勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2018年09月

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    トランプ大統領は、9月26日の国連安全保障理事会の席で中国批判をした。11月に行われる米国の中間選挙にむけて中国共産党が妨害を画策しているというものだ。米国は、中国の選挙介入の証拠を米副大統領が発表するという。トランプ氏はこの日、記者団に「習氏はもう友人でないかも知れない」との爆弾発言もした。習氏が、トランプ氏の友人でないかもという発言は、「中国との絶交」にも取れるので関心を集めている。

     

    トランプ氏の国連発言のあと、米政府高官が記者団に次のように語った。

     

    『大紀元』(9月29日付)は、「トランプ大統領の失望 習近平主席はもう友人ではないかも 最後通告か」

     

    (1)「米トランプ政権の高官は国連総会開催期の926日、記者団に対して、中国共産党政権による米国に向けられた妨害活動は「容認できないレベルだ」と述べた。高官は、共産党はソフトパワーやプロパガンダを担う前線組織、統一戦線部の工作が、政治・経済・商業・軍事・情報関連のツールを駆使した多岐にわたるアプローチを展開していると語った。ビジネスマンやシンクタンク、映画製作所、ジャーナリスト、宗教指導者、また政治家さえも中国の政策への賛否で、報酬を与えたり罰したりしている」と述べた」

     

    中国は、米国でいわゆる「シャープパワー」という手法で、中国の影響力を高める工作をしている。その範囲は、ビジネスマンやシンクタンク、映画製作所、ジャーナリスト、宗教指導者、また政治家さえも巻き込む大規模なものという。報酬を与えたり不利益を与える手法で操作しているのだ。

     

    (2)「サイバー専門家キャセイ・フレミング氏は、大紀元の取材に対して、中国は「米国選挙に介入、侵入し、操作する。混乱を作り出し、左右の対立を生み出す。米国の不安定化を招くといった旧ソ連の筋書き通りに動いている」と指摘する」

     

    中国は、旧ソ連の筋書きにしたがい、米国の中間選挙に介入しているという。

     

    (3)「前記の政府高官によると、米政府が機密扱いとしてきた中国共産党による工作を近い将来公開すると述べ、ペンス副大統領がその詳細を10月初めには語る予定だという。前記のフレミング氏は、トランプ政権は、米国経済と国家安全保障を守るために経済的、政治的な枠組みの中で、可能な限りを尽くそうとしていると述べた。「同時に、トランプ政権は、その戦争を予防している、あるいは中断させていると考えられる」と付け加えた。トランプ大統領は、米国内の分離と動乱を扇動する共産主義と左翼の戦術を卑劣だと認識している。国連総会の一般演説でも、社会主義と共産主義に対して、世界各国が抵抗するよう呼びかけた。この戦術を仕掛ける中国共産党政権に対して、さらなる深刻な制裁を与える可能性が高い。「もう友人ではないかも」との発言は、最後通告として読み取れる」

     

    ペンス副大統領が10月初めに、米政府の機密扱いとしてきた中国共産党による対米工作の全貌を語る予定だという。これが発表になると、大変な事態が予想される。米中の攻防が激しくなることだ。中国は例によって否定するだろうが、中国による「汚いやり口」全てが公開されれば、中国批判が一層高まる。米国政府は、中間選挙を目前に控えて、何が何でも中国の介入を封じる必要があるのだ。

     


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    中国の国内特許件数は世界でも「断トツ」だが、無価値のものが多い。登録5年後に大半が放棄という異常事態である。この裏には、中国得意の補助金政策がある。「特許申請1件で××元」が支払われるのであろう。この補助金漬けが、中国特許を歪めている。

     

    メディアにはよく、中国の特許申請件数が多いことが話題になっている。さも、中国は「知財大国」といわんばかりの記事が目に付くが、それは真実を伝えない誤報である。だいたい他国から平気で技術窃取する中国が、「知財大国」になれるはずがない。

     

    『ブルームバーグ』(9月29日付)は、「知財大国は張り子の虎、中国の特許、大半が5年内に放棄」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国では「発明」「実用新案」「デザイン」の3種の特許が存在する。ブルームバーグ向けにまとめられた特許・商標を扱う上海の法律事務所JZMCのデータによれば、2013年に認められたデザイン特許のうち昨年時点で91%強が放棄されている。同年の実用新案特許の放棄率は61%、発明特許は37%だった。これに対し、米特許商標局によると、13年に認可された米国の特許では85.6%が保有維持費が支払われており、中国とは対照的だ」

