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現在の韓国大統領府を牛耳っているのは、「86世代」である。1960年代に生まれ1980年代に学生生活を送り、過激な学生運動を行ってきた「運動圏」と言われる層である。この「86世代」の思想傾向は、北朝鮮の金日成の唱えた「チュチェ思想」そのものである。反独裁、反米国、反日本という単純路線で、自主・自立を叫ぶ点では、旧李朝に似ているとの批判も聞える。文政権の危険性は、時代錯誤的な民族主義を振りかざしている点にある。

 

『朝鮮日報』(9月29日付)は、19世紀式の自主にかまけた586世代 2030代の登場が望まれる」と題する記事を掲載した。

 

ソウル大学のハ・ヨンソン名誉教授(72)は、旧韓末に亡国の道をたどった朝鮮の失敗を国際政治的な観点から再考察してきた研究者だ。ハ名誉教授のもっぱらの関心事は、もちろんこうした過ちを二度と繰り返さないために、大韓民国がどのような進路を取るべきなのかに集中している。先週発刊した『韓国外交史の再検討』と『愛の世界政治』(ハンウル刊)は、こうした知的努力の結実だ。旧韓末の失敗から何を学ぶことができるのかを聞いた。

 

1世紀前の失敗から何を学ぶべきか。

(1)「21世紀の文明の標準的変化を読み取り、対応していかなければならない。韓国の運命を牛耳るのはグローバルリーダーシップの転換だ。米中が展開している新アジア太平洋(新亜太)の秩序構築競争で、韓国は局面を正確に読み取り、中進国としての力を最大限に活用し、積極的に参加していかなければならない。韓米同盟のフレームを維持しつつ、中国とは適切に関係を結んでいく戦略が必要だ。国内の全ての力を集結させなければならない。現在のように極端な陣営対立を引き起こしているようでは、危機を乗り越えることはできない。自主的な世界化、開かれた民族主義のような柔軟な思考を兼ね備えた若い世代が早々に登場する必要性がある

 

文大統領は、国論の統一でなく分裂を策している。親日排斥=保守派一掃を実現して、進歩派政権をこの先、何十年も続けさせるという荒唐無稽な計画を練っている。完全に「党利党略」に陥っている。下線を引いたように開かれた民族主義に立ち返るべきである。現在の政府与党は、親日排斥=保守派排除というきわめて危険な道を歩んでいる。

 

―反米・自主・平等のような1980年代の古い価値観にとらわれた86世代が大統領府をはじめとする政治・社会で権力を掌握していると批判する声が絶えない。

(2)「86世代は非常に哀れな存在だ。民主化に寄与した功労は認めるが、これらの世代が大学時代を過ごした1980年代は、反独裁・反米闘争で想像力が抑圧されていた時代だ。自主・自立だけを叫ぶのは、19世紀的で単線的な思考回路だ。朝鮮が、1世紀前の日本よりもいち早く富国強兵に乗り出すことができなかったのはなぜか、と批判する。86世代が変化する国際秩序を読み取り、生存と繁栄を成すことができなければ、再び後世の批判の的となるだろう」

 

86世代は、反独裁・反米闘争で学生運動をしてきた層である。自主・自立だけを叫ぶのは、19世紀的な単線的志向である。ここには、同盟という概念がなくただ、感情的に叫ぶのと同じだ。カントは『永遠平和のために』で、同盟による安全保障を力説した。これは、きわめて重要な概念である。現在、ますますその価値が高まっている。

 

―韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄により、70年間続いて来た韓米同盟に亀裂が入ったとの指摘もある。

(3)「米国は、韓国が同盟の価値をどのように評価するか検討するだろう。韓米同盟は、朝鮮半島で南北の軍事衝突を抑制し、韓国の経済的成長を裏付けた根幹だ。米国が主導する新アジア太平洋の秩序が形成されつつある21世紀に、韓米同盟の重要性はさらに増していく。韓国は今世紀が自主の時代ではなく、共主の時代であるということを肝に銘じて米国を最大限活用していかなければならない

 

韓国政府が、GSOMIAの延長を拒否したのは、米韓同盟の価値をどのように評価しているかを表すメルクマールでもある。今世紀が自主の時代ではなく、共主の時代であると力説している。この意味で、GSOMIAの延長を破棄した韓国政府は、同盟=共生の意味を理解していない証拠である。まさに19世紀的な発想法である。