文在寅氏の構想する韓国の政治体制は、北朝鮮との連携を基本にした「南北統一型」にシフトさせようとしている。すでに教科書も書換えさせた。韓国の国是の「自由と民主」から自由を除いて、「民主」だけにした。こうすれば、北も「人民民主主義」を掲げているので、「民主」で南と北が結びつける。こういう、子どもだましのようなことに夢中である。
文氏の発想は、明らかに北朝鮮を主体に考えている。それに合わせて、韓国国内も同じ方向へ向けさせようとしているのだ。前記の教科書の書き換えはその第一歩である。次は、労組を持たない大企業に検察を向けさせて、強硬な労組組織を作らせようと画策している。
労組の存在は、企業の発展に不可欠である。労使協調という言葉の通り、日常の意思疎通で果たす役割は極めておきい。だが、韓国ではその労組の活動が過激すぎて、無法な賃上げを迫って企業を破綻させる例がいくつかある。労働攻勢によって企業を倒産させれば、労働者は職場を失う。それでも「主義主張」に殉じて賃上げ闘争に突っ走る原動力は何か。資本主義社会を否定して、北朝鮮式の社会を目指す運動の一環であろう。
韓国左派には、北朝鮮社会がモデルに見えるようだ。形式主義を重んじる韓国では、「人民民主主義」という言葉に限りない魅力を感じている。人民民主主義とは、労働者階級の指導の下に権力を掌握するという政治思想である。資本主義社会を否定するもの。韓国での意常軌を逸した「大企業批判」は、人民民主主義という考え方に基づけば当然、出てくるのであろう。大企業は、人民を搾取するという前提に立つからだ。人民民主主になれば、大企業は打倒の対象でしかない。強烈な賃金闘争を仕掛けて大企業を破綻に追い込む。労働組合にとって、それは勝利という感覚なのだろう。
『朝鮮日報』(9月28日付は、「サムスンとポスコが『無労組』にこだわった理由を考えよ」と題する社説を掲載した。
(1)「サムスン電子サービスの労組つぶし疑惑に関して、韓国検察はサムスン電子理事会(取締役会)議長を含む計32人を起訴すると発表した。検察は6カ月にわたってこの事件を捜査する間、実に9回の家宅捜索、16件の逮捕状請求を行った。捜査の規模や起訴の規模は全く類例がない。サムスンが数十年間守ってきた「無労組経営」に、検察が鉄槌を下したのだ。少し前には鉄鋼最大手ポスコにも、会社設立以来初めて、全国民主労働組合総連盟(民労総)の金属労組が傘下組合を組織した。親労働路線を取る現政権になって以降、民労総は、これまで進出していなかった大企業に次々と根を張っている」
全国民主労働組合総連盟(民労総)は、労働貴族の「総本部」という位置づけである。労働貴族とは、労組員の所得が上位10%に入るほどの高所得を得ているからだ。この労組員の高所得が象徴するように、労組を持つ企業では、戦々恐々としている。連続ストライキはいうまでもなく、山猫ストも発生するなど、徹底的に企業へ損害を与えても賃上げを実現させるのだ。労働生産性にはお構いない賃上げである。「人民民主主義」の立場からいえば、企業は敵という位置付である。
(2)「なぜサムスン電子やポスコのようなグローバル企業が「無労組」原則にこだわってきたのかも考えなければならない。民労総の強硬な闘争のせいで倒産した企業は一つや二つではない。民労総所属労組の占拠闘争で双竜自動車は廃虚と化し、韓進重工業は抜け殻になった。現代自動車は、年俸1億ウォン(約1000万円)に迫る貴族労組の専横のせいでグローバル競争に遅れを取っている。強硬な貴族労組は韓国経済の宿痾(しゅくあ)である、という事実を知らぬ者はいない」
民労総の強硬な闘争での倒産企業はいくつかある。双竜自動車、韓進重工業、そして、現在起こっている被害会社は現代自動車である。このような実例を見れば、サムスン電子やポスコ(鉄鋼)が、「無労組」原則にこだわって、労組を持たなかった理由が分る。その代わり、最高の賃金を支払い、社員へ厚遇で報いてきた。長期のストライキを打たれる経済的な損失を考えれば、「無労組」は褒められることでないにしても、それなりの理由があった。
(3)「サムスンやポスコは、労組はなかったが、従業員の待遇や福利厚生の面ではどの企業よりも優れている。両社はいずれも、求職者が入社したがる最高の職場だ。もしサムスン電子とポスコに民労総の強硬な労組が入り込み、闘争を繰り広げたら、今のようにナンバーワンの企業になれたかどうか、考えてみるべきだ。恒例行事のようにストライキを打ち、どうかすると経営を妨害するというのに、世界第1位の座を守って今のようなグローバル競争力を維持できただろうか。検察がサムスンに対し捜査に入った今年4月、民労総は「サムスン共和国を取り壊さなければならない」として「サムスンの全ての系列会社に労組が作られてこそ、真に世の中が変わっているという兆し」と主張した。実際、そうなりつつある」
サムスンもポスコも、来年以降は強力なストライキに悩まされるだろう。業績は落ち込み、韓国経済はさらに泥沼へはまり込む。韓国労組はそれが狙いだ。韓国経済を混乱に陥れて、「人民民主主義」の旗の下で北朝鮮と連携する。こういう政治戦略に違いない。文政権が、大筋でそれを容認していると見るべきだ。そうでなければ、最低賃金の大幅引上げを行なって、韓国経済を混乱させるはずがないだろう。
コメント
コメントする