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中国では、米国の怒りが本物であることを覚ったようである。単なる貿易赤字の問題でなく、米中の覇権問題が絡んでいるだけに、米国の怒りは簡単には解けないという見方だ。

 

中国は、大言壮語の国である。物事をオーバーに言って、喜ぶ妙な癖がある民族である。自分はいかに金持ちであるか。それを他人に見せびらかす習慣がある。その一環が、派手な結婚式と葬儀である。共に、人生の二大イベントだ。これを飾り立てて優越感に浸るものである。

 

こういう中国社会の風習に従えば、世界覇権論という法螺ばなしは愛嬌に聞えるが、米国はそうとは受け取らなかったのだ。技術窃取と軍備拡大を結びつけると、中国共産党指導部が良からぬ夢想を持ち始めたと見た。ならば、中国へ先制攻撃をかける。これが、米中関係悪化の真相であろう。

 

『中央日報』(9月30日付)は、「覇権対決へと激化する米中貿易戦争」と題する社説を掲載した。

 

(1)「日増しに激化する米中貿易戦争が長期戦の様相を見せている中、最悪の状況にまで備えようという姿までが表れている。中国側が米国内の不動産を売却している点がまず目につく。中国安邦保険が米国内のホテル16カ所をパッケージで売ろうとしているのが代表的な例だ。ニューヨーク・マンハッタンのビル市場には中国企業所有の売り物件が次々と出てきているという。中国が米国不動産投資を統制したという解釈もあるが、貿易戦争が激化して最悪の場合は米国内の中国資産が凍結される状況までも念頭に置いた措置という見方もある」

ニューヨーク・マンハッタンのビル市場には中国企業所有の売り物件が次々と出てきているという。貿易戦争が激化して最悪の場合は、米国内の中国資産が凍結される状況までも念頭に置いた措置と見られるという。これは、大袈裟な話でなくその懸念はあるように思える。近々に予定されている、中国による米国への数々の介入実態が明らかになれば、米国内の世論が反中国で沸騰する事態もありうる。中国は、広範囲に米国内に浸透して情報戦を展開していると伝えられているからだ。私のブログでは、それを克明に追っている。

 

(2)「米国の攻撃のポイントは、中国が米国の技術を盗み、政府の支援金を注ぎ込んで先端産業を育成しているという点に合わされている。中国の発展戦略「中国製造2025」を正面から狙っている。「中国製造2025」は人工知能など10の核心産業で世界最高の技術を確保し、2030年(注:正しくは2050年)に米国を追い抜くという野心に満ちた計画だ。先端産業の主導権争いは軍事覇権争いに直結する。先端技術が軍事力に連結されるからだ。従来の強大国の米国が新興国の中国の浮上を抑制するための戦争に入ったという声が出てくる背景だ。米国の中国叩きは与野党を問わない。中国が知識財産権侵害など不公正慣行で米国の利益を侵害したという共感が、トランプ大統領の強硬な態度を後押ししている」

 

中国が、米国を追い抜くという中国の宣伝は、まさに「シャープパワー」そのものだ。中国は偉くなる国だから、今のうちに中国の味方になれという宣撫工作に使っているのだろう。常識のある者ならば「笑い飛ばす」話だが、現金を積んで味方に引入れる。その際に、「中国覇権論」は有効な武器になっているはずだ。誰だって、自分の座を脅かすと広言している相手に、好感を持つはずがない。米中関係の現状は、こういうものだろう。

 
(3)「中国は貿易戦争に関する民間論争はトーンダウンさせている。「中国崛起」を叫んできた胡鞍鋼・精華大教授に対する中国知識人の激しい批判に見られるように、中国の態度、特に習近平主席の攻撃的な態度がトランプ大統領の反撃を招いたという自省論が出てきて習近平に責任が向かうのを防ぐための措置だ」

 

胡鞍鋼・精華大教授と言えば、民族主義者である。「中国世界覇権」は、20年程前から言い続けている学者だ。その根拠は素朴で、量的な概念で米国を上回るという論法だ。質という面を完全に忘れた、ただの「法螺学者」と言っても言い存在である。その胡鞍鋼氏が、中国で知識人層から批判されているという。習氏を非難できないから「代理」として非難されているのだ。中国ではよく使われる手法である。中国国内でも、現在の米中対立を深刻に受け止めている証拠だ。戦前、日米開戦論を批判した日本の知識人が、軍部や東条英機を批判する代わりに、大川周明を批判したようなものである。