     

    中国では折角、特許申請が認められて権利が発生しても、後に放棄される率が極めて高い。例えば、2013年に認められた特許で、昨年放棄された率は次のようになっている。

       デザイン特許は91%

       実用新案特許は61%

       発明特許は37%

     

    上記の放棄率を見ると、最初から特許の必要性がなかったにもかかわらず、申請したことが分る。

     

    (2)「中国での高い特許放棄率は同国の特許政策が裏目に出たものとみられている。中国は自立した技術大国を目指す取り組みの一環として、企業や大学の特許出願に補助金を提供するなどの特許奨励策を実施している。これにより出願件数が急増し、8年前に国内特許の出願数で日本を抜き世界トップに躍り出た。以来トップを守り、昨年だけで180万件が認められた。一方、これらの特許政策は登録後の補助がなく、保有者は増え続ける特許の手数料の支払いを余儀なくされる問題がある。発明特許1件の保有手数料は年900元(約1万4800円)だが、保有を続けると最大8000元にまで引き上げられる。それ以外のカテゴリーでも年600元から2000元へと増える」

     

    中国は、企業や大学の特許出願に補助金を提供する特許奨励策を実施している。これにより出願件数が急増した。だが、特許登録後の補助金がないので「自腹」となり放棄すると見られる。この種の「補助金狙いの特許」が、中国の無駄な特許申請急増の理由である。発明特許1件の保有手数料は、年900元(約1万4800円)だが、保有を続けると最大8000元(約13万1600円)にまで引上げられる。これでは、「無価値な特許」を持ち続ける意味がないのだろう。

     

    (3)「一部の企業では従業員が税制上の優遇を受けるために詐欺の特許申請をしたケースも露見している。08年以来、中国は技術革新を推進する国策としてハイテク企業の認定を実施しており、認定された企業には減税や補助金などが提供されることが背景だ。法律事務所オリックのワン・シャン氏は、「現行の司法制度ではこれらの企業の不正な特許申請への効果的な抑止力がない状況だ」と説明している。特許の放棄率からみると、中国が目指す技術大国への道のりは険しい。ワン氏は「中国の特許の質は年々向上しているが、依然として米国の同業には遠く及ばない」とみている。

     

    中国は、8年前に国内特許の出願数で日本を抜き世界トップに躍り出た。この裏には、08年に技術革新の推進目的で、ハイテク企業の認定制度が生まれたことと密接な関係がある。認定された企業は、減税や補助金などの恩典が与えられる。これが、詐欺の特許申請が出される背景である。名うての中国政府が、企業に一杯食わされた形だ。「上に政策あれば、下に対策あり」で、要領よく立ち回っている。中国の「ハイテク企業」など、一皮剥けばこの程度の代物だ。


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    安倍首相は、10月に訪中する。日中国交回復40年記念だ。この40年間は、実に起伏に富んだ期間であった。中国経済の急成長を背景に、日本への敵対意識を深めてきたが、米中貿易戦争によって「Uターン」。再び「ニーハオ」である。困った時の日本頼みは明白である。

     

    日中関係にヒビを入らせたのは、尖閣諸島の日本による国有化措置である。日本が固有の領土を民有地から国有に移しただけだ。これに不満を持った中国が、あらゆる妨害行為に及んで、現在も継続している。その意味で、実態は何も変わっていない。

     

    それでも中国は、日本との関係改善に取り組んでいる。一方で習近平氏が、安倍首相との初会談に見せたあの傲慢不遜な態度は、日本人の脳裏に強く刻み込まれている。あれが、中国の日本に対する本心である。だが、その後の米中関係急悪化で威張り散らす態度を取り続けることが不可能になった。「一帯一路」事業では、日本の協力が不可欠である。資金とイメージの両面で、日本の支えがなければ行き倒れになるところまで来ているのだ。

     

    客観的に見た日中関係の舞台裏は、こういうものであろう。これに対して、中国はどう取り繕っているのか。

     

