国内上場企業が、ため込んだ約130兆円の現預金は、ついに動き出すとの期待が株式市場で高まっている。金融庁の主導するコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の改訂が、企業の本格的な成長投資を促せば、日本株への海外マネー流入が加速する可能性があると注目を集めている。
『ブルームバーグ』(2月25日付)は、「上場企業の現金130兆円は動くか、統治指針改訂が占う海外マネー流入」と題する記事を掲載した。
金融庁は今年、統治指針を5年ぶりに改訂する。26日に開く有識者会議で原案を示して議論し、今後はパブリックコメント(意見募集)などを経て今夏めどに最終決定する見通し。指針に法的な強制力はないが、上場企業は原則を順守しない場合は説明が求められる。指針は機関投資家も重視しており、企業への影響力は大きい。
(1)「今回の改訂で注目を集めるのが、経営資源の配分に関する内容の追加だ。金融庁は、企業の取締役会に現預金などを有効活用できているかの検証を求める方針。研究開発などの成長投資や従業員といった人的資本への投資など、資金の使い道に関する情報開示も念頭に置く」
金融庁は、企業の取締役会に現預金などを有効活用をしているか検証を求める方針だ。賃上げや設備投資をしない「守銭奴」企業へ、「活」を入れるのであろう。
(2)「近年の統治改革で、自社株買いなどが拡大してきたにもかかわらず、日本企業の現預金は過去最高水準にある。株式市場では過剰なため込みが、投資家が重視する株主資本利益率(ROE)を押し下げる一因だとする見方が強い。指針改訂を機に企業が成長投資を積極化し、投資先がない場合は適度に株主還元すれば、欧米企業に劣後してきた資本効率や成長性の向上につながり得る」
人材を含めた成長投資を十分しない企業は、ROEが上がらず株価も低迷する。これでは、良いことが何もないのだ。過去の惰性で、現預金を抱えて喜んでいる企業は、脱落する時代になった。
(3)「モルガン・スタンレーMUFG証券の中沢翔株式ストラテジストは、指針改訂で成長投資の拡大や株主還元の継続性向上などによるROE改善が見込みやすく、「海外投資家からの資金流入につながる」と指摘する。TOPIX500構成企業(金融除く)が今後数年で現預金の半分を事業投資と還元に充てた場合、ROEは前年度末の9.3%から12.1%に切り上がると推計。これはSTOXX欧州600指数の直近値(12.5%)に迫る水準となる」
各社が、賃上げ・研究開発費・配当という付加価値配分の「自社モデル」を作れば、従業員も株主も納得するであろう。これが、社員に安心観を与え定着率も高くなるはずだ。
(4)「東京証券取引所もこの流れを後押しする。先週公表した資料では、統治指針の改訂と連動して企業の経営資源の有効活用を促す考えを示した。具体的には、投資家が企業に期待する点などを今夏以降に公表することを検討する。ブルームバーグの集計によると、東証株価指数(TOPIX)構成銘柄のうち継続比較できる1215社(金融など除く)の現預金は2025年末で約130兆円と、10年で8割増えた。特に手元資金が豊富な「キャッシュリッチ企業」はサービスや情報・通信、電機といった業種で多い」
キャッシュリッチ企業では、社員への報酬(賃金)を渋っているケースが多い。今時、現預金を誇る環境になく、10年先20年先を展望した経営を行うのであれば、キャッシュリッチなど起こるはずがないであろう。
(5)「企業の現預金活用は、高市早苗首相が以前から主張してきたテーマでもある。過去には著書で「現預金課税」のアイデアを示した。昨年11月には、企業が過度に資金をため込まず、賃上げを含む人への投資に活用するよう求めた。モルガンMUFGの中沢氏は、高市政権の成長戦略が統治改革と呼応し、「単なる資本効率の向上にとどまらず、日本企業の持続的な収益性拡大へつながる転機をもたらす可能性」があると指摘する」
高市氏は、実に細かいところ前で踏み込んでいる。この点は、歴代の首相にはない点であろう。日本企業が今後、持続的な収益性拡大へつながる可能性を秘めていると指摘される理由だ。
(6)「企業は、インフレ下で現金の価値が減っていく中、有効な投資先を見つけるべきだとの投資家の声は多い。シュローダー・インベストメント・マネジメントの豊田一弘日本株式運用総責任者は、「ここから重要になるのは成長投資の目利きだ。どこに資金を振り向けるかが3年後の企業価値を決める大きなファクターになる」とみている」
経営者は、これから将来を見通す「眼力」が問われる時代になる。それは、ROEの高さが一つの指標になろう。





