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習近平氏はなぜか、鄧小平に対抗している。鄧小平の息子も孫も、習近平批判と伝えられている。習氏が、露骨に鄧小平の業績を過小評価する動きをしていることが理由だろう。正直に言って、習氏が鄧小平の業績を上回っていると思えない。逆であろう。現に、中国経済の苦境がそれを証明している。

 

深圳にある鄧小平博物館では、鄧小平の業績展示物を博物館の奥へ移動させ、習氏の業績を博物館入り口付近に麗々しく展示させてあるという。ここまで、対抗する必要はないと思うのだが、独裁者の感覚は庶民とは異なるのだろう。

 

鄧小平は、改革開放路線の指導者である。市場経済化を進めようと旗を振った。習近平氏はそれをストップさせ、統制経済と国有企業中心の経済構造に逆戻りさせた張本人である。今、鄧小平vs習近平の第一次評価が出てきた。習氏の歴史的な敗北である。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(1月21日付)は、「中国経済減速の真の理由」と題する記事を掲載した。

 

(1)「今年の世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)が始まった。2年前の会議では、中国の習近平国家主席が演壇に立ち、自らをグローバル化の擁護者と位置づけた。習氏は、中国が経済を開放することにより、自国と世界がいかに豊かになったかという事例を多くあげて語った。確かに、中国の開放で中国も世界も豊かになった。だが翌年、習氏は国家主席の任期の制限を撤廃し、毛沢東時代に逆戻りした。中国は推進してきた改革を逆転させはじめた。生産性が低く、巨大な国有企業をさらに成長させるべく競争を抑制し、既に減速しつつあった中国経済をさらに悪化させていった

 

習氏は、国有企業優先主義者である。「大きいモノは良いことだ」という典型的な中華主義者だ。小さいモノが、効率的に動き生産性を上げるという認識がゼロである。中国経済の昨今の低生産性の背景には、国有企業重視の間違った戦略がある。

 

「中国経済界の良心」と呼ばれる経済学者の呉敬璉氏はこのほど、中国の「国家資本主義」について警告した。呉氏は、中国当局の市場干渉で、中国経済に対する国民や投資家の意識が冷え込むとした。また、中国の国家資本主義は旧ソ連の計画経済と同様に、失敗に終わるだろうと呉氏は指摘した。『大紀元』(1月23日付)が伝えている。

 

(2)「中国政府は、最近の経済減速に対処するために、融資でその場をしのぐという昔ながらの手法に頼った。大企業には国有銀行から巨額の融資をし、そのために生産性が比較的高い民間企業の借り入れ余地はなくなっていった。米モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのルチル・シャルマ氏によると、現在の中国では1ドルの成長を遂げるには3ドルの債務が必要だという。習氏はまた、グローバル化や多国間主義を軸とする新たな計画を推進するどころか、国家による市場の統制を強め、米クアルコム、米アップルから米ビザ、米マスターカードに至るまで、数々の企業が中国で事業展開するのを難しくしてきた」

 

習氏は、胡錦濤政権まで踏襲された経済政策を首相の専管事項とする流れを変えてしまった。彼が経済政策まで取り仕切っている。それ故、経済低迷の責任はすべて習氏にある。自らの政権基盤を固めることが最大目的である。だから、何が何でもGDPを押上げさせてきた。その結末が、現在の過剰債務経済である。

 

(3)「中国の指導者らは、中国経済の減速は自然なものであり、内需主導の新たな経済への移行という歓迎すべき状況を示していると主張する。だが、今の減速は指令と統制による経済に戻ってしまった結果だと指摘する人も実に多くいる。米ワシントンに拠点を置くピーターソン国際経済研究所のニコラス・ラーディー氏は、中国の生産性の伸びは2008年の金融危機以降、重荷が増した国有企業が足を引っ張っているために大幅に鈍化しているという。成長を回復するために必要なのは、国家統制の緩和であって強化ではない。今日、中国への資本流入も、中国の成長も縮小している。減速の一因は米中貿易戦争だ。だが、米経済の問題の原因が米国内にあるのと同様、中国の問題の根も国内にある」

 

習氏は、国有企業優先主義を貫いている。これが、生産性を押し下げた原因である。こうして、中国経済の潜在成長率低下が現実問題として意識され、中国への資本流入を減らしている。昨年7~9月期は直接投資による純流入額は252億ドルで、同4~6月期の527億ドルから見て半減している。これは、中国の市場としての魅力が減ってきたことの証明だ。習氏は、自らの権力に14億の民の生活がかかっていることを忘れてはならない。

 

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