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韓国の民間から徴用工判決への解決私案が出された。日本は、一貫して日韓基本条約で解決済みであると主張している。いかなる提案も、受入れず、国際法を守れと韓国に要求している。

 

韓国側からは、「1+1+α」なる案が出ている。日韓企業の負担(1+1)と韓国政府(α)による賠償金負担案である。日本政府は、この案に拒否姿勢である。日韓基本条約で解決済みである以上、すべて韓国国内で解決すべきであるという立場だ。

 

日本が、日韓基本条約で解決済みとする主張はその通りである。安倍首相が、日米首脳会談でも繰り返し発言してトランプ大統領にも説明した。こうなると、韓国大法院判決といえども、韓国国内では効力を持つが日本への強制は不可能である。ここで、韓国民間から「解決私案」が出された。韓国政府が賠償金の全額を支払い、日本は謝罪して終わらせるというものである。

 

『中央日報』(9月26日付)は、「韓国は徴用賠償要求せず、日本ははっきりとした謝罪を」と題する記事を掲載した。洪錫ヒョン・韓半島平和作り理事長の基調演説「迷路に閉じ込められた韓日関係、指導者の決断が必要だ」と題する一部を採録した。

 

この演説は、韓国政府への重要な示唆がされている。中国の毛沢東、周恩来、鄧小平が、なぜ日本に謝罪を求めず、未来に焦点を合わせたのか。それは、日本の協力が必要だったからだと指摘している。韓国も、日本の協力が必要だと示唆している。

 

(1)「私は両国の指導者に度量の大きな妥協を提案したいと思います。まず、韓国政府は日本に対して強制徴用被害者賠償を要求しないと宣言してください。「日本が難しいと考えているなら敢えて受け取らない」というところで整理しようということです。 韓国大法院判決の趣旨は日本企業に賠償を命じることですが、国際法的な約束である韓日協定と衝突するだけに、これ以上日本を圧迫せずに韓国政府と企業が解決しようということです。韓国が決断すれば日本の出方に左右されることなく自らの意志で難題を解決することになります。韓国政府はこのため、過去2度の賠償をした経験に基づき、国会での特別立法を通じて3回目の賠償措置を取らなければならないでしょう

 

下線をつけた部分は、日本が徴用工判決を受入れない以上、韓国政府が独自で行うしかないと指摘している。その通りである。

 

(2)「代わりに日本政府は、不法な植民支配と強制徴用に対して謝罪し、反省する立場をはっきりと明らかにしなければならないでしょう。韓半島(朝鮮半島)を対象に率直な反省と謝罪を表明した2010年菅直人首相の談話を基盤に、金大中‐小渕韓日パートナーシップ宣言のように政府間合意という形で「韓国人」に対する明確なメッセージを送らなければなりません。安倍首相の決断が必要です。このように両国指導者が勇断を下せば、強制徴用被害者賠償という決定的な雷管を除去することができます。両国のチキンゲーム式の戦いは直ちに中断することができるでしょう。韓日GSOMIAも終了期間である11月22日以前までに原状復元することができます

日本は、また謝罪が必要という立場だが、簡単なことでない。韓国大法院の判決は、韓国国内で効力を持っても、日本政府を拘束するものでないからだ。そこで、日韓首脳会談を行い、未来に生きるという宣言を発表するのが限界である。韓国が大幅譲歩しない限り、日本は応じないであろう。

 (3) 「皆さん、私は日本から恥辱に遭った中国の現代指導者が見せた理性的かつ実用的で、勇気あるアプローチの姿勢に驚かされます。1954年毛沢東主席は日本議会代表団の訪問を受けて「毎日、謝罪の強要を受けることはできないではないですか。どの国であろうとも罪悪感に苦しめられ続けることは望ましくはありません」と言いました。周恩来首相は「すでに過ぎ去ったことなので歴史の流れを受け入れるものの、再びそのようなことが起きないようにすればよい」と話しました。 中国の2人の指導者はなぜ日本にこのように寛大な立場を取ったのでしょう。中国が一人だけの力で富強しようとしたものの、自滅の危機に追い込まれた1920年代の失敗経験を思い出したためです」

 

毛沢東と周恩来による日本への対応は見事である。過去を問わずに、未来に焦点を合わせて日本からの協力を引き出したからだ。

 

(4)「中国の2人の指導者はなぜ日本にこのように寛大な立場を取ったのでしょう。中国が一人だけの力で富強しようとしたものの、自滅の危機に追い込まれた1920年代の失敗経験を思い出したためです。鄧小平は1978年に日本を訪問して日産自動車工場を見学した後、「ここに来て近代化とは何であるかが分かった」と話しました。彼は日本人の前で「私たちが不足していることを認める。中国は後退し、日本から学ばなければならない」と言いました

鄧小平は、近代化の意味を工業化と捉えている。まさに、「産業革命による近代化」を日本から学びたいという意思表示である。韓国の近代化は、日韓併合時代である。韓国はこの事実を認めて過去を受入れるならば、日本は韓国と未来を共有できるという示唆のように見える。中国の「三先覚者」の対日姿勢は、韓国の未来に対して一つの教材となるようだ。