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米国の恐ろしさを見せつけたのが、「新国防権限法」である。8月1日、米上院で成立し、トランプ大統領に署名を待つばかりとなった。この法律は、毎年の米国防予算を決めるという法主旨だが、それだけにとどまらない。米国の安保戦略が全て含まれている。非公開部分があるという法律であり、米国の対中国戦略は大きく転換した。

 

もはや、オバマ政権時代のような「中国融和姿勢」をかなぐり捨て、力には力で対抗する基本方針が盛られている。米朝首脳会談を機に、トランプ大統領は「在韓米軍撤退」を臭わせる発言をしたが、今回の新国防権限法によってそうした撤退論を封じられた。

 

『朝鮮日報』(8月3日付)は、「米議会、新国防権限法で在韓米軍削減を制限」と題する記事を掲載した。

 

(1)「米国政府が議会の承認なく在韓米軍の兵力を2万2000人以下に減らせなくする『2019会計年度国防権限法』(NDAA)が8月1日(現地時間)、米国連邦議会上院本会議で可決した。法は、在韓米軍の削減が米国と同盟国の安全保障を深刻に阻害せず、韓国・日本との合意を経たと国防長官が議会に確認した場合を除き、現在2万8500人規模の在韓米軍の兵力を2万2000人未満まで削減してはならないと制限している。また、米国政府が今後北朝鮮と結ぶ核合意の履行状況について、検証評価を議会に報告するよう義務付ける内容も盛り込まれた」

 

メディアを賑わす、在韓米軍の削減については厳しい枠が付けられ、安易に削減論を話題にできないように国防権限法がお目付役になった。現在2万8500人規模の在韓米軍の兵力を2万2000人未満まで削減してはならないと制限した。しかも、日韓の合意を得ることを前提にしている。中朝の動きに警戒の目を光らしているのだ。

 

(2)「また同法では、『在韓米軍に対する議会の認識』という条項を別に設け『在韓米軍の相当規模の削減は、北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)と関連するものなので交渉可能な項目ではない』として『CVIDが米国の外交政策の核心目標』と定めた。さらに同法は『在韓米軍の大規模な削減は、中国・ロシア・北朝鮮など専制主義諸国が長年追求してきた目標』と指摘した」

 

北朝鮮の非核化では、CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)を核心目標に据えている。トランプ政権が、ここから逸脱した米朝合意は不可能になった。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月2日付)は、「米国防権限法、中国への厳しい姿勢を反映」と題する記事を掲載した。

 

(3)「米議会が可決を目指している年次の国防権限法(NDAA)について、一部議員は、これまでになく厳しい対中姿勢を反映していると指摘している。米議会では、中国に対抗しようとする超党派的な動きが勢いを増している。同法案には、中国政府の一連の政策に対抗する措置が含まれている。中国による南シナ海での軍事活動拡大、米国のハイテク技術を獲得しようとする行為、中国共産党の宣伝活動などに狙いを定めたものだ。今年の国防権限法に反映されているのは、議会や安全保障関係者の間に広がる超党派的なコンセンサスだ。すなわち、世界は大国のライバル関係を巡る新時代に入り、米国は中国やロシアとの競争に一段と力を入れる必要があるとの見方だ」

 

米議会では、超党派で中国へ対抗する姿勢を強めており。これが「国防権限法」改正に色濃く反映されている。①南シナ海での軍事活動拡大、②米国のハイテク技術窃取行為、③中国共産党の宣伝活動などに狙いを定めた。①は南シナ海における中国軍活動の抑制、②は米中貿易戦争の主要テーマ。③は孔子学院への監視だ。米国が、長年見て見ぬ振りをした結果、中国を増長させたという反省が基本にある。オバマ政権の失だ。米国は、明らかに中国を「仮想敵国」にしている。

 

(4)「米国は非機密扱いの2018年国家防衛戦略(NDS)で、『米国の繁栄と安全保障を巡る重要課題は、長期的かつ戦略的な競争の再出現』であり、『中国は自国に有利なようにインド・太平洋地域の秩序を塗り替えるため、軍の近代化や情報作戦、略奪的な経済政策を通して近隣諸国を抑圧している』と指摘している。国防権限法で特に目を引くのは、中国の経済活動に関する条項だ。法案は対中取引について、対米外国投資委員会(CFIUS)による安全保障上の審査を厳格化すると同時に、米技術の輸出規制の見直しを目指している」

 

米国は、中国を封じ込める確固たる意思を内外に表明した。米中貿易戦争は、単なる経済問題を超えている。米中覇権争いへの米国の見せた最終的な回答である。私は常々、この視点から米中問題を見てきたつもりだ。