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長引く米中貿易戦争は、9月から最終段階へ突入した。米国が1100億ドル分(約11兆円)の中国製品に1日から15%の追加関税をかけた措置に対し、世界貿易機関(WTO)へ提訴すると発表した。

 

中国は、10月1日に国慶節を迎える。習氏は、この慶事を前にして、米国と安易な妥協ができないという政治状況にある。そこで、対抗の「弾」が尽きた現在、WTO提訴で世界へ訴えるという戦術を取ったと見られる。

 

5月に一旦、中国は合意の動きを見せながら破棄して、現在の泥沼に入り込んでいる。責任は中国にある。世間では、いつしか問題の原因を忘れて、現象だけを見て米国の強硬姿勢を非難する方向に傾きかけている。

 

『日本経済新聞 電子版』(9月2日付)は、「中国、米国をWTOに提訴、9月の追加関税で」と題して、次のように伝えた。

 

(1)「商務省報道官は声明で「米国の追加関税は(6月末の)大阪での米中首脳会談での合意に著しく反し、中国は強烈な不満と断固たる反対を表明する」と指摘した。首脳会談でトランプ米大統領は「当面は追加関税をかけない」と約束したが、7月末の上海での協議が不調に終わると、3000億ドル分の中国製品を対象にした制裁関税「第4弾」を課す方針を決めた。このうち91日に発動したのは1100億ドル分」

 

(2)「今回の提訴には米国がWTOを軸とする多角的貿易体制を軽視する一方、中国はWTO体制を重視すると国際社会に印象づける狙いがある。中国はすでに大半の米国製品に追加関税をかけており、報復措置が限られていることも背景にありそうだ。中国は20189月にもWTOに米国を提訴している。米中が9月初めに予定した協議は実現が危ぶまれる。商務省の高峰報道官は8月末の記者会見で、新たな追加関税措置を取り消すことが協議再開の条件になるとの考えを示唆していた」

 

中国が、もはや報復手段がなくなっていることも背景にある。WTO違反を重ねてきた中国が、最後はWTOを駆け込むとは皮肉である。米国は、積年にわたる中国の技術窃取や産業スパイなど、多大の被害を被ってきた怒りが背景にある。こういう事情も斟酌すべきであろう。

 

次に、中国擁護「べったり記事」を紹介したい。

 

『レコードチャイナ』(9月2日付)は八牧浩行氏「中国は持久戦で反転攻勢へ、米国の対中関税上げ」と題する記事を掲載した。この記事によると、「中国は米国の弱みと焦りを徹底的に研究し、長期的な戦略の下、持久戦に持ち込む構え」という。

(3)「中国の街を歩いて回ると、「愛国」「自力更生」のスローガンがあふれている。上海の目抜き通りにも、「愛国」の2文字が赤く輝いていた。中国は米国の弱みと焦りを徹底的に研究し、長期的な戦略の下、持久戦に持ち込む構えだ。中国は101日には国慶節を迎える。今年は特に建国70周年記念の年である。米政府が中国製品に10%の追加関税をかける方針を公表したことに対し、「中国は必要な対抗措置を取らざるをえない」とする声明を発表。トランプ政権の中国への高関税は米国経済に悪影響を及ぼしている。中国の対米輸出の金額には中国へ進出している米企業が製造したモノも含まれ、17年の中国貿易黒字の57%は米系など外資企業が稼いでいた。トランプ政権による対中高関税は中国で生産して米国へ輸出する米国企業に大きなダメージを与える。

中国が持久戦にはいれば、金融システムの崩壊危機に直面する。金融に無関心な記者は、こういう表面的なことしか伝えられないのだろう。
 
(4)「72日付ワシントンポスト紙では、100人の代表的米国人学者、元高官などによる大統領への書簡が掲載され、米国社会に大きな衝撃を与えた。その骨子は、(1)現行の対中政策は方向も手段も間違っている、(2)中国は経済・安全保障上の脅威ではなく、中国国内も一枚岩ではない、(3)中国を孤立させるやり方は中国の改革派を弱体化する、4)中国が世界的な軍事強国になるにはハードルが高い、(6)中国は国際秩序の転覆を考えていないーなど。トランプ政権へ痛烈な批判が突き付けられた」

6項目にわたる指摘は、中国共産党の宣伝そのものである。米国内への共産党勢力浸透が指摘されて来たが、表面化してきた点で興味深い。下線をつけた部分は、すべてウソである。南シナ海への軍事進出は、いかなる目的で行ったのか。即時撤退すれば、中国の真意として理解するが、撤退するはずがない。戦前の日本が、満州へ進出して橋頭堡を築き、中国大陸侵略を狙ったと同じ構図である。このくらいのことが分からないとは、余りにも歴史に疎すぎる。