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韓国の文在寅政権は、韓国の国民のために政治をしているのか。そういう深刻な疑問を抱かせる政治をやっている。文政権の支持基盤は、労働組合と市民団体である。これを反映して、大統領選の得票率は41%であった。過半数には達しなかった。

 

文氏は、大統領就任に当たり「国民全体の大統領になる」と宣言した。だが、閣僚は市民団体出身でかつ大学教授という偏りを見せた。実務経験のある人間が閣僚に登用されることはなかった。最初から、空理空論の世界に生きてきた人物を中心にした組閣である。さらに、大統領府の秘書官は、「86世代」という学生運動家上がりが3割も占めている。

 

この「86世代」とは、1960年代生まれで80年代に学生生活を送り、「光州事件」(1980年)の闘争に加わった「猛者」が集まっている。彼らの思想信条は、「反米・親中朝」である。外交面でも、北朝鮮へのめり込みが強く、南北の民族統一が明日にでもできるという幻想を振りまいている。

 

北朝鮮の核放棄は、朝鮮半島のみならず、アジアの安全保障に関わる重大な問題である。だが、その前段である南北融和で、韓国が負担する財政支出が約11兆円以上と膨大な金額になっている。その予算的な全貌を明らかにせず、国会で南北合意の「板門店宣言」を批准させようとしている。これは、「86世代」の追い求める親中朝路線の一環だ。このままだと、韓国財政は将来、破綻するに違いない。

 

文政権が、典型的な階級政党になっているのは、韓国が宗族社会という部族意識が極めて強いことを表わしている。これは、地域別の対立の激しさにも表れている。全て、儒教社会の後遺症だが、社会意識そのものが近代化されていないことの反映である。強烈な「反日意識」は、部族意識の裏返しである。日本という部族が、朝鮮部族を占領し支配したことへの恨みが70年を経ても消えないと言うべきだ。

 

文政権が、北朝鮮に対してなぜ莫大な財政負担覚悟で臨んでいるのか。それは、朝鮮部族という一体感があるからだ。最低賃金大幅引き上げを強行するのは、政権が労組や市民団体と同じ家族意識で結ばれていることにほかならない。このように同族意識は、流動的で固定化されていない。ただ、感情的に結び合えれば、それが「同族意識」を生み出すに違いない。

 

『朝鮮日報』(9月13日付)は、「板門店宣言批准同意、費用は『10兆円』と正直に言うべき」と題する社説を掲載した。

 

(1)「韓国政府が9月11日、今年4月27日に発表され『板門店宣言』の批准同意案を国会に提出した際、その履行費用として今年から来年にかけて税金6438億ウォン(約636億円)が必要だと推算した。2年間で国民の税金この程度というのは極めて少額だ」

 

次のパラグラフ以下に、北朝鮮支援の財政負担額がざっと11兆円を超えるものと試算されている。政府はその事実を隠して、全体の100分の1程度の金額を提示して国会批准を求めようとしている。こういう欺瞞に満ちたやり方をするのは、大統領府が「86世代」で占められている結果だ。彼らは「親中朝派」であるから年来の夢実現に向けて、強引に国会で批准させようと狙っているのだろう。

 

(2)「金融委員会は、板門店宣言に含まれている北朝鮮インフラ投資費用を次のように試算している。鉄道85兆ウォン(約83億8000万円)、道路41兆ウォン(約4兆430億円)など、計153兆ウォン(約15兆830億円)となる。金融投資企業の未来アセットも、112兆ウォン(約11兆440億円)と予想している。このように100兆ウォン(約10兆円)以上かかると見られている対北朝鮮支援について、その100分の1にもならない金額を提示して国会に同意を求めるのは、事実を隠すものだ。少ない額を提示してひとまず国会の批准を受けた後、本当の額を国民の税金から出そうとしているのではないのだろうか」

 

板門店宣言に含まれている北朝鮮インフラ投資費用は、金融委員会試算では153兆ウォン(約15兆830億円)と見込む。金融投資企業の未来アセットは、112兆ウォン(約11兆440億円)と試算する。いずれにしても11~15兆円である。韓国国民への社会保障費も不完全な中で、北朝鮮支援の名分が立つのか。軍事に巨額の費用をかけてきた軍事国家を支援するには、核放棄が絶対条件のはずだ。その保証がまだ得られない段階で、「板門店宣言」批准とは余りにも軽率である。