    『レコードチャイナ』(9月29日付)は、「3選の安倍首相、中国メディア『華麗なる転身中国の敵から友人に』と期待」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国共産党系の『環球時報』(電子版)は日本との関係について、『日本の中国への認識は複雑で矛盾に満ちているが、数年間の駆け引きにより、中国との対立は日本にとって不利との認識が徐々に有利になっていった』と前置き。『日本は依然として日米同盟を軸とする外交戦略を維持しているが、中国が日本の外交のどの位置と方向を占めるべきかについて、日本は大きな戦略的模索を行っている最中だ』と指摘した」

    中国は、詭弁の大国である。「中国との対立は日本にとって不利との認識が徐々に有利になっていった」とは、まさに中国側のことである。米中対立が永続化する中で、日本に頼らざるをえない。日中通貨協定もこの5月、中国人民銀行総裁が自ら日銀本店へ来て頭を下げたのだ。人民元相場の急落に備えて、日本との協調が不可避と読んだ結果だ。正式発表は、安倍訪中時にされる。「一帯一路」と並んで、「通貨協定」も日本なくしては成り立たない背景がある。中国は、日本に頼み込んできた。これが真相である。

     

    (2)「安倍首相に関しては、『首相を6年も続けており、中国の『敵』から『友人』になろうとしているようだが、同時に中日友好関係の道を再構築する上で別の方面に気をそらしている』とも言及。『南シナ海問題、米国のインド太平洋戦略などをめぐり、日本は中国との関係改善とは合致しない態度を示している。中日の未来の関係は中国の周辺諸国との一般的な『友好関係』の認識よりも、さらに複雑になるだろう』と警告している」

     

    日本は、中国に対して「不離不即」の立場だ。付きもせず離れもせず、である。これが、日中関係が安定する大原則であろう。付けば、利用される。離れれば、悪口雑言を言われる。中国とは、こういう難物中の難物である。一癖も二癖もある荒馬に乗るには、最大の注意が必要である。これまで中国が、日本に放った非難の嵐を忘れてはならない。あれが、中国の本心である。

     

    日本外交の基本は、日米関係にある。日本が開国以来の盛衰を見れば分る通り、日米関係が友好の時、日本は発展してきた。悪化したとき破綻した。米中関係も同じだ。中国は、米国と対立しては、「生きていけない」関係にある。習氏は、そのことを忘れて「米国衰退・中国発展」などという側近の妄言を信じてしまった。中国版「東条英機」になっている。

     

    (3)「その上で、『中日は両国間の各種新旧問題を正確に処理することを学ぶ必要がある。両国は四つの政治文書を踏まえた上で2国間関係の発展を把握し、友好協力を再び中日関係の主旋律にするべきだ』と強調。『安倍氏が最終的に自らを中日関係を苦境から長期友好・発展に導くリーダーであることを証明するよう願う』と述べ、『安倍氏が今後の任期を活用し、互恵の中日関係をつくるため独自の貢献を成し遂げることに期待したい』と結んでいる」

    安倍首相の本心は、日米関係を強化する上で、日中関係の安定が必要という外交スタンスであろう。日米同盟をより強化するには、中国と敵対してはいけないという認識のはずだ。「安保のジレンマ」という言葉がある。こちらが防衛力を強化すれば、相手国も強化するイタチごっこだ。これを避けるには、相手と理解し合える関係構築が必要である。日本は、その分防衛費を増やさずに済むのだ。最少の防衛費で安全保障を実現するには、中国と話し合える関係の維持が必要なのだ。安倍首相は、こういう狙いと思われる。


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    中国は、対米貿易戦争で完全に「シラ」を切っている。その鉄面皮を剥がす記事が登場した。ここまでやって、貴重な先進国の知財権を奪い取る。強盗行為である。

     

    『大紀元』(9月28日付)は、「中国当局による技術移転の強要、組織的かつ手際よくー米紙」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米中貿易戦の激化で、中国当局による外国企業に対する技術移転の強要が批判の的となっている。米企業は、中国当局の技術移転の強要、企業の競争力が低下し、イノベーションの原動力が失ったと訴えている。ホワイトハウスの試算では、強制技術移転によって米企業は毎年500億ドルの損失を被っている。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が28日伝えた」

     

    ホワイトハウスの試算では、強制技術移転によって米企業は毎年500億ドルの損失を被っているという。経済倫理感の喪失した中国で、起こるべくして起こった事件だ。彼らをまともに扱って、常識を期待しても無駄である。倫理感のない相手に、知財権の重要性を説いても理解しようとしない以上、ビジネスの相手から排除することである。

     

