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韓国与党の非常識は度を超している。政権交代と共に公共機関長の自動交代制を議会に提案しているからだ。公共機関は、できるだけ民営化すべきというのが世界の潮流である。日本では、国鉄・電電公社・専売局・郵便事業などすべて民営化して経営効率を高めている。

 

韓国では、いまだに公共機関として存続させている。経営トップは、政府が任命する建前上、猟官運動が盛んだ。文政権では、その弊害が大きく報道された。前政権が任命した経営者を任期途中で強引に辞めさせて問題になったのだ。辞めるように嫌がらせをする、公募人事の場合、事前に質問要項を教えるなど、違法行為を重ねた。

 

来春の総選挙を目前にして、前記の「依怙贔屓(えこひいき)人事」がヤリ玉に上がらぬように、政権交代と公共機関の人事交代をワンセットにして批判封じ策に出て来たものと見られる。この政権与党は、どこまでも「厚かましい」振る舞いをする。

 

『東亜日報』(9月24日付)は、「公共機関長の自動入れ替え、経営安定性と独立性を害するおそれが大きい」と題する記事を掲載した。

 

(1)「与党「共に民主党」が大統領の任期が終われば、129の公共機関長の任期も同時に終了させるいわば「公共機関の自動入れ替え法」を推進している。国会企画財政委員会の与党幹事の金政祐(キム・ジョンウ)委員などの民主党議員18人が、このような内容を柱とする「公共機関の運営に関する法律」の改正案を提出した。大統領が任命する67の公共機関長は、外部の専門家が参加する役員推薦委員会も経ることなく、長官の提請で大統領が直接任命できるようにする案も含まれている

 

近代経営の原則は、出資と経営の分離である。この理屈を公共機関経営に当てはめれば、政府の出資と公共機関の経営を分離すること。つまり、専門経営者に任せるべきだ。この原則から外れて、政権与党の言い分を聞くだけの経営者であっては、国民への奉仕が不可能である。

 

戦前の日本では、政権交代と共に警察署長まで替わると言われてきた。韓国は、この悪しき例を踏襲しようというのだろう。日本よりも100年は遅れた統治意識である。

 

(2)「現在、公共機関法は、3年の機関長の任期を保障しているが、歴代政権は慣行的に政権が変れば、公共機関長も変える事実上の猟官制を行って毎回、摩擦をもたらしてきた。政権発足初期に新しい人を任命しようとする政府と、任期を全うしたいという機関長の間に対立が繰り返されてきたのである。民主党の改正案は、このような摩擦の余地を当初から取り除くという趣旨に受け止められる」

 

(3)「電力公社、鉄道公社、道路公社、LHなどのほとんどの公共機関は、国民生活に密接な商品やサービスを提供する企業であり、統治哲学の共有よりは、経営の専門知識と政治的独立性が要求される場合が多い。政権が交代するたびに、任期を始めたばかりの機関長を変えるなら、公共機関の経営の安定性と継続性を損ないかねない」

 

与党は、もっともな理屈をつけているが、そうではあるまい。次回の総選挙で野党から「お手盛り人事」と批判されるのを回避したいだけだろう。公共機関経営の効率化を図る目的ならば、「政府統治」の弊害を絶って、専門経営者に経営を委ねることだ。政府は、無原則に人事に介入する誤りをみとめるべきだろう。前政権の決めた人事だから変えて当然という、身勝手な理由は許されない。

 

(4)「歴代政府は、統治哲学を具現するという名分の下、専門性と資格の足りない人々を天下りで送り、公共機関の経営を台無しにしてきた。民主党と文在寅(ムン・ジェイン)政府もこれまで、公共機関の独立性を損なうことを「積弊」と非難したが、いざ政権を握ると、キャムコド(大統領選挙キャンプ・コード・共に民主党)の出身者を大々的に公共機関長に天下りさせた」

 

進歩派政権は、理想論を前面に出して前政権を批判しながら、やることと言えば前政権以上の醜悪な猟官運動を伴っていた。定職のなかった人たちの救済という意味が濃く、適性からほど遠い人物を登用してきた。恥を知るべきである。

 

(5)「天下りの機関長は、機関の生産性を高めることに貢献するよりは、労組と野合して「彼らだけの既得権」を強固にしたり、政界の苦情を引き入れて組織を台無しにすることが多かった。今は資格不足の人物を天下りで任命することが繰り返されないように、機関長と常任監査役等の高官の人選過程を透明かつ公正に改善することから急ぐべき時だ。韓国経済と社会の重要な軸を担当する公共機関を維持発展させるためには、政治的独立性と専門性を保障しなければならない」

 

このパラグラフの主張は、100%正しい。公共機関長は、専門経営者を当てるべきである。与党の言い分は、子どもじみた幼稚な理屈に過ぎない。