中国の習近平国家主席は、最高幹部の粛清を行うことで軍の指揮権をすべて手中に収めた。今や、中国政府と台湾との差し迫った対立を決めるものは同氏の意向だけだ。習氏は、「ビッグブラザー(兄貴)」と呼ぶほど近い関係の幼なじみだった中国人民解放軍の制服組トップ、張又侠氏を逮捕させた。習氏が、台湾にいかなる対応を取った場合でも、慎重を促す可能性のあった権威ある声が軍から排除されたのである。これは、どういう結果を生むかだ。台湾侵攻作戦を決めれば、すべてが習氏の責任となる。
米国は、先のベネズエラ急襲作戦で、「ダイナミック・オントロジー」を採用した。軍事AI(人工知能)の中でも最も高度なカテゴリーで、「戦場の意味構造をリアルタイムで再構築するAI」とされている。センサー情報(衛星、ドローン、通信傍受、レーダー)を統合して、敵の行動・意図・位置を「有機的に」解釈。AIが、戦場の変化に応じて指揮官に「次に起こりうる事象」を提示するというのだ。ベネズエラ急襲では、これが採用された。米軍しか保持しない軍事AIである。中国軍は、とうてい対抗できないというのが一般的見方。こうしたハイレベルの米軍に対して、習氏は精神論で対抗するのか。
『ウォール・ストリート・ジャーナル」(2月2日付)は、「習氏、軍掌握で台湾政策の全権その手に」と題する記事を掲載した。
中国は民主主義を掲げて自治を行っている台湾について、自国領土の一部と主張している。また、粛清の時期も重要だ。中国軍は習氏が軍の「近代化」に向けて設けた2027年の期限に向け進んでおり、これはしばしば、台湾有事への準備が整うことを意味すると解釈されている。一方、複数の外交および軍事アナリストは、近い将来に中国が台湾へ侵攻する可能性は低くなったと指摘。その背景には、習氏自身がわずか3年前に軍を率いるために自ら選んだ6人の上級将軍のうち、5人を粛清したことがある。同氏は一発も銃弾を撃たずに台湾の決意を打ち砕く作戦に軸足を移していると、これらアナリストは述べる。
(1)「アナリストたちはまた、中国政府はあからさまな衝突の一歩手前の戦術にますます依存するようになるだろうと予想。これには台湾の海上および航空封鎖を想定した執拗な演習などが含まれ、中国政府はこれらを通じて心理的攻勢を支える力を誇示しようとしているという。バイデン前政権時に米国の台湾における代表機関のトップを務めたローラ・ローゼンバーガー氏は、「習氏の現在の手法は、軍事的な威嚇を経済的およびサイバー圧力と統合した、より広範かつ強制的な作戦だ」と述べた」
習氏は、台湾を恐れさせる戦術に邁進しているという。となると、今後は一段と瀬戸際政策が発動される。
(2)「中国は、台湾のエネルギーや医療インフラをまひさせることを目的に、サイバー攻撃に関与していると複数の台湾当局者は指摘。一方で日本などの国に対する中国政府の威嚇は、台湾を外交的に孤立させることを目的としている。これら方針の狙いは、中国の軍事指導部が流動的であっても、台湾に対する習氏の焦点は衰えていないことを示すことにある。台湾の供給網を締め付け、その経済的回復力を消耗させる同氏の能力は揺るぎないものとなっている」
習氏は、非軍事面で派手に動き回るとみられる。対日非難継続もその一環である。騒ぎ回って台湾に孤立感を与えるのだ。
(3)「その中で1月24日に発表された張氏の解任について、習氏の動機は今も明らかになっていない。中国軍がいつ台湾との戦闘に備えるべきかについて、張氏と習氏の意見が対立していたとする新たな説も浮上している。米首都ワシントンのシンクタンクであるジェームズタウン財団のアナリスト、K・トリスタン・タン氏は、1月26日の公表した政府公式記録の分析の中で、習氏は「2027年までに台湾侵攻のための統合作戦能力を達成することを軍に望んでいたが、張氏は明らかにこの目標を2035年に近い時期に設定していた」とした」
習氏が、張氏を解任したのは台湾侵攻作戦の時期にあったようだ。習氏は2027年までに統合作戦能力を達成する。張氏は、2035年目標とされている。
(4)「タン氏はまた、張氏逮捕後の軍主要新聞の社説に言及。張氏は軍の主席責任制、つまり習氏の軍に対する絶対的な指揮権を成文化した原則に関し、これを「深刻に踏みにじった」と非難されていると述べた。この表現は張氏の方針が、「習氏の権威を覆そうとする政治的挑戦」に相当していたことを意味するという。張氏と習氏の政策面での潜在的な対立は、軍の人員配置、訓練、そして装備の方法を巡るものだった可能性があるとするアナリストもいる。シンガポールのS・ラジャラトナム国際研究所のドリュー・トンプソン氏は、「米国の抑止戦略が効果的であるためには、客観的な助言を与える有能な将軍に習近平氏が囲まれている必要がある」と最近の分析で主張。軍の最高意思決定機関を骨抜きにすることで、習氏は指揮統制がより困難になり、「一人委員会」を通じて100万人の軍隊を指揮しようとする作戦上の危険性が生じるとした。トンプソン氏はそのうえで、「張又侠氏が排除されたことで、誤算が生じるリスクは高まる」と述べた。
習氏の焦りが原因である。子供が、オモチャをねだるような側面もあったのだろう。習氏は、空母3隻を建艦してやったのだから早く台湾を攻め落とせ。多分、こういう心理状態なのだろう。習氏はいずれ、粛清後の軍部人事を決めなければならない。「イエスマン」を後任へ据えて、「早く戦争せよ」となれば危険この上ない話だ。自滅の運命をたぐり寄せるようなものだ。米軍の「ダイナミック・オントロジー」で全滅させられる。




