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韓国の文大統領は罪作りである。最低賃金の大幅引上げが、景気を失速させたからだ。韓国では、景気循環の好不況判断において「一致指数」(生産・出荷・小売など)が6ヶ月連続して下落すれば「不況期入り」と判断するルールである。4月から連続6ヶ月(9月まで)減少したことから不況期入りを近く正式決定する。

不況原因になった最低賃金引き上げは、すでに来年の引上げ幅まで決定済みである。今年の16.4%引上げに加えて、来年の10.9%アップが決定されている。普通の政権ならば、不況入りすれば、最賃の大幅引上げ幅を圧縮するなどが行なわれる。文政権には、そういう弾力的な軌道修正が困難である。主義に殉ずる硬直的な政権であるのだ。

 

『韓国経済新聞』(10月30日付)は、「韓国社会が企業家を罪人扱い、これでは経済はまともに動けない」と題する記事を掲載した。

 

この記事を読むと、韓国経済が不況期入りした背景がよく分かる。政府の強引な実態無視の政策が、企業の弾力性を奪っているからだ。矢継ぎ早に打ち出す文政権の「規制強化」が企業を萎縮化させている。

 

(1)「『最低賃金が恐ろしい勢いで上がり会社を経営するのが怖くなるほどです』『韓国社会が企業家を罪人扱いしています。これでは経済がまともに動きません。企業家が哀訴を浴びせた。29日にソウルの首相公館で開かれた李洛淵(イ・ナギョン)首相と韓国経営者総協会(経総)会長団の夕食会でのことだ。経総会長団としてこの席に参加した企業家は2時間30分にわたり経営上で感じた困難をあますことなく吐露した。李首相は彼らの訴えを聞き、共感する部分がある。企業家の士気向上に向け努力したいと答えた

 

韓国社会にはびこる企業家を排斥する風潮は、中国独特の「商工業排斥」に原因がある。農本主義と関わるが、始皇帝は農業を奨励する一方で商工業を排除した。これは、商工業が短期間に富を蓄積して、謀反を引き起こすという誤解に基づいたもの。この誤った考え方が、韓国で定着した。2200年前のこういった思考方式が、現代の韓国に引き継がれている。

 

(2)「これに対し李首相は「すでに文在寅(ムン・ジェイン)大統領が『2020年に最低賃金1万ウォンの公約を守れなさそうだ』と明らかにするなど速度調節をする方向に進んでいる。来年の最低賃金はすでに決まっておりどうにもできないが、その後は企業の受け入れ余力などが最低賃金引き上げ幅に十分に反映されるだろう」と答えた。労働時間短縮制度(週52時間労働制)を弾力的に適用してほしいという要請も続いた。李首相は「経済活性化のために企業の役割が重要であり企業の意見を十分に傾聴し検討する」とした。また「新政権が意欲を持って推進した政策が市場に受容される過程でさまざまな痛みがあるという点をわかっている」と話し一部政策を修正する可能性も示した」

李首相は、企業家の悩みを聞き同情しているが、「来年の最低賃金はすでに決まっておりどうにもできない」と言っている。これは、来年の景気がさらに悪化することを認めたも同然の発言である。景気の実勢が悪化しようとも、最低賃金の大幅引き上げは労組との約束だから撤回しない。文政権が、どこを向いて政治をしているのか、それを明瞭に伝える話であろう。