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韓国の産業構造において現在、輝いている業種はIT産業しかなくなった。そのITが半導体市況の頭打ちに見舞われようとしている。長期の「半導体サイクル」も下降局面へ向かうのだ。次の上昇サイクルでは、中国が本格的に汎用品のメモリー分野へ参入する見込みである。中国の進出は、あらゆる業種を過剰生産に持ち込んできた。こうして半導体市況が好況で潤った時期は、これから来ないかも知れない。それほど、この分野への中国参入は不気味である。中国政府は多額の補助金を企業に与え、一挙に市場シェを高める戦略に出るにちがいない。

 

この中国戦略は、WTO(世界貿易機関)原則に違反する。中国は、それについて馬耳東風の姿勢で臨むだろう。現在の米中貿易戦争は、米国がこういう中国のWTO違反を咎めて、特別関税引上げ策に出ている。以上の経緯から見て、次は半導体市況で韓国が被害を受ける立場だ。すでに、スマホでは中国におけるシェアが激減している。中国のスマホ・メーカーは、政府の補助金による低コスト生産で、サムスンの販売シェアを食っているからだ。

 

半導体市況やスマホが、中国の牙城に落ちることになれば、前記の商品市況は長期低迷となろう。それは、これら分野の設備投資が盛り上がらないという意味でもある。韓国にとっては、そのような局面になれば、死活的な問題となる。韓国経済の長期停滞が起こるからだ。

 

『朝鮮日報』(10月3日付)は、「自動車は低迷・企業投資は20年で最悪、韓国経済に漂う暗雲」と題する社説を掲載した。

 

(2)「製造業生産の14%、輸出の11%を担う韓国の自動車産業が揺らいでいる。今年に入り、自動車産業の直接雇用が2.3%減少し、輸出は5%も減少した。年間生産台数は9年ぶりに400万台を下回る可能性がある。現代・起亜自動車の営業利益率が限界企業レベルの23%台に低下し、倒産の危機に追い込まれた部品メーカーや下請け業者が相次いで法定管理(会社更生法適用に相当)に入った。主力中の主力産業である自動車産業が崩壊すれば、韓国経済全体が揺らぎかねない」

 

韓国経済にとって、自動車産業の停滞も打撃である。現代・起亜自動車の売上高営業利益率が限界企業レベルの23%台に低下している。これを反映して、部品企業には倒産が増えるなど、一時期の繁栄は完全に過去のものになった。

 

(3)「原因は分かりきっている。経営革新の不振と旧来の労働構造だ。経営陣はSUV(スポーツタイプ多目的車)や電気自動車(EV)といった市場トレンドを読む上でタイミングを逸した。『貴族労組』は世界最低の生産性で世界最高の賃金を受け取る。その労組が新政権で権力まで掌握した」

 

韓国自動車産業が、ここまで追い込まれた背景には、絶対に妥協しない「貴族労組」の存在がある。「世界最低の生産性で、世界最高の賃金を受け取る。その労組が新政権で権力まで掌握した」のは事実である。文政権は、「貴族労組」の要求によって大幅な最低賃金を引き上げ、韓国経済を奈落の底に突き落としつつある。文政権は、貴族労組の「傀儡政権」と言っても過言であるまい。この問題は、今後の韓国において最大の議論の的になるに違いない。

 

(4)「自動車だけではない。2013年に20%に達していた韓国製スマートフォンの中国市場でのシェアは、今年46月期に0.8%まで落ち込んだ。ディスプレー産業が赤字に転落した。造船・海運・海外建設など韓国経済を支えてきた主力産業が一斉に低迷している。今後期待できる産業は見当たらない。人工知能(AI)、バイオ、自動運転車など第4次産業革命分野で米中や日本との格差が広がり続けている」

 

韓国製スマホが、中国市場で急激なシェア・ダウンを喫したのは企業の責任ではない。中国政府が巧妙なダンピング政策を行い、生産費の補助という違法行為を行なっている結果だ。一方、造船・海運・海外建設など韓国経済を支えてきた主力産業が低迷している。これは、政府の産業再編成が上手くいかなかった結果であろう。

 

(5)「46月の経済成長率が前期比で0.6%増にとどまり、米国に逆転されたのも、主力産業の低迷によるところが大きい。来年はもっと問題だ。未来の成長能力を示す設備投資が6カ月連続でマイナスとなり、過去20年で最悪を記録した。企業が不透明な将来を懸念し、投資をためらっているからだ。韓国経済に漂う暗雲はますます濃くなってきている」

 

設備投資は、3月から7月まで6ヶ月連続で前月比マイナスが続いている。これは、半導体設備投資減少の影響だ。ここまで半導体の影響が大きくなると、「韓国経済は半導体と心中」という危機的状況にあることを示している。来年、半導体市況が下落して半導体関連設備投資がさらに減れば、韓国のGDPが直撃される。韓国経済は、今や危機的状況に立ち至っている。そういう認識は、文政権にないことが悲劇的である。