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米国は、中国への技術流出で神経を使っている。習近平氏が、不用意に世界覇権へ挑戦すると宣言したばかりに、徹底的な圧力を受けている。基礎技術すら不十分な中国が、最先端技術国の米国へ「喧嘩」を売った以上、米国から違法な技術窃取でもやらない限り、そのギャップを埋められるはずがない。米国の徹底的な「中国マーク」が始って当然であろう。

 

『日本経済新聞 電子版』(1月12日付)は、「米商務省などボーイングと中国出資企業を調査」と題する記事を掲載した。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』の報道を受けたもの。

 

(1)「米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(電子版)は11日、米商務省と米証券取引委員会(SEC)が、航空機大手の米ボーイングと、中国出資とみられる米新興企業の契約について調査に入ったと報じた。中国への人工衛星の販売を禁じた輸出規制に抵触するかを調べるとみられる。ボーイングはカリフォルニア州に本社を置く新興企業のグローバルIPと人工衛星の販売契約を結び、昨年末にも納入予定だった。ウォール・ストリート・ジャーナルは201812月、グローバルIPが中国の国有企業から出資を受けており、衛星技術が中国に流出する恐れがあると伝えた

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』の報道がなかったら、中国へ人工衛星が輸出されていたのかもしれない。危ういところだった。ボーイングという大企業が、こういうミスをするのだろうか。信じられない話である。中国のスパイが中に入って、うまくボーイングを騙したのであろう。ちょっとでも油断をしていると、とんだ苦杯を喫する危険な事態にはまり込むところだった。

 


(2)「米国の輸出規制では、軍事技術にもつながる人工衛星を中国に販売することを禁じている。ボーイングは昨年12月の報道の3日後に『支払い不履行があったため』という理由でグローバルIPとの衛星の販売契約を破棄したことを明らかにした。グローバルIPは衛星の購入目的を『アフリカのインターネット環境改善のため』と説明していた。商務省とSECは、ボーイングが同社と中国との関係を把握していたかどうかなどを調査しているもようだ」

 

米国が先端技術の国外流出に幅広く網をかける。安全保障を目的とする国防権限法に基づき、人工知能(AI)やロボットなど14種類の先端技術に関し、輸出と投資の両面で規制を大幅に強める見通しとなっている。まさに、中国が米国の開戦国のような扱いだ。米国をここまで怒らせた中国の外交的な失敗である。

 

これまでは中国企業や中国系投資ファンドが、米国の新興企業に早めに投資して支配権を握ったり、将来を見越して新技術を中国に持ち出したりすることができた。規制強化でこの穴を封じられるのだ。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月11日付)は、「ファーウェイ、米で新たな難題、現地開発技術の中国輸出に制限」と題する記事を掲載した。

 

(3)「中国の華為技術(ファーウェイ)は、米国部門で開発した技術の中国への持ち込みという新たな難問に直面している。ファーウェイのシリコンバレーの研究開発部門フューチャーウェイは、本国への一部技術の移転を禁じられている。商務省がフューチャーウェイの輸出免許を更新しない方針を示したためだ」

 

中国企業が、米国で開発した技術を中国へ持ち込むことが不可能になった。米国の知的財産を活用して得た技術を輸出してはならないという規則であろう。こうなると、中国はお手上げである。米国は、中国による研究も許さないという厳しい姿勢を見せている。

 

(4)「関係者の話と、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した資料で明らかになった。資料によると、同省は昨年6月の書簡で、国家安全保障上の懸念を理由にフューチャーウェイの免許更新申請を退ける意向を通知した。関係者によれば、同社は抗議しているが、その間は当該技術の輸出を禁止されている」

 

米国にとって安全保障が、最大の国家課題になった。中国は、米国での研究を事実上、禁じられたことにより、大きな痛手を受けることになろう。習近平氏の個人的な世界制覇の野望が、中国国民の生活進歩を脅かす事態になっている。