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中国では、人民解放軍の再編成を行なっている。これまでの主力部隊の陸軍を縮小し、海空両軍へシフトさせている。こうして、陸軍では若き兵士が解雇の憂き目に遭っている。だが、満足な年金が払われていないのだ。この退役兵士が、迷彩服に身を包んで突然、北京の国防省前をデモ行進する姿が珍しくなくなった。こういう苦しい財政状態にもかかわらず、海外に基地を持つなどチグハグな行動を取っている。

 

率直に言って、中国は世界覇権を狙えるポジションにはない。不動産バブルの後遺症が、これから本格化する。経済的に最も厳しい坂道に差し掛かるときに、膨大な軍事費を賄いつつ福祉制度の拡充に回す予算は組めないだろう。「一帯一路」で貴重な資金を沿線国にばらまいてもリターンは得られまい。無駄なところに資金を使わずに、国民福祉に当てる方が共産主義の本領に合致しているはずだ。

 

『ブルームバーグ』(8月30日付)は、「米国とは異なる『超大国』中国、次の覇権を握れるのか」と題する記事を掲載した。

 

(2)「米国が超大国への道を歩み始めた時もまた、それまで列強が行ってきた帝国・植民地主義を繰り返さないとの決意があった。その米国は今、11の空母打撃群と世界中に展開する軍事基地を通じ自国の権益を守っている。中国も似たような道を行こうとしているのかもしれない。中国人民解放軍は昨年、アフリカのジブチに初の海外基地を置いた。外交予算も大きく増加。米国に代わる世界のテクノロジー大国となることを目指す、『中国製造2025』や人工知能(AI)の世界を30年までに牛耳ろうとする計画もある」

 

米国が、11の空母打撃群と世界中に展開する軍事基地を通じ、自国の権益を守っていると指摘している。これは、同盟国の利益を守るという意味だ。米国が多数の同盟国を持つのは、自由と民主主義の防衛という意味がある。韓国に米軍が駐留している。韓国に米国企業が大きな工場を持っている訳でない。膨大な軍事費を使っても守るべき価値(自由と民主主義)が、そこにあるからだ。それ故、米軍が駐留している。

 

中国は、海外へ軍隊を送り出したいと狙っている。「一帯一路」プロジェクトは、その一環だ。自らの権益拡大が目的である。その点、あくまでも中国の国益を守ることに力点が置かれている。弱小国に過剰な融資をして債務返済が不可能になれば、契約通りの担保権を行使する。港湾施設の長期借用に持ち込むのだ。相手国から利益をかすめ取っている。

 

(3)「中国では人口高齢化がすでに始まっているが、平均的な国民はまだ平均的なメキシコ人よりも貧しい。共産党が自らの正統性を誇示するため進めてきた投資主導の成長に何十年も融資をしてきた国内大手銀行の健全性に疑問を抱く投資家もいる。オーストラリア国防省で情報収集を担当していたポール・ディブ氏は、中国政府は国防よりむしろ内政に資金を投じると指摘。『銃か老人介護かのどちらかを選択しなければならないだろう』と語る」

 

中国が、真の共産主義国家であれば、「一帯一路」で資金をばらまいて権益拡大を図るより、地方の貧しい農村の救済や、老人対策に資金を充当すべきである。共産主義国家が、なぜ海外に基地を持つ必要があるのか。領土拡張を意図する帝国主義的な発想によるものだ。その点で、共産主義を隠れ蓑にし国民の人権を蹂躙している。AIを使って四六時中監視する。人民の利益を踏みにじる共産主義など、存在する意義がない。専制主義そのものだ。清や明の再来である。

 

(4)「ベテランの中国専門家の1人である米ジョージ・ワシントン大学のデービッド・シャンボー教授によれば、超大国にとって必要なのは軍事力のみならず、テクノロジーと強い経済力、そして影響力を維持するためのソフトパワーで、『中国はそれを理解している』。中国が世界中に展開する中国語と中国の文化を教える『孔子学院』は500を超えた。だが同教授は、中国に真の同盟国はほとんどなく、依然としてせいぜい部分的な超大国にとどまっているとも指摘する」

 

「孔子学院」は、中国文化や中国語の普及を図る学術機関とされる。実際は、スパイ活動を行なうほか、「シャープパワー」という新たな威力を用い、相手国の世論操作や有力者に接近して、中国に都合のいい情報を流させる地下工作に使っている。米国では、FBIがこの「孔子学院」を監視するほど危機感を強めている。中国の行動は、世界の普遍的価値観から、かけ離れた行動を取っている。こんな共産主義国が、同調者を得るのは困難であろう。

 

(5)「南シナ海に軍事拠点を築く動きに加え、現代版シルクロードとされる広域経済圏構想『一帯一路』を通じた多額の海外向けインフラ融資が小国を従わせるための債務のわなでなはいかとの懸念が、こうししたソフトパワー強化の取り組みを損ねている。中国の文化は豊かで深みがあるものの、ハリウッドを擁し個人の自由を理想に掲げる米国の影響力には遠く及ばない。シャンボー教授は、『中国軍はまだ地域的』で外交力も同様だと分析。大きな国際合意の主導権を握ったことはなく、『非常に自己本位的な大国』で『世界的秩序を形成することに関心はない』と論じる。

 

中国のやっていることは、全て「自己本位」である。どれだけ利益が得られるかに関心をもつだけだ。このような国が、世界覇権を目指すとは噴飯物。ただ、軍事費だけ増やす「ハードパワー」国家だ。肝心の世界の文化に影響を与えるソフト力が欠如している。このことにすら気付いていない「お山の大将」である。

 

過去の世界覇権国の歴史は、次のようなものだった。

 

18~19世紀は英国。挑戦国はフランス(18世紀)とドイツ(19世紀)であった。20世紀の覇権国は米国。挑戦国はソ連である。中国は、ソ連崩壊の後を受け、21世紀の挑戦国として米国と対峙したがっている。だが、その資格があるだろうか。先ず、資格審査が必要な段階だ。