TPP(環太平洋経済連携協定)は、米国抜きの11ヶ国によって12月30日に発効するという。これほど、紆余曲折をへた協定も珍しいだろう。先ず日本国内でのねつ造情報による「TPP亡国論」。米国の脱退。最近では、中国がTPPに参加するという「フェイクニュース」である。大メディアに検証されることなく登場するニュースである。

 

日本にとってTPP参加問題ほど、議論を呼んだテーマはなかった。ともかく、誤解、ねつ造、中傷というあらゆる種類の偽情報が飛び交った。日本の健康保険制度がなくなる。狂牛病の肉も輸入させられる。子ども騙しのような話が「創作」されたのだ。このフェイクニュースをばらまいたのが革新政党である。今になって、自らの不明を恥じているにちがいない。

 

『ロイター』(10月31日付)は、「TPPが1230日発足、茂木再生相、日本のGDP8兆円増加」と題する記事を掲載した。

 

(1))「茂木敏充経済再生相は31日、米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP)が12月30日発効することが決まったと発表した。TPPは6カ国以上の国内手続きが終了してから60日後に発効することが決まっており、すでに日本、メキシコ、シンガポール、ニュージーランド、カナダが国内手続きを終えていたが、このほどオーストラリアが国内手続きを完了させた。年明け以降に日本が議長国として閣僚級のTPP委員会を開催し、新規加盟国などを議論する」

 

年末ギリギリの12月30日、TPP11が発効する。粘りに粘って、成功へこぎ着けた象徴のような感じである。来年1月には、日本が議長国でTPP委員会が開催される。そこで、新加盟国問題が取り上げられる。これまでの報道では、タイ、台湾などが取り沙汰されている。新加盟国は、現条件をすべて受入が前提である。交渉の余地はない。

 

中国の加盟問題が、噂にあがっている。あり得ないことだ。TPPは、米国が中国を加盟させないように高い壁をつくり、参入不可能な形で制度設計したものだ。国有企業のウエイト引き下げ、データの公開などは、中国の生命線を脅かすものである。こういう実態を調べることなく、「中国参加も」という不確かな情報が流れるのは無責任そのものだ。

 

(2)「茂木敏充経済再生相は、11カ国が参加すれば「域内人口5億人、GDP(国内総生産)10兆ドルと極めて大きな一つの市場が誕生し、日本の経済成長、アジア太平洋地域の発展にも大きな意義を持つ」と強調。「TPPにより、日本のGDPは8兆円近く増加する」との見通しを示した。TPPは、自動車などの輸出には恩恵が大きいが、国内の農業・水産業には不安材料とされている。これについては「各種政策を確実に実施するとともに、関係者への丁寧な説明を行なっていく」とした」

 

日本のGDPは、TPPによって年間8兆円の増加が見込めるという。加盟国の中では、ベトナムが最大の受益国になる試算がある。日本も高い受益国に分類されている。国内の農業・水産業には不安の種になっているが、現状でも生き延びられる保証はない。高齢化が壁である。そこで、協業化が不可欠だ。個人業から協業による「ビジネス化」する。大型投資を行なって、人件費の安い加盟国と対抗できる体制を整えることだ。

 

TPP加盟反対論は、すべて現状を変えることを忌避する議論であった。真面目に考えれば、あり得ない荒唐無稽の話が、さも現実化するという恐怖感を煽っていた。選挙で当選したいという思惑だけで動いていたのだろう。政党人として深い反省が必要である。