    (2)「中国当局は現在、化学製品、コンピューター用半導体チップ、電気自動車など各分野の外国企業の技術を狙い、様々な方法を使っている。なかには、脅迫などの強制手段を用いることもある。WSJの報道によると、米化学大手デュポンは昨年、提携先の中国企業が同社の技術を盗もうしているとして、技術漏えいを回避するために仲裁を申し立てた。しかし昨年12月、中国独占禁止当局の捜査員20人がデュポンの上海事務所に踏み込み、同社の世界的研究ネットワークのパスワードを要求し、コンピューターを押収した。当局の捜査員らは、同社の担当者に対して、提携関係にあった中国企業への申し立てを取り下げるよう命じたという」

     

    デュポンが、知財権侵害を訴えたら、逆に捜査員から被害に遭ったケースである。昨年12月、中国独占禁止当局の捜査員20人がデュポンの上海事務所に踏み込み、同社の世界的研究ネットワークのパスワードを要求し、コンピューターを押収した。警察官が泥棒に早変わりしたような話だ。無法地帯そのもの。これで、立派な口を訊くから腹立たしくなる。

     

    (3)「WSJは、中国当局が「組織的かつ手際よく技術を入手しようとして」との見方を示した。その手法について、「米企業に圧力をかけて技術を手放させること、裁判所を利用して米企業の特許や使用許諾契約を無効にすること、独占禁止当局などの捜査員を出動させること、専門家を当局の規制委員会に送り込ませ、中国の競争相手企業に企業機密を漏らさせること」などがあるという。同紙は、外国企業の中国市場への進出を認可する代わりに、その技術の移転を求めることは、党最高指導者だった鄧小平が考案した戦略だと指摘した」

     

    あと数年、このような強盗行為を重ねて「中国製造2025」を実現させるつもりであったのだろう。トランプ大統領は、これを止めさせるべく関税引上げをやっている。1年遅れれば500億ドルも、中国へ献上するところだった。鄧小平は、「市場と技術を交換する」という言葉を使っていた。技術窃取の元祖は鄧小平である。


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    中国が、米国と対抗して得るところは何もない。米国は、昨年から中国の対外直接投資に警戒感を示してきた。これによって、昨年の対米直接投資は62%も減った。米国への対外直接投資減少は、配当金の減少という意味だけでなく、経営ノウハウの取得など数え上げれば利益は無数と言って良い。その宝庫から閉出された。

     

    習近平氏は最近、「先進国から先端技術を得られなくなったので自力更生だ」と言っている。「自力更生」は、かつてソ連技術者が一斉に中国を引上げた際、毛沢東の使った言葉だ。それを今、習氏が再び使わざるを得ないほど、米中貿易戦争のもたらした衝撃の大きさを物語る。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月28日付)は、「中国の対外投資 初の減少、2017年、米国向け急減」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国商務省は28日、2017年の中国の対外直接投資が前年比19%減の1582億ドル(約18兆円)だったと発表した。2002年の統計開始以来、初めて減少した。世界の国・地域別の投資額は日本に抜かれて前年の2位から3位になった。中国が資本流出規制の一環として中国企業による海外企業買収の審査を強化したのが主因。中国政府は16年末以降、不動産、スポーツチーム、娯楽業などへの投資を原則として認めていない。米国向けの投資額が前年比62%減の64億ドルへと急減したことも響いた。米国が国家安全保障などを名目に、中国企業によるベンチャー企業への投資を認めなかった例が相次いだ。日本向けの投資は同29%増の44千万ドルで過去最高を更新したとみられる」

     

    中国の資本流出規制は、矛楯の多い政策だ。外貨準備高3兆ドル台を守るために行なっているが、このツケが今後の国際収支の経常収支面に出るはずだ。所得収支の赤字が増えて

    経常黒字を減らすからである。中国の経常収支は黒字幅が急速に減っている。一帯一路などで無駄な投資を行ない、相手国を借金漬けにすることが、所得収支赤字を増やしている。

     

    一帯一路関連の投資を増やして、宝の山である米国への直接投資を大幅に減らさざるを得ない。これほど、ソロバン勘定に合わない話はないのだ。ダイヤモンドを捨てて、路傍の石を拾って悦に入っている構図である。政治的な野望で、合理的な経済計算ができなくなったのであろう。中国が、心の底から世界覇権を狙っているとしたら、国際収支は破綻する。


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