文在寅政権を支える大企業労組は、「労働貴族」と呼ばれている。生産性を上回る高賃金を要求して強烈なストを打つからだ。企業が根負けして、最後は折れるという結果が、大企業賃金が先進国一という異常事態を招いている。
これでは、大企業従業員が定年後、自分の家族を入社させる「雇用世襲制」の廃止に抵抗するはずである。この身勝手さは、大企業労組だけの現象でない。ありとあらゆる場所に見られるのだ。私はこれを「氏族制の名残」と呼んでいる。自分の身内だけが幸せになれば良い。そのために、他の集団に対しては、徹底的な差別化行動をとる。
現政府も同じである。革新派の身内には超法規的な振る舞いを許す。北朝鮮は、文政権にとって金日成の「チュチェ思想」でつながり身内である。だが、国内の保守派は敵である。だから「積弊一掃」の名の下に、大統領経験者でも獄窓へつなぐことを平気で行なう。バランス感覚が著しく欠けた国家である。
『朝鮮日報』(11月28日付)は、「韓国大企業労組、雇用世襲是正要求を拒否」と題する記事を掲載した。
(1)「労働組合員の子女に働き口を引き継ぐいわゆる『雇用世襲』を規定した大企業の団体協約を巡り、韓国政府は是正を求めたが、多くの大企業労組がそれを拒否していることが分かった。韓国雇用労働部(省に相当)などによると、国会の国政監査では先月、大企業の労使が定年退職者の子女を優先採用する内容の団体協約を維持している点が論議を呼んだ」
日本でも、過去には存在した。従業員の会社への忠誠心と、会社の従業員への恩顧という持ちつ持たれつの関係が成り立っていた。韓国の場合、会社への忠誠心はゼロどころか、敵対意識で臨んでいる。「チュチェ思想」に毒されており、企業は敵という認識である。それでも、労組が「雇用世襲制」を守りたいのは、自分たちの利益だけ守れば良い。そういう「氏族制の名残」であろう。
(2)「これに対し、一部企業は直ちに問題の団体協約を破棄するか、地方自治体が是正措置を下したが、現代自動車、ロッテ精密化学、錦湖タイヤ、S&T重工業、斗山メカテック、現代ロテムの6社はいかなる措置も取っておらず、政府は11月中旬まで団体協約を改正するよう求めていた。しかし、期限内に団体協約を修正したか、政府に修正すると通知した労組は皆無だった。現代自はこのほど、臨時代議員大会を開き、来年の団体協約交渉で組合員子女の優先採用条項を削除する方針を決めたとされるが、政府には通告されていない状態だ」
「労働貴族」の象徴的な存在は、現代自動車労組である。会社側は、この「労働貴族」によって食い物にされているが、「雇用世襲制」を破棄しないでいる。労組の報復を恐れているのであろう。これで、現代自動車が立ち直れるであろうか。多くの疑問点を残している。
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