米国トランプ大統領は、対中貿易戦争で多大の「戦果」が確実視されて評価を上げている。だが、TPP(環太平洋経済連携協定)では、大統領就任早々の「やる気満々」が誤った方向に向かい、黒星と判定されている。

 

「米国のTPP離脱は近年の経済史上、最悪のオウンゴール(自殺点)の1つとなった。トランプ氏が残りの任期である今後2年間のうちに方針を再考することはありそうにないが、恐らく次の大統領はそうするだろう」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』1月7日社説)

WSJの社説は、米国がTPPに復帰しなければ大きな損失を招き続けると結論を下している。これが、米議会の支配的な見解になれば、いずれ米国がTPPへ帰ってくるにちがいない。TPP11は、いつでも米国の復帰を可能にできる準備をしている。「早く帰ってこい米国」という構図だ。

 

前記のWSJは、「米国がTPP11発効で失った市場」と題する社説を掲載した。

 

(1)「たとえ米国が動かなくとも、世界は動く。この表現は、貿易においては確かに真実だ。環太平洋経済連携協定(TPP)は、ドナルド・トランプ米大統領が離脱を表明した2年後、TPP11という新たな装いの下で年明けとともに11カ国で始動した。これによる最大の敗者は、米国の生産者だ」

 

米国はTPPから脱退したが、残った11ヶ国は結束してTPP11を昨年12月30日に発効させた。WSJは、「近年の経済史上、最悪のオウンゴール(自殺点)の1つとなった」と無念の社説を掲げた。

 

(2)「カナダは、米国がTPPに残留していた場合よりも大きなGDP押し上げ効果を得られる見通しだ。これは主に、日本の市場から追い出される公算が大きい米国の農家が犠牲になることで生じる。日本政府は通常、牛肉に38.5%の関税をかけており、米国にはこれが適用されるが、カナダ・ニュージーランド・オーストラリアからの輸入品にかかる関税は9%に下がる。カナダ政府は結果として牛肉の総輸出が10%増えるだろうと予測している。米小麦協会のビンス・ピーターソン会長は先月ワシントンで、TPP11が発効すれば、日本で53%を占めている米生産者の市場シェアが、『直ちに崩壊する』恐れがあると述べていた。日本に輸出される米国産小麦の価格は、カナダ産や豪州産より1ブッシェル当たり40セント不利になる見通しだ」

 

TPPで、米国は日本の農畜産物市場を開放させ大きな利益を得るはずだった。ところが、その最も「おいしい部分」をカナダ・豪州・ニュージーランドなどに奪われてしまい、指をくわえて見ているほかない。米国の無念ぶりが分る。

 

(3)「米国と日本は2国間貿易協定について改めて交渉を行うが、2国間協議よりも容易に、そしてはるかに迅速に日本市場を開放する道はTPPだった。新協定のTPP11はまた、他の参加諸国の内部変革にも拍車を掛けている。ベトナムは同協定の一環として外国小売企業に対する制限の緩和、金融部門に対する外国企業の投資上限引き上げを行っている。マレーシアはTPP11加盟国の銀行に対し、同国内での支店開設数を従来の2倍に拡大することを認める」

 

農畜産物だけでない。ベトナムやマレーシアは小売業や銀行の門戸を開放する。この分野では、日本が先陣を切るので米国の得られる利益を日本が取り込む形になる。ベトナムは、中国に代わって、「世界の工場」を目指している。

 

TPPが、発効して加盟国の利益がはっきり浮かび上がってくると、米国はさらに焦るであろう。米国がTPPへ復帰すると、中国が最大の被害者になる。中国にサプライチェーンを置く意味がなくなるからだ。米国のTPP復帰は、中国経済の凋落を促進するという関係にある。中国が最も神経を使っている点だ。

 

メルマガ15号 「貿易戦争で疲弊する中国、改革派が追い詰める習近平」が『マネーボイス』で紹介されました。

まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。

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