7月25日の人民元相場は一時的に1ドル=6.8元を割り込み6.8049元を記録した。中国当局は、市場の反応と米国政府の出方を窺っているに違いない。神経戦の様相を呈してきた。
中国国務院(政府)は7月23日の常務会議で、金融政策の微調整を決めたと報じている。「穏健で中立な金融政策」としてきた表現から「中立」を削除したからだ。人民銀行は、大手銀行向けとなる資金供給で、過去最大の5020億元(約8兆20000億円)を供給。人民銀はこの資金を利用して「AA+」以下の格付け社債を購入するように市中銀行を指導すると言われている。
人民銀が、市中銀行に対して「AA+」以下の格付け社債の購入資金にするよう注文を付けた理由が興味深い。この「AA+」以下の格付け社債となると、事実上、全社債の購入を意味する。「AA+」は格付けランクが、トップから2番目だ。これ以下のランクは、トップ格付けを除く全格付けという意味だろう。むろん、下限はあるはずだ。
人民銀行が、社債購入目的に絞って融資を行なう理由は、すでに「信用収縮」が起こっていることを裏付けている。銀行に対して新規融資を拡大させたいが、銀行が慎重になっているので貸出を渋っているに違いない。これが、信用創造機能を低下させており、マネーサプライ(M2)の伸び率を8%(6月)に鈍化させた主因である。とすれば、社債購入目的の融資に限定して、融資効果を高める戦術に変わったのであろう。まさに苦肉の策だ。
社債購入資金となれば、当該社債の利回りは低下するので、企業は低利での借換え債券の発行が可能になり、資金繰りが助かる。だが、こういう金融情勢において、新規の設備投資には消極的となろう。その意味では、GDPへの寄与は望めまい。資金繰りを助けるという意味で、その日暮らしに留まる。
『ブルームバーグ』(7月24日付)は、「人民元安と住宅価格の上昇、中国経済成長の主要ドライバーに」と題する記事を掲載した。
「1年ぶりの安値を付けた人民元相場は、中国人民銀行(中央銀行)による緩和措置を受けて上昇する住宅価格と相まって中国経済の成長を押し上げそうだ。人民元相場の下落は中国住宅価格の上昇と一致する傾向がある。人民銀の緩和策が潤沢な流動性の確保を目指すとともに、銀行間貸出金利を低く誘導していることが恐らくこの背景にある。不動産バブル回避を目的に厳格な住宅規制が導入されて以降、中国の不動産業界は厳しい環境に置かれてきた。ただ2級都市、3級都市がけん引する緩やかな住宅価格の上昇は、米国との貿易摩擦の渦中で地方の需要喚起を目指す当局には歓迎されるかもしれない。これが人民元安による輸出の押し上げと重なり、株価にとって好ましいマクロ環境になるはずだ」
過去の例では、確かに人民元安と住宅価格上昇は同時に起こっている。だが、現在の置かれている金融状況では、住宅価格が上昇するほどの顕著な金融緩和不可能であろう。人民元が、恒常的に1ドル=6.8元を割り込めば、米国から厳しいクレームが来るはずだ。それを無視して元安相場にすれば、人民元投機に火を付けるリスクを抱える。それは、中国経済を「火だるま」に追込む最大の危機要因だ。
米中貿易戦争の中で、消費者が住宅投機にうつつをぬかしているような楽観論が現れるだろうか。すでに、バブル・マネーの終焉を予告する「ネット金融」破綻が起こっている。庶民の抗議活動を横目に、住宅投機に夢中になれる雰囲気は消えた。私は、人民元安で住宅価格が上昇するという、従来通りのパターンが再現しないと見る。


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