韓国政府は、左派の革新政権を売り物にして登場した。文政権は「雇用重視の政府」という触れ込みであった。実態は、「雇用破壊政府」の汚名を着る結果になった、原因は、最低賃金の大幅引き上げ(16.4%)が仇となり、解雇と雇用を増やすという事態に陥っている。韓国の最賃制度は罰則を伴うだけに、零細企業者は罰則に問われないよう解雇せざるをえない局面に追い込まれた。
文政権は、「革新成長」なる旗を掲げてスタートした。つまり、「親労組・経済民主化・所得主導成長」という内容である。
① 親労組とは、労働組合の主張に沿うことが労働大衆を重視する政策につながる。
② 経済民主化は、反大企業主義で財閥企業の経営自主性を奪うため規制を増やす。
③ 所得主導成長とは、最低賃金の大幅引上げである。
これら三項目から受けるイメージは、純粋な市場経済の否定である。中国の経済政策と似通っていることに気付くはずだ。韓国左派は、市場経済ルールの抑制が国民福祉の増大につながるという、大いなる錯覚をしている。この学派が一大山脈をなしており、卒業生が各分野で実力を持っている。現在の文政権は、その象徴的な存在になった。過去二代、韓国右派の保守党が政権を握ったのでこの際、徹底的に右派を追放する。そして、左派の長期政権樹立構想を立て実行しているところだ。
韓国経済は、こういう左派政権の思惑の道具にされている。最低限、労働組合の主張を生かして、彼らの利益を保障し選挙運動の際に与党の手足になって働ける「部隊」を確保したい。こういう狙いが浮かび上がるのだ。最低賃金の大幅引上げがそれである。
もっと、ハッキリ言えば、最低賃金引き上げによって失業率が増えても、韓国労組には直接の被害はない。それどころか、韓国労組には最賃大幅引き上げ分がメリットになる。野党勢力の抑制には、司法の力を利用して「積弊一掃」という名の下で、保守党政権関係者を追放する。こうして野党を無力化し、南北統一に向けた動きを加速させるのだ。
私が、これまで得てきた韓国関連情報を総合すると、こういう危機的な結論に辿り着く。南北統一では「反日」が、共通のキーワードになってくる。慰安婦問題、旭日旗問題など次々に役者が代っても、日本批判への動きに変わりはない。文政権は、経済問題を棚上げして政治問題のみに集中しているが、それだけ経済危機を招くリスクは大きくなっている。
韓国政府は、失業率を低く見せかける「トリック」を始めている。
韓国統計庁長官は8月末に突如、解任された。理由は、最低賃金引き上げに伴い所得分配の不公正が高まった、というデータ発表にある。これは、調査標本を一部手直ししたこともあるが、結果には影響のないもので不公平の高まりに変わりなかった。だが、韓国大統領府は、自らに都合の悪い結果が出たとして激怒、統計庁長官を更迭した。
この「隠蔽工作」が、どのような形をとってくるか注目していたところ、9月の完全失業率の発表で、従来の「季節調整値」(国際標準)をトップに出さず、「実数値」を発表してきたのだ。この種の統計数字に不慣れな新聞記者は、何ら疑問にも感じず、統計庁発表の文書をそのまま記事にした。
『聯合ニュース』では、「9月の失業率は3.6%に悪化」という見出しになった。8月の失業率は4.2%(季節調整値)である。それが「9月は3.6%に悪化」とは、辻褄の合わない記事である。読む側を混乱させるものだ。実は、この「3.6%」は実数値である。季節調整していない「原数値」と呼ばれている未加工数値である。日本では、最初に「季節調整値」が正式データとして発表される。「原数値」は、統計の末尾に「参考」として掲示されている程度だ。統計専門家以外に、「原数値」を見る者は少ない。その程度の扱いである。季節調整値こそ、統計判断の生命線といってもよい。
韓国政府は、明らかに社会に誤った情報を流布させて、失業問題が深刻化していないと、カムフラージュしている。これが、「革新政権」の看板を出す文政権が、堂々と行なっている「データ発表の欺瞞性」なのだ。
9月の完全失業率は、季節調整値によると4.0%である。
『中央日報』(10月12日付は、次のように伝えた。
「統計庁が12日に発表した雇用動向によると、9月の韓国の失業率は3.6%だった。前年同月比0.3ポイント増えた。季節的特性を考慮した季節調整失業率は4.0%だった。8月(4.2%)に比べると低下したが、過去5カ月間で3回も4%を上回った。失業者数は9カ月連続で100万人を上回った。通貨危機の影響で1999年6月から2000年3月まで10カ月連続で「100万人失業」となったが、それ以来の長い期間だ」
文政権に、失業問題の悪化が最低賃金の大幅引上げにあるという認識はある。だから、実態をカムフラージュする必要に迫られるのだ。過去5カ月間で3回も4%(季節調整値)を上回った。失業者数は9カ月連続で100万人を上回った。通貨危機の影響で1999年6月から2000年3月まで10カ月連続で「100万人失業」となった。現状の失業者100万人は、「平時」で起こっている現象である。文政権の労働政策がいかに無策であるかを物語る数値である。
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