習近平氏は貿易戦争当初、米国に対して意気軒昂であった。中国景気が簡単に腰折れすると見ていなかったからだ。だが、ここ半年で、様相はがらりと変った。これまで水面下にあった不安要因が、貿易戦争で一挙に顕在化しており、経済の歯車は逆回転を始めた。
私がごとき者ですら、「信用収縮」の危機を一貫して言い続けてきた。中国政府は、そういう懸念を全く持たずに、あたかも「健常者」のごとき錯覚で米国に立ち向かった。これが最大の誤算である。中国は謀略に長けているが、冷静な経済分析力は極めて弱いのだ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月7日付)は、「中国経済に露呈する貿易摩擦の痛み、カギ握る次官級協議」と題する記事を掲載した。
(1)「中国政府は今週、自国経済が予想以上に速いペースで減速する中で、米国との貿易交渉を再開させる。中国の高官らは過去数カ月間、米中貿易摩擦が世界第2位の経済大国である中国に及ぼす影響を小さく見せようとしてきた。貿易摩擦は株価の押し下げ以外にほとんど影響はないとし、相場下落も中国株を買い直す良い機会になると述べていた。しかし関係者によれば、共産党幹部らが集まる中南海では、当局者らが明確な結論を出しつつある。それは、貿易紛争が成長をストップさせるというものだ。企業幹部らは、トランプ政権の攻撃的通商政策が輸出志向の中国製造業に特に大きな打撃を与えており、新規受注の減少や工場の生産縮小、投資・雇用の判断先送りをもたらしていると語る」
中国最高幹部は、貿易戦争が中国の経済成長をストップさせるという危機感を持つにいたったと言う。貿易戦争が、中国の潜在的な不安要因に火を付け、現実経済の見直しを余儀なくさせたからだ。こうなると、仮に、貿易戦争が終わったからと言って、潜在的不安要因は残るので、中国経済の先行き予想は好転しないだろう。むしろ、中国経済の脆弱性を認識して、危機感を一段と高める懸念が大きい。
(2)「多くの地方政府は、インフラやその他の大型プロジェクトに再度支出するよう中央政府から促されているが、負債に依存したプロジェクトへの数年にわたる出費の結果、既に財政難に陥っている。一部の政府顧問やエコノミストは、2018年第4四半期の中国の経済成長率が6.5%を下回ったと推測している。アナリストや投資家の間で論争の的になっているこの数字は、世界的な基準で見ると高いが、金融危機以降では最も低い値となる」
インフラ投資に依存する景気下支え策は、もはや限界を超えている。中国政府は、この現実に目を瞑り、インフラ投資に頼る姿勢を見せている。次のような指摘を紹介しておきたい。
「国民1人当たりの公的固定資産は、1人当たりの所得格差を調整すると日本を既に大きく上回っている。都市部の住宅建設は鈍化し、新築住宅の需要は縮小した。当然、投資利益率は一気に低下する。要するに、投資主導の成長は早々に終わりを迎えるはずだ」(『フィナンシャル・タイムズ』(1月1日付「中国、世界一になれぬ理由」)
中国経済は、ここまで追い込まれたのだ。基礎技術もなく模倣と窃取技術だけで伸びてきた経済が、世界1になれるはずがない。それが、合理的は判断というものだろう。
(3)「中国政府に助言する一部の経済顧問は、経済成長が今後数カ月間でさらに鈍化するとみている。顧問の1人は『中国経済は間違いなく一段の低下圧力に直面している』と指摘。『どの程度の悪化となるか、そして我々がどの程度強い景気刺激策を取る必要があるのかは、米国との貿易紛争をいかに迅速に決着できるかに大きくかかってくる』と述べた」。
中国政府の経済顧問は、今後数ヶ月のGDP成長率が減速するだけでなく、「一段の低下圧力」がかかったと見ている。6%割れ事態も想定内に入ったということだろう。
昨日、発行しましたメルマガ19号(有料)で詳細に取り上げました。
「追い詰められる被告席の中国、冷戦回避に躍起の理由は」


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