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会談前は、大いに期待論が盛り上がっていた。終戦宣言が出るのではという報道もあったほど。だが、非核化で合意できず、会談は決裂した。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月28日付 電子版)は、「米朝首脳会談、非核化で合意に至らず」と題する記事を掲載した。

 

「ドナルド・トランプ米大統領と金正恩北朝鮮労働党委員長による米朝首脳会談は28日、合意に至らないまま予定を繰り上げて終了した。ホワイトハウスが明らかにした。トランプ氏はこの日、両首脳の個人的な絆の重要性を強調しつつ、北朝鮮の非核化プログラムを一気に前進させる必要性はあまりないとの考えを示していた」

 

「トランプ氏は45分間におよぶ11の首脳会談に入る前に記者団の取材に応じ、「スピードは私にとってそれほど重要ではない」と述べていた。また、北朝鮮が201711月以降、ミサイル・核実験を行っていないことに満足しているとも語っていた。一方、非核化を進める用意があるかと米国人記者に質問された金委員長は、「そのつもりがないならば、私はここに来ていなかっただろう」と通訳を介して答えていた」

 

「しかし、その後の両首脳のランチと共同声明への署名は中止となった2回目となる今回の米朝首脳会談は、北朝鮮非核化に向けた具体的な動きにつなげる狙いがあったが、むしろ両国間の根深い溝を浮き彫りにする結果となった。トランプ氏は会談後の記者会見で、北朝鮮との間では経済制裁の問題が交渉を難航させたとし、『彼らは完全な解除を望んだが、それには応じられない』と語った。また、『(北朝鮮は)米国が望んだ範囲の多くで非核化に前向き』だとし、合意文書も署名の準備は整っていたとしたうえで、『時には(合意に至らず)去らなければならない時もある』と述べた

 

北朝鮮が、経済制裁の完全解除を求めたことで、米国の拒否にあった。次の会談予定もないままの会談終了である。

 

経済制裁下の北朝鮮経済はどうなっているのか。以下の記事では、さほど困った状況にはない。過去に蓄積した外貨準備を取り崩しているとの予想もされている。米国側の判断では、制裁を強化して、北を追い詰める戦略かもしれない。

 


『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月26日付)は、「北朝鮮経済、制裁にどう耐えているか」と題する記事を掲載した。

 

「米国は、国際社会による厳しい制裁を通じて北朝鮮に核兵器の放棄を迫るという動きを主導してきた。しかし様々な情報からは、それが狙い通りに機能していないことがうかがえる。『ウォール・ストリート・ジャーナル』WSJ)は脱北者や人道支援関係者、政府当局者、その他の北朝鮮訪問者ら30人以上にインタビューを実施。彼らの証言によれば、1990年代に今よりもっと厳しい状況下で生活していた多くの住民は、市場経済がより深く根付く状況に適応しつつあるようだ」

 

2016年、2017年に国連で承認された制裁の強化は、北朝鮮の政府やエリート層が中国を含む諸外国との貿易で得ていた収入を奪うことで、北朝鮮にある程度の打撃を与えた。しかしそれ以外の面では、北朝鮮経済は持ちこたえているように見える。コメの価格は安定しており、制裁強化後に上昇していたガソリン価格は2017年秋の高値から大幅に低下した。北朝鮮の通貨ウォンの対ドル相場も安定している。首都平壌(ピョンヤン)では建設プロジェクトが続いている。また脱北者や北朝鮮を最近訪れた人々によれば、制裁強化前には目立っていた中国製加工食品など外国製品の多くは、国内工場の生産拡大を受けて国産品に置き換えられている。平壌などの主要都市を訪れた人々の話では、住宅の暖房を支える電気や安価な石炭の供給を含め、住民の日常生活にも若干の改善が見られたという」

 

「北朝鮮が困難に直面しているという明確な兆候は見られない」。ジョージタウン大学の非常勤教授で、北朝鮮専門家として米情報機関に関わっていたウィリアム・ブラウン氏はこう指摘する。それどころか、少なくとも重要性を増しつつある民間部門では、経済が成長している兆候があるという。多くの研究者は、制裁強化前にため込んだ外貨準備を食いつぶすことで北朝鮮が経済を支えているのではないかと推測している。北朝鮮が外国からの来訪者に見せるために首都を飾り立てることは以前から知られている。そして、北朝鮮の外貨準備がいつ底を突くかは誰にも分からない