中国は、米国の関税引き上げに対して意図的な人民元安で対抗する、いわゆる通貨戦争の決意を固めたのでないか。一時は、そんな憶測も飛んだが、その意図はなさそうだ、という見方が強くなっている。中国が、腹いせで1ドル=6.8元を割り込む相場へ持ち込むと、あとは収拾のつかない人民元暴落につながり兼ねない。そういう判断になったとすれば、為替相場は小康状態を維持できるのかも知れない。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月26日付)は、「中国の元安誘導、狙いは対米反撃より景気てこ入れ」と題する記事を掲載した。
中国経済は、正攻法の債務削減策として「影の銀行」へ圧力をかけた結果、インフラ投資にブレーキが掛かるという事態を招いている。中国の経済構造は幹の太い金融が支えるのでなく、迷路のような非正規金融ルートに依存する、先進国に見られない構造になっている。こうした事実を承認すれば、米国のような「ハイウエイ」経済に対抗して、中国が人民元相場を意図的に下落させることは、余りにも無謀という結論になるだろう。経済政策面で言えば、米国の「ミサイル」に対して、中国は「竹槍」というほどの違いを感じる。
(1)「中国は、貿易を巡る米国との対立が激化する中で経済成長を支えるため、人民元の下落を容認している。それは失速が鮮明になっている景気のてこ入れが主な狙いで、トランプ政権に反撃しようとしているわけではない。政府関係者やエコノミストは、中国指導部がトランプ政権に反撃するために積極的な元安誘導を行うことはないと指摘する。『中国は貿易戦争を通貨戦争に発展させる意図は全くない』。ある政策担当者はこう語る」
中国内部では、米国との関税戦争へ突入することに反対の人々が多く存在した。不動産バブルの処理もままならない段階で、新たな紛争要因をつくるリスクを指摘したものだ。最近、習近平氏への批判が強まっている背景には、米中貿易戦争を回避できなかった「初期対応」のまずさが指摘されている。「徹底抗戦」などと言葉は踊るが、実態経済は相当に傷んでいることは間違いない。
最近、注目すべき動きは「農村に帰ろう」という「Uターン」運動が始まっていることだ。都市化こそ中国の近代化という大目標を掲げ、農民を農地から引き離す政策が大々的に行なわれてきた。それが突然、「Uターン」運動である。都市部での騒乱を恐れているのか。農村空洞化が、中国経済疲弊をもたらすことに気づいたのか。理由は、この二つが重なり合っているのだろう。
(2)「急ピッチの元安は、中国の政策担当者が経済に関して大きな懸念を抱えていることを浮き彫りにしている。内需の不振や企業のデフォルト(債務不履行)増加、インフラ・設備投資の落ち込みなど、足元では景気減速の兆候が鮮明だ。そこに通商紛争を起因とする想定外の輸出の落ち込みが重なり、中国当局は債務抑制から景気支援へと政策の主眼をシフトさせたようだ。中国人民銀行(中央銀行)は金融システムへの資金供給を増やし、銀行の融資拡大を後押ししている。地方当局も、中央政府の緊縮措置で棚上げとなっていた投資を再開している。政府関係者やエコノミストによると、元安はこうした一段と緩和的な政策の代償にすぎないという」
景気の落ち込みは深刻である。GDP計算ではデフレーターに手を付ければ、成長率を加減できる。だが、純輸出(輸出-輸入)のGDP寄与率は、今年上半期はマイナス0.7%ポイントに落込んでいる。インフラ投資も影の銀行を干し上げたら、途端に減少するという制御不能状態に陥っている。こういう混乱状態では、デレバレッジ(債務削減)は棚上げである。経済改革は不可能だ。これが、米中貿易戦


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