」への警戒がある。中国の乗用車業界団体幹部の崔東樹氏によると、中国のEVの平均価格は25年14月に23年から15%下がり14万3000元となった。ガソリン車を含む新車全体でも7%下がった。価格下落は販売台数の拡大につながる一方で採算悪化をまねく。

    中国の自動車製造業全体の純利益額の合計は24年に23年比8%減の4622億元だった。25年1〜4月も前年同期比5.%減で、製造業全体が1.%増であるのに比べ厳しい状況だ」

     

    価格下落は、販売台数の拡大につながる一方で、企業の採算悪化をまねいてきた。こうした事態は自動車だけでなく、他産業でも起こっている。矛盾の連鎖だ。

     

     

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    テスラのイーロン・マスク氏は、一時的な気迷いからトランプ米大統領と「舌戦」を繰り広げ、株価が急落する打撃を被った。マスク氏はその後、話題のSNSを削除して、トランプ氏との和解を試みているとみられる。マスク氏の実父は、「息子の負け」とみるなど形勢は不利である。

     

    マスク氏は、新たに足下からテスラの将来性を覆すような「離脱」が起った。テスラが、EV(電気自動車)よりも期待をつないでいる「人型ロボット」(オプティマス)プログラムの責任者が退社するとの、衝撃情報が明らかになった。マスク氏が、株主への説明でもEVよりも人型ロボットの将来性を滔々と語ってきた「期待の星」である。そのプログラム責任者が退社とは、衝撃的だ。

     

    『ブルームバーグ』(6月9日付)は、「テスラ、人型ロボット『オプティマス』プログラム責任者が退社」と題する記事を掲載した。

     

    米電気自動車(EV)メーカー、テスラの人型ロボット「オプティマス」プログラムの責任者が退社すると、事情に詳しい関係者1人が明らかにした。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が将来の事業の重要部分と位置付けるオプティマス事業に不透明感が増している。

     

    (1)「非公開情報だとして関係者が匿名で語ったところでは、オプティマスのエンジニア責任者ミラン・コバック氏は6日、直ちに退社すると同僚に伝えた。後任は、テスラの運転支援機能「オートパイロット」チームを率いるアショク・エルスワミ氏が務めるという。コバック氏はその後、X(旧ツイッター)への投稿で退社を認め、人生で「最も難しい決断だった」と指摘。家族と共に過ごす時間を増やしたいためだと説明した。同氏は、「マスク氏とチームに対する私の支持は揺るぎないものだ」としている」

     

    オプティマスのエンジニア責任者ミラン・コバック氏が、テスラを退社した。これは、これから量産体制に入ろうという矢先だけに、大きな痛手となろう。

     

    (2)「マスク氏は、2日のソーシャルメディアへの投稿でコバック、エルスワミ両氏について、テスラの人工知能(AI)事業における「2人のキーパーソン」であり、創業当初からこの分野に携わってきたと評していた。従来のEV事業が困難に直面する中、マスク氏はAIや自動運転車と並び、ロボティクス事業にテスラの未来を託している。需要低迷に加え、マスク氏の政治活動に対する消費者の反発で、主要市場におけるテスラ車の販売は急減。マスク氏とトランプ米大統領の関係悪化で、規制面を含む同社のリスクはさらに高まっている」

     

    EVでは、マスク氏のトランプ支援で環境派が離脱してしまった。また、マスク氏の過激な発言でトランプ支持者も怒らせるという「ダブル・ミス」を冒している。それだけに、政治的に無色の「人型ロボット」への期待がかかっていた。

     

    (3)「テスラの最新の決算発表で、マスク氏は年末までに自社施設でオプティマスのロボット数千台が稼働するようになると予測。また、2030年までに年間数百万台の生産が可能になるとの見通しを示していた」

     

    テスラは9日、アナリスト2人から投資判断を引き下げられた。先週のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)とトランプ大統領の衝突を受け、ウォール街では同社の先行きに対する懸念が強まっている。

     

    ア-ガス・リサーチとベアードはテスラの投資判断を「ホールド」(中立)相当に引き下げた。これにより、テスラがアナリストの間で「屈指の不人気な大型株」であることが改めて浮き彫りとなった。テスラ株は一時、4.5%下落した。こうしてテスラ株は、年初来では約27%下落した。いわゆる、「マグニフィセント・セブン」(IT7社)のうち、パフォーマンスが最も悪い部類へ転落した。マスク氏が、積極的に支援したトランプ氏の大統領選勝利を受け株価は上昇したが、昨年12月のピークからは40%近く下げている。

     

    今回の2社による投資判断引き下げは、テスラがウォール街で最も懐疑的に見られている大型企業であることを浮き彫りにしている。ブルームバーグが追跡するアナリストのうち、「買い」を推奨しているのは半数未満にとどまっており、大型株の中でも最も低い比率となっている。現在の投資判断はテスラ「買い」が30社、「ホールド」(中立)が18社、「売り」が13社となった。テスラ株は、目標価格の平均に近い水準で推移しており、アナリストが株価回復を見込んでいないことを示している。以上、『ブルームバーグ』(6月9日付)が報じた。

