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今年に入ってからの中国経済が、一段の苦境に立たされている。製造業PMI(購買担当者景気指数)が、2ヶ月連続で不況を示す50割れしていることで明らかだ。特に、民営企業が苦境に沈んでいる。

 

米国は、貿易戦争で中国に要求を受入れさせるには絶好の機会を迎えた。中国は、改革開放政策以来40年、自由貿易原則を踏みにじり、技術窃取に明け暮れしてきた。その成果が、現在のGDP世界2位とも言える。この「悪習」を糺すには今をおいてほかにチャンスはあるまい。そういう絶好の位置に立った米国だが、本当にこの機会を生かし切れるのか、懸念も指摘されている。例のトランプ米国大統領の「気まぐれ」である。この問題については、後で取り上げる。

 

中国経済が、切羽詰まった状況へ追い込まれているのは、もはや打つ手がないことだ。それを物語るのが、次の記事である。

 

「(格付け会社)S&Pの推計によると、中国地方政府が抱える負債は既に6兆ドル近くに達している。地方政府は負債の返済を主に土地売却収入に頼っているが、不動産投資は落ち込み、土地入札は減少している。減税を行えば地方政府の財政はさらに悪化するだろう」(『ロイター』1 月29日付コラム「景気対策手詰まりの中国、残る道は減税か」)

 

この指摘が、中国経済の苦境のすべてを物語っている。タコが、自分の足のすべて食い尽くしたと同じ状況だ。これまで、不動産バブルでGDPを押上げてきた。それが限界に達したという意味である。S&Pの推計によれば、地方政府が抱える負債は既に6兆ドルに達している。この重圧を背負って、中国経済が生き延びられるか疑問である。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月2日付)は、「トランプ氏の対中交渉、歴史的勝利か空騒ぎに終わるか」と題する記事を掲載した。

 

(1)「米中貿易交渉を巡り、合意がまとまる可能性がささやかれている。優位に立っているのはドナルド・トランプ米大統領だ。問題は、トランプ氏がその優位性を生かすか、それとも市場を盛り上げ、地元有権者の歓心を買うために面目を保つ程度の合意で手を打つかどうかだ。90日間の交渉期間が期限を迎えるまでに1カ月近くあるが、今のところ状況は芳しくない。トランプ氏と中国の劉鶴副首相(経済担当)が131日に協議した主なテーマは、中国による500万トンの大豆輸入拡大だった。具体的な期限は不明だ」

 

中国は、経済政策で有効な手が打てない状況下にある。一方の米国も大豆の輸出が止まった状態で農家が苦しんでいる。中国が、ここへ焦点を合わせて妥協策を出してくる可能性は大きい。だが、この目眩ましに騙されてはいけない。

 

(2)「米国の大豆農家は苦境にあり、いかなる救済措置も歓迎されるはずだ。だが数字には根拠が必要だ。米農務省(USDA)によると、中国は2017年に3200万トン近い大豆を米国から輸入した。大豆は米国最大の輸出農産物だ。181月〜10月の輸入量はわずか820万トンと、前年同期に比べ63%減少した。これを踏まえれば、手始めに500万トンの追加というのは、極めて小さな提案だ。仮に、米国の関税が撤回され、中国の大豆とエネルギー輸入が単に以前の水準に戻り、米企業の中国進出に対し厳しい制限付きの市場開放策が少しばかり付け加えられるだけだとすれば、これまでの騒ぎは何だったのか説明がつかない」

 

米国の農家は、トランプ氏の強力な支持者である。次期大統領選を考えれば、中国と適当な線で妥協する懸念も捨てきれない。その場合、トランプ大統領の「不公正貿易是正」というこれまでの目標は何だったのかという批判にさらされる。民主党から見れば、絶好の餌食になるはずだ。ここでの妥協は、トランプ氏が次期大統領選で勝てない要因を自らつくるようなものであろう。

 

(3)「だがそうなるとは限らない。中国の経済メディア「財新」が1日発表した1月の製造業購買担当者指数(PMI)は、製造業の活動が20162月以来の大幅な落ち込みとなったことを示した。景気は向こう数カ月で一段と減速しそうだ。(中国が)真に成長を取り戻そうとするなら、中国は不公平な保護策や国営企業の優遇措置を取り払わなければならない。それは米交渉団の中核的な要求だ」

 

トランプ氏が、ここで小さな「エサ」に満足して矛を収めれば、中国経済にとっても抜本改革の機会を失う。世界経済の次なる発展のためにも、トランプ氏は小さな成果で妥協してはならないのだ。

 

(4)「筋金入りの国家統制主義者である習近平国家主席にとって、軌道修正は政治的に困難だろうが、必要なことだ。中国が本当に技術革新の原動力となることを望むのであれば、知的財産の保護強化は中国にも長期的に国益をもたらす。トランプ氏は米中両国の経済を強化できる歴史的機会に恵まれている。妥協をせず、中国の真の譲歩に対して米国も真に譲歩する心構えであるならば」

 

 

トランプ大統領は、ここで妥協せず初期の目的達成のために努力すべきだ。それが、中国の改革派に力を与え、真の経済改革のテコになり得る。レーガン元・米国大統領が、ソ連崩壊をもたらしたように、トランプ氏もまた中国の門をこじ開ければ、自由貿易実現の勝利者になる機会が与えられるのだ。