米中双方は7月6日、それぞれ相手国に対して関税引き上げに踏み切ると予告している。GDP世界1位と2位の両国が、ハイテク技術をめぐって紛糾し、互いに譲らず「実力行使」すれば、世界経済への影響は不可避である。ことの発端は、米国が自国技術を中国によって窃取されているとして、関税引き上げのペナルティを科すもの。中国が、これに対し反発しており、米国へ報復する形になっている。
中国の技術窃取については、日本やEU(欧州連合)も米国同様に被害を訴えている。日米欧が、揃って中国をWTOへ提訴する形だ。中国は、こうして極めて不利な事態へ追込まれる。この局面を打開すべく、中国の日本接近外交が展開されている。だが、日米欧の世界3極は、知的財産権侵害という重大事実の発生がある以上、問題の白黒を付けざるを得ない立場だ。
中国は、「中国製造2025」というハイテク産業育成計画を立てた。もともと中国には科学技術基盤がないので、先進国の技術を当てにしていることは明瞭である。問題は、中国が特許料という対価を払っての導入でないことだ。①中国へ進出する外資企業に対して強引に技術を開示させる。②M&Aによって強引に技術を移転させる。③米国へ留学させて中国へ技術を持ち帰らせる。④産業スパイ活動で技術を窃取する。こういう違法活動で、米国の「頭脳」を盗み出そうとしていることに米国政府が抗議しているのだ。
中国が、ここまで強引に技術窃取を進めている背景は何か。
それは、習近平国家主席が宣言したように2050年を目途に、米国と軍事覇権を争える実力を蓄えることにある。現在は、「中国製造2025」の段階だが、これは第1段階に過ぎない。その後に、第2と第3の段階がある。完成の暁(2050年)には、世界の軍事覇権を確立するとしている。中国海軍が米海軍を圧倒する構想だ。
21世紀の現在、軍事力で世界秩序を塗り替えようという発想は、時代遅れであると言わざるを得まい。それに、中国の思想信条は自由や民主主議を否定する全体主義である。国家権力確立のためには、個人の人権を弾圧して当然、という国家が中国である。こういう極端な信条に裏付けられた中国が、世界覇権を握ることが万一起こった場合、日常生活は激変するはずだ。常時、国家の監視下に置かれる生活を強いられる。それを歓迎する民主国があるとは思えない。中国の世界覇権確立には、最終的に軍事力を用いて相手国を屈服させるしか方法はない。そこには、「血の臭い」がついて回るだろう。
米国が現在、知的財産権を守るべく行動開始した裏には、世界覇権を中国に渡さないというシグナルを送ったことだ。それには、中国をハイテク計画の第1段階で叩くこと。こういう戦略を明確にしている。
中国の軍拡への取り組みはどうか。
『レコードチャイナ』(7月2日付)は、「中国の空母は事実上7隻へ、米国の支配的地位脅かす可能性も」と題する記事を掲載した。
「米華字メディア『多維新聞』(7月1日付)によると、中国は空母艦隊の拡充を図り、2025年までに複数隻の空母と大型強襲揚陸艦を建造しようとしている。米外交専門誌『ザ・ディプロマット(電子版)』によると、中国はステルス性の高い055型ミサイル駆逐艦の配備を進めるとともに、空母の建造も急ピッチで進めている。中国人民解放軍は2025年までに空母4隻を建造する計画だが、事実上7隻となる可能性が高いという」
この報道通りに実現すると、中国は2025年までに事実上、空母7隻体制になる。これは、中国の推進する「一帯一路」計画を、軍事力を背景にして遂行しようという狙いと見られる。戦前の日本が、「八紘一宇」(はっこういちう)と称して、アジアや中国大陸を侵略したが、その「中国版」である。空母7隻体制によって、アジアから米軍を撤退させ、まずは、アジアの軍事覇権を実現する。これが、中国の真の狙いであろう。これと、「中国製造2025」は表裏一体の計画である。その後に、米国との最終対決を構想しているのだろう。
中国は、こういう青写真を描いている。ただ、中国経済が順調に発展するという前提付きの話だ。米中貿易摩擦は、中国経済の土台を掘りくずすリスクを抱えている。予定通りに進む保証はどこにもない。
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