米国経済は、現状において死角が見られない。逆に、それが死角であるとも言える。あえて言えば、株価の高騰が続いていることだろう。景気の過熱がもたらす反動を警戒しなければならいが、その時期は2020年以降とも見られる。FRB(米連邦準備制度)の継続した金利引上げが、景気過熱予防に不可欠となっている。
この米国に比べて、中国経済は風前の灯火である。過剰債務の上に、さらなる債務増加でインフラ投資をしなければ保たない状態である。1994年以降の日本経済と同じ状況に追い込まれている。
日本もバブル崩壊後に同じ経験をしている。政府がバブル崩壊という認識を欠いていたからだ。米国は、この絶妙な時期を狙って日米経済調整を持ちかけてきた。この時の米国側が、現在のUSTR代表のライトハイザー氏である。今度は、相手が中国に代っただけである。中国はその認識が欠如して、「強気一点張り」で墓穴を掘っている。
『大紀元』(10月9日付)は、「中国とのビジネスを再考すべきだー米政府経済アドバイザー」と題する記事を掲載した。
(6)「米中貿易戦による緊張が高まる中、米国政府の経済政策アドバイザーは最近、米国企業に対して、共産党政権下の中国でビジネスを展開することに対して、再考を促すメッセージを送った。『私がもし経営者なら、まず中国は避ける。彼らの不正行為はもうむちゃくちゃだ』米政府経済諮問委員会委員長で経済学者のケビン・ハセット氏は10月6日、米ヤフー・ファイナンスの取材に対してこう述べた。また、ハセット氏は、トランプ政権の対中強硬姿勢は、このルール違反に対する懲罰的措置を意味しているとし、中国が世界経済の一員になりたければ『行動を変えるべきだ』と述べた」
米経済諮問委員会委員長のケビン・ハセット氏は、トランプ氏の側近と言われる。トランプ氏の考え方を最も理解する立場だ。そのハセット氏が、「中国が世界経済の一員になりたければ『行動を変えるべきだ』」と発言している。中国は、この言葉の重みを知るべきだろう。
(7)「米国と中国の貿易戦のなかで、米国は中国共産党政府に対して、自由貿易と公正取引に合致しない政策を取っていると非難している。たとえば、関税、為替操作、強制的技術移転、知的財産窃盗、政府の国有企業に対する補助など。最近、ブルームバーグ・ビジネスウィークは、中国人民解放軍がスパイチップをアマゾンやアップルなど、米国の大手技術系企業に無断挿入していたと報じた。両社は記事内容を否定しているが、ハセット氏はこのニュースに触れ、世界の電子技術企業には深刻な懸念を引き起こしたと述べた」
中国は、関税、為替操作、強制的技術移転、知的財産窃盗、政府の国有企業に対する補助など、WTOの禁じ手をすべて使っていると非難されている。米国からこの点を難詰されると、「中国は社会主義市場経済であり他国と違う」とかわす。弁解にもなっていないが、ともかく、前記の違法を改める気持ちはなさそうだ。
(8)「激化する米中貿易戦の中で、中国進出を計画している米国企業にとって、不確実な要素が明らかに増えている。70年代末以来、米国企業は中国に数千億ドルを投資してきた。トランプ大統領は先週、『この25年間、米国が中国経済を立て直した』と発言。トランプ政権は今、米企業に国内移転するよう促している。大統領は9月8日、『アップルは米国で工場を建設すれば、価格の上昇を避けることができる』とツイッターで述べた」
中国が、WTO違反を改める積もりがなければ、どうするのかが次の課題である。外国企業は、中国から移転することでWTO原則に従ったビジネスをすることである。これによって、WTO違反の実害を防ごうという狙いである。
(8)「トランプ氏は10月1日、北米貿易協定(NAFTA)関係記者会見で、米国は世界を支えるサプライチェーンを再建すると述べた。トランプ政権の元戦略アドバイザー、スティーブ・バノン氏は、大統領は最初から対中投資を撤退させ、グローバル・サプライチェーンのリセットを計画していたと分析した。ネットメディアの『リアルクリアポリティクス』は、トランプ政権の北米関係強化政策は、経済成長をアジアから北米にシフトさせるものと指摘した」
トランプ氏は、外国企業に中国から撤退させたい。それによって、現在のグローバル・サプライチェーンをリセットする計画である。その先に、経済成長の軸をアジアから北米へシフトさせる壮大なアイデアを持っているようだ。今回、米・カナダ・メキシコの3ヶ国を結ぶUSMCA(旧NAFTA)に衣替えさせた究極の狙いはここにある。これによって、①中国に進出する米国企業は、スパイ活動のリスクを回避し、②サイバー攻撃と知的財産盗用の対策コスト減らせると判断している。トランプ氏は、企業に対し「中国の害毒」から逃れる手段を提供しようとしている。それが同時に、米国経済を強くする方法と心得ているようだ。
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