中国は「戦争準備」始めた?
人口構造が突きつける刃とは
助っ人にならぬ人型ロボット
高まる戦争準備「機会費用」
人口学的限界のデッドライン
中国が、頻りと日本を標的に威圧的行動を繰り広げている。「新日本軍国主義論」を吹聴しており、第三国との外交交渉では同意を求める文書まで発表し始めた。中国の友好国であるパキスタンやバングラデシュへ、同調圧力を掛けるなどギア・アップしている。これら行動は、中国が戦争行為の一環である「認知戦」として位置づけているものだ。
さらに、中国とロシア両国の空軍が6月27日、日本海と東シナ海、西太平洋の上空で「戦略的合同飛行」を実施した。理由は、「地域の平和と安定を共同で守る決意と能力を示した」と中国国防省が発表した。これは、認知戦の「実践版」である。このように、認知戦と威嚇飛行まで行う現状からみて、中国が日本との「戦争意識」(開戦するか否かは別)を固めたことは事実だ。
現状を大胆に言えば、開戦への3合目の準備に着手したとみるべきだろう。これ以上の「過激化」は、日米安保条約発動という中国の最も恐れる事態を引き起こすので、レッド・ライン越えはしないであろう。そのギリギリまで踏み込んで、日本国内へ恐怖心を煽る戦略だ。これは、同時に中国国内向けの「ジェスチャー」にもなる。強い中国、というイメージで習近平政権の信頼感を繋ぎ止める狙いだ。中国は、国内の経済混乱への不満解消の一環として、一段と踏み込んだ対日強硬策へ転じるとみられる。
中国は「戦争準備」始めた?
こうした事態を受け日本国内の専門家には、軍事的危機を唱える向きも出てきた。中国は、軍の規律・人事・日常運用の根本から「戦争準備」を最優先課題にした再編をしている、という見方だ。習近平氏による軍部の人事刷新や反腐敗闘争は、習氏の独裁強化だけではなく、有事に機能する軍の指揮体系を整えるための構造改革としている。つまり、中国が「戦争をするための軍」へと、制度・文化・人事の全レベルで再編しているというのだ。日本は、この現実を直視すべきであるという厳しい警告である。
この見解は、どこまで受容できるであろうか。軍隊組織とは元々、戦争するための軍事組織である。だが、中国人民解放軍は国家の軍隊でなく、中国共産党の軍隊である。つまり、「国軍」でないという組織的弱点が、戦争をする組織へ組み替える上で最大の弱点になる。
現状は、国内治安を守る「党軍」である。外国軍隊と海外で戦うには、組織を国軍に変える必要がある。この制度的改変は、軍事的権力を独占する習近平氏には不可能であろう。国軍は、党軍よりも一段上の概念に依拠する軍隊である以上、習氏一人の命令で外国軍と戦うには根拠薄弱になるからだ。もう一点、党軍の作戦指揮命令系統は、中央集権方式である。軍内部の反乱を防ぐためだ。国軍として外国軍と戦うには、戦場での作戦判断が重要になる。人民解放軍は、戦場での作戦判断方式でなく外国軍とまともに戦えないのだ。
軍事力の視点のみで中国の「戦争能力」を議論すると、大きな見間違いが起こるであろう。戦争の方式が大きく変っているからだ。ロシア軍がウクライナ軍に苦戦している背景は、ロシア軍の作戦が中央集権方式であり、ウクライナ軍の現場での作戦判断に劣っている結果である。現代戦は、前線での一瞬の判断が勝敗の帰趨を決める時代になっている。
戦争は、国力の消耗戦である。兵士・武器弾薬という直接的な消耗以外に、国家財政の赤字化に繋がる。それだけではなく、海外からの経済制裁が加えられることだ。ロシアの ウクライナ侵略戦争を見れば分かる通り、輸入途絶と金融制裁が行われている。中国は、ロシアと異なりエネルギーも食糧も輸入依存である。ここへ制裁が加えられたらどうなるか。中国は、備蓄量を取り崩して補充の効かない経済へ転落する。ロシアや北朝鮮が加担すれば、これも経済制裁の対象に加えられる。手も足も出ないのだ。
人口構造が突きつける刃とは
以上の想定は、極めて短期的な戦争の構図である。本質的な問題は、構造的にみた中国の「戦争能力」が問われるのだ。それを解く鍵は、中国の「人口構造」にある。
人口学では、「高齢化のスピードが速い国の経済ほど、経済成長の持続性が低下する」としている。これは単なる一般論でなく、経済学・人口学・社会保障論が一致して認める構造的法則である。中国は、この法則の「最悪条件」をすべて該当しているのだ。
高齢化は「人口の老化」だけではなく、経済のエンジンそのものが弱る現象である。 そのメカニズムは次のように説明できる。
1)労働人口の急減
高齢化が速い国ほど、労働人口(働く人)が急減する。人口に占める若者の比率が低下するので、経済成長率が低下する。経済成長率は、労働人口と生産性のかけ算で決まるから、高齢化は経済成長の土台を崩すことになる。中国は、2020年の労働人口が8億8000万人であった。それが2035年には、6億5000万人まで減ると推計されている。日本より速いペースの縮小である。
2) 貯蓄率の急低下(高齢者は貯蓄しない)
高齢者は、貯蓄を取り崩すので国全体の貯蓄率が下がる。貯蓄率が下がると、設備投資が減る、技術革新が遅れる、生産性が伸びない
という悪循環に陥る。中国は、すでに貯蓄率のピークアウトを迎えたので、 高齢化の加速で貯蓄率はさらに低下する。これが、自律的に中国経済を縮小へ追い込む。
3)社会保障費の急増(財政の圧迫)
高齢化が速いほど、財政では年金や医療、それに介護などの支出が急増する。これら項目は、「財政の固定費」であるので、 軍事・教育・インフラなどの成長投資を圧迫する。中国は、すでに固有の悪条件に陥っている。年金制度の未成熟、医療費の急増、介護保険が2028年末開始という遅すぎる事態だ。(つづく)
https://www.mag2.com/m/0001684526




