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けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。

 

家宅捜査受けた新任法相

自浄能力欠く韓国の運命

3事例に浮かぶ衰退国家

労働貴族が誤解する変革

 

韓国政治が、混乱している。新任のチョ・グク法務長官(法相)が、9月22日11時間に及ぶ家宅捜査を受けた。就任前からいくつかの疑惑を抱えており、韓国国会の聴聞会でも疑惑は解けなかった。この聴聞会中にチョ氏の妻が、検察から文書偽造の罪で取り調べを受けることなく、在宅起訴という異例の措置を受けた。

 

家宅捜査受けた新任法相

文在寅大統領は、こういう緊迫化した状況を受けながら、「新たな疑惑が出なかった」という軽い認識で、議会の聴聞会報告を受けずに「強行任命」した。実は、ユン・ソクヨル検察総長は事前に、文大統領へ「チョ・グク法務長官不適格」(ハンギョレ新聞)と諌言していた。文氏は、それを無視してチョ氏を法務長官に任命したことになる。任命権者としての文大統領は、余りにも軽率と言わなければならない。

 

もともと検察改革は、文大統領が政治に参加することを決心する過程で重要な動機となった、とされている。チョ氏も長い間、検察改革運動に取り組んできた。大統領は、チョ氏を民情首席に任命した時から、「検察改革」の執行人として目を掛けてきたとされる。こういう文大統領とチョ氏の関係から、長官就任を固辞できなかったという事情を指摘する報道もある。

 

チョ氏にかけられている疑惑は、次の3点とされる。

 

1)娘のソウル大学のインターン確認書偽造

2)実弟経営の熊東学院工事代金の虚偽

3)証拠隠滅

 

検察は、チョ氏が少なくとも3つの疑惑に直接関与したものと見ている。検察内部ではこの結果、チョ長官を事実上の被疑者扱いに転換して、強力な捜査体制を敷くものと見られる。検察にとって痛し痒しなのは、今回の捜査が文政権の最大の目玉政策である「検察改革」潰しと誤解されかねない点である。韓国独立後、検察は時の政権の「差し金」によって、反対派弾圧の「手先」になってきたという芳しくない経緯があるからだ。ただ、今回の捜査を指揮するユン検察総長は事前に、チョ氏が「疑惑満載」であると警告してきた事実から言えば、「検察改革潰し」という批判は消えるであろう。

 

任命権者である文大統領は、チョ法務長官の任命に当り、自らの業績を残したいとする焦りが招いた一件とも言える。ユン検察総長の事前警告も聞き入れずに指名したからだ。この事態は、文政権に「自浄能力」ゼロであることを示唆する。文氏が「チョ就任反対」という世論を受入れていれば、今回のような醜態を招かなかったはずだ。文氏が成果を焦り、「アンテナ」の感度まで狂っていた結果であろう。

 

文大統領は、なぜ誤った決断を下したのか。それは、すべて政治的な思惑先行によるものだ。事前に、「チョ疑惑」の数々が報じられている中で、文氏があえてそれらを無視したのは、来年4月の総選挙を意識したものであろう。検察改革という進歩派に悲願の政治課題を解決するには、チョ氏を法務長官に就任させ与党支持派を結束させる必要があった。そして、文氏はチョ氏を自らの後継大統領候補に据えて、進歩派政権の継続を狙っていたのだ。今や、この構想は瓦解したと言うほかない。

 

自浄能力欠く韓国の運命

私は、今日のメルマガの「統一テーマ」として、韓国は「自浄能力」が完全に欠如した社会であることを強調したい。自浄能力とは、言葉を換えれば「市場機構」である。市場は情実を受け付けず、真に合理的なものしか存在できないシステムである。韓国は宗族社会ゆえに、宗族ごとの利益が優先されており、韓国社会全体の利益が軽んじられている国である。

 

その意味では、近代化以前の「朝鮮李朝時代」のままだ。特権階級の「ヤンバン」(両班)は、利益を貪り庶民を食い物にしても、何らの精神的な痛みも感じなかった。現代においては、財閥や労組、市民団体が特権階級をなしている。財閥では、財閥家族が王侯貴族のふるまいである。労組は、「労働貴族」と称せられているように、最低賃金の大幅引上げで自営業者や若者を踏み台にして利益を貪った。市民団体は、強引に原発を廃止させ太陽光発電で多額の補助金を懐に収め、豊富な清治資金を貯め込んでいる。(続く)