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韓国では、日本の年号が明日から「令和」に変ることに大きな興味を持って報道している。一方で、日本の右傾化議論を蒸し返している。次のような記事がその一つである。

 

「『日米中3強時代』こそ令和時代の安倍内閣が目指す最終目標だ。こうした『グランドプラン』の裏には、安倍首相が内閣や自民党の支持率を引き上げ、長期政権への足場をしっかり築きたいという意図も見え隠れする。令和時代に安倍内閣の右傾化の流れが加速すれば、日本国内でもきしみが生じ、周辺国を緊張させる可能性もある」(『朝鮮日報』4月29日付け)

 

日本が軍備費を増やしても、対GDP比の枠を設けている。また、日米安全保障条約で自衛隊は米軍との一体的な活動である。こうした状態で、自衛隊が単独行動は不可能である。また、中国の海洋進出の現実を棚上げして、自衛隊を単独で見ることの間違いを知るべきだ。日本の右傾化という議論では、日米安保と中国の軍事脅威をセットにして取り上げるべきだろう。

 

新天皇は、護憲派という記事も不思議である。天皇は内閣の助言で行動するもので、政治的発言を控えられている。厳密に言えば永遠に護憲の立場である。政治的な意味合いはゼロである。

 

『朝鮮日報』(4月29日付け)は、「新天皇は憲法改正に反対する『護憲派』」と題する記事を掲載した。

 

(1)「徳仁皇太子は終戦から70年となる2015年の記者会見の際、戦争と平和に対する自らの考えを明らかにしている。徳仁皇太子は『戦争の記憶が薄れつつある今、謙虚に過去を振り返り、戦争を経験した世代が戦争を知らない世代に、悲惨な経験や日本が通過してきた歴史を正しく伝えることが重要だ』という趣旨の考えを示した。2016年の会見では『平和』という言葉を11回口にした。徳仁皇太子は『戦争を直接経験した人たちと、そうでない人たちに戦争の悲劇と平和の大切さを改めて思い起こす機会を提供した』とも述べた」

 

新天皇が、平和の大切さを話すことがなぜ護憲派になるのか。この辺りに韓国の誤解がある。改正派は、戦前の日本に戻して再び軍国主義を復活させようと考えているはずがない。争点は、自衛隊の位置づけである。世界5~6位の軍事力を備えた自衛隊が、憲法上において「幽霊的」存在になっていることの矛楯を解決しようというのだろう。護憲派は、自衛隊の位置づけを現状のままにしておくという立場だ。改正派は、しかるべき位置に収めるとしている。その場合、憲法9条の「戦力不保持」の精神とどう調和させるかである。つまり、自衛隊は戦前の日本軍とどのように違うかを明確にする条文が必要になるのだ。

 

だいたい、安倍内閣の下では「憲法改正に反対」という議論は、感情論の最たるものだ。安倍内閣が永遠に続くという前提で憲法改正を議論するのでなく、中国の軍事的脅威の高まる中で、日米安全保障条約と自衛隊の関係を明確にする議論が、なぜ賛成・反対に結びつくのか。日本の将来を考えて論じるべきだ。

 

(2)「安倍首相が推進する憲法改正についても反対の考えを持っているという。徳仁皇太子は2014年の記者会見で『今の日本は戦後の日本国憲法を基礎に築かれ、平和と繁栄を享受している』『憲法を守る立場に立ち、必要な助言を得ながら仕事に臨むことが重要だ』と述べた。安倍首相の憲法改正論に対抗する護憲を主張したものと受け取られている」

 

天皇の立場は、護憲であるべきだ。時の憲法は国民の総意で決められるものである。その結果、一部の修正があっても国民投票で決まれば、天皇はそれを尊重する立場である。従って、永遠に「護憲派」に属する。こういう筋論を忘れて、現行憲法だけを守ることが「護憲」でなく、仮に改正された憲法でもそれを守るので「護憲派」になるのだ。