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米中貿易交渉は、8月22~23にかけて行なわれたが、なんの成果もなかった。中国は従来通りの主張を貫き、米国の要求する不公正貿易慣行の是正については「ゼロ回答」である。

 

中国は最初から交渉をまとめる意思はなかった。国内の株式市場と為替市場の不安心理を抑えることに利用したに過ぎない。習氏に問いたいのは、こういう時間稼ぎすることによって、事態解決の糸口が得られるのか、という点だ。遅らせたところで、さらに窮地に立たせられるだけである。

 

『大紀元』(8月21日付)は、「米中通商交渉再開 中国側の時間稼ぎー専門家」と題する記事を掲載していた。

 

(1)「米カリフォルニア大学ロサンゼルス校UCLA)の経済学者・兪偉雄氏は、今回(注:先)の協議と11月末の米中首脳会談は、『11月上旬の米国中間選挙を狙った中国側の時間稼ぎの計略だ』との見方を示した。中間選挙で米民主党が下院と上院のそれぞれ議院で過半数を占めれば、対中貿易政策を含むトランプ政権の各政策実施にストップをかけることができる。『中国当局がこれを狙っている』としている。兪氏は、「中国当局の狙いは失敗に終わるだろう。現在、共和党も民主党も、中国による米企業の知的財産権侵害に関して共通認識を持っている。中間選挙の結果と関係なく、トランプ政権は、貿易問題で引き続き中国に対して強硬な措置を実施していく」と判断している」

 

中国は、米国における対中感情がいかに悪化しているかについて、正確な認識がないようだ。民主党が中間選挙で勝利を得れば、トランプ政権の対中強硬路線を変更させられると誤解している。オバマ政権の対中政策が現在、批判されているのは融和的過ぎたという点だ。米国内の対中警戒論を軽視してはなるまい。

 

(2)「中国経済専門家の秦鵬氏は、米中貿易摩擦の本質は中国共産党政権が抱える構造的な問題であると分析する。『中国側が構造的問題の存在を認めれば、抜本的改革を迫られる。この改革は、共産党政権の根底を覆す可能性が高いため、中国当局はどうしても避けたい』。中国当局が今できることは時間稼ぎしかないという」

 

米国政府が、中国へ要求している点は、不公正貿易慣行の是正である。WTO(世界貿易機関)の基本原則を守れという点に尽きる。そうなれば、対米貿易収支が一方的な大赤字に

なることはない。中国が、WTO違反の不正ルールを止めれば、米中貿易収支は改善されるという主張である。ただ、米国の主張のうちでWTO原則の遵守は正しいが、二国間で貿易収支を均衡させるのは不可能である。あくまでも多国間での貿易収支調整が基本である。

 

中国が、WTOルールを守っていないことは事実だ。中国は、この点の是正を求められると、極めて苦しい立場に追い込まれる。「中国製造2025」は、他国の技術を窃取して、「産業強国」へのし上がろうとする「虫のいい」計画である。これは、習氏が「生涯国家主席」を目指す上で、重要なステップになっている。

 

米国は、この習氏の「出世ハシゴ」を外すように要求している。習氏は、自らの思惑からも簡単に応じられまい。中国が、技術窃取問題を認めれば、根本的改革を迫られる。「産業強国」路線の根底が覆される事態なになるのだ。中国当局はどうしても避けたいにちがいない。だが、技術窃取は許されない。

 

中国には、米中貿易戦争の解決策がない。時間稼ぎをするほかないという、哀れな状態へ追い込まれた。習氏の世界覇権狙いという「大言壮語」が招いた大失態だ。

 

『産経新聞』(8月23日付)は、「中国経済が長期減速に陥る事態も」と題する東京財団政策研究所の柯隆(か・りゅう)主席研究員の見解を掲載した。柯氏は在日中国人エコノミストである。

 

(3)「米側は、2000億ドル相当にも及ぶ第3弾の大規模制裁を準備している。これが発動されれば、中国経済は相当なダメージを受ける。短期的には、輸出にブレーキがかかって業績が低迷した企業がリストラに走り、雇用環境の悪化に伴う社会不安の増大という中国側が最も恐れる状況を招く恐れがある。長期的には、多国籍企業を中心に生産能力の一部を中国外に移す可能性もあり、中国経済が長期間減速する事態に陥りかねない」

 

米国が目下、準備中の第3弾である2000億ドル関税を発動すれば、中国の対米輸出に大きな被害が及ぶ。むろん、米国も無傷ではあり得ない。中国に依存する生活必需品が関税分だけ値上がりする。だが、米中どちらの被害が大きいか。それは、中国である。輸出企業の倒産による雇用減が起こるからだ。雇用減=失業者増加は、家計を直撃する。2017年までの中国家計債務の対可処分所得比率は107.2%に達した。この状況では、失業すれば住宅ローン返済が不可能になる。その結果、金融危機リスクが高まるのだ。

 

(4)「最悪のシナリオは、中国が国内改革をせずに報復カードを切り続け、とことんまで貿易戦争を続けることだ。中国が切れるカードは米側より少なく、報復措置に限界があるのは目に見えている。改革開放から40年間で、これほど強い外圧を中国が経済問題で受けたのは初めてのことだ。外圧をテコに国内の抵抗が強い国有企業改革を進めるなど、中国経済の『危機』を『好機』に転じさせることもできる。今、習近平国家主席の知恵が試されている」

 

現在は、改革開放40年の中で最大の危機である。市場機構を意図的に抑圧し、国有企業主体の経済体制へ逆戻りさせていることも響いている。米中貿易戦争は、中国の不合理な面を徹底的に追い詰めるだろう。中国が、時間稼ぎでお茶を濁すような生温い対応は不可能に思われる。