国家に忠誠を尽くした退役軍人が、年金で暮らせないとデモを繰り返す。こういう国家がこれから発展できるだろうか。中国では現在、50歳代の退役軍人が待遇に不満を持っている。米国は、退役軍人に対して最大限の敬意を表わす。この米中の違いを見ただけで、米中の覇権争いが本格化する前から決着がついたようなものだ。
『日本経済新聞 電子版』(11月5日付)は、「中国で退役軍人デモが続発、背景に格差」と題する記事を掲載した。
(1)「中国で退役軍人によるデモ活動が続発している。ベトナムとの中越戦争に従軍した50代以上が中心となって生活手当などの引き上げといった待遇改善を求めており、地元の公安当局と相次いで衝突している。人民解放軍は中国共産党の基盤であり、退役軍人の総数は5700万人以上に達する。デモ発生の背景には貧富の差拡大という中国社会の深刻な問題があるだけに、異例の長期政権を視野に入れる習近平(シー・ジンピン)最高指導部のアキレス腱となる可能性もある」
退役軍人5700万人に満足な年金も払えない。そういう中国が、軍拡に力を入れて米国に対抗するとは恐れ入る。この一事をもっても、中国の軍事覇権はあり得ないことだ。今後、さらに増えてゆく退役軍人が不満を募らせ、慣れた武器操作の経験を生かした反乱を起こす危険性が高まるはずだ。そういうリスクを考えない習近平氏の頭脳構造は、どうなっているのだろうか。
(2)「(上京する)退役老兵を暴力で阻止した黒幕をあぶり出し、暴力団を撲滅せよ」。そんな横断幕を掲げた高齢の退役軍人らが10月4日から、山東半島の付け根にある山東省平度市に集結した。海外の中国語ニュースサイトなどによると、黒竜江、吉林、遼寧、河南、浙江、四川、福建の各省などから1000人以上が集まって行進。公安当局が催涙ガスなどを使って阻止に動き、退役軍人らはこん棒や消火器などで抵抗したが、7日までにほぼ鎮圧されたという」
国の安全を守った退役軍人に対して、催涙ガスを使って鎮圧する。そこには、憎悪しかない悲劇的な結末が待っている予感がする。退役軍人へのこの扱いは酷いものである。「ない袖は振れない」という財源不足が、引き起こした問題だ。この状態で、どうやった軍拡が出来るのか。そこまでやって習近平氏は、自らの権力欲を満たそうというのであろう。
‘(3)「デモの発端は平度市の退役軍人38人が北京に行って生活手当などの引き上げを陳情しようとしたこと。デモ参加者によると、地元の公安当局が鉄道チケットの販売を認めなかったため、鉄道乗車をあきらめて車に乗って北京に向かった。しかし、公安局幹部が暴力団数十人を率いて殴る蹴るの暴行を加えて上京を邪魔したという。退役軍人らはスマートフォン(スマホ)のチャット機能などで事件を仲間に訴えたことから、全国の退役軍らが抗議活動のために集まった」
過去の中国の革命騒ぎは、すべて地方の暴力団が主体であった。現在の暴力団は、政府の用心棒になっている。新たに退役軍人が、革命騒ぎの主体に躍り出る可能性を持ってきた。中国の荒っぽい統治は、こういうミスの積み重ねによって崩れるのだろうか
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