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昔の中国人は倹約家であった。今の若者は、米国流に変ってきた。一人っ子政策で甘やかされて育ってきた結果だ。この甘やかしが、中国経済を逆境に追い込む要因になってきた。

 

昨年、中国の経常収支黒字は、対GDP比で0.4%にまで落込んだ。今年は、0.1%まで落込む見通しである。赤字スレスレである。これは、中国の国内貯蓄が枯渇してきた証拠である。急速な人口高齢化が、促進している一方、若者の消費行動が無軌道で債務依存という思わざる事態が招いた危機である。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月30日付)は、「中国若者の消費スタイル、 まるで米国人」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国政府は過去何十年にもわたり、輸出とインフラ建設に依存する形で成長を促進してきた。しかし、米トランプ政権の対中関税攻勢を受けて、最近は景気減速の兆候が出始めている。新たな消費パターンは、電子商取引大手 アリババグループ 、ネットサービス大手 テンセントホールディングス などのハイテク企業に利益をもたらしている。これらの企業の急速な成長が、中国経済の活性化に寄与している。しかし、こうした消費にはすべてマイナス面がある。若い世代の消費のための借金を背景に、過去数年間で家計の債務は急増した

 

エコノミストの中には、中国政府の発表する「消費」が、個人消費と誤解している。政府消費を含めているのだ。このトリックにまんまと騙されて、「中国の個人消費は60%もある」と書き、中国経済安定論の片棒を担がされている。実際のGDPに占める個人消費比率は、40%未満である。個人消費は、安定どころか不安定化している。

 

40%未満の個人消費比率では、中国経済を支えられない。その40%も、借金依存で無軌道な若者消費がリードしていれば、中国経済はきわめて底の浅い経済と見るほかない。

 

(2)「高水準の企業債務と政府債務は以前から中国政府にとって懸念材料だった。一部のエコノミストは、家計債務の増加を受けて社会全体の債務負担が管理不能となり、中国の成長を阻害することを不安視している。エコノミストの中からは、将来の問題を回避するためには、家計債務の伸びが、より持続可能な水準に抑制される必要があるとの声も聞かれる。これは中国経済への新たな逆風になるかもしれない。彼らが描く最悪のシナリオは、高水準の政府、企業、家計の債務が景気減速を悪化させ、中国国内でより広範な信認の喪失を招く可能性があるというものだ」

 

中国の家計消費は、債務依存で不健全である。今後の中国経済が、企業や政府の過剰債務のほかに、家計の過剰債務まで加われば、すべての経済部門が「借金漬け」になる。他の発展途上国を債務漬けにしてきた中国が、逆に債務漬けとは笑い話にもならない。

 


(3)「JPモルガン の推計によれば、国内総生産(GDP)比でみた中国の家計負債は2020年までに61%に上昇する見通し。これは2010年時点の26%から増加しており、イタリア、ギリシャの現行水準より高い。国際通貨基金(IMF)によれば、米国の水準は2006年に98%に達したあと低下しており、現在は約76%となっている。別の測定方法である可処分所得に対する家計負債の比率でみると、中国は既に米国の水準を上回っている。上海財経大学高等研究院の研究員、レイ・ニン氏によれば、同国の比率は2018年に117.2%となり、2008年の42.7%から大幅に上昇。米国は2007年に135%とピークに達したあと、2018年には101%へと低下している」

 

家計は、一国経済の「貯蓄源」である。それが、逆転して「借金源」と変れば、中国経済は著しく不安定化する。中国の家計負債の対GDP比は、イタリア、ギリシャの現行水準より高い61%(2020年)の見込みである。可処分所得に対する家計負債の比率でみると、中国は既に米国の水準を上回っている。積み上がった家計負債が、経済のブレーキに変るのだ。

 

(4)「中国の若い世代が失業したり、賃金の引き下げに直面したりすれば、消費を急激に抑制することが必要となり、中国経済の鈍化を加速させる恐れがあることを懸念する向きもある。もし若い世代が雇用、賃金面でそうした状況に直面せず、負債をさらに拡大し続けることになれば、彼らは将来もっと打撃を受けやすい状況に追い込まれる可能性がある」

 

(5)「2008年の金融危機の際に米国で見られたように、成長が鈍化すればデフォルト率は急激に上昇する。クレディ・スイス 香港オフィスのエコノミスト、ドン・タオ氏は、この世代は「苦しい時期がどのようなものか想像がつかない」と指摘、「どのような消費者金融ブームでも常に試練の時期はくる。例外はない」と述べた。タオ氏は若い世代を含め中国経済全体で住宅ローンの債務問題が深刻化しつつあることを指摘。住宅ローンの債務残高は2012年第4四半期の時点で11000億ドルだったが、今年6月時点では39000億ドルに膨れ上がっている」

 

中国経済は、もはや米中貿易戦争を続けられる限界を超えている。家計債務が、急激に増えている状態では、失業率増加が加われば、GDPは急ブレーキを踏むことになろう。