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 韓国は、間違った最低賃金の大幅引上げによる高い失業率解決に手を焼いている。間違った政策の解決には、間違った政策を廃止するしか方法がない。それをやると、政府が間違いを認めることになるのでやりたくない。まさに、メンツの問題で事態を悪化させている。

 

「メンツ」という問題は、儒教社会で共通である。中国もそうだ。体面を重視するから、間違いを認めて撤回することはない。だから、深みにはまり込んで身動きできない状態に落込んでゆく。韓国の雇用悪化が、これに該当するのだ。

 

『朝鮮日報』(10月12日付)は、「アルバイト3万人雇用で問題を覆い隠す韓国政府」と題する社説を掲載した。

 

(1)「韓国政府が政府系企業、公共機関などを総動員し、短期の雇用約3万人分をつくり出す方針だという。政府の傘下機関、政府系企業、さまざまな協会、外局などに期間2カ月から1年の臨時職、インターン、アルバイトなどを募集させる内容だ。企画財政部(省に相当)の主導で雇用労働部、国土交通部などオール政府で取り組み、傘下機関に採用実績を機関トップの評価に反映すると公文書で圧力をかけている。既に韓国土地住宅公社(LH)、韓国鉄道公社(KORAIL)、韓国農漁村公社などが「賃貸住宅探し補助員」「体験型インターン」といった名目で数千人規模のアルバイト採用を始めた」

 

文政権は、世にも不思議な「政府雇用のアルバイト募集」を始めた。政府系企業、公共機関などを総動員し、短期の雇用約3万人分をつくり出す方針だという。政府機関のトップ評価では、このアルバイト募集の実績を加味するという。100万人以上の失業者を抱える現在、わずか3万人のアルバイト募集では効果がない。それでも、「やらないよりもよい」程度のこと。言い訳仕事である。

 

雇用を増やすには、企業活動を活発化させること。そうすれば達成可能だ。賃金は、市場に任せて置く。最賃引上幅は企業の生産性向上の範囲内という制約があるからだ。小幅でなく、大幅な最賃引上には、生産性向上を実現させる、別途の政策が必要である。それをやらずに、「16.4%」という法外な最賃引上を行なった。大混乱に陥って当然である。

 

(2)「毎月30万人前後だった就業者数の伸びが昨年8月には3000人にまで減少した。税金54兆ウォンを投じてその結果だ。そこで短期アルバイトの仕事を急ごしらえして統計を変えようとしている。事実上の統計操作であり、到底、政府の対策とは言い難いお粗末さだ。大統領が「良質な雇用が増えた」と発言した日にこのありさまが明らかになった」

 

文政権の雇用問題は、「数合わせ」である。アルバイトでも何でも良い。就業者数が上げれば、それで言い訳が可能という判断であろう。これでは、国民が安定した生活を望んでも不可能である。

 

(3)「政府が増やしたという「見せかけの雇用」は、巨額の税金をのみ込んでいる。政府は昨年、追加補正予算11兆ウォンを投じ、67000人分の雇用を創出したというが、その半数が60代のアルバイトだった。保育施設での奉仕活動や一人暮らしの高齢者の安否確認、ごみ拾いなどで日当を受け取る期間数カ月の雇用に税金を数兆ウォンばらまいた。ソウル市が今年上半期に創出したという5000人の雇用も禁煙区域監視といった日当45000ウォンの「高齢者バイト」が大半だった。政府の評価を受ける公共機関はアルバイト募集競争を展開している。韓国南東発電は5万人、山林庁は2万人の雇用を創出すると言っている。支援が途切れれば消えてしまう見せかけの雇用をつくり出す競争だ」。

 

政府は昨年、追加補正予算11兆ウォン(約1兆0900億円)を投じ、6万7000人分の雇用を創出したという。その半数が、60代のアルバイトだった。日本でも高齢者が働いているが、「働き方改革」で雇用形態を労働需要に合わせた。日本にできて、なぜ韓国では不可能なのか。労組が、自らの権益を侵されるとして反対しているのだ。韓国は、労組が生き残って国民が滅びるという最悪構図になっている。韓国労組は、李朝時代の「科挙」と同じで一生、身分保障されるべきだと思い込んでいる。


(4)「雇用は税金ではなく、新たなビジネスが生み出すものだ。新産業を阻む規制をなくし、法人税負担を軽減し、労働市場を改革すれば、企業自らが新たなビジネスを始める。良質な雇用が増えれば、家計所得が増え、消費が上向き、企業はさらに投資を行い、雇用が増え続けるというプラスの循環が起きる。政府は正攻法を捨て、税金ばらまきという誤った処方を続けている。最低賃金を急激に引き上げ、若者が仕事を追われる結果を生んだ。誤った政策を是正せず、税金で公務員を増やすことに固執している。今度はアルバイトの急募で統計数値を良く見せかけようとしている。問題の本質はどんな病気であれ、見栄えが良ければよいという発想が雇用問題にまで広がっている点だ」

 

韓国経済の悲劇は、左派経済学に占領されてしまったことだ。日本で言えば、日本共産党が政権を取ったときと同じ現象が起こるのだろうか。日本共産党は、ここまで独善的な政策に陥らないことを願っている。韓国に、失敗例があるから同じ轍を踏まないように、周囲が目を光らさなければ危険だ。これは、あくまでも仮定の話である。文政権の経済政策は、日本共産党並みであることを言いたいためである。