     

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    米価を下げるには、増産が最大の条件になる。年々10万トンも需要が減少する中で、政策としては増産どころか「減産」が優先されてきた。これが、日本農政の現状だ。こうした減反政策のもたらした今回のコメ不足の発生で、コメ輸出を前提にする「増産」が、コメ不足の解消になるという結論になった。今後は、攻めの農政へ転換する。

     

    コメの増産=輸出には、大企業で組織する経団連が窓口にならなければ効果があがらない。農相は、経団連へ協力を求めて「コメ輸出」へ向けた基盤作りに取組む。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月9日付)は、「小泉農相、コメ輸出促進で経団連と協力 海外需要開拓で増産地ならし」と題する記事を掲載した。

     

    小泉進次郎農相は、コメの輸出促進に向けて経団連に協力を要請する。官民一体で海外の需要を開拓することで、コメを増産しやすい環境を整える。不測のコメ不足や米価の高騰を招いた内向きの農政からの脱却を急ぐ。

     

    (1)「すでに経団連の十倉雅和名誉会長らに協力を打診し、内諾を得た。近く都内で経団連の農業活性化委員会との会合を開く。小泉氏はこのほど日本経済新聞のインタビューで「日本は需要が間違いなく減るので世界のマーケットをとっていく」と述べ、輸出体制の強化を掲げた。JAグループの取り組みは不十分だと唱え「金融機関や商社などの経済界の協力をいただきたい」とも話していた」

     

    コメ輸出は、「オール日本」で取組まなければ効果が上がらない。日本企業の海外進出ルートを辿るなど、開拓方法はいくらでもあるはずだ。これまで、「コメ輸出」で大きな成果が出なかったのは、努力不足が理由であろう。

     

    (2)「足元の米価の高騰は、従来の農政のひずみをあらわにした。価格の下落を防ぐために生産調整を続けてきた結果として供給力が衰え、コメ不足に対応できなくなっている懸念がある。経団連の農業活性化委はコマツの小川啓之会長、みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長、キリンホールディングスの磯崎功典会長の3人が委員長を務める。小川氏と木原氏は5月から経団連の副会長も担っている」

      

    経団連には、農業活性化委員会が存在する。こういう組織がありながら、JAとの協議が軌道に乗らなかったのは、コメ問題が今回のような「国民的課題」にならなかった結果であろう。コメ不足が、社会的騒ぎになることにより、国民の意識が一つにまとまりつつある。「雨降って地固まる」という方向へ進むことを願いたい。

     

    (3)「経団連は、2024年12月にまとめた提言で「農業の成長産業化を進める上で輸出の強化は必須だ」と記し、官民連携の必要性を説いた。コメ価格高騰の原因を究明し「コメ政策のあり方を従前以上に多面的に検討する」よう促してもいた」

     

    経団連は2012年以降、農業の成長産業化を掲げてきた。農水省が、コメ輸出で経団連と組むのは当然と指摘されている。経団連のシンクタンク「21世紀政策研究所」は、早くからこの「コメ輸出路線」を提唱してきた。すでに、政府も積極的な「コメ輸出」計画を立てている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月11日付)は、「コメ輸出の目標、30年に8倍 農業基本計画を改定」と題する記事を掲載した。

     

    政府は11日、中長期の農政指針となる「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定した。

     

    (4)「コメの輸出目標について2030年までに35万トンとする目標を掲げた。24年実績(4.6万トン)の8倍近くに引き上げる。輸出拡大を通じて国内のコメの生産量を増やし、農家の生産基盤の強化や生産性の向上につなげる。農産品全体の30年までの輸出額目標は5兆円を据え置いた。コメやパックご飯などの輸出額は、24年の136億円から30年に922億円に引き上げることを目指す。輸入に依存する小麦と大豆の生産量は、それぞれ109万トンから137万トン、26万トンから39万トンに増やす。食料自給率は現状の38%から45%を目指す」

     

    コメの輸出目標が、2030年までに30万トンと24年比で8倍近い大幅な増加目標を立てた。これは、日本農政がコメ増産へ転換する象徴である。歓迎すべきことだ。こうして、食料自給率が現状の38%から45%を目指すとしている。攻めの農政である。

     

    (5)「江藤拓農相は11日の閣議後記者会見で「食料システムの関係者や団体間の相互理解と連携が重要だ。15ヘクタール以上の生産基盤がないと、コメ価格も一定以上には下がらない。目標の達成へ責任感をもって農政を展開しなければいけない」と述べた。全国農業協同組合中央会(JA全中)の山野徹会長は、10日の定例記者会見で基本計画について「目標達成に向けて着実に自給率を向上することが何より重要だ。前向きに取り組んでいきたい」と述べた」

     

    コメの輸出には、生産コストの引下げが前提になる。それには、圃場面積が、一カ所15ヘクタール以上を必要とする。当然、農地の集約化が前提だ。農家の跡継ぎ問題が厳しくなっている現在、単一経営へとまとめることで労働力不足を解消できるメリットがある。JAも、こうした政府の方針に協力する姿勢である。 

     

     

     

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