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韓国経済に、ついに来るべきものが来たようだ。「不況」という二字が現実となるからだ。韓国の景気判断では、景気動向指数の「一致指数」(生産・出荷など)が、連続6ヶ月にわたり前月比マイナス状態を続ければ、「不況」の判定を下すルールになっている。

 

「一致指数」は、今年の8月で連続5ヶ月、前月比マイナスである。9月もマイナスが確定的である。よって、9月を以て連続6ヶ月の「一致指数」のマイナスで、遅くも11月には不況判断が下されよう。

 

文政権は、「雇用」を一枚看板に掲げてきた。文氏の執務室には重要データが直接、表示される装置が取り付けられている。大統領就任の際に明らかにしたものだ。この装置も活用された形跡はない。大幅な最賃引上策が是正もされずに放置されたからだ。

 

不況入りという事態になれば、韓国では、原因捜しが始る。原因は内需不振にある。すでに4~6月期のGDPの中にそれが浮かび上がっていた。

 

4~6月期のGDP成長率は、前期比0.6%増を記録したが、内需はマイナス0.7%。ただ、純輸出(輸出-輸入)が1.3%も増えた結果、トータルで0.6%の成長率を達成できた。これが舞台裏である。仮に、輸入が増えて純輸出が0.7%以下の数値であれば、4~6月期はマイナス成長に落込んでいた。この際どい状況を知れば、韓国経済の内需がマイナスであるということが、いかに重大であるかを証明しよう。

 

内需とは、文字通り「国内需要」である。項目を挙げると、設備投資・消費(個人+政府)、公共投資などである。これら項目は、文政権によってどんな扱いを受けているか。一言で言えば「冷遇」されている。設備投資は、大企業法人税率の引上げと半導体投資の一巡化がブレーキとなっている。個人消費は失業率増加が象徴するように、最低賃金の大幅引き上げによる解雇と採用手控えがもたらしたものである。

 

内需が、すでに4~6月期で前期比マイナスに落込んでいながら、文政権が何らの対応策も採らなかった点は大きなミスだ。とりわけ、最低賃金の16.4%という大幅引上げによって、解雇と新規採用の手控えをもたらした。この事実を軽視していた点は、厳しく責任を追及されるだろう。政府は、楽観論を流してきたので、責任逃れが許されない事態になっている。

 

冒頭に挙げた景気動向指数の中で、先行指数と一致指数の関係は、先行指数が一致指数の

ほぼ半年先を先行するという意味である。文政権は、「雇用政権」を看板にしている以上、先行指数の動きに全神経を注ぐべきであった。だが、それは口先のこと。最低賃金の大幅引き上げが、もたらしたこれまでの景気変調を全て無視していた。「年末になれば、最賃大幅引上げの効果が出る」という何ら手がかりのない空想話をして煙に巻いてきた。先行指数の回復がなく、下落し続けてことは、政府の無責任を証明している。

 

『韓国経済新聞』(10月3日付)は、「景気一致・先行指数が同時に下落、景気下降に警鐘」と題する記事を掲載した。

 

この記事は、やや専門的な内容であるため、私のコメントだけでも読んでいただければ、韓国経済が、生易しい状況でないことが理解していただけると思う。

 

(1)「韓国統計庁のオ・ウンソン産業動向課長は、景気の一致指数と先行指数が同時に下落したことについて『雇用指標と輸入指標、建設指標の3つが作用したため』と説明した。今年8月には40代以下の年齢帯で一斉に就業者が減少し、全体の雇用が前年同月比3000人増にとどまった。9月の就業者統計は12日に発表されるが、全体就業者数が減少する可能性まで出ている」

 

先行指数と一致指数が同時に下落するケースは、突発的な事態が起こった場合に見られる特異な現象である。今回のように同時に起こった理由として、①雇用指標、②輸入指標、③建設指標の下落が重なったとしている。

 

これら3指標は、いずれも内需関連である。内需が急激に落込んだことを意味している。先ず、①雇用指標の悪化が深刻な事態になっていることを示唆する。9月の就業者統計は12日に発表されるが、全体就業者数が減少する可能性まで出ているという。従来は、毎月新規就業者30万人以上いたが、7月はわずか5000人、8月が3000人と激減している。そして、9月はマイナスになったとすれば、「雇用生き残り戦争」の様相を呈するはずだ。最低賃金の大幅引上げが、韓国経済を滅ぼす事態になった。

 

②輸入指標の低下は、内需の冷却化の反映である。輸入需要が落込むほど、韓国経済の末端景気が悪化している証明だ。通常、国内景気が過熱化すると輸入が急増する。高度経済成長時代の日本は、しばしばこの状況に追い込まれ、景気引締め策が発動されたものだ。現在の韓国は、これと全くの逆の現象である。内需が冷え切った状態だ。潜在成長率が急低下している証拠と見られる。韓国経済は、文政権の登場でガタガタになった。