中国は、APEC(アジア太平洋経済協力会議)において、我が儘な振る舞いをして批判を浴びた。その舞台となったパプアニューギニアで、「汚名挽回」とばかりにソフト路線に転換した。なんと、中国の「国技」とも言える卓球の普及に乗り出したというのだ。これで、借金漬けの汚名も一緒に洗い流したいのかも知れない。発想が単純である。金銭搾取の恨みは、ピンポンでは消えるはずがないのだ。

 

『ロイター』(12月4日付)は、太平洋地域で中国が卓球外交一帯一路構想に新展開と題する記事を掲載した。

 

(1)「太平洋諸国の1つ、パプアニューギニアの首都ポートモレスビーには中国の資金で建設されたスポーツ施設があり、その中では同国随一の卓球選手が技の向上に励んでいる。この選手は数カ月前、中国の費用で上海に派遣されることも決まった。ラグビー熱が盛んなことで知られるパプアニューギニアで、卓球の普及を図ろうという試みはまさに中国の後押しがあればこそ、だ。実際、国内で卓球の位置づけは高まっている。競技団体は、間もなく何人かの選手がオリンピック出場資格を獲得し始める可能性があるとみており、実現すれば南太平洋地域では異例で、もちろんパプアニューギニアにとっては初の卓球代表となる」

 

始皇帝以来、漢族がこうやって周辺の弱小国を膝下に治めてきた遣り方が分って興味深い。にこやかに近づいて、相手を油断させる。現在のスパイ作戦も、こういう調子で獲物に接近するのだろう。

 

(2)「習氏は(APECでパプアニューギニア)訪問に先立ってパプアニューギニアの新聞に寄稿し、スポーツなどをきっかけとして国民同士の草の根の友好関係を築き上げることを目指していると述べた。西側諸国が太平洋地域に影響力を強めつつある中国に対し警戒感を強める中で、こうした中国の動きは、習氏の掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」がソフトパワーの推進という新たな段階に入ったことを表している」

 

「ニーハオ」と言って近づいてくる。だが、借金漬けという恐ろしい手を使う中国へ、ピンポンで騙されるだろうか。未開部族にタバコを呉れるような過去の手法が使えるとは思えない。どんなに小規模国でも、国連加盟国である。世界情勢を知っているはずだ。ピンポンで国を奪われる時代ではない。

 

(3)「南太平洋地域で、中国からの借り入れの最も大きい国がパプアニューギだ。主として道路や競技場、大学、水産加工施設などの建設費用として約5億9000万ドルの債務を抱える。そのため西側諸国の間では、パプアニューギニアがこうした債務のために中国の意向に逆らいにくくなるとの懸念が高まってきた。先月には米国とオーストラリアが、中国側の提案を退ける目的でパプアニューギニアに海軍基地を建設すると表明した。もし中国の施設が出来上がれば、戦略的に重要なこの地域に中国海軍艦艇が停泊しかねないからだ」

 

西側諸国も念には念を入れている。中国が、パプアニューギニアに海軍基地を建設しないよう、米豪が海軍基地を建設する案を公表した。中国は、これほど嫌われる国になっている。その中国が、「第二の母国」とまで思う人もいる。人、それぞれである。