中国は、米中通商協議項目の一つである技術移転強要禁止を、明文化する作業を開始した。来年2月一杯が期限であり、米国の新たな怒りを買わないように着実に動き出している。
『日本経済新聞 電子版』(12月23日付)は、「中国、技術移転の強要禁止を明文化、実効性は不透明」と題する記事を掲載した。
(1)「中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は23日、外資投資を保護する外商投資法案の審議を始めた。外資の技術を行政手段で強制的に移転することを禁じる規定を盛った。米国の批判を意識して明文化したようだが、中国はもともと『政府が技術移転を強制したことはない』との立場をとる。米国が求めるような技術移転の阻止にどこまで実効性が上がるかは不透明だ」
中国は、逃げ場をつくっている積もりでも、ナンセンスである。米国は、こういう抜け穴封じに全力を挙げている。必ず、チェックすると言っているから、逃げられないはずだ、欧米企業が一致して反撃しているので、食い逃げは不可能である。中国市場の魅力は、人件費アップや購買力低下で以前に比べれば相当に落ちている。この現状を忘れていると、米国政府に一ひねりされること請け合いだ。
(2)「法案の柱は技術移転の規定。『技術協力の条件は双方の協議で決め、行政手段で強制してはならない』とした。米国は2019年3月1日までの対中協議で技術移転強制の改善を強く求めており、意識したとみられる。ただ、中国はもともと技術移転について『企業と企業の交渉で政府は何もしていない』(王受文商務次官)との立場。あくまで商取引の一環で外資が自ら進んで技術移転しているという建前だ。法案は公式見解を明文化しただけともいえる。実際、法案は『自主的かつ商業ルールにのっとった技術協力は奨励する』とも記した。『協力』は外資からみれば『強制移転』と映る」
中国の技術窃取は、犯罪レベルである。中国の経済力が落ちているので、力関係は逆転していると見るべきである。10%成長時代の中国と、6%前後の成長率維持が精一杯という現在では、彼我の力関係は変ったはずである。「草木もなびく中国市場」ではない。この現実認識を持つべきである。
(3)「法案は、『外国投資家の中国での出資、利潤、資本収益などは法に基づいて人民元や外貨で自由に海外送金できる』とも明記した。中国の通貨当局は資本流出と人民元安が進んだ17年春には外資企業の配当送金などを制限して批判を浴びた。法案の規定通りに運用されれば外資投資の保護は一歩前進といえる」
外国投資家の中国での出資、利潤、資本収益などは法に基づいて人民元や外貨で自由に海外送金できる。この項目をなぜ挿入したか。その理由を考えるべきである。中国市場が、すでに売り手市場でなくなった証拠である。今回の米中貿易戦争で、「脱中国」の海外企業が増えているので、それを引き留めるべく、こういう当たり前の項目を入れざるを得ないのだ。要するに、中国が外資系企業に対して「選ばれる側」に変ったことである。新規の外資企業を呼び込まないと、外貨の資金繰りに影響する切羽詰まった面もある。従来の中国のイメージで過大評価すると間違える。「縮小」中国へ向かっている点を認識すべきだ。
メルマガ15号 「貿易戦争で疲弊する中国、改革派が追い詰める習近平」が『マネーボイス』で紹介されました。
まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。
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