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中国は、日本の発明した新幹線を、高速列車と呼び変えて「中国発明」と言い出している。インターネットで勝手に言いふらす類いの無責任発言でなく、中国で著名大学である復旦大学中国研究院の張維為院長の発言(『人民網』3月18日付)だ。

 

張氏は、「中国はイノベーション主導とイノベーション型国家の建設を強く推し進めており、これは掛け算のような効果を生み出す方法である。『新四大発明』が経済と社会にもたらす効果から、人々はこの点についてすでに目にしていると言えるだろう」と意気軒昂である。

 

習近平氏が、世界覇権に挑戦して勝てると踏んでいる根拠には、前記の「新4大発明」が基盤になっているようだ。まず、その「4大発明」なるものの内容を見ておきたい。

 

『人民網』(2017年12月19日付は、「世界の人々の暮らしを変える中国の『新4大発明』」と題する記事を掲載した。

 

(1)「今年に入り、『一帯一路』参加国である20ヶ国の若者たちにより、高速鉄道とネット通販、支付宝、シェア自転車が中国の『新4大発明』」として選ばれた。五大陸の異なる人種の留学生にとって、中国の最も便利なライフスタイルである『新4大発明』は、すでに彼らの生活に深く根ざしている。

   高速鉄道は「中国の速度」を示し、都市間の距離を縮めた。

   発達したECサイトを通じて、世界各地の消費者の手に高品質の商品が届けられる。

   QRコードをスキャンする決済方法が流行し、財布を持たず外出することが日常茶飯事になっている。

   シェア自転車は「最後の1キロ」の解決策を提供し、交通渋滞を効果的に緩和させている。

『新4大発明』は中国の近年の科学技術革新の縮図と言える。中国人の暮らしを変えたばかりか、世界の中国への認識を新たにし、中国の革新モデルを活き活きと分かりやすく世界に示した。新華網が伝えた」

 

新華網といえば、中国政府機関紙『新華社』の電子版である。ここで取り上げた「新4大発明」記事が、今度は中国共産党機関紙『人民日報』の電子版である「人民網」に転載された。よほどうれしいニュースなのだろう。しかも、日本の新幹線が原型である、高速鉄道を「中国生まれ」と誤解した留学生の誤りを正すことなく、チャッカリと悪用して「中国生まれ」として通用させる。大袈裟に言えば、こういう手法で中国にとって都合の良い誤りでも広めてきた。尖閣諸島問題も、悪知恵を使って「中国領」にでっち上げてきたに相違ない。

 

この伝で言えば、「中国三大発明」とされる、火薬・磁石・印刷も怪しくなる。私は、古代中国が、当時の文明国アラブ世界と交易関係を持っていたので、アラブから伝わってきた技術を、いつの間にか「中国三大発明」として詐称したのでないかと見ている。英国の科学史家は、古代中国とアラブ世界の交易関係を取り上げている。

 

前記の「新4大発明品」の中味をみて驚く。高速鉄道は日本技術である。他の3つの中に、シェア自転車が入っている。このシェア自転車は、今やすっかり下火である。乱立した業界は整理統合され、大手も消えてしまった。街中に、「シェア自転車」が放置されて、都市の美観を損ねるほかに、交通の邪魔になったのが衰退した理由である。雨後の筍のように、新規企業が殺到するが長続きしない。これが、中国の限界である。要するに、真のイノベーション能力がなく、「イミテーション能力」に長けているだけだ。


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