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10月4~6日、北朝鮮を訪問した韓国与党・「共に民主党」の李海チャン(イ・ヘチャン)代表が、平壌(ピョンヤン)で口にした発言が議論を呼んでいる。野党に権力を渡さず、北朝鮮との関係強化に努めるといった主旨の発言をしたからだ。韓国与党は、政権独占の大胆な戦略を立てているようだ。

 

韓国与党が、長期政権を樹立したいという願望だけならば聞き流す。最近、立て続けに起こっている問題を並べてみると、すべて一本の線上につながっていることに気付く。つまり、北朝鮮との統一とまでは行かないまでも、南北連携強化の動きが始っている解釈可能な問題が多いからだ。

 

このように判断する理由は、韓国大統領府の秘書官の6割が「86世代」で占められたことだ。86世代とは、1960年代うまれ。80年代に大学生活を送った、学生運動家上がりの集団である。彼らは、「親中朝・反米日」が共通認識だ。文政権になって、慰安婦問題は解決どころか振り出しに戻っている。今回の「旭日旗問題」もこの一環として引き起こされたと見るべきだ。北朝鮮の意向も受けているのでなかろうか。「旭日旗問題」は、単純な問題でなく、南北が日本へ突き付けてきた「闘争の始り」かも知れない。

 

与党「共に民主党」は、朴槿惠政権を打倒した原動力である、「ローソク・デモ」主催の労組と民主団体の意向を最大限受入れる姿勢を見せている。その例の一つが、「最低賃金大幅引き上げ」である。経済的破綻は不可避だが、見直しの動きを全く見せずにいる。見直しが、労組への裏切りになるからだ。「教科書書換え」も南北連携への準備である。韓国の国是と言うべき「自由と民主主義」から「自由」を削除した。「民主主義」だけなら、北も「人民民主主義」である。これならば、南北連携の壁がなくなる。

 

『中央日報』(10月8日付)は、「北朝鮮で行った韓国与党代表の不適切な発言」とだいする社説を掲載した。

 

(1)「10・4南北共同宣言11周年を記念して4~6日、北朝鮮を訪問した与党・共に民主党の李海チャン(イ・ヘチャン)代表が平壌(ピョンヤン)で口にした発言が論議をかもしている。李代表は5日、安東春(アン・ドンチュン)最高人民会議副議長と会った席で『われわれが政権を奪われれば(交流を)できなくなるため、私が生きている限り絶対に奪われないように固く決心している』と述べた。引き続き、記者に『平和体制になるためには国家保安法などをどのようにするかを協議しなければならない』と話した」

 

韓国与党代表は、次のような問題発言をした。

    「われわれが政権を奪われれば(交流を)できなくなるため、私が生きている限り絶対に奪われないように固く決心している」

 

与党「共に民主党」が、政権を維持し続けるには、「積弊一掃」で歴代保守党大統領を獄窓に送る。その政策執行者も追放する。そのためには司法を徹底的に利用する。すでにこの戦術を実行している。同時に、支持団体の利益を擁護して支持をつなぎ止める。最賃大幅引上げと原発廃止政策がそれだ。その結果、韓国経済が混乱してもやむを得ない。

 

    「平和体制になるためには国家保安法などをどのようにするかを協議しなければならない」

 

国家保安法は、反国家活動を規制するもの。国家の安全と国民の生存・自由を確保することを目的としている。1948年に李承晩政権によって制定されてから、反共イデオロギーを実現するための装置として、長年韓国における治安立法の中核をなしてきた。具体的には国内で北朝鮮・共産主義を賛美する行為及びその兆候(軍政当時は南北統一の主張まで)が取締の対象となる。日本の治安維持法をモデルにしたともいわれる。

 

このように問題のある法律だが、この扱いを北朝鮮で発言すべきではない。北朝鮮こそ、国家保安法の対象であるからだ。韓国与党は、すっかり精神的に南北協調ムードに入っていることに注目すべきである。

 

(2)「また、『生きている限り、政権を守る』という発言も同じだ。民主党は「政党人が政権の再創出への意志を明らかにしたもの」と主張する。だが、北朝鮮首脳部〔金永南(キム・ヨンナム)氏〕が李代表に、『韓国側の同胞が保守打破の運動に…(出なければならない)』のような内政干渉の発言をしたというが、李代表がそのようなことを口にしたのは、『北朝鮮労働党と手を握って野党を壊滅させ、長期執権するということか』という誤解を招くのではないか懸念される」

 

韓国与党は、「北朝鮮労働党と手を握って野党を壊滅させ、長期執権するということか」と疑われているが、これこそズバリ核心を突いている。すでに革新政権を10~20年継続させるマル秘戦術が取り沙汰されている。この戦術を実現する上で、司法機関(検察と裁判所)を抱き込む動きを見せている。韓国司法機関は、実質的に政治権力に弱く、言いなりになる。あるいは、自ら立身栄達のために権力へすり寄る人物が現れている。ここが、朝鮮民族の悲しいまでの性である。強いと見える側にすり寄るからだ。