21
   

韓国の文大統領は、南北関係を最重要している。先の国連演説では、南北非武装地帯を世界遺産に登録したいというほど先走っている。韓国が、GSOMIA(日韓軍事情報総括保護協定)の延長破棄を決めた裏には、南北重視の姿勢がはっきりと読み取れる。一方の米国トランプ大統領は、一段と「米国ファースト」で関心が米国内に向いている。来年11月の大統領選挙を考えれば、致し方ない面もあろう。

 

問題は、こうして米韓同盟のトップの視点が異なることから、米韓同盟が揺らぐという懸念が増えていることだ。先の米韓首脳会談では、GSOMIA問題が一切出なかったことに、韓国では「不気味さ」を感じているほどだ。

 

  青瓦台(チョンワデ、大統領府)高位関係者は9月23日(現地時間)、韓米首脳会談直後に記者団と会い、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)問題に対し、米韓首脳間で議論はあったかと尋ねる質問に、「GSOMIAに対しては全く言及がなかった」と答えた。日本関連の懸案に対する韓米首脳間の対話があったか尋ねる質問にも「全くなかった」と返答した。このように、米国側からの言及を待っていた韓国は、日韓関係打開の糸口が掴めないと焦りの色を見せている。

GSOMIA問題は、韓国にとって自らが引き金を引いただけに、日本を悪者に仕立てて、韓国はやむなく破棄したという姿勢を崩さず、「日本悪者論」を展開している。米国は、こういう韓国の説明を受け流し、11月23日までにGSOMIA廃棄を撤回するように韓国側に迫っているのが実態だ。

 

『中央日報』(9月27日付)は、「文大統領の南北優先主義、トランプ大統領の米国優先主義を結合して韓米同盟の危機」と題する記事を掲載した。

 

文在寅(ムン・ジェイン)政府の任期の折返し点を控えた現在、安保と経済が同時に危機にさらされているという警告が出てきた。中央日報の後援で26日「漂流する大韓民国、座標を探して」を主題に西江大学で開催した討論会の席で出た見解である。

(1)「 国立外交院のユン・ドクミン元院長とシン・ウォンシク元合同参謀作戦本部長は、文大統領の「南北関係優先主義」とドナルド・トランプ米大統領の「米国優先主義」が結合して韓米同盟が前例のない危機に直面していると指摘した。  ユン元院長は、「韓米同盟が弱まる間、北朝鮮は核武装を増大させた」として「過去2年間、韓半島(朝鮮半島)の平和プロセスを進めたにもかかわらず北朝鮮の核・ミサイルは、ただの一つも除去されたものはない」と話した。また「米情報当局によると、北朝鮮は毎年核弾頭12個を作ることができる施設を備えている」として「米行政府、議会でも北朝鮮の非核化が可能だと考える見方はほとんどなく、米本土が脅威を受けない線で北核を管理しようとする状況」と分析したこれに伴い、近い将来開かれる米朝実務交渉もトランプ大統領が来年再選を管理する水準で消極的に行われるだろうと見通した」

 

下線を引いた部分が韓国で懸念されている点だ。北朝鮮は毎年12個の核弾頭生産能力をもつ施設を整えている。トランプ氏は、来年の大統領選挙を意識して北の核保有を認めて凍結させる案を探っているのでないか。そうなると、韓国が最大の被害者になる。まさに、米韓同盟の土台が揺さぶられる事態になるのだ。

 

文大統領は、南北重視の姿勢一辺倒である。文氏は内心で、北が核を持ってもやむを得ない。これで、憎い日本へ対抗できれば良い、という程度の認識でないかと疑われている。与党「共に民主党」議員が、こういう主旨の発言をしたことがあるからだ。こうなると、文政権の唱える「北核廃絶」ははなはだ疑わしいことになる。

 

(2)「シン・ウォンシク元合同参謀作戦本部長は、「過去2年間北朝鮮を意識して米国は戦略兵器を一つも韓国へ持ち込まなかったのは深刻な安保空白」としながら「国防力はちょっとした空白にも被害が大きくなるほかはない」と指摘した。「昨年第1回米朝首脳会談で韓米合同演習および戦略資産配備の中断、在韓米軍撤収の可能性を示唆し、9・19平壌(ピョンヤン)共同宣言を通じてはわが国防態勢の弱化が現実化された」と話した。彼は「トランプ大統領が北朝鮮の短距離ミサイルの発射に対して『気にしない』と明らかにし、文大統領はGSOMIA(韓日情報包括保護協定)を破棄したのは韓米同盟が揺れる端的な兆候」と話した

朝鮮半島で軍事演習ができなくなった米軍が、アラスカを新しい演習場所にしている。大規模な米韓合同軍事演習が次々と調整・縮小されているからだ。9月26日の米軍事専門ミリタリードットコムによると、米海軍と海兵隊の約3000人は9月、アラスカで極地遠征力量演習(AECE)を実施したという。アラスカの寒い気候の中で合同上陸、燃料調達、水中ロボットの機雷除去訓練などを行ったもの。こうなると、韓国に駐留する米軍は、演習もままならぬ状態に陥っているわけで、米韓同盟の本質が問われる事態だ。

 

下線を引いた部分は、意味深長である。韓国は、米韓同盟の揺らぎを察知して、GSOMIA破棄に動いたとも読めるのだ。もし文氏が、日韓関係の悪化、米韓同盟の揺らぎを利用してGSOMIA廃棄に動いたとすれば、北朝鮮と密接な関係をつくり始めていると読めるのだ。これには、深読み過ぎるという批判もあろう。