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習近平氏の国は、何をやっても許されると考えているようだ。9月下旬から行方不明になっていた国際刑事警察機構(ICPO)の孟宏偉総裁は、中国当局に身柄を拘束されていた。ICPOという言葉は、犯罪ドラマに登場するくらいで馴染みはないが、各国で起こる犯罪捜査の国際機関である。そのトップが孟宏偉氏だ。

 

ICPOの本部のあるパリから中国へ帰国後、行方不明になっていた事件である。国際犯罪捜査機関のトップが突然、姿を消したとなれば世界的な事件である。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月8日付)は、「ICPO総裁事件の不気味、異質な中国、世界に発信」と題する記事を掲載した。

 

AFP通信によると、孟氏は925日にICPOの本部があるフランスのリヨンから中国に向かったあと、消息を絶った。リヨンに住む孟氏の妻から「夫と連絡が取れない」と通報があり、フランスの検察当局が捜査を始めていた。現地で記者会見した妻の説明が、この事件の不気味さを物語る。「夫から携帯に『私からの電話を待ちなさい』とメッセージが入ったあと、ナイフの絵文字が送られてきた」。その後、孟氏からの連絡は途絶えた。妻と2人の子どもは現在、仏当局の保護下に置かれているという」

 

64歳の孟氏は中国公安省の次官を務めていた201611月に、中国人として初めて任期4年のICPO総裁に選ばれた。名門の北京大学法学部を卒業し、公安部門の枢要なポストを歩んできた典型的な中国のエリート官僚である。孟氏はどんな「違法行為」を犯したのか。中国公安省の党委員会は8日に開いた会議で、孟子を「収賄」の疑いで調査していると明らかにした。しかし、身柄拘束の理由はそれだけではないようだ。「周永康の害毒を一掃する」。会議の公告はこうも記している」

 

「周永康氏は胡錦濤(フー・ジンタオ)前政権の最高指導部メンバーで、公安部門のトップを務めた人物だ。退任後に習近平氏が繰り広げた「反腐敗闘争」で摘発され、失脚に追い込まれた。中国メディアはその周氏が、かつて孟氏を公安省の次官に抜てきした張本人であると伝える。漂ってくるのは、権力闘争のにおいだ。孟氏は公安省の次官を兼務しているが、拘束されたときはれっきとした国際機関のトップだった。その孟氏が失脚した背後に党内の権力闘争があったとするなら、国際社会には理解しがたい話である」

 

以上のような経緯だが、孟氏は国際機関の最高責任者である。その人物を突如、拘束することが、国際的にいかなる波紋を及ぼすか。全く考慮していない傍若無人な振る舞いに驚くほかない。「これが、中国か」だ。

 

習氏は、こんな国際感覚で世界覇権を狙っている。「ご冗談でしょう」と言いたくなるほど非常識、かつ危険な行動である。身震いするほどの嫌悪感を覚えるのだ。

 

こういう中国の法規を無視した行動を見ると、中国の前近代感覚が浮き上がってくる。

 

米国が、中国に比べて「絶対優位な3点がある」という記事を紹介したい。

 

米紙『ニューヨーク・タイムズ』にこのほど、「米国は、中国にはない3つの巨大な資産がある」と題する記事を掲載した。『レコードチャイナ』(10月8日付)から転載。

 

米国には、中国にはない3つの巨大な資産、すなわち移民、同盟国、価値観があり、中国がそれをすぐに手に入れることは難しい。

   移民については、「世界で最も賢明で最も才能のある人々の多くがまだ米国に来たいと考えている」とした。

   同盟国については、「中国と違い、米国には真の同盟国がある。中国にはカナダやメキシコのような本当のパートナーはいない」とした。

    価値観については、「米国社会は、人間の尊厳、少数民族や女性の権利、自由の美徳、公平競争のルールなど、人々が賞賛する価値観を有している」とした。

 

今回のICPOの孟宏偉総裁にまつわる事件には、中国の価値観が清朝時代と変わらず、皇帝は超法規の権力行使が許されるという感覚であることだ。中国に、真の同盟国が現れない理由は、普遍的な価値観が欠如しているからだ。この一件は、中国の政治危機が進行している証拠とも読める複雑な事件である。