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米国のダウ平均株価は10~11日で1300ドルの急落に見舞われた。米国では、10月に入って、過去の暗い経験を引き出し「10月下落説」が囁かれていた。長期金利(国債10年物相場)の上昇もあって、「何か変調がくるのでないか」という潜在的不安心理があった。いわゆる、「アノマリー」という理論的に説明できないが、経験則でよくあらわれる現象に投資家はおののいていた。

 

世界大恐慌の発端になったかニューヨークの株価暴落は、1929年10月である。9月にピークを付けた後、10月の暴落につながったもの。そういう意味で、米国も投資家は「10月暴落」に神経を尖らせていた。そこへ下記の記事が現れたのだ。いま振り返って見れば、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」と言えなくもない。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月8日付)は、「米国債の利回り急騰 3.5%が株式市場の転換点か」と題する記事を掲載していた。

 

(1)「先週、米長期国債の利回りが急上昇し、9年余り続く米国株の強気相場が今後も継続するのかどうか疑問符がつき始めた。堅調な米国経済と株式や社債といったリスク資産に資金を注ぎ込みたいという投資家の願望を背景に、米国債の価格は急落してきた。消費者、企業、政府の借入コストを決める重要要素で、ベンチマークである米国債10年物の利回りは3.23%に上昇した」

 

(2)「一般的に堅調な経済は株式にとって好材料だ。しかし、米国債の利回りが上昇し続ければ、投資家は無リスク資産を保有する方が得策と考え、リスク資産から資金を引き揚げ始めるかもしれない。借入コストの上昇によって景気拡大のペースが鈍化する可能性もある。株式投資家は利回りがどこまで上昇すれば株式市場が大きく反落するのかを慎重に見極めようとしている」

 

米国では景気楽観論が広がっていた。私は株価急落前に、経済に死角のないのが死角だ。こう書いてはみたが、WSJの米国債利回り3.5%が株価下落のシグナルという記事の与えたインパクトは大きかった。投資家の不安心理が高まっていた矢先に現れた記事で「狼狽売り」を誘ったものであろう。WSJ記事の影響力の大きさを見せつけた形だ。

 

(3)「スイスの金融大手クレディ・スイスが過去54年間の株式市場のリターンを分析したデータによると、これまでの金利上昇サイクルでは通常、米国債10年物の利回りが5%に達すると株式市場の転換点となってきた。とはいえ、ゼロ近辺の金利やその他の金融緩和政策が10年続いた後の今回の金利上昇サイクルは独特であり、投資家は予想の見直しを迫られている」

 

(4)「BNYメロン・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者(CIO)、レオ・グロホウスキー氏は米国債1お年物の利回りが3.5%に近づくほど「現在の株式市場は妥当な水準にあるという投資家の判断」が揺らぐリスクは大きくなると指摘する。アナリストや資金運用マネジャーの多くも、今回の金利上昇サイクルでは3.5%が転換点になるとの見解で一致している。クレディ・スイスは、利回りが3%を超えると株式のバリュエーションが適正でなくなり始め、3.5%で売り圧力が高まると分析する」

 

私は今、米国の株価動向を見ながらこの原稿を書いている。その意図は、米国株価がこれ以上、大きく崩れまいという前提に立っているので仮に米国の終値が大きく崩れたら記事の信頼を失いかねない。そこは、「素人の妄言」でお許し頂きたい。午前3時36分現在、NYダウは0.20%の上昇である。

 

米国の国債(10年物)利回りが3%を超えると株価が不安定になり、3.5%で株式の売り圧力が高まると記事は指摘している。現状は、その不安定ゾーンに入っているわけで、しばらくは株価の動揺が続くのだろうか。

 

(5)「米国債10年物の利回りがいつ3.5%に到達するかについてはアナリストのあいだでも意見が分かれている。米金融大手ゴールドマン・サックス・グループは最近、米連邦準備制度理事会(FRB)が2019年末までにあと5回の利上げを実施し、米国債10年物の利回りは3.4%に達するだろうと予想した」

 

10月13日の米国債(10年物)利回りは、3.138%である。前日よりも0.013%の下落である。株価の大幅下落を受けて国債相場がやや値上がりした。株式市場から債券市場へ資金シフトが起こっているのだろう。